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謎女神様、降臨中

運命改変アクションRPGを全クリしたんだが、チュートリアルが終わったんだそうです。




目の前には、ひたすら残念がにじみ出ている謎女神。

周囲は、明るいんだか暗いんだか、浮いてるんだか立ってるんだかよくわからない謎空間。


「じゃ!そういうことだから、こっから本番ね!」


「そういうこととか言われても、全く何もわかんないんだけど」


おれの至極当然な発言に対して、はぁーヤレヤレ、と人を小馬鹿にしたように肩をすくめてみせる残念女神。

くそウザイ。


「察しが悪いなぁ、もう……」


「うるせぇ残念女神、さっさと説明しろや。お前なぁ、お前という存在は、あのヴァーランド・リフォージなるおれの中での人生最高の超傑作ゲームにおける、唯一の汚点なんだよ!よくも今まで一方的に、しょうもない小芝居でおれの快適なプレイを台無しにしてくれたなぁ!?なんでたかだかセーブして終了する、っていう当たり前の機能に辿り着くまでに、5分も10分も時間取られねぇといけねぇんだよ!?それがウザイから電源落とさないでメニュー画面開きっぱなしにして放置しておいたら、今度はスネてイジケて丸一日操作不能にしやがったよなぁ!!?」


「うぅ……DQNコワイ…可憐な女神さんをいじめるこんなコワイ人だったなんて……」


涙目で震えながら、野獣かなにかを見るような瞳でこちらをビクビクうかがってくるしょうもない小芝居をする、クソ残念女神。


オイ遠いな!

なんだこの空間!?

近くっぽいのにすごい遠い感じするよ?

なにこの謎空間?

っていうか待てよ、こんな空間で女神に見捨てられたら、詰むんじゃね?

この謎空間で謎女神に逆らったら、かなりヤバイんじゃねーか?


「あー、なんだ、その、悪かったよ。ちょっと、いやかなり、普段から謎女神さんの言動にイラついてたから、直接話せるって思ったら、つい今までの鬱憤をね?」


「そんなぁ……今までずっとがんばって、『美人過ぎて近寄りがたいように見えるけど、実はかなり気さくで誰とでも仲良くなれちゃうみんな大好き優しい楽しい女神様っ!』を目指してがんばってきたのに……ずっとずっとがんばってきたのに…」


ますますちぢこまってイジケていく謎女神。

メンタル弱すぎじゃね?

この女神、めんどくさくね?


「あぁ、それは大丈夫、ある意味でとっつきやすさはあるから。高嶺の花よりかは路傍の石ころに近いから。まずなんかこの空間の謎の遠さが気持ち悪いから、もうちょい近くに来てくんない?」


「…………心の距離だもん。今の2人の心の距離はこれくらい開いてるんだもん!ちゃんと正解の選択肢を選んで、女神様ルート攻略しなさいよね!」


めんどくせえええぇぇーーーー!!!!!

あぁ、これ、この謎女神の、話が進まない感じ!

ヴァーランド・リフォージすぎる。

もう帰りたいよ……。


「おれ帰りたいんだけど」

「ムリ」


即答ね。

はぁ、わかってたことだけど、この謎女神をあてにしてはいけないよね。

それはおれが一番よく知っていたはずなのにね、おかしいよね。


さて。


未だにイジケながらチラチラと様子をうかがってくる残念女神を尻目に、おれは考察を始める。


うん、これアレだよな。

異世界転移的な、異世界召喚的なアレだよな?

よくあるアレだよ。

これからおれは、ゲームだと思ってた異世界に召喚されて、原作知識を駆使して俺ツエーーするんだろ?

その舞台はもちろん、戦乱の世界ヴァーランド。

「ヴァーランド・リフォージ」にハマりにハマったおれとしては、願ってもないことだ。


そうなると、おれはどのキャラで攻略することになるんだ?

最初に選択できる3人のキャラのどれかになるのか?

まさか、おれ自身がこのまま異世界に放り込まれる、ってことは……………ありえるッ!!

この女神ならやりかねん!


っていうか待て。

おれって今、この残念謎女神に生殺与奪を握られてる感じじゃねーか……。

そうだよね、そうだったよね。

残念過ぎてついつい忘れてたけど、曲がりなりにも「神」なんだよな?

おもいっきり上位存在じゃねーか!


コワイ!


おれは何をしたり顔で、「さて考察でもするか」なんて余裕ぶっこいてたんだ!?


コワイコワイ!!


何より誰より、この女神ってところがヤバイ!

この残念女神、ごめんウッカリテヘペロこつん☆で人の命をプチッとしちゃうに決まってる!!

くっ、悔しいけど、この謎女神のご機嫌をとって、女神様ルート(笑)を攻略せねば……ッ!

な、なんたる屈辱ッ!!



いつの間にか、膝を抱えて座り込んでゆらゆら揺れながら、口をとがらせてこっちを睨んでいる謎女神。

あのな、すっごく超絶美人なの!

残念過ぎてつい忘れがちだけど!!


「あー、なんだ、まぁ、せっかくこうして実際に会えたことだし、ちょっと前から気になってたことがあるんだが…」


な、なんだろうね、この気恥ずかしさ!

やだちょっとドキドキしてる!?

こんな残念女神相手に!

悔しい!!


問題の残念女神はといえば、体勢はさっきのまんまイジケ座りで小さくなってるんだが、話しかけられたことに反応して、上目遣いでじっとこちらを見つめてきていた。


「べ、別に、大した話じゃないんだけどな?ほら、よくある女神の漠然としたイメージってさ、あの、髪型な?なんつーか、ゆるふわウェーブ、ブロンドロングヘアーって感じじゃん?」


なに言ってんのおれ?

これ大丈夫?

合ってるよねこれで?

これで大丈夫だよね?

大丈夫??

か、顔が、熱いよ!?

ヤバイヤバイ!!!

恥ずかしい!!

顔が熱い!

これ死ねる!!


「あー、でもさ、ほら、謎女神、さまは、ショ、ショートボブって感じで、プラチナって感じでぇ、さらっとしてる、そう、さらっとヘアー、だよな!!!」






うわ、うわわ、うわうわわうわあああぁぁ!!!!!

言っちゃったァーーッ!!!

やっちゃったああぁーーーぁあッ!!!!

あばばばば!!

いっ、いいんだよなこれで!!?

いいんだよな!?

じょ、女子には髪型の話をしとけばオッケーなんだよな!!?

だって会話選択肢が出てこないんだモンッ!!!!

選択肢無しで女神ルート攻略とか難易度ヘルなのッ、難易度インフェルノッ!!!!

やばばばば、も、もう間が持たないよォ〜〜ッ!

誰だよぉ髪型の話でイケるとか言ったやつ!?

謎女神なんもしゃべんねぇよ!!

っていうか女神無反応!!

ガッチガチに女神硬直中!!!

顔ものっすごい女神真っ赤!!!!

目がずっと女神こっち見て……ぁ。


ササッ!

あっ……。


め、女神、動いた。

め、目、合って、女神、ササッてそらした……。


えっ、ちょ、なに女神?

今これどんな状況?

うわ女神耳まで女神真っ赤!!!


「そ…そんなに……似合う…かなぁ?」


これは!?

こっ、かわっ、カワ女神イイ!!

ちょ声女神ちっちゃい!!

けどなんか女神の言葉全部はっきり届いた!!?

何!?

いや似合うとか一言も言ってないんだが!?

えっ?

立った!?

フラグが立った!!?


「だ…だって……どうせ長い髪なんて似合わないって言われるし………動きづらいし…めんどくさいし……」


そっぽ向いてちょこんと座ってるけど、チラチラこっちを見ながらゴニョゴニョ言ってる謎女神。

えっ、ホントに謎女神ですか?

どちら様ですか?

って近っ!!?

おいこれ謎空間、さっきまであんなに謎の遠さがあったのに、今はめっちゃ近い感じしてるよ?


「べ、別に、自分では気に入ってるんだもん、女神が髪短くたって、いいでしょ…?」


座り込んだまま、おれの顔を見上げてくる謎女神。


「お、おう」


おれは必死で言葉をしぼり出して、かろうじてガクガクとうなずいた。


謎女神は、一度だけ最高の笑顔をおれに向けてから、すくっと立ち上がり宣言する。


「だ、だから、チュートリアルおしまいだから、これから本番がんばってもらうの!」


「わ、わかりました」




運命改変アクションRPGを全クリしたんだが、チュートリアルが終わったんだそうです。


おれはもう、この謎女神にはかなわないようです。

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