表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
運命改変アクションRPGを全クリしたんだが  作者: 子泣地頭
2キャラ目、まだ攻略中
77/88

2-45、黒くて不審な感じの

※『貴石奇譚』掲載中の貴様二太郎様に、ヒロインズの素晴らしい画像を描いて頂きました!

あらすじに挿絵として使用させて頂いたので、是非ご覧ください。

目次の「ネタバレあらすじ」の中にございます。






『邪剣使い』攻略、64日目。


進路を東寄りにとりつつ、南下している。


この異世界の大陸がどうなっているのかは、横に寝かせた六角形をイメージすればいい。

もちろん、正確に六角形になっているわけではなくて、本来の形はわからない。

単なるイメージだ。

それぞれの角に近付くほど危険な土地になり、そこから離れれば、安全な平地が広がっている。


現在地は、六角形の左中央の角から少し離れたところなので、左、つまり西の方角に、危険な土地がある。


だから西の逆、進路を東寄りにとったほうが、人間の暮らしている土地が多いだろう、と目論んだのだ。


実際にそのとおりで、大小様々な規模の集落を発見できた。

南下しながら、積極的に小さな集落に立ち寄っている。

大きめの町に近付いてみたりもしたけど、けっこう人が多くて見つかりそうだったからやめといた。

っていうか、何回か大きい町で目撃されて、ようやく学びました。

ごめんウソ、学んでない、今度こそイケる、って感じでつい最近もやらかしたわ。

納得の『黒い不審人物』だわ。

事案発生。

でも、うん、その代わり、小さな村での盗み聞き作戦は、意外なほどの成果が得られている。

ひょっとしたら、今までおれがとった行動の中で、一番成功してるかもしれんね!



まず、『黒衣の邪神』関連の話題。


けっこうビックリするほど、この世界の情報伝達が速かった。


『黒衣の邪神』はどうやら徐々に南に進んでいるらしい、とかバレている。

完全に、おれが目撃されまくったせい。

たぶんもう、「邪神が王都を消した」って話題は、かなり広範囲に伝わってるっぽい。

それで、「邪神の動向」が、現代日本の夏の台風情報並に警戒されてて、話題になってるんだと思う。


あと、「邪神がバルゴンディアの王都を消した」って情報については、噂が追加されている。

白銀の装具、たぶん『暴風花』を目撃した人の話が加わったらしくて、主神「均衡を司る女神」の使徒『天秤』も王都を襲撃していた、という噂が流れている。

つまり、「邪神と主神が手を組んで、バルゴンディア王族を消した」、という噂が流れつつあるということだ。


実際には、王都を消したのは『奴』なわけだけど、もちろんこの世界の人々に、それを知る術はない。



次に、そのバルゴンディア王国の話題。


国の崩壊は、もう決定的になったようだ。


アレンディアという町にはバルゴンディア軍の一部が集結していて、多くの王都難民を保護しているらしい。

そして、軍や難民、近隣の町村の代表者たちが集まって、臨時政府を作ろうとしたそうだ。

その臨時政府立ち上げのために、国中の有力者たちに呼びかけたらしいんだけど、なんか応じる人間がほとんどいなかったって話だった。


バルゴンディア領の西部では、マルクレイタとかいう都市国家に頼ろうとしているらしい。

北の地域は、「旧臣国」、とやらに帰属する、あるいは侵攻されている、らしい。

このあたりはかなり曖昧だ。

それと、いまいちわからないニュアンスの言葉が出てきたりするのが、盗み聞きのつらいところだ。

あとは、何人かの将軍や、地方太守やらが、各地で独立を画策していそうだという。

もともと王都にいなくて、生き残っている王族もわずかにいるらしい。

それを擁立しようとしてる人たちもいる感じだ。

さすがに、真偽不明の情報がごちゃごちゃに飛び交っている。


臨時政府の樹立に失敗したのは、やっぱり王族の不在が原因だろうね。

王の権威がなければ、一部地域からの呼びかけなんて、誰も聞く耳持たない。

そりゃ当然だ。

せっかく王様が消えてなくなったんだから、誰だって自分が一番になりたいに決まってる。


アレンディアって町が臨時政府を作ろうとしたのは、たぶん、抱えてる難民が原因だな。

前に立ち寄った村でも、難民の受け入れにだいぶ難色を示していた。

つまり、キャパオーバーなんだろう。

自分たちの地域だけじゃいっぱいいっぱいだから、臨時政府を作って、難民の受け入れを各地域で分配したかったんじゃないかな。

単にバルゴンディア王国っていう国に対する忠誠心じゃなくて、そんな打算があるって考えたほうが自然だ。


だからまだ、臨時政府の樹立を諦めていないんだろう。



それが、「バルゴンディア第五王子」に関する話題につながってくる。


バルゴンディア領の各勢力が擁立を狙っている最有力候補の王族が、なんと、おれの目的地のイルイール王国にいるらしいのだ。

しかし、そこからが少し妙な話。

第五王子なら、王位を継ぐのに申し分の無い条件を備えている。

本来なら、「バルゴンディア王都消滅」の情報を耳にしたら、すぐにでも帰国して、即位しようとするところだろう。


それなのに、その王子とやらは、頑なに帰国を拒否しているらしい。

理由はイマイチわからないが、ただ、その第五王子は、ずいぶん長い間、バルゴンディア王国に寄りつかず、諸国を外遊しているらしい。

次期王位を巡ってのあれこれを嫌ってのことだと、以前から噂されていたようだ。


臨時政府を作ろうとしてるアレンディアでも、その第五王子を迎え入れようと色々手を尽くしている、って話だ。



それでその、肝心の目的地、イルイール王国。


やっぱり、行き方がわからないんだよなぁ……。

噂として話題には出てくるんだが、どこにあるのかは、ぜんぜん誰も喋っていない。

でもたしかに、考えてみれば、それも道理だ。

フィクションじゃないんだから、いちいち説明ゼリフで会話してくれるはずがないのだ。


邪神のこととか、バルゴンディア王国のこととか、そういう新情報については詳しく細かく話題にしたりもする。

だけど、今までこの世界の住人が知っていた「イルイール王国がどこにあるのか」なんて、わざわざ口に出して細かく喋る人はいないのだ。

「沖縄県が台風の被害を受けている」という話はしていても、「本土からかなり離れた南西の海上に位置する諸島である沖縄県が台風の被害を受けている」という言い方をする人間は、存在しないだろう。


せいぜい、南の小国、とか、南の「旧臣国」イルイール、くらいの言い方が関の山だった。

この「旧臣国」っての、たまに会話に出てきたりするんだよね。

でもやっぱり誰も解説してくれない。

なんだろう、旧の臣の国。

社会主義国、とかの政治体制のことだろうか。

旧の臣だから、古い統率制度の国、って感じか?

とりあえず、「南の」って聞こえてるうちは、南に進んでていいのかな、と思ってる。

現在地より北にあったら「北の」とか、東にあったら「東の」って言うと思うんだ。



それで、その小さなイルイール王国よりも、もっと話題になっている国がある。


むしろ、イルイールの話になると、すぐにその国の話題に変わっちゃうんだよね。


大国、クシュルパーニャ、という国だ。


この異世界において、「大国」といえば、だいたいこのクシュルパーニャって国を指すらしい。

その大国は、どうも侵略国家のようだ。

この国の噂も色々聞いた。


長年争っている帝国とやらに講和を持ちかけて、その間に、近隣の小国にやたらちょっかい出し始めたらしい。

なんか、「均衡回復運動」だとかなんとか、そんなこと言ってたんだけどさ。

それ、アレだよね?

そのネーミング、世界史の「領土回復運動」のパクリかなにかだよね?

完全にレコンキスタじゃん。

まぁ、「レ」が付かないただの「コンキスタ」なのかもしれないけど。

教会がどうのとか話してたし、宗教がらみっぽいからマジで「熱狂的領土再征服」なイメージなんだよね。

絶対関わりたくない。


(あっ、マスターがまたフラグ建てた気配……)


やめてすかさず反応しないで。


それで、なんか、その、クシュルパーニャって国がちょっかいかけてる国の一つが、イルイール王国なんだよね。

おれの目的地、その大国に侵略されつつあるんだよね。


(ほら、やっぱりフラ…)


言わないでお願い言わないで。

なんでこんなに残念かなぁ……。


(いや、マスター、違う、逆に考えるのだ)


えっ。

逆に考えるんだ?

残念でもいいさ、と、そう考えるんだ?

それ名言じゃん。

某奇妙な冒険の第一部の名言じゃん。

そうか、オーケーわかった、そういうことか、残念でもいいさ!


(違うよ残念マスター……)


なんでだよ!

だってジョ◯ョのパクリでしょ?

その名言なら絶対こういう結論になるじゃん!


(マスター、そうじゃなくて、逆に、なぜイルイールという国が目的地だったのかを、考えるのだぞ)


………あぁ、そっちね。

いや、うん、ほら、当然知ってた、気付いてたよ?

気付いてたけど、ほら、ね?

ネタ振りに乗ってあげたというか、ね?

ねっ?

そういうアレだからね?


(…………にっこり)


ぐぅっ!!!

慈愛の微笑みッ!!!!

つうこんのいちげきッ!!!


くっ、くそう、なんだって思考をまとめる作業中にこんな大ダメージを受けねばならんのだ……。

いや、今のはだって、しーちゃんが急にまともなこと言い出すとは思わなかったから……。

おれは大丈夫、おれは残念じゃない、おれはまだやれるよ。


(………にっこり)


ごふぅッ!!?

かっ……ハァ…ハァ……おれはまだ残念じゃない……まだやれる、そうでしょ、近藤さん、トシさん。


(急に沖田くんゴッコ始めるあたり、だいぶ末期だと思うのだぞ!)


幕末だけに、末期な!!


(誰うまー!!)


……………。


(……………。)


うん、おれがイルイール王国に向かってる理由は、おれとは別の『運命改変者』が、そこに向かった可能性が高いからだ。

『婦人憎まれ虫』とかいう怪しい男の情報。

「運命神の使徒」を名乗る集団が、イルイール王国に向かったらしい。

おれはその中に『運命改変者』がいると仮定して、イルイール王国に向かうことにした。


つまり。


大国クシュルパーニャと、小国イルイールの戦い。


その『運命』を、もう一人の改変者が『改変』しようとしている、ってことか。


(たぶん、そういうことになるんじゃないかと思うのだ)


なるほどねぇ。

『運命改変者』が動く以上は、『改変』するべき出来事が起こる、って考えてたほうがいいわけだな。



ふーむ、珍しく、キリがいいな。



(そうだなマスター、こういう場面になるときは、マスターはたいてい思考を中断させられることが多かったからな)



こういう場面、ね。



どういう場面か、って?



それは、こういう場面さ。



飛来した多数の矢を最小限の動きでかわす。

ほぼ全方位。

準備がよろしい。

万全な待ち伏せってわけか。

その割に次の段取りが悪いな。

二の矢が来ないし、近距離の不意打ちもなし。


なんだ、多方面から歩いてくる。


おいおい、せっかくの奇襲なのに、出てきちゃうのかよ。


黒ずくめの刺客たちが、距離を置いてこちらを取り囲む。


いっせいに、声があがった。



「「「我ら邪なるしもべ、謝意を示し、畏敬を捧げ、信仰を誓います」」」


「「「悪行の限りを尽くし、悪徳を積み上げて、御許に罷り越しまする」」」


「「「大いなる邪神様の御国を、再び地上に来たらせたまわんことを」」」



これか。

こいつらか。

『邪神教団』だ。

もう見た目でわかったけどな。


さて、これはどういう待遇だ?


『黒衣の邪神』として崇めに来たか。

『刈り取る闇』として殺しに来たか。


この後の反応は?


後方の二人が接近。

斬りかかってきた黒い刃を断ち切る。

殺し、か。

邪剣、今のも交戦のうちに入るのか?


(交戦だ)


なら、少なくとも今の二人にはトドメを刺さないと、強くなられてしまうわけだな。


グッと、地を蹴った。


包囲を抜け、走り去った。


(良いのか、マスター)


どうもな、邪剣、おまえに「マスターは人を殺せる」って言われてから、どうも、人を殺したくなくなってきた。


(すまぬ、マスター、我が余計なことを言ったから……)


いや、いいんだ。

どうやら、おれの中にも迷いがあったらしい。

ほんとはさ、ラノベとかで、人殺しに葛藤する主人公って、好きじゃなかったんだ。

でも、実際に殺すか否か、って場面になると、やっぱりそう簡単にはいかないんだな。

まぁただの気分だから、切羽詰まったら深く考えないで殺るとは思うんだ。

今のは、こっちに余裕があったからこその迷いなんだろうな。


殺さずにすむうちは、別にいいかな、と思う。

中途半端な偽善だけどな。

それに傲慢だ。


おれがラノベの主人公なら、まず読者には好かれないね!

まぁ現実なんですけど!


(マスター、我は、その、マスターのこと…)


邪剣がもにょもにょ言い出した。

やめろ。

さすがにそんな恥ずかしがってたら何を言いたいのか察しちゃう。

今までそこまで恥ずかしがってたっけ?

なんだよ、マジでやめろよ。

こっちまでめちゃくちゃ恥ずかしいじゃねーか。

なにこれなにこれ。

むずむずする。

邪剣が身体を侵食してくる。

それ以上に、なにかわからないけどむずむずしてくる。



そしてまた、襲われた。



黒い刃、黒ずくめの集団。


まだ、包囲網の中だったらしい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ