2-51、ここまでテンプレ
ブクマ、コメント、評価ポイント、本当にありがとうございます。
なによりも、更新が遅すぎるのにいつもお読みいただいているのが、誠にありがたいことでございます!
今年もよろしくお願い致します!
『邪剣使い』攻略、100日目。
記念すべき100日目。
それなのに。
あー。
どうしてこうなった。
あぁー。
またか、またなのか。
またこのパターンなのか。
うん、わかる、わかるよ?
たしかにほら、様式美ってあるよね?
パターン化された、テンプレート化されたストーリー展開のおもしろさ、ってあるよね?
でもね、おれはそういうの要らないから、望んでないから。
ぜんぜんおもしろくない、現実の異世界だとおもしろくもなんともないから。
なんだってこの異世界は、ちょっと気を抜いただけで、こんな展開が牙を剥いてくるわけ?
どうしてそんな展開にも牙を剥かれたり、囲まれながら牙を剥かれたりしてるわけ?
牙を剥かれてシャーッて威嚇されて、刃物まで向けられちゃってるのはなぜどうしてなんだぜ?
「シャーッ!!」
そう、こんな感じで大絶賛威嚇されまくり中!
なんでこんな事態になっていたかといえば、おれがついさっきまで邪剣の神域にいたから。
邪剣の神域におれの意識がいっている間、この『邪剣使い』の肉体は無防備でぶっ倒れてる状態になる。
それで、そう、ついさっき、邪剣の神域で色々あって、あんなことこんなこといっぱい色々あってから、肉体のほうに意識が戻ってきた。
(くふふふふふふ………色々……色々あったね)
あっ、うん、そっ、そうだね。
邪剣の肉がとろけすぎてドゥルンドゥルンになりながら絡みついてくる。
(くふふふへへ……色々……くふっ……ぐふふぇふぇへぇ……マスターと色々……ぐへへえぇ……あんなことこんなこと……うきゃーっ!!)
なんで邪剣すぐこわれてしまうん?
(だってマスター、だってだって、だってだってなんだもん!!)
パクリはダメゼッタイ。
(だってマスターと色々あったんだもん!!!!)
えーーと、うん、そう、そうなんですけど、気持ちはわかるんですけど。
なんだろう、相手に変なテンションで来られると、なんだかこちらは落ち着いてしまうときってあるよね。
「シャシャーッ!!」
あっ、威嚇ずっと無視しててごめんね?
そう、この肉体のほうに意識が戻ってきて立ち上がってから、ずっと牙を剥かれて刃を向けられているのだ。
現在地は水精領域の、海沿いの崖の上、すぐ近くに森がある。
(あっ、えと、すまぬマスター、つい変なテンションになってしまった。だってほら、だってだってだって、だってだってなんだもん)
いやいや大丈夫ですよ。
おれも進めない音頭とかやってたし、お互い様です。
だから誤作動起こしてても大丈夫ですよー。
「シャーッ!!」
あーはいはい威嚇でしたねー。
たぶん、向こうもこっちを見つけたばっかりとかで、こっちもガバッと起き上がったら目の前に変なやつらがいたから、お互いにびっくりしちゃった感じだ。
びっくりはしたけど、こいつらはあんまり強くなさそうだから問題無い。
誤作動を起こし続けているうちの邪剣のほうがよっぽど問題である。
さて、さっきからシャーシャー言ってる周りのやつらを観察する。
だいたいみんな剣一本と鎧だけ。
武器も防具も金属製だけど、なんか見るからに安そうな、雑な作り。
あとたぶん、鎧のサイズ合ってない、体格に比べて小さすぎる。
そんで、頭がヘビ。
「シャーッ!!!」
そう、こんな感じでヘビ頭が威嚇してくる。
そして頭だけじゃなくて、カラダもなんかトカゲっぽい感じだ。
二足歩行のトカゲ。
つまり、リザードマン。
と言いたいところだけど、んー、なんていうか、頭がヘビなんだよなぁ……。
肩から上、首がけっこう長い、いや、かなり長い。
だからトカゲっていうか、二足歩行のヘビ、って感じだ。
足があるヘビとか、完全に蛇足。
絶対その長い首支えるのツライよね?
めっちゃ肩凝りそう。
この感想も完全に蛇足。
うん、そういえば見覚えあるわ。
近くで見るの初めてだけど、『邪剣使い』の3日目から12日目までのスーパーダッシュ移動の際中に見かけた。
水精領域の通過中にチラッと見た、蛇人って感じのやつらだ。
今日、この場に最初にいたのは、三人だった……いや三匹?
………あれ、ヘビって、三尾、だっけ?
いつの間にかワラワラ増えていて、今はざっと、二十……人、匹、尾、体?
んー、知性がありそうなら一人二人で数えちゃうんだが。
あぁ、でも剣と鎧使ってるし、いちおう知性はあるってことか?
でも言葉が通じなさそうだしねー。
会話できるかどうかがポイントよなぁ。
いや、どっちにしろ『邪剣使い』は喋れないから会話はできないんですけど!
完全に蛇足。
「シャシャーッ!!」
ほら、こんな牙剥き出しで威嚇してくるし。
おっ、でももう威嚇だけじゃなくなるか、攻撃モーションに移ったね。
一撃目、普通に剣。
はい、後退してかわします。
次は?
おぉー、おもしろーい。
二撃目、首伸ばして噛みつき。
剣より間合い遠いのに、剣振るより速いじゃん。
一撃目の剣を受けたり避けたりしたところを、この二撃目の噛みつきで仕留める、って感じだろうな。
シンプルな二段構えだけど、けっこう強そうだね。
はい、相手の右手側に避けました。
こうやって避けられちゃうと、長い首が隙だらけじゃない?
あぁ、でもまだ攻撃続きそうだ。
三撃目、後ろ回しシッポ攻撃。
威力あるのか、これ?
いや、そういえば、ワニとかはけっこうシッポ攻撃強いんだっけか?
はい、とりあえずジャンプでかわす。
おっ、まだくる、やるじゃん。
四撃目、首がグネッと後ろまで伸びてきて噛みつき。
そっか、真後ろまで首の可動域があるわけだね。
あと、顔の形と目が付いてる位置の関係で、背後も見えてるわけだ。
いいなー、うらやまー、おれも『無明の万眼』のときは背後とか見えてたのになー。
さーて、こっちは跳んじゃったから回避はできないね。
お見事です。
はい、噛まれないように左手でヘビ人の首を捕まえた。
着地して手を離し、軽く距離をとる。
攻撃モーション確認終了。
さて、どうするか。
背後が崖で、すぐ海なんだよな。
逃げられないわけじゃないけど、少しめんどうだ。
「いやぁ〜美事、まっこと御美事なのじゃ!!」
あっ、変なのいた。
毎度恒例、「今週の変なの」が登場しちゃったね!
「そこな御仁、まっこと御美事なその業前を見込んで、是非にもご助力願いたいのじゃ!!」
簀巻きにされて地面に転がされてる大きなカエルが喋っている。
はい、今週の変なのは、喋る大ガエル君でしたー。
どうもありがとー。
また来週ー。
「うるシャーッ!!」
すぐ隣にいたヘビ頭が、そう言ってカエルを踏みつけた。
「ゲコォッ!!」
おぉっ、このヘビだけ頭の形がコブラっぽい感じになってる。
「いまさら見苦シャーでスネ、ご自分の立場をわかっていないんでスネ?」
なんだ、ヘビ頭も実は喋れるんじゃん。
じゃあアレか、結局、数え方は一人二人にするか。
あと「今週の変なの」はヘビとカエルのツートップだったか。
「御仁、頼むのじゃ、いかようにも御礼は差し上げる、助けてほし…ゲコォッ!!」
「黙らっシャーいッ!!!」
蛙人って感じのやつがまた喋って、そしてまた蛇人に蹴られた。
はっ?
いやちょっと待てよ、そういえば『邪剣使い』は喋れないんですけど?
『邪剣使い』は喋れないのに、それなのに、なんでこんな変なヘビとカエルが喋れちゃってるわけ?
解せぬ。
「ところで旅のお方、いきなり襲いかかってすいませんでスネ、どうもうちの若いのは気が短いんでスネ、おい、てめぇら武器おろシャーッ!」
周りの蛇人たちが、構えをといて少しずつ後ろにさがった。
あー、そういえば、蛙人って感じのやつも、3日目から12日目のときに見かけたな。
蛇人って感じのやつらと、蛙人って感じのやつらと、あとはたしか、蟹人って感じのやつらがいたっけな。
あれ?
ひょっとして、「今週の変なの」、このヘビとカエルだけじゃなくて、カニまで出てきたりしないよね……?
(マスターがまた律儀にフラグ建築にいそしむ、ここまでテンプレ)
邪剣の誤作動復旧からのこの残念なコメント、それもまたテンプレな。
「さて旦那どうでスネ、こちらの無作法のお詫びに、活きのいいカエル料理でもご馳走したいんでスネ、一族あげて歓迎させて頂きまスネ」
えっ、活きのいいカエル料理って。
いや、絶対それ、その喋るカエル使う気じゃん。
無理無理無理、マジでそれはムリ。
人型で知性があって、しかもカエルとか、カニバリズムかつゲテモノ食な感じじゃん。
初心者にはハードル高すぎるよ。
「ゲコォ……無念なのじゃ」
それにしても、ふーむ。
どうやらこれは、なかなかテンプレな良いイベントが発生したようだ。
うまく利用すれば、この「すっ・すまっ・ない!!」な現状を打開できるかもしれないな。
(うむ、上手に利用するのだマスター、一片の血肉も余さず、骨の髄まで利用し尽くすのだ)
そういう言い方だとカエル食べちゃう方向性に聞こえてくるからやめような。
ゲテモノカーニバルはノーセンキュー。
(うむ、では、テンプレ救助イベントを利用して、一生ものの恩を着せて身も心も捧げさせ、生涯かけて身体で奉仕させるのだ)
言い方、ねぇ言い方。
カエルに身体でご奉仕される絵面とか誰も得しないから。
そんな高級な性癖には達してない。
ゲテモノハーレムもノーセンキュー。
(えっと、でも、ほら、マスターは邪剣ならいけちゃうわけだし……)
あぁ、うん、じゃなくて、いや、あの、ほら、いけちゃうとか、いけちゃわないとか、そういう話も今は、あぁもうっ、ついさっきだから生々しすぎる!!!!
おれの心の性なるダムが決壊してしまうぞッ!!!
アアァァァーーーーーッ!!!
Cぱい素晴らしすぎたよおおぉぉぉーーーッ!!!!
(そうか、なるほど、この感じ、うむ、たしかに相手が変なテンションになると困る)
フゥーーー、いかんいかん、煩悩暴走モードに突入するところだった。
(なっ、マスターが自力でっ、こんなに早く立ち直った、だと!?)
ふっ、もうおれは、以前までのおれとは違うのだよ。
この手に掴み取った栄光が、こびりついた業を洗い落とすスポンジとなったのだ。
昔のおれは、既に死んだ。
始原にして終焉なるCぱいの浅く深き海に埋もれ、理想を抱いて溺死したのだ。
(最後に某弓兵の英霊の名ゼリフのパクリを付け足すのはダメゼッタイだけど、たしかに理想の擬人化を抱いたわけだからちょっと上手いこと言ってるのなぜか悔しい)
さて、「カエルを助ける」、「邪剣のCぱいにもう一回埋もれる」、両方やらなくっちゃあならないところが、幹部のツライところだな。
覚悟はいいか?
おれはできてる。
(それは別に両方やる必要はない、というか、またそうやって某奇妙な冒険の第五部のパクリをそんな残念な感じでやるのも、ダメゼッタイなのだぞ。うむ、そしてこのコメントもまたテンプレ)
高まってくるね。
うっし、じゃあさっさとテンプレ救出イベントを消化して恩を着せて、便利な味方を手に入れよう!
(はーい)
今日はなんだかテンプレ祭りだ!!
コブラ頭の蛇人の横に最速で踏み込んで、簀巻きにされていたカエルに邪剣触手をさらに巻き付け、肩に担ぎ上げてスーパーダッシュ移動。
これを瞬時にやってのけた。
不本意ながら、人攫いはもう経験済みだから、手慣れたものです。
あのバルゴンディアの王都で、ちっちゃな兄妹をこうやって運び出したからね。
いや、間違えた、あれは攫ったんじゃなかった。
思わず自分で間違えちゃうくらい、人攫いムーブが鮮やかだったよね。
「シャッ、シャシャーッ!!!」
コブラ頭が慌てて声を上げるが、もう遅い。
「シャーッ!!」
「シャシャーッ!!!」
「シャーッ、シャーッ!!」
「すっ、すまっ、すまっ、すまぬっ、ゆっ、揺れっ、速っ、ゲロゲロゲロぉーーーー」
なんだか、肩に担いだカエルがゲロゲロ鳴いてるなぁ、喜んでるんだろうなぁ。
(ゲロ、げろ、あっ……察し)
そのゲロゲロ声に混じって聞こえていた背後のシャーシャー声が、急速に遠ざかっていく。
悪いけど、三倍とかくらい速いから追いつけないよ、シャーだけに。
蛇とは違うのだよ、蛇とは。
(完全に蛇足)
うん、ナイスサポートコメントありがとう。
なんか、うちの邪剣って、たまにアレみたいな感じするよね、あの、某アメコミヒーローの鉄の男のサポートをするAIみたいな感じ。
(ホントかマスター!?)
(つまり、我も念願の人型ボディを手に入れられる可能性が微レ存!!?)
いや、あの、そっちは男の声のほうだから、「金曜日」のほうの女性型AIの人なんだよなぁ。
あれ、AIの人ってなんだよ、自分で言っといてなんだけど意味わかんないわ。
(ぐぬぬ……ワンチャン無かった………)
うーむ、邪剣さんの地球知識汚染度が上がりまくってるよねぇ。
(……だって、マスターのモノに、汚されちゃったんだよ?)
ッッ!!?!?!!!??
いやそれおれの魂なッ!!?
そっ、そういう言い方はよくない!!!
ついさっきすぎてタイムリーすぎて生々しすぎてヤバイから本当にそういうコメントやめてね!!!?
いや、ナマッ、生々しいっていうかッ、精神体同士だから生身じゃないからナマじゃないっていうかッ!!?!?
(ふーん、また、そうやって言い逃れするんだ?)
あっ、うぐぅっ、いやっ、でもっ、「まだ」だったじゃん!!!
「OPI」から先は「まだ」だったじゃんッッ!!!!??
(……でも、くふふふふ、「OPI」までは「もう」、だよね?)
アァーーーーーッ!!!!
声がっ、声がッ!!!
CVが絶妙にヤバイィーーーーーッ!!!
「げろろろ………ゲコォッ!!?」
なんでどうしてそんなにおれにクリティカルなキャラクターボイスしてるんですッ!!?
耳元どころか脳内で囁かれるとかアァーーーーッ!!!
(くふふふふ………ふっ?)
「ゲコォッ、ちょっ、崖ッ!!!!」
ァーーーーーッ………あっ?
足下に、地面が、無い。
崖ェ……。
あぁーーーーっ!!!
はい、そんな感じで、海に落ちました。
落ちる前に、テンプレの「走ってきたまま足をスイスイ動かして落っこちていく」やつをやってやったぜ!
(そしてマスターの残念コメント、ここまでテンプレ)
やっぱりこのノリ、AIの人のフ◯イデーっぽいよなぁ。
(更なる残念コメントを検知、定型応答、パクリはダメゼッタイ)
(それともう一点)
まだあるの?
なんなのこの子?
(我はAIでも人でもありません、マスター)
うん、知ってる。
(剣です)
剣でした。
ここまでテンプレ。




