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カクヨームから来た男

 酒臭い臭いに痣だらけの顔と血で染まった服イコール……罰としてご飯抜きの店当番。母ちゃんは俺の怪我よりもモモを酒場に連れて行った事に激怒なんだからよ……グレるぞ、たくっ。


 プレートタグに【身体強化】と【自然回復】を加え、更に【空気旨飯】と作り、こっそりと腹を満たしていた。

 しかし、家の店の武器は身内贔屓じゃなしにしても、優良な武器があるのだが、客はあまり手に取ってくれない。


 こういうのを見ると前世の小説サイトを思い出す。俺の書いた作品はまぁ納得だ。文章力もないし、誤字脱字も多いし、投稿も遅いしな。

 上位に投稿してる人なんて1日に三度とか投稿してる人もいるもいるくらいだし、スマホ用に文字を合わせて行間を工夫したり、タイトルや出だしの上手さは脱帽ものだよ。


 でも、個人的にはあれ? なんでこの作品がこの程度の評価なの的な……それと同じでよ。家の武器も短剣と棍の二種類をメインに作っているんだけど、あまり売れてねぇ……


 親父の短剣は鉄の短剣でも10文字も入れられる程にランクが高いし、棍だってそこらのロングソードより固く威力も出る。

 なのに世間は長剣、槍、弓の三択……他の武器も斧やムチにナックル等色々あるのによ。なんだか、他の武器(ジャンル)も見て欲しい気分になったぜ。


 んな事を考えいると、カランカランとベルが鳴り、客が入って来る。


 「よっ! エレン、探したぜ。」


 「人違いです、お客様。」


 リンメイである。何故ここが……そして、何故俺だと分かりやがった!?


 「とぼけても無駄だせ。一度殴りあった奴の目は忘れないよ。それにその痣、私の拳が付けた痣ね。ふふふ、戦闘狂(バトルジャンキー)の心眼を舐めない方がいいわよ。」


 「チッ……わーったよ。言っとくが再戦はしないぞ。これでも12歳のガキだからな。あれだ、大人になったのは俺の作った装備のおかげだ。」


 「そんなのはどうでもいいよ。あたしがここに来たのは約束だからだ。」


 「約束? なんの話だよ?」


 「好きにさせてもらうって言ったろ? だから、あたしはお前の者だ。巨人族が己から勝負を持ちかけて誓約した以上、それは遵守されなくてはならない。更にあたしは龍派のマスタークラスの者だ。掟を破ればこの場で自害する。」


 この世界には種族ならではのルールがある。それは各部族にもよるが、大抵は相手の言うことを1つのむが暗黙のルールだ。

 そして、龍派とは、虎派と並ぶ二大武闘派閥であり、素手による格闘はおろか、武器と格闘術を組み合わせた、この世界の近代武闘術だ。


 そのマスタークラスの称号を持つリンメイは、ナックルの部門でトップ……つまり、龍派の中で一番のナックルマスターと言うわけである。

 つまり、最初に言った誓約を守らない事は武門を汚す行為となるので自害すると言っている。


 「ちょっと待て! 俺は確かにそう言ったがよ。リンメイの言葉に被せて言ったから一方的な誓約だろ? 誓約は互いに認め合わなくては無効だろ?」


 誓約がどんな物か知らないが、それっぽく話を合わせて誤魔化そうとした。


 「それなら問題ない。確かにその通りだが、あたしもその事をあの場で認め抗議をせずに受け入れたし、エレンもそのままバトルに突入した。つまり、互いに了承したので無効にはならない。」


 俺もその場で抗議はしてないけど……


 「帰ってと言ったら?」


 「店を汚すことになる。済まないな。」


 「ダーーーー! いいのかリンメイ? 俺ってエロエロなガキたぞ? 毎日お前をオモチャにしちゃうかも知れないんだぞ?」


 「誓約は絶対だ。それに何。私もエロエロだから問題ない。どうだ? 巨人族の女のボリュームは凄いだろ?」


 「ブハッ……凄いっす……でも、刺激が強すぎるので今は止めて下さい。」


 何をリンメイはしたかは俺の口からは言えない! 巨人族万歳!


 「誓約成立だな。エレン、末長く可愛がってくれよ。」


 「後で両親に紹介するからここに座ってろ。」


 「うん、分かった。えへへ~♪」


 親父の奴、発狂するだろうな……


 カランカランとまたベルが鳴り、一人の男が入って来る。家の商品には見向きもせずに、まっすぐ俺の所にやって来て……


 「マーク・エレン君だね? 初めまして。第64期勇者のグレアム・エンガイだ。単刀直入に言う。君に武器を1つ打って欲しい。そして、俺と勝負してくれ。」


 カウンターテーブルを激しく叩く訳でもなく。ましてや失礼な人でもない。しかも……参ったな。グレアム・エンガイって言えばカクヨーム王国で有名な勇者じゃん。おいおい……


「へぇ~♪ うちのダーリンにちょっかいを掛けるのは、どこのバカかと思ったら、あの有名な勇者様と来たか。」


 値踏みするような視線で勇者を品定めするリンメイ。口調は軽いが目は笑っていなかった。


 「昨日は派手にやったね、龍殺し。……そうか、彼の者に?」


 「そうよ。年下の超ストライクのあたし好みのダーリン。」


 「リンメイさん、その、お客様の前だからお痛はめっ!」


 お尻を撫でるので軽くペチッと「めっ!でしょ?」と目でアイコンタクトをしたら蕩けていた。


 「あははは、で、どうだろう? 報酬は金貨500枚。これでどうだい?」


 大きな皮袋をカウンターに乗せ、口を開くと小金色の輝きを放ち、目が眩む。魔王を討伐しろよ勇者と言いたくなるのを抑え、俺は勇者エンガイを見る。


正直に俺は勇者に答えを返すのだった。


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