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2キャラ目、歴史の勉強

2日目の夜。

闇の中、おれは逃げるようにその集落を後にした。



少女を運んでいったあの村とは、真逆の方向に出発した。

あの村とは下手に接触しない方がいいだろう。

それにあの少女にも、正直なところ、もう出会いたくなかった。

この身体は睡眠も食事も不要だ。

その代わり、喋ることができない。

だから人の住むところには近寄る必要が無いし、むしろ避けて通る方が無難な気がした。

いや、言い訳だ。

今はまだ、人と接するのが怖かった。

あの少女の瞳を、忘れられずにいた。



少し歩いたところで足を止める。

意図的に森を切り拓いたらしい、空き地があった。

その中央には、「魂の牢獄」の入り口によく似た、石の祭壇が建っている。

周囲から、用心深く調べてまわる。

特に異常も無く、発見も無い。

この祭壇には、どこかに通じる入り口らしきものは見当たらなかった。

あの集落の祭壇よりは、少し小さい気がする。

気付いたことといえば、その程度のことだった。

これは、おそらくダミーか?

ちょうどいいので、祭壇のふもとで一息つくことにする。

背後が人工物で、周囲は視界が開けている。

森の中よりは安心な気がした。



『邪剣使い』の攻略が始まってから、ここまでずっと余裕が無かった。

今だって、正直、心に余裕は無いけど。

今後のことについて、邪剣と話し合わないといけない。

情報の整理もしないといけないな。


まずは、『邪剣使い』のぼんやーりとした全体像を考えてみる。



『邪剣使い』


性別:男 年齢:青年期?


スタート地点:「魂の牢獄」


武器:『邪剣』


目的:不明(邪剣は、邪神の復活が目的だった)


特記事項:


邪剣を装備している

→邪剣には自我がある

→邪剣の肉に身体を侵食されている

→邪剣の肉は伸ばしたり広げたり操作できる(魂消費)

→邪剣の肉から剣身を追加で生やすことができる(魂消費)

→『魂喰らい』を使用できる(魂消費)


邪剣に魂喰われてる

→魂不在の為、記憶無し、言語使用不可、言動が本人に相応しいように変換されない

→邪剣の魂の蓄積量から力が供給される為、睡眠不要、食事不要

→ダメージは邪剣の魂の蓄積量が肩代わりする

→邪剣の魂の蓄積量が無くなると、肉体も死ぬ


コミュ力:魂喰われちゃってるし……


推定難易度:推定っていうか、初日から邪神



こんな感じかな?

とりあえず、『邪剣使い』本人については、ほぼ何もわかってないな。

次は今後の方針を決めるか。



・31日目までに、バルゴンディア王国のナーン森林付近に行く


・新キャラのアンロックを目指す


・情報収集、特に、『奴』を倒せそうな強い人間の情報を集める


・『奴』の動向を探る


・別の『運命改変者』を探す



優先順位もだいたいこの順番かね。

新キャラのアンロックか………。

そのうち、ちゃんと人がいるところにも出ていかないと。

ひとまずはこの方針で、5年後に到達してみないとな。

今はなにより、情報が少なすぎる。

あっ。

そうだった!



・この世界の主神が本当に敵なのか、それを確かめる



これもあったか……。

これ、どうなるんだろう?

均衡律だっけ?

異世界から来たおれは、粛清対象なんだよな。

まさか、いきなり主神に襲われるなんてことはないよね?

ヤバイ。

残念だから、それ有り得る。

残念ながら残念だから。

駄目だ、これは今考えてもしょうがない。

残念な想像が浮かんでくるだけだ。

あとは、目的地の確認をしとこう。


邪剣、聞きたいことがあるんだが。

っていうか、けっこう長い間、喋ってなかったな?


(うむ。我も、色々と考えていてな)


そうか。

そりゃ考え込みもするか。

その、大丈夫か?


(ありがとう、マスター。それで、聞きたいこと、というのは?)


あぁ、バルゴンディア王国のナーン森林、って知ってるか?

今の段階では、そこが目的地なんだ。


(バルゴンディア、か)


おぉ、知ってたか?


(ナーン森林とやらはともかく、この世界で「中つ国」バルゴンディアを知らぬ者など、おそらくいないぞ、マスター)


(神々の支配するこの次元、バローグを、人の身で統べた王の国、バルゴンディア)


(この世界バローグを統一した、最初で最後の王国、それが旧バルゴンディア王国だ)


旧?

ってことは…。


(うむ、今のバルゴンディアは、この世界の統一王朝などではない。かつての名残で「中つ国」などと呼ばれているが、数ある国家のうちのただの一国だ。旧バルゴンディアの栄華は、統一を果たした王、一代限りのものであった。幻の王国、今ではただの英雄譚にすぎん)


くわしく。

邪剣、くわしく!!

その話はロマンが溢れすぎててヤバイ!

なにそれ、バルゴンディアってそういうネーミングだったの!?

神々のバローグを統一した人の王国、バルゴンディア!!

ドヤ顔感パネェッすよ!!?

マジでもうちょいその辺の歴史を語ってくれ!!


(…………お話ねだるマスター可愛い)


とりあえず統一の前からだな!!!

そのあたりから語ってくれ!!

早く!

邪剣早く!!


(クフフッ、仕方ない、マスターの為に我が語ってやろう!)



ーーーーーーーーーーーー


それは、古い時代の話。

まだ、先代の「均衡」が主神であった頃のこと。


先代の「均衡」、邪神様いわく、均衡のジジイとは、それよりも更に更に古い時代に、「神座争い」を制したほどの力ある神であった。

「神座争い」、それは、その世界の主神の座を巡る、神々の大戦。

それまでは、バローグの主神を務めるのは「運命」であったのだが、均衡のジジイは神々の争いに勝利し、主神の座に昇り詰めたのだ。

先代の「均衡」とは、この世界に「均衡律」を定めた張本人であった。


さて、均衡ジジイの「均衡律」が定められて、ずいぶんと長い年月が過ぎていた。

誰もが「均衡律」を当然のものとして受け入れていた時代に、一人の男が現れる。

その男は、均衡ジジイの定めた「均衡律」に疑問を持った。

当時の世界は、各地に国々が乱立する、戦乱の時代。

国々が相争い、神々が介入し、民族が流動することで、結果的に世界全体の力の均衡が保たれる。

戦火による均衡であった。


男、のちに統一王となる、たかだか小国の一兵士は、大それたことに「均衡」とは別の方法を志す。

即ち、統一。

たとえ一度はバローグ全土に戦をもたらすことになろうとも、統一の後には必ず平穏が訪れる。

男はそう信じて、立ち上がった。

しかし均衡のジジイは、「人の世の統一が後にもたらすものは、世界全体の均衡を大いに乱すものだ」と、神々に向かってそう宣言する。

「バルゴンディア時代」、「統一期」、「大動乱」などと呼ばれる時代の始まりだった。


そして、男はある神の寵愛を受けることになる。

その神は、「運命」を司る女神。

当時の「運命」は、怠慢小娘の前任者、つまり、今ではもう先々代にあたる。

代替わりしているとはいえ、「運命」とは、かつての主神。

その「運命」が、「均衡」に挑む一人の人間に寵愛を授けた。

それによって、事態は「神座争い」にも似た構図になってきた。

「運命」につくか、「均衡」につくか、はたまた自分が新たな勢力として旗を挙げるか、神々も決断を迫られた。

一人の人間が始めた戦いは、いつしか全ての神々をも巻き込んでいたのだ。


ちなみに、当時の邪神様はまだ封印もされておらず、現役で暴れ回っておった。

我はまだ邪神様の一部で、自我も持っていなかった。

だからこの記憶や知識も、邪神様から頂いたものなのだ。

まぁ、このような上辺の事情を知っているだけで、実際の記憶を与えてもらったわけではない。

そして邪神様は、均衡のジジイとの間で結んでいた古き盟約により、同盟という立場で「均衡」の側に与しておった。

…………統一王との戦いの記憶は、特に秘め事として自分だけのものにしておるようだぞ。


だから詳細についてはわからんが、有能な配下や、神の助けに恵まれて、その男は、ついにバローグの統一を果たした。

そして、バローグ統一王朝、バルゴンディア王国の建国を宣言する。

「均衡」は敗れた。

統一王は人々の信仰を集め、現人神へと昇り詰めるのも時間の問題かと思われた。

人の王を経て、人の身でありながら主神の座へ。

多くの神々もそれを認め、前代未聞の出来事に、ある種の期待も持っていた。

新しい政、新しい時代の到来。

だが、それは余りにも短い栄華であった。


ーーーーーーーーーーーー



(とまぁ、こんな感じで統一が…)


いやいやいやいや、まさかそこで終わる気じゃあないよな?

余りにも短い栄華だったんだろう?

なぜどうしてなんだぜ?

続き!!

続きはよっ!!!


(クフフッ、仕方ないマスターだのう、もうちっとだけ続けるぞ?)


邪剣、それけっこう続くフラグだぞ。



ーーーーーーーーーーーー


統一王は死んだ。

殺害された。

殺したのは、統一王の弟だった。

最初の味方が、最後の敵となった。

そう仕向けたのは、均衡のジジイと邪神様。

統一王の急死により、王国は割れる。

後継者争いが起こり、群雄が割拠する。

一度は統一された世界、派閥や民族によって、統一前の状態よりもはっきりとした国々に分かたれた。

そう、それ以前よりも、力の均衡が保たれることとなったのだ。


均衡のジジイは、敗北などしていなかった。

それぞれの国には、妥協できる広さの国土があった。

統一により編成された戦力が、充分に分け与えられていた。

全てはこの均衡の為であったかのように。

それに気が付いた神々と人間たちは、戦慄した。

再び統一を目指そうとする者は、現れなかった。

その代わりに、とある一国を「中つ国」として認め、バルゴンディア王国の名を後世に残すこととした。

統一王が偉大であったことだけは、誰もが認めていたのだ。


ちなみに「運命」は、いつの間にか代替わりしていた。

新たな運命の女神は、その動乱の中で何もしなかった。

神域に引きこもり、人々の呼びかけにも応じず、神々とも交わろうとしなかった。

それどころか、その後どの時代においても、バローグの世界に影響を及ぼそうとしなかったのだ。

やがて、「運命神は働かない」というのが、バローグ中に常識として知れ渡ることとなった。

かつて「運命」が主神の座にあったことなど、忘れ去られていった。


そして、「均衡」の隆盛が訪れた。

時は流れていき、神々も人々も、統一の夢から覚めていく。

国々の争いはいくらか落ち着いて、それぞれ

政に精を出すようになった。

もはや誰も、「均衡」に逆らおうとする者などいない。

よって、古き盟約が真に果たされるべき時が来たのだ。

均衡のジジイと邪神様の間で結ばれていた盟約。

「均衡が極まった状態、それは真の意味での均衡ではない。真の均衡とは、均衡を崩しうる要素を内包すべきもの」

それが均衡のジジイの考えであった。

均衡が極まった時、邪神様は均衡を崩す要素に転ずる。

それが古き盟約。


「均衡」と「邪神」の対立。

邪神様は持てる能力を存分に振るい、配下を作り、闇の一大勢力を築き上げた。

邪神様の目的はただ一つ。

神は、人々の信仰によって、さらにその神性を高めることができる。

「均衡」の隆盛によって、世界中の信仰と畏怖を集めた主神、均衡のジジイはバローグ史上最強の神となっていた。

最強の存在の魂を喰らう、それこそが邪神様の目的であった。

そもそも邪神様は、その目的の為に盟約を結び、均衡のジジイに手を貸していたのだ。


「最終戦争時代」、「対立期」、「邪神叛逆」などと呼ばれる両勢力の戦いは長く続き、痛み分けのような形でありながら、最終的には「均衡」が勝利を収めての幕引きとなった。

両者はお互い大幅に神性を消費し、「均衡」は代替わりし、邪神様は肉体を失った。

もはや余力も無かった邪神様は、新たな「均衡」の女神の手によって、「魂の牢獄」に封じられた。

またしても世界中が巻き込まれ、均衡は乱れていた。

いくつかの国々は小国に分裂し、いくつかの国々は統一を掲げ、支配圏の拡大に乗り出した。

帝国の台頭、小国の乱立、統一以前ほど無秩序ではないが、またしても戦乱の時代が始まったのだ。


ーーーーーーーーーーーー



(マスター、流石にこの辺りで…)


いやいやいやいや、もうさ、せっかくだから今の時代まで語っちゃおうか?

まだなにか起こるでしょ?

それとも、この後は特に事件は起きないのか?


(事件………まぁ、無いこともないぞ?)


はよっ!!

続きはよっ!!!


(…………マスター、目的地の話忘れてそうだのう)



ーーーーーーーーーーーー


古い神々は、あらかた消えていた。

多くは代替わりし、新しい神々の時代が訪れていた。

我は、邪神様が封印される間際に創られて、依り代に相応しい肉体を求めてさまよっていた。

「均衡」を引き継いだ新たな女神は、そのまま主神の座をも引き継いでいた。

多くの神が代替わりしたばかりであったし、新たな「均衡」の女神の実力もまだ未知数であった為、「神座争い」が起こることもなく定着していた。

長年における人々の「均衡」に対する信仰は根強く、新米といえど、充分な神性を備えていることは明らかであった。


ちなみに、かつての「均衡」と「邪神」の対立が、人々の信仰に及ぼした影響は大きかった。

邪神様は好き勝手に暴れたい放題だったので、それを封印した「均衡」は、人間たちにとって正義そのものだったのだ。

邪神様とて、れっきとした「何かを司る神」であったのだが、「均衡」との対立の中で「邪神」という呼称が定着し、邪神様本人もそれを気に入ってしまったのだ。

…………邪神様本人が邪神と呼ばれることを気に入り過ぎてしまったせいで、もともと何の神だったのか、我にはわからぬ。


さて、新たな時代が過ぎていく。

人々が争い、神々が介入する、予定調和の均衡の世界。

しかし、平穏無事などということはなかった。

唐突に起きたその大事件は、当時から、「六元分割」、「大均衡」などと呼ばれていた。

後の時代でどう呼ばれているのかは、我にはわからぬ。

その後に、しばらくして我も封印されてしまったからな。

その大事件、引き起こしたのは、このバローグの主神、今代の「均衡」であった。


このバローグの世界を構成する要素として広く知られているものが、「二属六元」だ。

即ち、生死二属と、土魂、水精、木霊、雷子、火因、風気、の六元を表す。

土魂、水精、木霊、この三元は生属を備え、生三元とされる。

雷子、火因、風気、この三元は死属を備え、死三元とされる。

ただし、生死二属は容易に転ずる。

生属の木霊は活力をもたらすが、死属に転ずれば毒となる。

死属の火因は焼き尽くすものだが、生属に転ずれば熱をもたらす。

これらの六元は、世界中のどこにでもあり、混在している。


そう、かつては世界中に混在していたのだ。

その状態を、今代の「均衡」は、あの偏屈女神は、均衡が取れていないと判断した。

そして世界中の六元を、それぞれ世界の六方向に寄せ集めようとしたのだ。

もちろん、全てを寄せ集めることなど、いかな主神といえど無理だった。

せいぜいが、世界中の半分程度の量であったろう。

それでも、充分すぎるほどの天変地異が引き起こされた。

木霊が寄せ集められた土地は、異常なほどの樹木が生い茂り、その成長が止まらない。

火因が寄せ集められた土地は、そこかしこで溶岩が噴き出し、火山が立ち並んだ。

それが「六元分割」と呼ばれた大事件だ。

それでも「均衡」の信者どもは、この事件を「大均衡」と呼んで歓迎したようだ。


もともとは、かつて邪神様が呼んでいた、「偏屈女神の均衡」という俗称は、なぜかいつの間にか知れ渡っていた。

「六元がきちんと分かれている光景、まさに均衡よね」と語っていたとかなんとかいう噂まで流れていた。

そして、六元を分割しただけでなく、実は大陸も一つにくっつけてしまっていたとかいう噂まで流れていた。

ちなみに、「海と陸がしっかり分かれている光景、まさに均衡よね」と語っていたとかなんとかいう噂まで流れていた。


そんな噂が流れていた頃、なぜだか我は、あの偏屈女神に発見されてしまった。

我は、土魂が寄せ集められた土地、岩と砂の不毛の地に封印された。

それ以後、この世界に何が起こったのかは、我にはわからぬ。

この身体の元の持ち主が我の封印を解くまで、ずっと眠りについていたようだ。

封印から解かれ、この身体の持ち主の精神を侵食し、我は邪神様の下へと向かった。


ーーーーーーーーーーーー



(そして我は………えと…その……大切なヒトと出会って……)


二属六元だとう!!?

属性キターーーッ!!!

やっぱり相性とかあるのかな!?

適性とかあるのかな!!?

伝説の七番目の属性とか!!

とりあえず耐性スキル的なものを鍛えたいんだが!!!


(………マスターの馬鹿者っ!)


いや、でもアレか。

結局、「レベルを上げて物理で殴ればいい」なのか?

レベルとか無いけどね。

いい加減、この世界に期待するのはやめておこう。

悪い意味で期待を裏切られるより、良い意味で期待を裏切られるほうが幸せだよね。

だから期待しないでおこう。

属性なんていらないよ。

この左拳で超物理攻撃するから。


それで邪剣、目的地の話なんだが…。


(ぐぬぬ………もう我は喋り疲れたぞ!)


あっ、ぐぬぬ邪剣可愛い。


(ずるいっ!!マスターはずるいぞ!この邪剣たらし!!)


邪剣たらしってなんだよ。

それすごいピンポイントじゃん。

いいから早く次の話に進もうか。

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