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謎女神様、降臨!ドヤァ!

こちらが第1話になります。

序盤は特に素人感丸出しの初々しい文章ですが、少しずつマシな文になって参りますので、お付き合い頂ければ幸いでございます。








運命改変アクションRPGを全クリしたんだが、チュートリアルが終わったんだそうです。



大事なことなのでもう一度言おうか。



チュートリアルが終わったんだそうです。



ありのまま今起こったことを言おうか?



自宅でゲームを全クリしたら、女神にチュートリアルが終わったって言われた。





えーと、うん、いや待ってね?

は?

チュートリアル?

まずここはどこだい?

なにも無い。

なんで突然なにも無い?

無の境地に達してしまったのか?

浮いてるのか立ってるのかすらよくわからない。

これは、謎の空間ですね?

あーなるほど、謎空間ですか!

はいはい謎空間ね、よくあるやつね!

あるあ……ねーよ。


そんで女神?

目の前に女神?

見覚えはあるよ?

なんかすごい見覚えあるよ?

っていうか、ついさっきまでアレしてたアレにそっくりだよね。

この女神アレだよね?

いったいなにが始まるんです?



「うんうん、いーい感じに混乱してくれてるねぇー」



おれの顔を覗きこんで、にこやかにおっしゃってる女神。

うわ、絶対アレだよ。

マジか?

これマジのやつか?

もうなんか混乱した頭でも確信持てちゃうくらいこの神アレのやつだわ!



「あの、女神さん、女神さんのお名前は?」


「ふふーん、やっぱり気になっちゃう?女神さんのこと、そんなに気になっちゃうんだー?」



あっ、もう絶対アレだわ、やっぱりこれ知ってるやつだわ。

なんで超絶キレイ超絶カワイイのにそんなに残念臭が漂ってるのはなぜどうしてなんだぜ!?



「女神さんのお名前はぁ…………」



そこでタメるな。

結果は知ってるから。

どうせ残念な結果なのはわかりきってるから。



「もっちろん!ヒ・ミ・ツ♪」


「あ、はい」



はい確定。

この人、この神、アレです。

謎女神です。




謎女神、それについて語るなら、おれがついさっき全クリしたゲームについて語る必要がある。

運命改変アクションRPG「ヴァーランド・リフォージ」は、おれが人生最大級にハマってしまった、家庭用ゲームの傑作だ。


対応ハードはメジャーなのだが、いかんせんソフトの方のメーカーが聞いたこともないような会社だったうえに、初回の生産数が少な過ぎたのだろう、隠れた名作として、知る人ぞ知る幻の作品のようになってしまっていた。


プレイヤーは、最初に3人のプレイアブルキャラクターから1人を選んで、戦乱の世界ヴァーランドを冒険する。

そのゲーム、「ヴァーランド・リフォージ」には、モード選択画面やらオプション画面やらメニュー画面やらに登場する、オペレーター的なキャラクターが存在した。


それが、謎女神だ。


そう、今でも忘れられない初プレイ時。

おれは、謎女神という名の残念の権化に出会ってしまった。




「ヴァーランド・リフォージ」の初プレイ。

期待に胸を膨らませて魅入ってしまったオープニングムービーが終わり、タイトル画面とBGMを堪能していた。

良作の予感を噛み締めつつ、テンションを高めていく。


「ちょっとさっさと始めなよー!こっちは既にスタンバってんだから!」


勝手にピローンという効果音がなり、ニューゲームが選択されてしまう謎の演出。

画面上に現れる、THE・女神な格好の、超絶美女だけどなにか馴染みやすい温かみのあるかわいさを兼ね備えた、女神。

突然のことで頭がついていけない。


「どうせ最初は他にやることないし、ニューゲームでいいでしょ!オプションとかそういうのはとりあえず後ね!ちゃちゃっと説明始めるよー!」


セリフウィンドウに表示される名前は「謎女神」である。

なんなんだ?

これ声優誰よ?

この溢れる残念臭はなんだい?

声優も自然でかわいい。

グラフィックも申し分無し。

でもなんだろう、この………。


「まず自己紹介ね!私は謎女神!巷で噂の、美人すぎる女神様だよー!あっ、それは見ればわかるって?だよねー!」


この溢れ出る残念ッ!!

台無しだよ!

良作の予感が消えた、だと!?

これが無駄美人というものなのか!?

なんかそのテンションも若干無理してるように見えるし、すごく居たたまれない気分になってきます。


「フゥー、これ結構しんどいね……」


言っちゃったよ!

開始早々キャラ崩壊してんじゃねーかこの女神!!


「でも女神さん負けない!退かぬ!媚びぬ!○○ぬ!」


なんで伏せた!?

伏せるくらいならパロディとか入れるんじゃないよ!

ヤバイ!!

クソゲー掴まされたか!?


「気合いも入れ直したことだし、ちゃちゃっと始めちゃおうか。最初に使えるキャラは3人ね。あ、3人で終わりじゃないから安心してね?条件満たすとプレイアブルキャラは増えていくからね!いやいや!DL商法じゃないから!ちゃんと無料で遊べちまうんだぜ!?」


おいやめろ。

クソゲーじゃあないよな?

信じていいんだな?

あのオープニングムービーの素晴らしさは夢じゃあないんだよな?


「ん?女神さんの名前が知りたいって?」


いやいらない!!

なんだ突然!?

そもそもなぜこちらと会話をしようと試みているのか?

それならせめて選択肢をよこせと……。

ん?



◦女神さんの名前が知りたい

◦女神さんの趣味が知りたい

◦女神さんのスリーサイズが知りたい



おいなんだこれ……。

なんだよこの出来損ないの美少女ゲームみたいな選択肢は……。

もう完全にクソゲーの祭典にノミネート決定だよ……。

名前でいいよもう早く次に進ませてくれよ……。


「んん〜?ホントに名前でいいのかな〜?」



◦女神さんの名前が気になるんだよ!

◦ホントは……その…言えないよっ!

◦お前の全てが知りたい。



もうやめて!

おれのライフはゼロだよ!!

クソゲー絶滅しろ!

なにが運命改変アクションRPGだよ!!

タイトル詐欺じゃねぇか!!

あ、ちょっ、なんでまた勝手に選択肢決定された!?

なんでまた勝手に選択肢決定された!!?


「ふふーん、やっぱり気になっちゃう?女神さんのこと、そんなに気になっちゃうんだー?女神さんのお名前はぁ…………もっちろん!ヒ・ミ・ツ♪」


おれは本体の電源をそっと……。


「あああああぁっ!!!うそ!ごめん!待って電源切らないで!!初回プレイだからちょっと調子に乗っちゃっただけだから!もうキャラクターセレクト画面にするからぁ!!」



このとき、電源を切ってしまうべきだったんだろうなぁ………。



たしかに「ヴァーランド・リフォージ」は名作だった。

メニュー開く度にからんでくる謎女神はウザすぎた。

それを差し引いても、このゲームは間違いなく過去最高の傑作だった。


戦乱の世界ヴァーランド。


ヴァーランド暦861年のある時点からストーリーは始まり、866年のある時点まで、ゲーム内での5年間が舞台となる。

1キャラ目をクリアするまでは、まぁまぁ普通に楽しめるアクションRPGだった。

某Dが付く魂捧げる感じのシリーズみたいな、アレをボリューム落とした感じの良作だった。

しかし、おれはまだ「ヴァーランド・リフォージ」をナメていた。

謎女神の無駄にバリエーション豊かでテンポ良すぎる会話パターンとか、こだわるポイント間違えてるだろ、とか思っていた。

それより内容もっと濃くしろよ、とか思っていた。


そして2キャラ目を始めたとき、舞台は、1キャラ目と同じくヴァーランド暦861年から始まった。

スタート地点が変わり、キャラの境遇や、戦闘モーションが変わる。

2キャラ目からは、某無双シリーズ的な新鮮味を楽しめるようだった。

でもマップもほぼ覚えてるし、これを何キャラもプレイするのは飽きそうだなー、とか思っていた。


2キャラ目の攻略も序盤が過ぎて、とあるダンジョンに入ったとき、違和感に気が付いた。

敵の配置が変わっている、というよりも、少なすぎる。

そして、ダンジョン内にあるはずのアイテムが、ごっそり無くなっている。

少し考えて、また更に攻略を進めて、そこでようやく、このゲームの真価に気が付いた。


最初にプレイした1人目のキャラクターが、おれの初回プレイ通りに運命を辿っていることが判明したのだ。


例のダンジョンは、2キャラ目のスタート地点から遠くにあった。

だから、1キャラ目をプレイしたときよりも、そのダンジョンに到着するのが遅くなったのだ。

その結果、1人目のキャラが初回プレイ通りにアイテムを取り尽くし、2キャラ目が辿り着いたときにはアイテムがごっそり無くなっていた、というわけだ。


1人目のキャラ、仮にAとしよう、Aは、初回プレイで辿った通りの道を進み、その通りの強さを身に付け、おれが選択したストーリー展開を進めている。

そして、おれが次にプレイしている2人目のキャラ、Bの行動で、Aの運命を変えていくことができる。

例のダンジョンでAがアイテムを取り尽くしていたのと、逆のことも起こるのだ。


例えば、別のダンジョンには、前回プレイしたAが、ヴァーランド暦863年に辿り着くとしよう。

今回プレイ中のBが、それより早く、862年の段階でそのダンジョンに到着し、ダンジョン内のアイテムを取り尽くす。

その中には、ストーリー展開に関わる重要アイテムも含まれる。

AはBよりも遅れてそのダンジョンに到着するので、本来Aが手に入れるはずだったそれらのアイテムは既に無い。

Aの運命は改変され、その修正が加えられたストーリーを辿ることになるのだ。



『前回までの自分のプレイが歴史を創り、今回のプレイでその運命を改変していく』



2キャラ目をクリアして3キャラ目に突入したとき、おれはこのゲームが神ゲーであると確信した。

……いや別に、女神がいるから神ゲーって意味じゃないよ?

偶然だよ?


前回のキャラが使っている念願の武器を手に入れたいですか?

どうぞ殺してでも奪い取ってください!


最強キャラ作って俺ツエーする無双プレイは最高だぜ!

別キャラ攻略するとき敵になるけど、ねぇ今どんな気持ち?


ハーレムルートがきたと、そう思ってた時期が、おれにもありました。

するとあら不思議、次キャラプレイ時には、幼馴染みの王女が隣国の将軍にネトラレるっていうあの名作の鬱展開を再現できるよ!


敵対勢力を焼き討ち根絶やしにしまくる魔王ゲーできるよ!

次は配下キャラを使って裏切り焼き討ちからの三日天下プレイで決まりだね!




こうして、気付けばプレイ時間の桁が我ながらちょっと引いてしまうほどになっていた。

おれはとうとう、自由度が高いなんてものじゃない凄まじいボリュームの改変パターンをプレイし尽くした。

そんなときだった。

謎女神が、不穏なセリフを吐いたのだ。




「パンパカパーン!おめでとーう!!キャラクターアンロック100%達成!シナリオパターン100%達成!アイテム入手100%達成!女神さん嬉しいよー!まさかこのゲームを全クリできるようなヘンタイがいるなんてー!」



超絶美女なのに、ものすごく残念。

どうしてこんなにウザさに満ち溢れているんだろう。



「嬉しいな〜。ふふふふふ、女神さんの祝福投げキーッス!…どう?届いた?さてさて、というわけで、チュートリアルはこれでおしまい!」



ん?



「今の気付いた?投げキッスだけに、ちゅ〜トリアルだよ?ドヤァ!」



は?

何言ってんだコイツ。



「さーてさてー、無事にちゅ〜トリアルも終わったことだし、ちゃちゃっと本番始めちゃおうか!」






チュートリアルが終わったんだそうです。

これから本番が始まるそうです。

気が付くと、おれは謎空間にいた。

目の前には、謎女神がいた。

実際ウザイ。



大事なことなのでもう一度言おうか。



運命改変アクションRPGを全クリしたんだが、チュートリアルが終わったんだそうです。

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