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2キャラ目、島だね!

燃える夕陽。


穏やかな波の歌。


潮風が頬を撫でる。


地球にいた頃には写真でしか見たことがなかったような、美しい光景が目の前に広がっている。


まるで南の島のヴァカンス。


そうだよね、たまにはいいよね?


ここがどこなのかとか、どうでもいいよね?


そういうことにしておこうよ。




(…………マスター、そろそろ現実を直視しよう)


やだやだ!

絶対にいやだ!!

現実なんて嫌いだ!

いつも現実はひどい!!


(マスター、止めなかった我も悪かったと思う。水中をあれほど自在に移動するなんて初めてであったから、つい楽しみすぎてしまったな)


だよね?

そりゃおれも初めてだったし。

超楽しかったよね?


(うむ、超楽しかった!)


時間を忘れてしまったよね。

ついでに帰り道もね!

ここ、マジでどこだよ?


(島だな)


うん、島だね!

青マナ出るよね!


(あと、海だ)


そうだね、海だね!

…………たしか今朝は林の中にいたはずだよね。

どうしてなんで今は海なの?

海ってなんなの?

意味わかんない。


(水精の土地を、奥深くまで進んできたのであろう)


………はい、フラグ回収しましたー。

たしかに、おれは水精の土地の奥深くには用は無い、って言いました。

フラグじゃなかったんだよ?

前振りのつもりじゃなかったんだよ?

だって現実でしょ?

現実にはフラグとか無いんだよね?

でも、来ちゃったね。

水精の土地の奥深くに来ちゃったね!

っていうか海じゃん、土地っていうか海じゃん?


(小川から池、池から川、川から湖、湖から大河、大河から海。たぶん、水中で気付かないうちにかなりの速度で進んでいたのであろうな!)


えぇ、速かったですとも。

正直、周囲の状況とか気にする暇が無いくらい速かったです。

速かったっていうか、むしろ超楽しかったって言う方が正しい感じですけど!

でも、そんなに移動しちゃうかい?

それほど速かったのかい?

ひょっとして、この鮫馬ってかなりハイスペックだったのかね?


(水中での速度と機動力には秀でていたと思うぞ?あとマスター、月を見てくれい)


月?


夜が迫り、薄暗くなった空を見上げる。

夕闇にふたつの月が浮いていた。

えーと、赤みがかったほうが死属の月で、青みがかってるのが生属の月、だったか?


(生属の月が丸みを帯びているであろう?)


あぁ、月が満ちているほど、対応する属性の力が強くなるんだっけ?

ってことは、生属の三元、土魂、水精、木霊の力が強かったのか。


(うむ、水精の力が強まって、おそらく、水の流れもかなり速くなっていたはずだ)


なるほどねー。

それで海まで流れてきちゃったわけねー。

馬鹿なの?

油断しすぎなの?

やっぱりおれは残念マスターなの?

そっ、そんなことないよね!!

大丈夫!!

ほら、RPGに寄り道は付き物じゃん?

ちょっと息抜きも必要ですよね!


(残念マスター、これはゲームではない、現実だぞ?)


やだやだ!!

いつも現実はひどい!!!

攻略ウィキ作成まだですかー!!?




自分の愚かさを呪いつつ、砂浜に転がる。

隣にうずくまる鮫馬の黒い巨体を、ぼんやりと眺めてみた。

しょうがないから、朝までのんびり過ごすことにする。

よくよく考えてみれば、鮫馬だって、あの魚馬の群れのもとに帰らなければならないはずだ。

それなら、きっとあの林の中の池のところまで戻ってくれるだろう。

それにしても、魚と鮫が同じ群れの仲間って、なんなんだ?

いや、馬がベースだからいいのか?

まぁファンタジーな異世界だし、そんなこと考えても仕方ないか。

正直なところ、状況が許せばこのまま冒険してみたいとは思う。

せっかくの異世界なんだもの!

異世界漂流記ってやつですよ!?

英雄流離譚ってやつなんですよ!!?

でもしょうがない、今はそんな状況じゃない。

やるべきことがある。

でもでも、ほら、万眼先生も楽しみなさいって言ってくれたし?

たまにはいいよね?


(まぁ、我もマスターと新婚旅行気分を味わえるから、たまにはいいと思う!)


ちょっデレ邪剣……。


「ギョッ!!アニキ達ィーッ!あれ見てくだせぇ!!」


えっ?


「ウオォッ!!でかい!!」


「まさかなッ!?馬だぜッ!?あの馬、俺様にぴったりじゃねぇか!?」


「ギョッ!でも見てくだせぇ!隣になんか黒いのがいますぜ?」


「ウオォッ!黒いやつ!!馬も黒い!!」


「まさかなッ!?オイッ!そこの黒いの!!その馬はおめぇのか!?」


………なんだろう、なんか来ちゃったみたいなんだけど。


(ぐぬぬ………誰だ!?我とマスターの甘いひとときを邪魔しおって!!)


砂浜から立ち上がって後ろを振り返る。

なんかもう、見た目から既に騒がしい三人組がいた。

鉾を片手に掴んだ、マーフォーク。

って人間じゃないのかよ!!?

耳とか肘とかにヒレが付いてて、魚っぽい皮膚に、鱗っぽい軽鎧。

人と魚が7対3って感じだ。

基本の形は人間だけど、魚っぷりが溢れ出てる。

某アメリカ産トレーディングカードゲームに出てくるような、マーフォーク・THE・マーフォーク。

あれ、ちょっと待って。

なんかひとり武器が鉾じゃないよ、おかしいよ、でっかいよ。


「オイッ!おめぇらアレやるぞ!!」


「アレっすね!?」


「アレッ!!やる!!!」


マーフォーク三人衆がなにやら横一列に並び始めた。


向かって右の、背の低いやつが一歩前に出る。


「ギョッとしやがれ!!あっしは『流れ島の三兄弟』の三男!下っ端だけどなめるんじゃねぇ!!『流れ島の二叉鉾』とはあっしのことでぇい!!」


そして決めポーズ。

二叉鉾を振り回してビシッと構える。

別にカッコ良くはない。

だが、こいつらの気持ちはわかった。

なるほどね、そういうアレか。

ここは見届けてやるのが筋ってもんだろう。


(マスター、コヤツらめんどくさそう。隙だらけだからぶっ飛ばしてしまおう?)


邪剣、やめてあげてね?

これくらい見届けてあげようよ?

たとえどんなにダサくたって、決めポーズは邪魔しちゃダメだぞ?


次は、一番左のヒョロ長いやつが前に出た。


「ウオォッ!冷静沈着な狂戦士!!『流れ島の一番槍』は強い!!」


そして決めポーズ。

直槍を頭上でプロペラのように回して、ドヤ顔で構える。

鉾じゃなくて槍なんだね。

狂戦士なのに冷静沈着なんだね。

それは強いね。


最後に、筋骨隆々な真ん中のやつが前に出る。


「まさかのマサカリ!!『流れ島の三兄弟』の大兄貴!!『流れ島の喧嘩王』とは俺様のことよォッ!!!」


そして決めポーズ。

まさかの、マサカリです。

本人の身長くらいある馬鹿でかいマサカリを、片手でブンブン振り回してから肩に担いだ。

もはや槍とか鉾とかのカテゴリーじゃない。

斧ですね。

マーフォークって呼ぶのは語弊があるかも。

マーアックス?

いや、直槍の時点でフォーク状の武器じゃなかったけどね?


『流れ島の三兄弟』とやらは、決めポーズのままでじっとしている。

やはり、カッコ良くはない。

さて、それで、このあとどうするんだろう?

戦うのかな?

戦うんなら、この演出の無敵時間が切れたあとの隙を狙って、さっさと片付けてしまおう。

もう充分見届けてあげたよね。


(うむ、コヤツらぶっ飛ばしてしまおう?)


おう、邪剣どうした?

そんなに好戦的な性格だったっけ?


(だって!せっかくマスターとロマンチックな一夜を共にする雰囲気になってたのに!!)


なってないよ!!?

そんな雰囲気出てなかったよね!!?

っていうか、もう何夜も共にしているよね!?

あっ、いや、性的な意味ではない!!!

いやいや待てよ、でもそうか、もう外見設定あるんだよね!

そうだった、ご褒美じゃないか!!

ならばよし!


「まさかな!?最高にキマッてたのに無反応かぁ!!?てめぇ!!なんとか言えやぁ!!!」


「大アニキ!!きっとギョッとしちまってるんですよ!」


「ウオォッ!!無言!!!」


あっ、怒られた。

どうしよう、変なのに絡まれちゃったけど、『邪剣使い』は喋れないんだよね。

「邪剣使いは喋れない」って、なんかラノベのタイトルみたいだな!!

うーむ、なんとなくジェスチャーで喋れないことを伝えてみようか?


「ん?待てよ?まさかな?よく見たらおめぇ、ひょっとして人間か?」


「ギョッ!?人間!!?人間がなんだってこんなところに!?」


「ウオォッ!!人間!!!」


あーちょっと待って!

こいつら自分たちだけで盛り上がって話をどんどん進めそうな気がする!!

ジェスチャーだ!

急げ急げ!!

えーと、喋る、できない。

おれ、喋る、できない!!

左手で口をパクパクするような動きをして、「喋る」を表現する。

それを否定するように手と首をブンブン横に振って、「できない」を表現する。

これで伝わったかな?


「ギョッ!みょ、妙なマネするんじゃねぇ!!」


「ウオォ……」


「なにやってんだ?パクパク……ムリムリ……?」


伝わんないか?

もう一回だ!

おれ、喋る、できない!!


「パクパク………あぁ、まさかな?」


おっ?

まさかな?

伝わったかな?


「まさかな!?おめぇ!!口呼吸、できない、ってか!!?」


「ウオォッ!!?」


「ギョッ!?さすがアニキ!!口呼吸できない!?ってぇことは、こいつぁ人間じゃなくて!?」


「まさかな!!?おめぇもエラ呼吸か!!?」


「ウオォッ!エラ呼吸!!ワシらと同じ!!!」


いやいやいやいや!!!

違う!!

ちょっ、えっ、エラ呼吸!?

違う違う!!!


「ムリムリムリムリ、ってか?がははははッ!!!そうかそうか!!口呼吸はそんなに苦手か!!このサカナ野郎め!!!」


「あっしも口呼吸は苦手ですぜ!!陸上じゃあ調子が悪いのなんのって!!あっしも立派なサカナ野郎でさぁ!!!」


「ウオォッ!!ワシもサカナ野郎!!!」


「がははっ!!このサカナ野郎どもめ!!!まさかな!!そんな格好してっから人間かと思ったぜ!!!しかしなんだっておめぇは身振り手振りなんだ?」


「ギョッ!!アニキ!きっとこいつぁ喋れないんですぜ!だからあんなに必死で人間じゃないことを伝えようとしてたんでさぁ!!」


「ウオォッ!!喋れない!かわいそう!!」


おい。

待てよ。

どうしてそうなった?

サカナ野郎?

「口呼吸できない」ジェスチャーじゃないよ!!?

「喋れない」ジェスチャーだよ!?

「喋れないから口呼吸できないことをジェスチャーで伝えた」んじゃないよ!?

「喋れないっていうジェスチャーをしてた」んだよ!!?

なんで喋れないことを勝手に察してくれちゃうの!?

そっちを察してくれちゃったら、もうジェスチャーの意味が「口呼吸できない」で固定されちゃうじゃん!?

もう覆らないじゃん!!?


「そうかそうかぁ!!喋れねぇなんて、大変じゃねぇか!!おう、おめぇ悪かったな!人間だなんて疑っちまってよ!!」


(なっ、なんと、マスターは、実は人間ではなかったのか!!?サカナ野郎なのか!?)


ちょっ、邪剣!!

ここにもアホの子がいたよ………。


(だっ、大丈夫だぞマスター、実は魚でも大丈夫!!ほっ、ほら!我だって剣だし!!我は、たとえマスターの正体が魚類だとしても、その、えと………マスターのこと、あっ、愛してます…)


「ウオォッ!!武器!武器!!」


ん?

なんだ?

一番槍くんが邪剣を指差して騒ぎ出した。

邪剣、なんか呼ばれてるみたいだよ?


(もうっ!!!マスター!?今のちゃんと聞いてくれてたかっ!!?)


「ギョッ!!?そっ、その武器は!?」


あっちもこっちも騒がしいな!!

せっかくの静かな浜辺のヴァカンスが台無しですよ!!!


(もう知らないっ!!このサカナマスター!!!)


「おめぇ!!まさかな!?そりゃ、剣じゃねぇか!?」


なんだろう。

マーフォーク?三人衆が、邪剣を見て驚いて顔を見合わせている。

あと、邪剣がスネた。

とりあえず邪剣はほっといていいや。

で、なんでこいつらは武器が剣ってことにここまで騒いでるんだ?


「まさかな、おめぇも、三叉鉾生まれじゃないサカナ野郎だったわけか」


「ウッ、ウッ、ウオォッ……」


なんだなんだ!?

一番槍が泣き始めたぞ!!?


「ギョウゥッ、おめぇさん、喋れねぇうえに、そんな人間みてぇなツラで、そのうえ、武器まで三叉鉾生まれじゃなかったなんて………」


おいおい、下っ端も泣いてるぞ?


「ギョッ!だけどもう安心してくだせぇ!!あっしも見ての通り二叉鉾に生まれちまったけど、大アニキに出会えて、今は胸張って生きてるんでさぁ!中アニキは槍だし、大アニキなんてマサカリだぁ!!三叉鉾に生まれなかったからって、気にする必要なんてねぇや!!!」


「がははっ!!!俺様もまさかのマサカリだったけどよ!おめぇはまさかの剣か!?三叉鉾生まれなんざ、くだらねぇぜ!!兄弟よ、安心しな、おめぇも、立派なサカナ野郎だぜ」


「ウオォッ!!!兄弟!!!新しい兄弟!!」


展開早ぇよ!

兄弟にされちゃったよ!

話がどんどん進んじゃうね!!

三叉鉾生まれじゃない、とか言ってたな?

三叉鉾に生まれなかった?

なにそれどういう意味?

こいつら、もともとは三叉鉾を持って生まれてくる種族、ってことなのか?

でも、こいつらの武器は三叉鉾じゃない。


下っ端は二叉鉾。


冷静沈着な狂戦士は直槍。


大兄貴はまさかのマサカリ。


そして、なぜかサカナ野郎だと思われているおれの武器は、邪剣。


おれもこいつらも、三叉鉾ではない。


だから兄弟とか言い出したのか?

勝手に勘違いしてるくせに、なんか良いやつすぎるだろ。

泣き出しちゃったし。

勘違いなのに、安心しな、とか慰められちゃったよ。

なんなんだよ、こいつら。



こいつら………。



この…………サカナ野郎どもめ!!!



おれたちは、4人で熱く肩を抱き合った。

そうして、サカナ野郎どもの夜が更けていくのでした。


(ぐぬぬ………これが放置プレイというものか!もう!我はもっとかまってほしいのだぞ!)


あと、邪剣がめっちゃ身体を侵食してくるのでした。

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