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2キャラ目、騎乗

通算59話。

2キャラ目、35話





右手に愛剣を握り締めて、岩影から戦場を覗く。


灰髪の少女の身体を乗っ取った邪神が襲来し、去っていった。


数刻前に別れたばかりの『暴風花』にも再会したが、英雄はやはり戦場へと帰っていった。


そして、この化け物どもが集う戦場には不釣り合いな、残念イケメン。


竜を駆るその男も、前へと進んでいった。


戦場は遠い。


暴発しそうになる無明の憤激に耐えながら、岩影に潜んで戦地を注視し続ける。



炎に巻かれた戦場で破砕音が鳴り響く。

走り込んで長柄の特大剣を振り下ろした『道断の反英雄』が、その武器からは想像もできないほどの軽快な動きで跳躍し、瞬時に離れていく。

『奴』が大雑把に世界を喰らうが、その反撃はほぼ全裸の反英雄には届かない。

攻め手が跳び退がり世界が描き換えられて

から数拍のちに、『奴』の周囲の火炎が勢いを増した。

炎がうねり、標的を覆い尽くす。

燃え盛る戦場の外縁を駆けている『反抗の英雄』が、遠距離から炎を操って更なる攻撃を加えているのだろう。

英雄と反英雄。

連携はとれているらしい。

均衡律の中に『天秤』制御機能っぽいのがあるみたいだし、それも当然か。

あの反英雄の小姓が『奴』に一撃入れて、『奴』の反撃の『世界喰らい』を誘う。

小姓は回避力極振りだから難なく回避していて、『奴』の攻撃直後の間隙には、『火因支配』の英雄が炎による攻撃を差し込んでいく。

役割の分かれた連携、少ないリスクで堅実に削っているな。

有効だと思う。

第一段階の『奴』は大雑把で散発的にしか『世界喰らい』を使わないからな。


それにしても、第一段階、省エネモード、か。

胸糞悪いから『奴』の視点になんか立ちたくないんだけど、敵の内情は探れるだけ探って推し量ってそれでも足りないぐらいだからしょうがない。

ちょっと考えてみる。


これだけ『天秤』たちにやられてて、それでも第一段階であり続けるのは、なぜなのか?

まぁ、そりゃ『認識不可』も維持できてないほど弱ってるから、ってことでいいんだよな?

だから省エネしている。

本来なら、攻撃でエネルギーの蓄積量を減らすのも嫌で仕方ないだろう。


もうひとつ考える。

第二段階のように、精密で連続した『世界喰らい』を放っていないのは、なぜなのか?

たぶん、やっぱりそっちの方がエネルギーの消費量が多いんだろう。

その辺は、癪だけど邪剣の能力を使う感覚に似ているんじゃないだろうか。

邪剣の能力の場合、精密な動きをするほど魂の消費量が増えるみたいだし、連続使用も負荷がかかって、余分に魂を消費することになるようなのだ。


勢いを増して『奴』を包み込んでいた火炎が消失した。


喰ったか。

さすがにあれだけ炎に包まれたら、防御のために『世界喰らい』を使う必要があるってことだ。

周囲は相変わらず火の海だから、どれだけ喰っても燃やされ続けることには変わりないけどな。

それにしても、なんていうか、栄養的にはどうなんだろう?

つまり、世界を喰って回収できるエネルギーってどんなもんなんだ?


(おそらくは莫大なエネルギーを得ているはずだぞ、マスター)


おっ、解説が入りますか。


(しかしやはり、それも我の『魂喰らい』と似たようなものなのだと思うぞ)


ほう、つまりどういった点が?


(莫大なエネルギーを有する世界そのものを喰らうために、莫大なエネルギーを消費しているはずだ)


ふーむふむ、そういえば『魂喰らい』もそうだったね。

魂を喰うために、自分の魂の蓄積量を消費するんだよな。


(そうだぞ、しかも我の『魂喰らい』の場合は、魂の獲得量よりも消費量のほうが多いと言ってあったであろう?)


そうだったそうだった。

魂を消費して魂を喰おうとすると、魂の収支が赤字になる、って設計なんだよな。

そうやって邪剣は所有者の魂を喰らっていって、その身体を奪い取るんだった。

マジ邪剣。

一日目が「魂の牢獄」でホント良かったわ。

左拳で怨霊シュワ消して喰わせまくって蓄積量稼ぐとか、ボーナスステージにもほどがある。

………全裸のガチ邪神には会いたくなかったけどな。

そうだ、邪神。

あいつ小さいほうの竜に乗っていったけど、今なにやってんだ?

おっ、いたいた。

灰髪の邪神を乗せた白竜が、火の海の上空を旋回している。

あぁ、あいつも観察中か?

なんだよ、おれと戦ったときと比べて超慎重じゃん。

てっきりまた大興奮でいきなり超突進ぶちかますもんだと思ってたわ。

あのときのおれって、完全に舐めプされてたんですね。


(まぁ、単純に気分の問題だと思うのだぞ!)


気分かよ。

いや、たしかにさっきはそこまで興奮してなかったけど。

あっ、それで邪剣、さっきの続きなんだけど。

たとえば、『魂喰らい』の場合は、やっぱり食べた魂の強さによって獲得できるエネルギーの量って違うよな?


(うむ、もちろんそのとおりだぞ。ちょうどあの邪神様と戦ったとき、邪神様の魂のほんの一部を手に入れたであろう?『魂喰らい』を発動したにも関わらず、あのときばかりは魂の収支は大黒字だったのだ。まぁマスターの知識で言うなら、宝くじを数枚買って、一等及び前後賞二等三等組違い賞に当たったようなものだったのだぞ!)


うわぁすごーい!

さすがに宝くじ一等が当たる妄想までしかしたことなかったよー!!

どうしよう、使い切れるかなぁ!?

とりあえず某アメリカ産トレーディングカードゲームで古のパワーカードを買い漁るか!!?

それでも使い切れないよ!?

邪剣ならどうする!?


(我が自分だけの身体を手に入れるための研究費にする)


あっ。

使い切ったわ。

一瞬で使い切った。

使い切ったからこの話はおしまいね。

それで、『世界喰らい』はどうだと思う?

つまり、「喰った世界に何があったか」で、エネルギーの獲得量は変わると思うか?


(ふむ、おそらくそのとおりだと思う。その世界になんらかの力が詰まっているほど、獲得できるエネルギーは多いのだろうな)


まぁ、やっぱりそうだよな。

『暴風花』がさっき『天秤』がいっぱい喰われたって言ってたし、ここに来るまでに『奴』の気配が消えたりしてたのはそのせいか。

なんとなくそんな気はしてたけど、改めて確認できてよかったな。

『奴』に対する知識を深めていかないと。

じゃあ、ここでもう一歩踏み込んで考えてみるか。


『火因支配』で燃え盛っている空間を喰った場合、獲得量と消費量はどちらのほうが上なのか?


あれって要は、火因という力が詰まってる空間を喰ってるってことだよな。

もしかしたら『奴』にとっては栄養が詰まってる空間ってことになるんじゃないか、ってことだ。

だから、「攻撃してるつもりで回復させてしまっているんじゃないか?」って、そういう疑問が湧いてくる。


(可能性としてはあり得ると思う。しかしマスター、もう結論を出しているのであろう?)


あっ、バレてた?

いや、ちょっと思考をまとめたくてね。


(………マスターのことならわかるもん!)


うん、おれが『奴』だったら、って考えてたんだよ。

すげぇ嫌な想像だけど。

そうしたら答えは単純だ。

答え、火因支配で燃えている空間を喰っただけでは、消費量のほうが多くなってしまう。


(その心は?)


省エネモードだよ。

おれも貧乏性なところはあるからな。

単純に考えてみよう。

それで回復できるなら、もっと喰ってるはずだろ?


(あぁ、なるほど、たしかにそうだと思う)


そう、今の『奴』は省エネモードで、ぜんぜん喰ってないんだよ。

積極的に喰ってない、ってことは、積極的に喰うと損をする、ってことだ。

本当に胸糞悪いんだが、『奴』の貧乏性、まるで……。

………いや、なんでもない。

……それだけは絶対に認められない。

まるで……。


(マスター)


まるでおれと同じ思考みたいだ、なんてことは。


(マスター、くっつく)


うわなにをするやめろ!!

しっ、侵食侵食ゥッ!!

邪剣の侵食がR18指定になっていくゥーーーッ!!!


(変なこと考えるくらいなら、我のことを考えてほしいのだぞっ!)


ちょっ、やめっ!!!

侵食ダメゼッタイ!!!

アッーーーーー!!!



ふぅ。



(ふぅ)



まぁ、そういえば無明の記憶で見たとき、『奴』って人の形してたもんな。

くそ化け物だけど、思考が人間くさくても不思議じゃないか。

ともかくまとまった。

『奴』が積極的に『世界喰らい』を発動する条件は、おそらく二つ。

エネルギーを獲得できるようなモノを食べるときと。

収支を気にせず仕留めなければならない敵がいるとき。

この二点。

『奴』を化け物だと思いすぎてたから、こんな単純なことに今更気がついたわけだ。


そこまで考えたところで、状況が動き始めるのを目撃した。


おい。

小さな少女が、旋回する竜の背から転落した。

おいおいおいバカ待てって!!

邪神が戦場に飛び降りたッ!!!

おまっ、結局すぐ動くのかよ!!?

っていうかその身体で『奴』と戦うとかふざけんな!!!

その子にそんなことさせんじゃねぇ!!!

無謀すぎんだろ!!!


落下していく小さな邪神が、空を蹴って走り出す。


なっ!!?

なにを言ってるかわからねーとは思うがありのまま今起こったことを以下略ッ!!

よっ、幼女が空を走ってるゥーーーッ!!?

邪神が『漆黒』に向かって空を滑り駆け降りていく!!

その後方に白銀の女騎士!!!

風ッ!!!!

急加速して落下しながら走り続ける幼女が魔弾と化した!!!

超超超絶超突進ッ!!!!

ぅゎょぅι゛ょっょぃ!!!

うわ幼女強いッ!!!


全ては一瞬。


幼女の超絶突進が『奴』をぶち飛ばし全方位に発生した衝撃波が岩と炎を吹き飛ばす!!


ぶっ飛ばされた『漆黒』の先にほぼ全裸!!!


『道断の反英雄』が長柄の特大剣をフルスイングして『奴』を打ち上げる!!


打ち上げられ宙を飛ぶ『奴』の直下から『反抗の英雄』の豪炎が火柱となって立ち昇る!!!


火柱に吹きつけられた『暴風花』の風が渦を巻き拡大された炎の嵐となって『奴』を空中で包み込んだ!!!


そして、空を焼き尽くさんばかりのその焔が消え失せた。


空中に浮かされていたはずの『漆黒』は、その瞬間既に地上にいる。


『世界喰らい』で喰われた世界の隙間に、周囲の空間は一瞬で流れ込む。


空中にいた『奴』がその空中を喰い尽くし、『奴』と地上との距離が失くなったのだ。


「ごぐあがああぁぁァァーーーッ!!!!」


突如鳴り響いた蛮声。

叫んでいたのはほぼ全裸だった。

『道断の反英雄』、及び『邪神の小姓』であるほぼ全裸が全力で叫び声をあげている。

なんだ?

まさか『奴』になにかされたのか!?

………いや待て、叫び声って、アレ『天秤』ですよね?



「邪神様アアアアァァァーーーーーーァァッッ!!!!!!」



より一層激しい雄叫びを轟かせたほぼ全裸の小姓。

叫びながら、自分の顔面と特大剣を思いっ切り激突させ始めた。

なにアレこわい!

コワイ!!

えっ!?

なにやってんのアレ!!?

理解不能すぎてほんとコワイ!!!

なんで自分の武器に顔面打ちつけてんの!?

ほぼ全裸の奇行はマジでヤバイ!!!

『奴』の精神攻撃かなにかで気が狂った!?

っていうか『天秤』だから叫んだりとかしないはずだよね!!?


あっ、すぐやめた。


白銀の仮面が砕け散っていた。

黒髪短髪、意志の強そうな雄々しい素顔が露わになっている。

太すぎず細すぎない引き締まったイイカラダの『邪神の小姓』は、強固な胸板を上下させながら荒々しい呼吸を繰り返している。

そして再び咆哮をあげ、猛烈な勢いで地を蹴り飛ばし突き進む。


「邪ッ神ッッ様アアアアアァァァーーーーッッッ!!!!!!」


着地していた灰髪の邪神に向かって『邪神の小姓』が跳躍し、大上段から振り下ろさんとばかりに長柄の特大剣を両腕で振り上げていた。

小さな少女が不敵に笑う。

と思った矢先に跳躍し急接近する小姓に空中で超突進をぶちかましていた!!!

ぅゎょぅι゛ょっょぃ!!!!

うわ幼女強いッ!!!

っていうかなにやりだしてんだよおまえら!!?


邪神の超突進をもろにくらってすっ飛んだほぼ全裸は、『奴』のいる戦場から飛ばされて遠ざかっていく。

邪神はそれを追ってすぐに駆け出していた。

小姓が飛ばされた先、中空に、あの残念イケメンを乗せた緑竜が飛んでいる。

大岩に激突し、瓦礫の中からむくりと起き上がった『邪神の小姓』の目前に、灰色の少女が立ちはだかった。


小姓と主人が相対する。


この距離では聞こえないが、言葉を交わしているようだ。

緑竜が降下し、邪神のそばに残念イケメンが降り立った。

白竜もちょうどすぐ近くまで飛んできている。

なんだ、邪神と『邪神の小姓』の謎の戦闘が勃発したのかと思ったけど、違ったのか。

今は普通に喋ってるみたいだもんね。

ひょっとして、さっきのは挨拶みたいなもんだったのかな?

邪神だし、それに小姓だしね!

さっきのが挨拶代わりでも不思議じゃないよね!

うん、きっとそう。

積もる話もあるだろうし、そうすると『奴』から離れないとおしゃべりできなかったわけじゃん?

『奴』の周囲は再び炎に巻かれ、『暴風花』が高速で飛び回っている。

ひとまず問題は無さそうだ。

いや、違う待て、問題あるって、なんで『天秤』のはずの小姓が叫んだり邪神に襲いかかったりしてるんだよ?


邪神が小姓に至近距離超突進を繰り出した!!!!!


だからなにやってんのッ!!?

っていうか今の避けんのかよ!!?

長柄の特大剣を肩に担いだまま、『邪神の小姓』が真横に身を躱す。

躱された邪神が岩に突っ込んで瓦礫を撒き散らした。

小姓が身を翻し、そのままの勢いでひとっ跳びに邪神を襲撃、肩に担いだ長柄の特大剣を右腕一本で横薙ぎに振るう。

周囲に転がる岩々を破砕しつつも、勢いを失わない特大の刃。

邪神は小さな身体を縮こまらせてやり過ごし、ネコ科の猛獣を思い起こさせるその体勢から超突進を放つ。

小姓は振り切った勢いをそのまま利用し、地についた特大剣の切っ先を支点に宙を翻って回避し、さらに跳び退がって距離をとった。


緑竜が慌てて飛びたって、残念イケメンが乗り損なう。


最高にカッコ悪い瞬間を目撃したが、着地することなく飛来した白竜に、驚くほど滑らかに飛び乗った。

青年は竜上で、背負っていた布の包みを解く。

そこに収まっていた直槍を右手に携え、左手で手綱を絞った。

その姿は、まるで熟練の竜騎士。

飛びたった緑竜と空を並走しつつ、空中で白竜に立ち乗りし、緑竜の顔に自分の顔を寄せた。

その直下では、邪神とその小姓が暴れ回っている。

竜騎士が白竜の鞍に座り直し、緑竜の前に出て先導し始めた。

小さな竜と大きな竜が、前後に並んで空を滑る。


灰色の毛皮を纏う少女が低い姿勢で駆け回る様は、まるで獣のようだった。


超突進ばかりではなく、小姓を追い立てるように岩々の隙間を走り回っている。

邪神はやはり攻撃的で、何度躱されようとも攻め手を休めることはない。

小姓は回避に専念しつつ、邪神の攻撃後の隙に特大剣を振るっている。

灰髪の邪神が素早く躍りかかり、小さな拳を叩きつけた。

小姓に回避されたその拳は、大地を砕き陥没させる。

跳び退がった小姓が、間髪入れずに地を蹴っていた。

長柄の特大剣を両腕で身体の正面に突き出して、突進突きを繰り出した。

その刃が邪神に届く寸前に、小姓は攻撃を中断し再び跳び退がる。


それと同時に、降下してきた白竜が小姓の眼前を通過する。


小姓はこれを察知して退いたのか。

躱された竜騎士は、通り過ぎながら、竜上で突き出していた直槍を咄嗟に振るっていた。

しかし小姓は一瞥もせず、首を傾げるだけでその苦し紛れの槍先を過ごしていた。

その数瞬後、小姓が弾かれたように左に跳ぶ。

小姓が立っていた地面から、一本の「木」が急速に生えて突き立った。

その攻撃は躱されたが、緑の葉が瞬時に生い繁り、特大剣を担いでいる右側の視界と可動域を阻害する。

その緑の繁みを突き破って、灰色の獣が飛び出した。


豪快な金属音が鳴り響く。


邪神の拳が、白銀の特大剣にぶつかっている。

小姓の回避が一瞬遅れ、超高速で飛びかかってきた邪神の一撃を受け止めざるを得なかったのだ。

もう一発。

小さな拳が空を切る。

今度は小姓の回避力が上回った。

結局、竜騎士の奇襲もその甲斐は無く、邪神の放った拳が特大剣に阻まれて終わっただけだったのだ。

『道断の反英雄』の最大の長所、『危難瞬察』による回避力。


小姓と主人が、再び相対する。


そして、それが地に落ちた。


小姓が肩に担いだ長柄の特大剣。


その白銀の刃の半ばから先が、ぶち折れて地面に落下した。


灰髪の邪神の、一発の小さな拳がぶち折っていた。


……………折れたね。


(………うむ、折れたな)


………いや、そこが折れんのかよ。

たしかにあの武器折れる折れる言ったけどさ。

でもそれは、特大剣の部分が重すぎるから長柄の部分が折れそう、って意味だったんだよ?

そんなゴッツイ刃が折れるってなんなの?

そんなところが折れるなんて想像してなかったよ?

ぅゎょぅι゛ょっょぃ。

ほんと幼女強すぎるんだけど。


長柄の特大剣を折られた『邪神の小姓』が、主人に対して跪いた。


邪神が正面に歩み寄り、言葉をかける。


小姓が顔を上げると、その顔は満ち足りているようだった。


その顔面を、灰髪の邪神が足蹴にし、地面に踏みつけた。


絵面がヤバイ。


ほぼ全裸のいかつい男が幼女に踏まれている。


小姓を踏み終わった灰色の少女が、担がれたままの特大剣の先端に手をかける。


自身がぶち折ったその部分に、ちょこんと腰掛けた。


その状態を保ったまま、邪神が座っている特大剣を肩に担いだままで、『邪神の小姓』が立ち上がった。


それまでと変わらず右腕一本で肩に担ぎ、自身の右側に長い柄が突き出し、左の剣先に少女の邪神が座っている。


両脚と左腕を使って、『奴』がいる戦場に向けて這うように駆け出した。


反英雄が、邪神を乗せて戦線に復帰する。



その戦場に視線を戻す。

『奴』の周囲には、火炎が燃え盛っている。

その中に人影があった。

『反抗の英雄』が、焔に紛れて白銀の双剣を閃かせていた。

舞うような連続攻撃で、『漆黒』を俊敏に切り刻む。

『道断の反英雄』が離れていたからだろうか。

遠距離に留まっていた『反抗の英雄』が、いつの間にか接近戦を仕掛けていた。



その影が消失した。



戦場から、炎が消えて無くなった。

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