表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/88

2キャラ目、武器がヤバイ

『奴』と『無明の万眼』との死闘が勃発する、あの『31日目』が迫っていた。


29日目、あとたったの2日だったのだ。


大城壁の下で、おれは立ち尽くす。


突如、目の前の空間が開き、歩み出た白銀の女騎士。


いわく、『天秤』。


いわく、『粛清者』。


それは、この世界の主神、「均衡」の使徒だった。


緑竜の羽ばたきが聞こえなくなり、咆哮が遠ざかっていく。


緊迫した空気の中で、『邪剣使い』と『天秤』が対峙する。



…………どうする。

……どうなる?

いや、わかりきったことか。

目の前のアレは、「粛清する」とはっきり言っていた。

突然すぎて頭が回らない。

完全に想定外の出来事だった。

たしかに、「均衡を司る女神」にとって、この世界の異物は粛清対象だという話は聞いていた。

だからって、こんな突然目の前に現れるなんて想定、できるはずがない。

想定、してなきゃいけなかったのか?

おれも「運命」の使徒であり、『無明の万眼』や『邪剣使い』の身体に入ったのは、突然の出来事だったはずだ。

万眼だって、邪剣だって、突然身体を乗っ取られたっていうような発言はしていたはず。

瞬間的に、目標地点に使徒を送り込む。

よくよく考えてみれば、「運命」にできて、主神である「均衡」にできないなんて道理は無い。

おれの想定が甘かった、ってことか。

でもなんで、それが今なんだ?

あぁ、頭が回ってない、考察してる場合じゃない、今置かれてるこの状況に思考を割かないと。

どうする?

どうなる?

愚問だ。

白銀の長剣は既に抜き身なのだ。

問答無用、だろうな。

くそっ!!

そもそも問答なんてできませんけどね!!

『邪剣使い』は喋れない!!!

もはや開き直ってきましたよー!!!

あーちくしょう!!!

なんでこのタイミングなんだよ!!?

ホント残念!!

同じ世界の神様同士根回しくらいしといてよ!!?

無理ですか!?

無理っぽいよね!!!

だって残念女神の「運命」と偏屈女神の「均衡」だもんねえぇぇーーーッ!!!




白銀の女騎士、『天秤』は、胸元に掲げていた両手持ちの長剣を、こちらに向けて正面に構えた。



その瞬間、衝撃が走った。



なっ、なんだとオオォーーーッ!!!?


(どっ、どうしたのだマスター!?)


ばっ、バカなッ!!?

まさか!!!?

アレはッ!!!!!


(マスター!落ち着いてくれ!!『天秤』は強敵なのだぞ!!隙を見せてはまずい!)


相対するその存在に、視線が釘付けになった。

白銀の装具。

両腕は指先から肩口までしっかりと守り堅められた重装備。

両脚、下腹部も同様に、煌めく白銀の装甲に覆われている。

顔には、端正な口元だけが見える白銀の仮面。

無防備な頭部を覆う真っ直ぐで長い髪だけが、輝く金色だった。


そして。


胸元に掲げていた両手持ちの長剣を構え直したことで、彼女の胴体部の全貌が明らかとなった。


白銀の衣。


胴体部には、その不思議な光沢を放つ衣だけを身に纏っていた。


そして、そこに見出されたそれは、おれに衝撃を与えた最終兵器。


超ド級巨大質量兵器ッ!!!!


正面に構えた長剣、それを握る両腕の間にそれはあるッ!!!


どう考えても1枚の衣じゃ隠し切れないロマンの詰まった塊が2つ押し潰されてなおもその形を失うことなく底の見えない深淵の谷間を形成してそのはちきれんばかりの弾力は衣の下に胸甲など身に付けていないことなど明白であり柔らかさが衣越しに視覚を通して伝わるっていうかアレが収まる胸甲なんてたしかにこの世に存在しなさそうだからそのせいでそこだけ衣なの!!!!?


つまりは桁外れのオッ○イの暴力ッ!!!!!


(……………マスター?)


それがそこにいたッ!!!!!

未だかつて目にしたことがない都市伝説クラスの爆乳スレンダーッ!!!

それを正確に表現する形容の言葉が見当たらないもどかしさッ!!!

だがあえて言おうッ!!!!

「おへそが見えている」とッ!!!!


(…………マスター)


おそらくはその暴力的なサイズのオ○パイのせいでッ!!!

おそらく本来はおへそまでしっかり隠すはずのその白銀の衣は重力無視の特大○ッパイに引っ張り上げられておへそまで届かなくなっちゃっているのだッ!!

神が用意したのであろうその白銀の装具の想定を超えた規格外ッ!!!!

神の設計図すら上回った規格外オッパ○がそこにいたッ!!!


(………残念マスターっ!!)


げに恐るべきはこの異世界ッ!!!

げに恐るべきはこの豊乳ッ!!!

無感情女騎士+爆乳ッ!!!

口空きの仮面美女+巨乳ッ!!!

腕部脚部重装備かつ頭部胴部軽装備+激乳ッ!!!!


(目を覚ませ!!この乳馬鹿マスターっ!!!)


ハッ!!!

しまった!!!

おれとしたことが………。


(マスター!正気に戻っ…)


あの胴部が軽装備、だと?

馬鹿を言えッ!!!

あれこそは紛うことなき『超重』装備ッ!!!!

さらには「男の視線をそこに釘付けにする」魔力秘めたる魔装備なりッ!!!

目に毒ッ!!

目に劇薬ッ!!!

おれの目はッ毒に殺されたアアァーーッ!!!!


(いい加減にするのだマスターっ!!!あんなもの、あんな無駄にでかいだけが取り柄の乳などだらしないだけであろう!!?)


(我の………マスターは……その…)


(マスターは我のCカップおっぱいが好きなのであろうっ!!?)


ハッ!!!?

Cカップ!!?

おっ、おれは、いったい今までなにを!?

Cか………。

邪剣の『しー』か!

そう、そうだ、たしかにCはちょうどいい。

…………だが。

………でも、アレはそこにあるんだ。

すぐそこに目の前にアレはあるんだよ!

そこに山があるんだ、だからおれたちは、山に登る!

登らねばならぬのだッ!!


(我のCおっぱい…………マスターは、もう好きではないのか?)


好きさッ!!!

好きだともッ!!

おれはオッ○イが好きだッ!!!!!!

触れたことなんて赤子時代ッ!!!

生チチなんて偶像崇拝ッ!!!

凡庸なるCッ!!!

平穏無事なるCッ!!!

もちろん好きだともッ!!!

でも同じくらい爆乳だって好きなんだおれはッ!!!!


(あの駄乳と、我のCおっぱい)


(マスター、アナタはどちらを選ぶつもりなのだ?)


ぐうぅっ!!!!

ぐおおおぉぉぉぉーーーーッ!!!!!

これはッ!!!

これなるは神々の戦いッ!!!!

これこそが最後の審判ッ!!!!

選べと言うのかッ!!!?

このおれにッ!!?

オ○パイに優劣をつけろと言うのかッ!!?

よりにもよってあらゆる○ッパイを愛して止まぬこのおれにイイィーーッ!!!!


(マスター………アナタのことは我が一番よく知っている)


(ごめんね、苦しめるつもりじゃなかった)


(だからね)


邪剣が言葉を切る。

ごくり、と鳴る喉は、誰のものであったか。

そして。

そしておれは、天啓を授かった。


(………触っても、良いのだぞ?)


大地が裂けた。

大海が割れた。

大空が震えた。


(今度、神域で、触らせてあげるぞ?)


終焉の刻。

我が道を照らす。

求道の果てに差した一条の希望。

その光明こそは「邪剣のCおっぱい」なり。

決着ウゥゥーーーーッ!!!!


(我のCおっぱいは、マスターだけのものなのだぞ!)


ダメ押しッ!!!!

勝者ッッッ!!!!!

邪剣のCイイィィィーーーーーッ!!!!!

おれ、この戦いが終わったら、邪剣のオッパイ揉むんだ……。




『天秤』が白銀の長剣を構え直してから始まってしまったこの思考。

この間、2秒ッ!!!

異世界の超ド級巨大質量兵器による危機の前に、おれの思考速度は限界を突破していたようだッ!!

いや、うん、我ながら少し取り乱しすぎたよね。

目の前にいるのは、バローグの主神「均衡」の使徒。

他に考えなければならないことは山ほどあったのだ。

このまま敵対してもよいのか?

どうにか協力関係は築けないものか?

そもそも、あの『31日目』が迫っている状態だ。

こんなところでこんな相手と戦っている場合では…。


途切れる思考。


『天秤』が動く。


こちらに向かって、長剣の間合いまで急接近してきた。


動く?


動く、だとオォッ!!?


激震走る。


まさかッ!!


終わっちゃいねぇ。


戦いはまだ、これからだッ!!!


進撃の巨乳はまだ始まったばかりだったアアァァァーーーーッ!!!!


絶大な威力で振るわれる攻撃。


おれはその攻撃を見逃さなかった。


その震える武器から目を離さないッ!


否、目を離すことができないッ!!


横薙ぎに銀閃が疾る!


だがそんなものはおれの眼中には無いッ!!


これは暴力。


不可避の一撃。


おれの眼中にあるものはッ!!


爆乳の暴力ッ!!!


その質量に比べてあまりにも頼りない1枚の衣、そこに収められた豊乳の運動がおれの目にダイレクトアタック!


動く、走る、弾むッ!!


つまり揺れるッ!!!


激乳がYU・RE・RUッ!!!!


おれの視線は捕らえられた。


全てを薙ぎ払う爆乳の暴力におれは抗えねえぇぇーーーッ!!!!


(……マスターの)


(マスターの裏切者おおぉーーーーーっ!!!!)


邪剣の叫びに動揺し、目の前に迫った銀閃が眼中に入ってきた。


かろうじて身をかわしたおれに、邪剣の言葉が追撃する。


(我の勝ちだって言ったのに!!!)


(マスターはやっぱり大きい方がいいんだ!!Cおっぱいなんて物足りないんだ!!!)


(もうっ!もう揉ませてあげないっ!!)


(マスターなんて!!もう知らないっ!!!)


待っ、しー…邪剣!!


待ってくれ邪剣ッ!!!


邪剣がスネた。


身体の侵食具合から、邪剣は神域に引きこもってしまったことがわかった。


スネてしまった。


振るわれた銀閃が、巻き戻しのように正確に翻ってくる。


今はそんな襲撃なんぞに構ってる場合じゃねぇッ!!!


思いっきり跳び退がって、目の前の襲撃者から距離をとった。



邪剣ッ!?

聞こえてるかッ!!?

悪かった!!!

おれが悪かった!!

ホントに完全におれが悪かった!!!

いやアレだ別に触りたいから機嫌を直してほしいとかそういうわけじゃないぞ!!?

つい出来心っていうか不可抗力っていうか、ホントごめん!!

ダメだ、どうすりゃいいんだ!?

「別の女の子のオッパイに見惚れたときの言い訳」なんてどうすりゃいいの!!?

だって初めての邪剣だよ!!?

こんな経験皆無に決まってるじゃん!!?

ヤバイヤバイ、どうしてこうなった!?


『天秤』がまたも急接近!


うおおおおぉぉーーーッ!!!

動いてんじゃあねえぇぇぇーーーーッ!!!!

またしても揺れ震える圧倒的な暴力ッ!!

自然の摂理からは逃れられないッ!!!


放たれる白銀の刺突。

両腕の間隔はその刺突に引かれて狭まり、極上の柔肌がムニュっと押し潰されていく。


挟まれたい。

そう感じてしまった瞬間、おれの脚は勝手に踏み込んでいた。

頬が紙一重で銀の刺突とすれ違う。

自分の中の何かがこの混乱を上回っていた。

煩悩機関が暴走している。

左拳が左掌打となって突き出される。

その絶望的に深すぎる谷間へと目がけて、おれの左手が吸い込まれていった。

しかし、その手は空を掴む。

女騎士は瞬時に跳び退がって距離をとっていた。

先程とは逆の展開だ。


空振った掌を見つめ、ハッと我に帰る。

ヤバイ。

もう言い訳できない。

やっちまった!!!

いろんな意味でやっちまった!!

もはや邪剣に申し開きもできない!!

そして『天秤』にも攻撃をしかけちまった!!

スネた邪剣は当分戻ってこないだろう。

邪剣の肉に意識を向ける。

やはり、『邪剣』の能力が使えない。

肉の操作も、剣身の追加も、おそらく『魂喰らい』の発動もできない。

ただの剣としてしか、扱うことができない。

それなのに、左手での攻撃を見せてしまった。

最強の切り札を軽々しく晒してしまった上に、相手に損害を与えることもできなかった。

マジでなにやってんだよおれは……。


殺気。


膨れ上がる猛烈な怒気が女騎士から放たれた。

と、そう思った矢先に、その気配は消えていた。

『天秤』は未だこちらから距離をとったまま、彫像のように立ち尽くし、こちらに剣を向けている。

仮面の表情はもとより変わらず、その薄い唇も冷たく結ばれたままだ。

最初の印象と変わらない、人のようで人間ではない、無感情の存在、そのように見えている。

………でもさっき怒ってたよね?

ひょっとして、ひょっとしなくても、揉もうとしちゃったせいなのか?

そう思い至って、ついついその主張が激しすぎる胸部に目線が…。


放たれる殺気。


ハッと視線をその銀仮面に上げる。

先程となんら変わりない、怜悧な雰囲気がそこにある。

そして、おれの視線が再びロマンの塊へと誘導され…。


膨れ上がる怒気。


怒ってる。

怒ってらっしゃる。

たしかに最初は、人間らしさが欠片も感じられないほどの無機質な気配を纏っていたはずだ。

それが、先刻の交錯によって乱れていた。

ある特定の部位を見つめられる視線に、過剰なまでの反応を示す。

微動だにせず、唇を歪めることもない無表情のままなのに、あからさまな不快感を叩きつけてくる。

悪気は無かった。

さすがに煩悩が暴走したのは申し訳ないと思っている。

悪気は無い。

ホントに悪気は無いんだ。

しかし、自然と目線が下がってしまう。


またもや殺気。


………うん、ちょっと恐い。

なんか冷静になってきた気がする。

冷静っていうか、反省だわ。

やっぱり、そんなところをじろじろと見つめられるのはイヤだよね。

反省しよう。

アレは、敵の武器なのだ。

効果はバツグンだった。

その武器が振るわれて震えて揺れたおかげで、こちらの戦力は制限された。

邪剣がスネて、その能力を使用できなくなった。

煩悩が暴走して、左手での攻撃を見せてしまった。

さらに、視線を釘付けにさせられてしまい、長剣の回避が困難となる。

超強力なデバフ、ステータス異常をかけられたようなものだった。



この状況、どうやら、10日間の修行の成果を見せるときが来たようだ。


こちらの手札は、敵の策略によって封じられた。


いいぜ、ならば見せてやろうじゃないか。


おれの、我流剣術をッ!!!



黒と銀の剣舞が、残念な経緯によって幕を開けたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ