表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
運命改変アクションRPGを全クリしたんだが  作者: 子泣地頭
2キャラ目、まだ攻略中
75/88

2-43、新たな旅立ち

実は目次の最初にある「あらすじ、資料置き場」の辺りを更新してあります。

『改変の刻時盤 一周目』を追加しました。

よろしければ、ご覧ください。








『邪神教団』の男をぶん殴った。


聞きたくもないクソみたいなセリフを吐き続ける口を閉じさせるために。


反射的に左拳でぶん殴っていた。


手加減は、なんとか間に合った。


顎が砕ける不快な感触を残して、数瞬前まで整った顔立ちだった中性的な男がぶっ飛んでいった。



黒い刃が四つ、左拳を振り抜いた直後のおれに迫る。

小さな人影が、少しの動揺も見せずに瞬時におれを取り囲んでいる。

一番近くの剣閃が、最も鋭く首元めがけて迫っていた。

視界にその刃を放った少女が映る。

幼い顔には、なにもない。


見切り、損なった。


黒鉄の剣が首筋をかすめた。

あとの三つの刃をすり抜けて躱す。

子供たちは、間髪入れずに二の太刀を振るってくる。


邪剣を振るう。


黒鉄の刃、その剣身を邪剣で断ち切った。

まず一本。

二本、三本。

四本目の刃を左拳で叩き折る。


四人全員の武器を一瞬で破壊した。


だが、黒い子供たちは戦闘をやめようとしない。


思わず、顔を歪めて歯を噛み締めた。


おれは逃げ出した。


闇の中を、闇雲に。


ただその場から離れることだけを目的として、全力で走る。


おれの後を追い始めた気配はしたが、すぐに引き離した。


戦えない。

おれには、あんな子供相手に戦うことなどできない。

こんな現実相手に、立ち向かうことなどできやしない。

クソ野郎。

今日は、なんて最悪な一日なんだ。

あまりに無力だ。


(マスター、あの男のもとに引き返して、トドメを、刺しておくべきだ)


足は止めない。

走り続けている。

そのままで愛剣に謝った。


すまない、邪剣。

イヤなことを言わせたな。

おれは絶対にその発言に従わない、それをわかってて、それでもあえて、その忠告をくれた。

そうだろう?


(……うむ、そのとおりだ)


(この世界では、強大な敵に挑むほど、戦闘するほど、力を得ることができる)


(マスターがぶっ飛ばしたあの男、あの有様でも、強大な敵と戦った、という結果になってしまうのだ)


(あの男の力量は、マスターの足元にも及ばない。だが、そんな力量でマスターの一撃を受け、そのうえで生き延びてしまったら、必ず強くなる)


(強くなられては困る相手なら、この世界では、必ずトドメを刺さなければならないのだ)


なるほど。

そういう意味だったか。

てっきり、邪神の教えを騙ってクソみたいなことをしてるのが気に入らないのかと。


(我は、自分の感情よりもマスターのことを優先する)


駄目だ。

邪剣、それは駄目だ。

それはぜんぜん嬉しくない。

おれのことなんて優先するな。

それだけじゃない。

いいか、邪剣、どっちも、なにも、優先なんてするな。

感情も、意志も、理屈も、優先なんかしないで、なんだってごちゃ混ぜのまんま並列にしておけ。

そんで、あとはてきとうだ。

自然と湧き上がる思考を否定せず、自由に掴み取れ。

おまえは、そうやって生きていけよ。


(うん、わかった)


目には見えない。

でもたぶん、邪剣は微笑んだ。

そんな気がした。


(よしっ、マスター、さっきの男ムカつくし、絶対邪魔になるから、引き返してぶっ殺そう?)


いきなり自由だなー。

いやまぁ、それでいいんですけど。

しかし、おれにはできない、それはできない。

おれの魂を喰った邪剣よ、おまえなら、わかるだろう?


(もちろんだぞ、マスター、それでもあえての忠告、だったのだからな)


(マスターは、おそらく、人間を、殺すことができる)


(マスターが断っている理由は、人殺しに忌避感を抱いている、というわけではないのだ)


……改めてそう評価されると、ちょっとだけショックだな。

でも、やっぱり、たぶんそれは合ってる。

たぶん、おれは、もはや普通に人を殺せる。


(マスターは情け深い、だがその裏返しとして、敵対者にはきっと情けをかけない)


報復と報恩、だな。

どこで読んだ文章だったか、「復讐を忘れるような人間は、受けた恩すら簡単に忘れるだろう」って感じの言葉が、やけにすんなり頭に入ってきたことがあってな。

蒼◯航路だったかな?

うん、そんな人間だ、っていう自覚はあったよ。


(だが、そこには例外がある)


(マスターは、子供の不幸が許せない)


そう。

そうだ。

それだけは、許容できない。

だから、あの男は、殺せない。

あの男自身も、不幸な子供だったに違いないからだ。

話の流れから、それを察してしまった。

あの男が歪んだのは、あの男自身のせいではない、おれは、そんな思考をしてしまう。

おれが、おれ自身が、そんなクソみたいな経験を知っている。

現実はクソだ。

地球の日本の、おれの現実はかつてクソだった。

没頭できるフィクションの世界がなければ、たぶん現実に圧し潰されていた。


だから、子供の不幸、それがおれの急所なんだ。


だから、今、おれは逃げている。


フィクションみたいな異世界なのに、クソみたいな現実だから、だから、おれは、この世界でも逃げている。


………クソッ。


(すまな…)


謝るなよ、謝らないでくれ。

一番クソなのは、現実なんかじゃなくて、おれ自身なんだ、知っている。

いや、いや、この思考はダメだな、さぁて、ここらで店じまいにしようか。

へへっ!

これじゃどうも景気が悪ぃや!


(マスター、好き)


なにっ!!!??

ちょっ、えっ、なにそのタイミングのデレ!!!?

知らないッ!!!!!

そんなデレ技知らないんだけどッ!!!??

なにこれ現実!?

ちょっと都合が良すぎない!!?


(乙女の溢れ出る「好き」、という技だぞっ!)


あるのそんな技ッ!!!!??


(現実の女の子は、男の子の妄想なんて軽く超えていくのだぞ?)


いや女の子っていうか、邪剣じゃけん………。

なんなんだよ、今の話の流れからどうしてそうなる?

ぜんぜん理解できないぞ?

今の展開、ゲームならクソゲーだし、アニメならクソアニメ、ラノベならクソラノベだろ。

ご都合展開すぎるって。


(現実なら、どうだった?)


………わからないな。

わからない。

なぁ、ひょっとして、おれに同情したのか?


(かわいそうたぁ、惚れたってことよ)


パクリじゃねぇか。

そのセリフたしか、からくりサー◯スのパクリじゃねぇか。


(引用だからパクリじゃないもん)


もともと引用の引用とかだったはずだし、それをパクったら引用の引用の引用くらいの感じになるんだが。

あと、さりげなくパンツじゃないから恥ずかしくないもん的な言い回しを引用するのもやめてね。


(………かわいそう、って思われるのは、イヤか?)


(好きな人を、抱きしめてあげたいと思うのは、ダメか?)


身体を侵食される。


邪剣。

しーちゃん。

おれは、少し怖い。

だって、少し、都合が良すぎるじゃないか。

おれが女の子って設定にして、おれが名付けて、外見も設定して、それで、甘いことばかり言われてる。

なんだろうな、なんかちょっと、こわいんだ。

よくわからないけど。


(……我も、こわいよ)


(我は、マスターが好き)


(こんな気持ち、こんな感情、そう、感情、そんなもの持ってなかったのに、これってなんなのかな、って思うよ)


(我は邪剣、ただの剣、それが自分)


(自分の気持ち、自分、自分ってなんなんだろう、って、そうやって考えてると、こわくなるよ)


………かわいそうたぁ、惚れたってこと、か。

たしか、引用元は漱石だったっけな。

記憶をたぐる。


それを皮切りに、地球の日本、そこでの記憶がとりとめもなく浮かんできた。


記憶と感情が、頭の中をかき乱した。


遠くなった世界、遠くなった記憶。


異世界の夜闇の中を、今は疾走している。


なんでだっけ。


なんで、おれはこんなところで走っているんだっけ?


逃げ出したから。


何から?


現実から。


この異世界の、この現実から?


いや、違う、それだけじゃない。


おれは、異世界に来るその前から、逃げていた。


地球の日本、あの世界の、おれのクソみたいな人生。


逃げて逃げて、ひょっとすると、こんなところにいるのはそのせいなのかもしれないな。


だが、逃げ切れなかった。


おれの中にあるおれの記憶から、逃げ切れるはずなんてなかった。


自分のことをかわいそうだなんて思わない。


だけど。


あぁ、そうだな。


かわいそうだと、邪剣のことは、そう思った。


握り締めたいと思った。


おれの剣にしようと、そう思った。


これが、おれの「自分」だな、しーちゃん。


どうだ、参考になったか?


同じ頭の中で、愛剣は、おれの思考の声をひっそりと聞いていた。

返答は聞こえない。

姿無き女の子。

おれが名付けた、邪剣シークライド。

彼女は、きっと笑った。








朝がきた。

チュンチュンと小鳥がさえずる。


そう、朝チュンである。


(これからどうするの?)


朝の陽射しの中を歩く。

チュンチュンと、近くの林で小鳥がさえずっている。


まさしく、朝チュンなのである。


(『奴』を探す?)


右手の中の愛剣が問いかけてきた。

青い空を仰ぎ見る。

『邪剣使い』攻略、32日目の朝だ。

朝チュンだ。


いや、『認識不可』は回復してるみたいだし、『奴』を探すのは無理だな。

んー、ちょっと2日目の夜に立てた方針を思い出してみようか。



・31日目までに、バルゴンディア王国のナーン森林付近に行く。


・新キャラのアンロックを目指す。


・情報収集、特に、『奴』を倒せそうな強い人間の情報を集める。


・『奴』の動向を探る。


・別の『運命改変者』を探す。



このうち、一つ目はクリアしたわけだ。

それから二つ目、「新キャラのアンロックを目指す」、これもけっこういい線いってるんじゃなかろうか?


『邪剣使い』は喋れない、その割には、いろんなキャラと接触できてる気がする。

ただ、肝心の、アンロック条件がいっさいわからない。

だから、実際に出会ったキャラが次回の改変で使えるようになるのかは、今の段階では不明だ。

はいはい、残念残念!

っていうか、アンロックとかじゃなくて、次に操るキャラクターは完全ランダムのガチャ仕様とかだったらどうしよう。

うん、やばそうだ、残念な思考はやめておこう。


そして三つ目、「情報収集」、これはアレだ、話しかけてくれる人を見つけに行くしかない。


なんたって、『邪剣使い』は喋れないからね。

でも意外と多いんだよなぁ、『邪剣使い』にも話しかけてくれる人って。

まず、変態邪神だろ、あと『流れ島の三兄弟』と、あの胡散臭すぎる『婦人憎まれ虫』とかいうやつと、それから棒読み暴乳『暴風花』、そんで、昨日の夜に襲ってきた邪神教団の人。

うわぁ。

やべぇやつらばっかりじゃねぇか……。

どうしよう、サカナ野郎以外に、平穏な関係を築ける相手がいないんだけど。

あっ、でもそうか!

逆にまともな人だったら、どう見ても歩く中二病な『邪剣使い』には話しかけてこないのか……。


次の四つ目、「『奴』の動向を探る」って、これは今しーちゃんに言ったとおり、『認識不可』が回復しているために成果が出ないだろう。

ただまぁ、今後『奴』はどう動くのか、それを思考するのは続けていかないとな。


で、五つ目。


実は、これからの方針は、なんとなく決めてたんだよね。


(うん、我も、なんとなくわかっていた気がする)


五つ目の、「別の『運命改変者』を探す」、これを次の第一目標にする。


数少ない、有益な情報を活用していこう。

あの胡散臭い『婦人憎まれ虫』の情報によれば、運命神の使徒を名乗る一団が、南の方にあるイルイール王国というところに向かったらしい。

よく考えてみたら、これはたぶん、またとない好機なのかもしれない。

次回以降の周回でも、こんなふうに『運命改変者』の足取りっぽい情報が手に入るとは限らない。

この機会を逃したら、別の『運命改変者』にはもう出会えない可能性だってある。

なぜなら、この異世界が残念だから。


そういうわけで、これからは、おれとは別の『運命改変者』を探しに行く。


(うむ、我とマスターの冒険は、まだまだこれからだな!)


そう、またそんなノリだよ。

また、打ち切り漫画のラストみたいな旅立ちをしてやろうぜ。

よーし!

朝日に向かって走り出せ!


おれたちの冒険は、これからだ!!



完!!!


ご愛読ありがとうございました!

次回作にご期待ください!!





そんな感じで、妙なテンションのまま走り出したわけだけど。


なぁ、しーちゃん。


(うん)


おれは知りたい。

別の『運命改変者』が、この世界をどう見たのか。

何を知って、何を想ったのか。

もし、別の『運命改変者』も、今二周目の世界を過ごしているならば。

それなら、一周目の世界で、何を見たのか。

二周目の今日このときまでに、何を乗り越えてきたのか。

何を目指して、何を願って、運命を改変しようとしているのか。

………心は、折れそうにならなかったのか。

……どうして、まだ、戦い続けることができるのか。


おれは、知りたくなったんだ。


もう一人の『運命改変者』が、どんなやつなのか。


(うん、きっとね、そうだと思ってた)


そう、か。


やっぱりさぁ、うん、ちょっと都合が良すぎるって。


(だって、マスターのことなら、もうわかるもん)


おれの魂喰わせちゃったんだもんなぁ。

よく考えたら、最高の理解者って、けっこう最強のヒロインですよね。

ふー。

ほんと、これどうしたらいいんだろうなぁ。



しょうがないから、おれは笑った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ