2-53、「男にとって鬼門は女」(柴田ヨクサル先生の『ハチワンダイバー』、二こ神さんのセリフより)
投稿再開したてですので、書き溜め分、一話放出致します。
『邪剣使い』攻略、100日目。
現在地、水精領域のどこか。
蛇の群れより救いしは簀巻き。
落水し、果てに浮上し。
色々なことがあったわけだが、なんだかんだで日は未だ暮れぬ。
何処とも知れぬ海岸に、むせる。
次回「混沌」
おちこんだりもしたけれど、おれはげんきです。
(唐突にむせる、からの、最後の一言だけ某大御所アニメスタジオの往年の名作映画のポスターに使用されたキャッチコピー、パクリはダメ絶対!)
はーいごめんなさーい反省してまーす。
とはいえやっぱり、なんのネタかいちいち全部わかってもらえるのって、嬉しいですね!
「御仁、改めて、御礼申し上げるのじゃ」
あっ、はい。
いえいえ、ご丁寧にどーも。
いや、それにしてもこのゲコさん、めっちゃ泳ぎが達者だったわ。
ここがどこなのかはまったくわからないけど、とりあえず砂浜まで泳いで引っ張ってもらいました。
そしたらまぁ、こんな感じで土下座された。
ちなみに、移動中はもう二度と乗っかるまいと、邪剣触手でしがみついてた。
…………この異世界メスガエルに触手をからめたとき、またもや一悶着あったことについては、もちろん割愛する。
「拾って頂いたこの命、身も、心も、お捧げ致す所存」
おい、やめろ。
真面目な口調でピシッとした態度なのにわずかにモジモジしつつ顔を赤らめるのやめろ。
「しかれども、こなたには、われら『河津一家』の未来のため、なさねばならぬことがあるのじゃ」
ほう?
このカエル、「一人称・こなた」で「語尾・のじゃ」なのか。
その口調設定で見た目完全にカエルとか、相変わらずもったいないことをなさるのう、この異世界は!
(のじゃロリ、ならぬ、のじゃケロ、ということか)
「御仁、どうか、これこの通り、お仕え致す前に、どうか猶予を頂けぬじゃろうか!?」
あー、うん。
別に、ぜんぜん構わない。
っていうか、いちおう自分の味方になってくれたらいいなー、みたいな気持ちもあったけど、かなり軽い気持ちだったし。
だからそもそも、お仕え致されても致されなくても、どっちでもいい。
だから猶予とかあってもなくてもどっちでもいい。
だからほら、そんな必死そうな感じなんだったら、早いとこ自分のやるべきことを果たしにいってくれてぜんぜん構わない。
って伝えたいんだけど、どうしよう?
(※『邪剣使い』は喋れない)
はいそれ。
いつものそれ。
うちの邪剣、解説君気質が過ぎてついに※とか言い始めちゃったか。
(そのうえ、カエルは「これこの通り」と言っている際中に、深々と面を下げて目をつぶってしまった。今ジェスチャーをして見せたとして、その相手はまるで見てはくれないのだった)
謎の散文形式による追加の解説まで入れてくる。
(ふむ、なんかちょっと楽しい!)
楽しいなら許す!!
さて。
とりあえず、ゲコさんが顔を上げたら、恒例の「喋れないジェスチャー」でもしてみるか。
というわけで、カエルさんが顔を上げて目を開けてくれるのを待つ。
待つ。
待つ。
待つ。
待つ。
待ったッ!!!
くっ!!
このカエル、律儀かよ!!
誠意を見せるためだとかそんなつもりなんだろうが、言うべきことを言いきって土下座スタイルのまま微動だにしやがらねぇ!!
せっかく「毎度お馴染み喋れないジェスチャーに対する珍回答!」のお時間が来たと思ったのに!
よもやその一歩手前でつまずくとはなぁ!!
(マスター、ジェスチャーに対する珍回答は、楽しみにしちゃダメだと思うの)
はーいわかってまーす、実際に珍回答かまされたら一番困るのはわたしでーす。
いや、っていうかどうしよう?
こっちのことをまるっきり見てない状態でおれのセリフを待ってる相手に対して、『邪剣使い』は喋れないのどうしよう。
(あのね、マスター)
なんです、邪剣さん?
(普通に、カエルに近寄って肩をポンポンすればよいのではないか?)
…………だっ、だよねー!
そうだよね、僧だよねー!!
いやあのもちろん、うん、そうっ、僧じゃないけど、もろちん、もちろん気付いてたよ!?
(慌てすぎてて僧って言っちゃってたのを訂正したのはいいんだけど、一回「もろちん」って言っちゃってたのも気付いてますか、残念マスターさん?)
おけー、おけおけー!
肩をポンポンな!
近付いてな!!
なっ!?
よしやろう!
すぐやろう!!
(うむ、勢いでごまかすことにしたのだな、別にいいと思うよ、それでも)
はいっ、近付いてー!
はいしゃがんでー!
カエルの肩に、おててをポン!
よしっ!
カエルがはっと顔を上げた!
…………あれ、これ、なんか距離感、近くない?
「けろぉ……」
黒目がちで、まん丸の、カエルのつぶらな瞳がじんわりと潤む。
……あぁー。
(……あぁー)
薄緑の、湿りけを帯びたなめらかな肌が、肩に置かれた左手から離れ、おれの胸の内にそっと、すべりこんできた。
けろけろと、なく声が揺れる。
(ッハァ〜〜〜)
邪剣のクソデカため息。
(あのさぁ、マスターさんさぁ……)
いや、待て待て、コレはおれのせいじゃないだろ!
肩をポンポンしろって言ったのは邪剣さんですよね?
(うむ、そのとおりだ、我は、肩をポンポンするように言ったのだ。適当に近付いて、立ったままでカエルの肩あたりを軽くポンポン叩いて、顔を上げるように促せばいい、そういった意図のもとで、な)
ふむ、あー、なっ、なるほどねぇ?
(真正面から跪いて目線を合わせ、お互いの吐息を感じられるほどの至近距離から肩に優しく手を添え、顔を上げた相手の瞳から目を逸らさずにじっと見つめ合うようなイケメンムーブをかますように、などとはこれっぽっちも言っていないのだぞ)
あー。
あぁー。
ひょっとして、おれ、またなにか、やっちゃいましたぁ……?
(いや、そんなテンプレのセリフを持ってきて場を取り繕おうとしても、ダメだからね?)
(我の「マスターにやってほしいことベスト1000」に余裕で入ってくるようなムーブをポッと出のこんなカエルに我の見ている目の前で見せつけてしまった事実は消えないからね?)
(たとえ相手の見た目が完全にカエルであろうとも、ハーレム展開なんて、絶対に認めないよ?)
(マスターは我だけのマスターなんだよ?)
……おや?
………邪剣の様子が?
(我が我とマスター以外に求める存在は、マスターのために喜んで命を投げ出す忠実な下僕だけ)
あっ、これやばい。
(我とマスターの間に入り込んで、マスターの愛をかすめ取ろうとする者なんて)
うわ侵食がヤバイ。
なんていうか、これ。
邪剣、本気で身体乗っ取りにきてる?
(そんな泥棒猫、いや、泥棒ガエル……)
邪剣の肉が溢れ出してカエルに喰らいつこうとしてるッ!!?
(喰っちゃうのだぞ?)
うおぉい暴走したァッ!!?
左手にグッと気合を入れて右腕の裾からはみ出る邪剣の肉を抑え込む!!
ちょっ、邪剣、オイオイオイオイ!
おいコレェッ!!!
(マスターどいて! そいつ殺せない!!)
ちょおぉっ!!!
邪剣こそヤンデレのテンプレみたいなセリフ吐いてんじゃねぇか!!
っていうかマジ!?
うちの邪剣がヤンヤンしちゃったのか!!?
いやまぁ邪剣だし!?
邪剣って設定的にはヤンデレラ・ストーリーになるほうが正統進化って感じはするよねぇ!!?
でも残念!
そっち方面の性癖は持ち合わせてないんだなぁ!!
進化キャンセルはBボタン連打でいいですか!?
お願いやめて!?
進化前はかわいかったのに進化後にぜんぜんかわいくなくなっちゃうパターンはもうお腹いっぱいですぅ!!?
いや何言ってんだおれェ!!!
(というのは冗談でぇ)
ヤンデレ気質のヒロインはたとえキャラデザが最高であったとしても受け付けなくてッ、おそらくはおれの潜在意識の中の……。
って、冗談!?
(うむうむ、冗談冗談、驚かせてごめんね、マスター)
えっ、あっ、いや、うん。
…………なぁ〜んだぁ、ハハッ、じょ、冗談かぁ〜!!
(フフッ、冗談に決まってるでしょ? ちゃんとテンプレのセリフも盛り込んでたでしょ?)
……ホントかな?
ホントに大丈夫かな、かなぁ?
うちの邪剣、ヒロインだけど剣だから、刃物だから、マジでヤンデレ化しちゃったとしたら、絶対に頭部切断エンド直行なんだわ……。
(だってねマスター、気付いたの)
(カエルって卵生でしょ? それならマスターにとっての至上命題である「オッパイの有無」については要件を満たしていないはずだから、もしそうなら、このカエルは完全にマスターの恋愛対象外だな、って)
(それなら、無害だな、って)
(だから冗談、だよ?)
にっこり。
………………いや、それってつまり、最初はぜんぜん冗談のつもりじゃなかったってことだと思う、思うが、この思考は絶対に邪剣に漏らしてはならない、おれの直感がそう告げている。
この状況、なにかヤバイぞ。
ゴゴゴゴゴ……って擬音がどっかから湧いて出てきそうなくらいヤバイ。
現実の男女の関係って、こんなに緊張感溢れる徐々に奇妙なものだったんだね……。
現実コワイ。
な、なぁ〜るほど、カエルは卵生、なぁ〜るほどなぁ。
うむ。
うむ、そうだ。
そうだな、たしかに、カエルにオッパイは無い。
オスかメスかも見分けられなかったしな。
そして実際、この二足歩行のカエルに対して、おれの心は動かない。
おれの性癖はまだまだ、そこまで高尚な領域には達していない。
………だけどさぁ。
「けろぉっ……」
カエルのほうは、なんか勘違いしちゃってるみたい、かなぁ?
今さ、ほら、おれの胸元にカエルがいて、おれの右手首から邪剣触手が溢れ出そうとして、そんで左手でグッと右手首を抑え込んだでしょ?
この構図ってなんか、「ついつい抱き締めようとしちゃったけど、がんばって我慢してるところ」っぽい感じもするよね?
このカエル、それに気付いてトゥンクしちゃったみたいで……。
(マスターっ、手を離して!!!)
邪剣が触手を勢いよく引っ込めた!
はいっ!!
おれも手を離します!!
「ゆっ、ゆるしてけろっ」
カエルも慌ててパッと離れた!
ぷにっとした指先の三本指で、火照る自分の頬を覆い隠し、ふるふると首をふっている。
「ダメっ、ダメだけろっ、うちは、うちはみんなのために……」
なん、だと?
素のときは「一人称・うち」になる、だと?
詰め込んでくるものだな、この異世界というのは!
(マスター)
ひえっ。
(無いと思うけど、このあざとい一人称設定で雌蛙に心動いちゃったりとかしちゃった?)
しちゃってない!
動いちゃったりしてないです!!
なんていうかアレです、あの、無駄な設定を詰め込むだけ詰め込んで結局活かしきれてないところが悪い意味で気になってしまいますねぇ、って感じ!?
無理してキャラ立てしないと成り立たないようなキャラクターならそれって物語に出す意味ありますかぁ、って感じでございますかね!!?
(ふーん、そんな感じなの?)
そんな感じ、です。
(ふーん)
「けろけろ……」
「ご、御仁っ」
あっ、はい。
「その、あの、聞いてほしいことがあるのじゃ!」
あー、なんだろうか。
とりあえず喋ってくれるのはありがたい。
やっと話が進むのか?
聞いておこう。
素直に頷く。
「こなたは、どうしても英雄都市フパルテスに行かねばならぬのじゃ」
「フパルテスの『豪傑王』に、助力を願う。その成否に、こなたの、うちの、うちの『河津一家』の、みんなの命がかかってるんだっけろ!」
オイオイ待て待て。
話を聞く、って頷いたばっかなのに。
でもちょっと、ちょっとそれはスルーできない。
英雄都市!
(ドン!)
『豪傑王』!!
(ドン!!)
ネーミングがど直球すぎんか!!?
今日び王道バトル漫画ですら採用しなさそうなネーミングセンス、最高すぎる!!
いまどきそんな「いかにも強そうだろ?」ってネーミングされちまったら、もうそれ完全にかませ犬の気配しかしなくなっちまうぜ!
それと邪剣のアシストが仕事しすぎてるぅ!
(ここでドン!しないなどということがあろうか、いやない)
いやぁ、テンション上がったわ!
英雄都市ねぇ、ちょっとそれ行ってみたいじゃん!?
「たのむっけろ!!」
「うちといっしょに、英雄都市まで来てけんろ!!」
おっ!
行く行く!!
ちょうど行ってみたくなってたとこじゃん!
あっ、待てっ、土下座すんなよ!!
また顔を下げられるとめんどくさい!
行くから行くから!
カエルの語気から土下座しちゃいそうな気配を感じ取り、機先を制してすぐにハッキリと頷いて見せる。
「おねが……けろっ?」
頭を下げつつあったカエルの動きが、はっと止まる。
つぶらなおめめが見つめてくる。
ぽろぽろと泣きながら、けろけろと鳴いた。
「けろぉ……すまねっけろ、ありがてぇけろぉ……」
「うちのために、どうしてそこまで……」
(ねぇ、マスターさん?)
あばばばば……。
また、おれはまたやってしまったのか!?
えぇ!?
ただ普通にすぐ頷いただけじゃん!?
なんで!!?
なにがトリガーだったの!!?
(ねぇ、わざとなの?)
ちが、ちがうよぉ!
ちょろいんだもん、だってチョロインなんだもん!!
たぶんアレだ、カエル救出の選択肢が出たときに無視してないといけなかったんだ、あれでもうフラグが立っちまったんだよ。
なんかあんまり重要じゃなさそうな選択肢にルート分岐を仕込んでくるとか、そういうタイプのゲームってほんと腹立つよなぁ。
まぁこれ、現実なんですけどね!
(…………やだぁ!!)
えっ?
(カエル相手でもほかのおんなにやさしくしてたら、ヤなのぉっ!!)
(さっきのもっ、そういうことなのっ!)
(もうっ、わかってよぉ……)
頭の中で、愛剣が泣いた。
泣かせてしまった。
真っ先に思ったことは、一つ。
後から遅れてごちゃごちゃと雑多な思考が続いたが。
一番最初に思ったことは。
なぜだか、今までで一番、強烈に。
愛おしい。
そう思った。
ーーーーーーーーーーーー
「………………はっ?」
「ちょwww接続切れたwwww運命改変終了のお知らせwwwww」
「…………はぁっ?」
「うはwwww観測点消えてるやんwwwww信仰心が低下しすぎたってことかwwwwwwwおいまだ二周目やぞwwww」
「……はぁっ!?」
「いやまさかだよ、まさか、使徒なのに信心が不足するとかあります?wwwww」
「スっさん、あんたっ、のんきに草生やしてんじゃねーわよ!!」
「スっさん言うなや、いや、こんなん草やろwwww」
「どぉ考えてもスっさんの人選が悪かったんでしょーが!!! なんなのよ!? なんで邪剣なんかにガチ恋してんの!!??? 意味わかんない!!!」
「ネトラレ乙wwwwww」
「ふざっけんなっつーの!!! どぉ考えたって女神様ルート一択でしょーが!!!! はっ? 邪剣ルート? はぁっ!? しかもなに、今の流れのどこにそんなトキメキ要素があったんだっつーの!!! あんなん、くっそめんどくさいだけの地雷女でしょぉ!!? 見えてる地雷を踏み抜きにいくとか童貞こじらせすぎだから!!」
「うはww地雷女とかwwww見事な特大ブーメランwwwww」
「草生やすなっつってんでしょーが!!! スっさん!! なんであんなやつ選んだのよ!!?」
「……はぁ、落ち着きたまえよ、草でも生やさないとやっていられないだろう。あと、スっさんはやめろと云うのに」
「落ち着いてっ、られるっ、状況じゃねーっつの!!!!!」
「わかったよ、なら聞きたまえ。君にはこの言葉を送ろう。我が次元、我が国が高めた大衆芸術、文化の合流点、漫画。その漫画道の只中に開花せし徒花、柴田ヨクサル先生の快作『ハチワンダイバー』、二こ神というキャラクターの残した名ゼリフ」
「『男にとって鬼門は女』」
「つまりはこの事態も、これに尽きる。そうは思わんか?」
「……ふざけてんの、スっさん?」
「『女にとっては男だ』」
「ぐぅっ」
「ぐうの音が出たな、つまりそういうことさ、そもそも色恋で信心を稼ごうとしたのは君だ。私は君に、そのやり方はオススメしないと云ってあったはずだが、みなまで云わずとも覚えているな?」
「ふぐぅっ!」
「安心したまえ、死体蹴りをする趣味はない、みなまでは云わない。わかるな、この事態は私の人選ミスなどではない、君が色恋を仕掛けたときよりの定めと云うものよ。推して知るべしだ、運命の女神よ」
「ふんぐうぅぅっ……」
「使徒から『ひたすら残念な残念1号』と『残念カワイイの残念2号』とか渾名されてる時点でなぁ、尊称ではなく俗称だろう。仮面ライダーの『技の一号・力の二号』のパクリということで尊称判定にならなくもないが、いや、なんせ君はひたすら残念だからな」
「んぎぃっ! 死体蹴りしないって言ったじゃぁん!! ずるいぃ! さっきしたいげりしないって言ったぁ!! スっさんのばかぁ!! もうやだぁ! だからはたらきたくなかったのにぃっ!! も゛ぉぉ、もぉはだらがな゛い゛ぃ〜っ!! あ゛ぁぁ〜〜〜〜ん!」
「ハァ、この、煽り耐性の低いこと低いこと。特大ブーメランが見事に回帰してきおる。古今東西、これだから篭りがちな女神と云うものは、……いや、やめておこうか、この話題は」
「はてさて」
「信心の不足により、運命改変は……、うむ、いまだ終わらぬ、か。なるほどなぁ、均衡律の働きとはこのようなものか。弱き神とても、世界の理が均衡を保つための最低保障をしてくれる、と」
「運命改変終わらず」
「しかしながら、信仰を得られぬ神は、力を失うが道理よ」
「いや、百日もったは上出来よな。男心とて秋の空よ、器物とはいえ、女人の性を具えたものと魂を通わせ、百日間片時も離さず過ごしたのだからな。慕情が募るも仕方あるまい。そこにきて、ふっ、かはづとは云え恋の当て馬が現れたとなっては、あぁ、『悋気は女の七つ道具』とは、このことよ」
「その結果が、観測点の消失、か」
「改変者の動向をここから観測することができなくなった。これは、残念女神はともかく、私にとっては大きな損失となるなぁ。私が次元バローグに介入する利益の半分が削がれた。ふむ、これはやはり、かの邪神にはここまで読まれていた、ということであろうか。いやなかなかどうして、良き指し手よな」
「その手並み、この先も愉しみにさせてもらおうぞ、バローグの古き神よ」
「とは云え、観測点が得られねば、その先も観えぬわけだ。これは、あぁ、こればかりはもう『残念2号』に期待するほかなし、か」
「観せてもらわねば困るのだ、この先を」
「なぜ次々に、異世界が消え去っていくのかを」




