2-52、浮上しました
更新の件、もはや、わたくしめからは、何も言えませぬ。
ただ、書き溜めは、二話分、あります!!!!
ごめんなさーい!!!
『邪剣使い』攻略、100日目。
ヘビからカエルを攫って逃げたら、海に落ちた。
なんか楽しいテンションになってたから「走ってきたまま足をスイスイ動かして落っこちていくやつ」をやっちゃったんだけど、よく考えたら、邪剣アンカーを崖に射出してれば海に落ちずにすんでたはずだよね。
そしたら、こんなことになってなかったのにね。
海流にめっちゃ流されまくってる。
(安定の残念マスター)
今回ばかりは反論できませーん。
前に海に来たときって、ずっと鮫馬にしがみ付いてたから、なんとかなったんだね。
生身でこんなに流れがすごいと、なんとかならないんだね。
もうけっこう流されてるよね。
これ、やばいよね!
(マスター、あの)
ん、どうした邪剣?
(えと、マスターは、魂の蓄積量をエネルギーにして活動できるから水中でも大丈夫なんだけど、あの、簀巻きの中のカエルはひょっとしたら……)
あっ。
あぁー。
はい。
海に落ちてから、けっこう時間経っちゃったよね。
うん、はい、これ普通は溺死圏内ですね。
カエルってやっぱり海の中は、んー、ダメ、かな?
両生類っぽいけど、さすがに海水はアウトかなぁ。
いやでも異世界だし、なんとか、うん、なんとかね?
うーん。
やっぱもうダメかもね!
(とりあえず水面に出よう、マスター。簀巻きの中のカエルが駄目になったのか駄目になっていないのかは、まだ実際に観測してみるまで確定していないのだぞ。今マスターが背負っている簀巻きの中には、駄目になってしまった状態と駄目になっていない状態が重なり合ったカエルが存在しているのだぞ!)
思考実験やめーや。
マジで死んじゃってるかもだから、シャレにならないって。
あと、シュレにもならないから。
シュレディンガーの猫のお話は生きてる確率と死んでる確率がきっかり半々になるという条件だから成立するのであって、今回のカエルのこれは異世界だからまだ生きてるかもしれないじゃんっていうテキトーなそういうなんかアレな話にすぎないんですよね。
(マスター、早口、すごい。ふむ、ということは、駄目になってしまった状態と駄目になっていない状態が重なり合ったカエルは存在しない、と)
うん、そうなの。
っていうか、そもそもシュレ猫の話って、「観測するまで確定しないとか、そんな状態あるはずねーじゃん、よく考えてみ?」って言いたかったからあえて暴論にしたっていう、ただの皮肉なんじゃなかったかしら?
(つまり、もうこのカエルは手遅れだと?)
あっ、そうだったじゃん。
ふざけてる場合じゃなかったわ、とりあえずカエル解放してみないと。
海中を流されながら、簀巻きガエルを固定している邪剣の肉にそのまま剣身を追加して、縄を切っていく。
さーて、どっちかなー。
どっちの状態のカエルが入ってるかなー。
マジで死んじゃってたらシャレにならないよなー。
……いや、ほんとどうしよう。
頼むから生きててくれっ!!
おっ?
おぉっ!?
簀巻きより解き放たれしカエルは、するりとおれの身体の下に回り込み、そのままグイグイ押し上げながら、海面へと浮上していく。
良かった!!
駄目になってしまった状態のカエルなんて存在しなかったんや!
ありがとう!
ありがとう!!
全てのシュレディンガーの猫に、おめでとう。
(ありがとうとかおめでとうとか、新世紀な某アニメの伝説の謎の最終回やめてね、マスター)
いや、ごめん、つい出ちゃった。
(テレビ放送されるようなアニメで当時の信者も擁護しきれないような投げっぱなしで終わりにするなんて許されないのだぞ!)
そうだよね、わかる。
めっちゃわかる。
作品って、ちゃんと終わらせないとだよね、うん。
その後の当時の劇場版でなんとかしようとしたのかわからんけど、さらにカオスになる、とか、ゼッタイ許されないし。
(許されない)
おれの友達なんか、どうしても映画見に行きたいって言って親といっしょに見に行っちゃって、例の、最低だ、のシーンを見せられてしまう、とか。
(許されない、ゼッタイ)
でもまぁ結局、新、劇場版が作られて、何年もかかりつつなんだかんだで終わらせる、とか。
(許された)
あとは他の作品だと、週刊誌のはずなのに一年に一回でも掲載されたら奇跡な状態になっていて、あれ、前回載ったの何年前だっけ、とか。
(許されない)
だけど、「とりあえずあと四話」っていうメッセージとともになんかがんばっているらしい、とか、実はめっちゃ持病が悪化しまくっててヤバイらしい、とか。
(許された)
あとは、同じようなレベルで連載されなかった漫画家の突然の訃報と、その意志を継ぐ者たちによる連載再開のお知らせ、とか。
(さっきから許すとか許さないとか、何様のつもりだよっ、ありがとう、圧倒的にっ、ありがとうっ!!!)
他にもね、未完の小説の続きが色々出てないけど、いつか完結されると思っていたのに作者の訃報、あの世で続きが読めるかな、いや、きっとあの世に行っても続きは絶対出てないだろうな、とか。
(…………あの世でもみんなで続きを待とうよ、いつまでも、いつまでも)
あとはさ、この連載小説は未完結のまま約2年以上の間、更新されていません、今後、次話投稿されない可能性が極めて高いです、予めご了承下さい、とか!!?
(それはゼッタイに許されないっ!!!!)
「ゲッコォッ!!!」
はい、浮上しました!!
えぇ、浮上しましたとも!!!
「ゲェッコ、ゲコンッ、ゲコぉっ……」
いや、ごめん、マジごめん。
「ごっ、御仁……」
はい、うん、ふざけてごめんなさい、今になってすげぇ罪悪感だわ。
「恩に着るのじゃ」
(うわぁ)
「まっこと良き海流を掴んでくれた、ここまで逃げれば大丈夫じゃろう」
(うわぁ、マスター、このカエル、たぶん超いいやつぅ……)
……ねっ、おれもそんな気するぅ。
「あとはこの『下戸の酔客』に御任せあれい、ささっ、しっかと掴まるのじゃ!」
あぁ、おれがアホなミスで海に落っこちたとか、微塵も思ってないよ、このカエル。
逃げるためにあえて海に飛び込んだ的な感じに思ってるよ。
(罪悪感ん……)
ごめんな、カエルごめん、『邪剣使い』は喋れないからぜんぜん伝わらないと思うけど。
ほんとごめん。
よし、とりあえず掴まれって言われたし、あとはお任せしちゃってもいいのかな?
頼むわ、えーと、さっきなんか名乗ってた?
(すまん、押し寄せる罪悪感ん、に押し流されて聞き流しちゃった)
うん、おれも。
えーと、ゲコのなんとか、うん、ゲコゲコのカエルさん、だな!
とりあえずこのゲコさんに掴まっとくか。
よいしょっと。
「けろぉっ!? んんっ! 乗っかられ、けろぉ、そこに、乗っからないでけろぉ」
おぉっとー?
(おっと、マスターさぁん?)
いや。
いやいやいや!
いや、ない、ないないッ!!
そういうのじゃない!!!
そういうつもりじゃなかったッ!!!!
(そういうのじゃない? そういうつもりじゃない? カエルとは思えない小鳥のさえずりのような愛らしい美声で鳴かせておいて?)
カエルとは思えない小鳥のような美声を実際カジカガエルという種類のカエルは出しますッ!!!
いや何言ってんだおれェ!!
いやいや、ほら、あの、ただ掴まっただけだったじゃん!
別に乗っかりてぇわけじゃなかったじゃん!?
あとマジでカエルとか、あの、両生類はちょっと、ムリじゃけん!!
(でもマスターって、邪剣はイケるクチなわけなので、いわんや両生類をや?)
古典文法駆使するのやめーや。
さっきのシュレ猫の思考実験もそうだけど、邪剣がおれの魂から得た知識を活用してる語り口、やはり古きヲタクの香りが強すぎる。
おれの魂から得た知識でそうなっちゃってるってとこが、うん、やっぱりちょっと、いたたまれない気分になってくる。
なんというか、連載開始から時間が経ち過ぎてて時代遅れのネットミームが散見されるネット小説を読まされてるときのような小っ恥ずかしさをものすごく感じます。
「けろっ、こんなぁ、こんなところで乗っからないでけろぉ……こんな大海原で、海の生き物たちみんなに見られてたら、だめぇっ、無防備すぎて卵っ、ねらわれちゃうっ、はぁん、みんな見ないでぇっ、乗っかられてるとこ見ないでけろぉっ!」
ぐうぅっ!!!
エロいセリフ言ってる感じのテンションなのに種族感出過ぎちゃっててやっぱつれぇわ!!
せっかくの待ちに待ったえちえちハプニングかと思いきや見た目完全にカエルなの、つれぇわッ!!!
っていうかこのゲコさん、メスだったのかよ!!
女の子大好きなおれだけどさすがに見分けつかんわ!!!
(だめかー、両生類は無理かー…………くふふふ、それなのに邪剣はイケちゃうなんて、もうっ、マスターってば、もうっ!)
あと邪剣はイケちゃうとかイケちゃわないとか、生々しい表現はやめてってば!!
っていうかさ、っていうかさ!!
マジでこのカエルがメスだったのはけっこうショック!!
(赤1マナ2点ダメージ)
そうそうそれそれ、ショック deals 2 damage to target creature or playerってオイ!!
某アメリカ産カードゲームにおける火力呪文の代名詞的な意味でのショックじゃねーから!!
(マスター、昨今のテキストはPWも対象にとれることを考慮して、ショック deals 2 damage to any targetだぞ?)
うるせー、わが青春のショックはプレインズウォーカーなんぞに打ち込まないんだよ。
一ターン目にリチュアルから着地した二ゲイターにぶちこんで相手にショックを与えてこそのショックなんだよ。
やつらは(ショックをぶちこまれて一ターン目に投了して)終わらせるために存在しているんだ。
(そのニゲイターのフレーバーテキスト、やはり絶妙、ということか)
そう、あのカードゲームの最大の魅力はフレーバーテキストにある。
いやだからそうじゃなくて!!
こんな小ネタを引きずってる場合じゃなくて!
せっかくの異世界で、運命改変で、それで喋るカエルと出会ったんだよ!?
あのスーファミの超名作RPGの、あの時空を超える大冒険の、あの当時まだ合併していなかった二大メーカーによるスーパーコラボレーションの、あの熱すぎるカエルのキャラクターを期待してたに決まってんじゃん!!!
それがこんな、ちょっと乗っかられただけでこんなことになっちゃうとか、残念すぎるでしょ!?
(うむ、それに関しては、まぁ、激しく同意)
古臭いネットミームぅ……。
ハァ、とりあえずカエルから離れるぅ。
「けろぉっ、あぁ、重みがぁ、乗っかりの重みぃ、足りなくなっちゃったけろぉ……」
カエルとは思えない小鳥のような美声で無駄に切なげなボイスぅ!
ゲテモノハーレムはノーセンキュぅー……。
はぁ。
ほんとに、本当にこういうのいらないから。
普通でいいから。
もうさ、せっかく浮上したんだからさ。
もっとすんなり、進ませてくれてもよかったんじゃない?
(ちゃんとすんなり残念だったね、マスター)




