2キャラ目、たんとお食べ
申し訳ございません。
作者の社畜力が上がっておりまして、更新がだいぶ遅れてしまいました。
ちゃんと続きます!
読者様、今後ともよろしくお願い致します。
さて、新しい相棒を、邪剣を振るう初めての戦闘だ。
とはいえ、左拳でシュワ消せちゃう相手だし、不安は無いな。
まずは右足を掴んでいる怨霊を斬り飛ばしてやろう。
(今のまま我を振るっても、怨霊相手に攻撃は通じぬ。我に蓄積されている魂を使って、剣身に『魂喰らい』を発動するぞ)
うん、不安はあったわ。
大丈夫か?
おれの魂使ったりしないでね?
ホントに大丈夫?
(馬鹿者!そんなことをすれば、オヌシとこうして喋れなくなってしまうであろう!?我を信じよ!)
やだ、またナチュラルにデレてる。
これってやっぱり、邪剣ルートありますよね?
まさか、制作時間が足りなくて邪剣ルートはお蔵入りになっているとか、そんな話はありませんよね?
(これだけの怨霊に囲まれてその余裕ぶり、なんなのだオヌシは……。ともかく伝えておくぞ、修練の為に我を振るってもらうが、『魂喰らい』で攻撃すると、魂の獲得量よりも消費量の方が大きい。だから、半数ほどの怨霊はオヌシの左拳で始末してくれい)
んー、まさか女の子設定の邪剣に魂を貢いでやることになるなんて。
中二病全盛期だった頃の自分に教えてあげたいよ。
さーて、開戦だ!
右足に絡みついた怨霊に邪剣を振り下ろす。
コワイ!
そういや剣なんて振ったことないし!
自分の足下に向かって刃物を振るとか!
武器は違うけど、なんとなく無明の身体で戦ったときのことを思い出しつつ動いてみる。
この『邪剣使い』の中には、本人の魂がいない。
だから今のおれの動きには、『運命改変』の法則が適用されていない。
『邪剣使い』の動きに相応しいように、おれの動きが変換されてくれないのだ。
なんとか足下の怨霊には剣が当たった、ような気がした。
手応えが無い。
いや、ちょっとこう、カスーッて感じしたかな?
ちゃんと斬れたらしい。
右足が解放される。
まぁ、あの無明と『奴』の超化け物大戦の感覚についていくのに比べれば、剣を振るくらい、なんてことなかったねー。
お次は左右の壁から湧いた怨霊。
まずは左から。
踏み込み。
左拳。
瞬殺だ。
まだ踏み込みの速度に不満っていうか違和感があるけど、この動きはもうすっかり定着したな。
ん?
もう死んでるから、瞬殺じゃないか?
シュワ?
瞬シュワか?
瞬シュワって、言いにくいね!
早口言葉みたい!
心霊シャンソン歌手の新春瞬シュワショー!
っていうか骸骨といい、怨霊といい、また死んじゃってるパターンの敵じゃねーか。
そういやおれも肉体を失ってるし、『邪剣使い』も死んじゃってるようなもんだし。
なに、流行ってんの?
この異世界、死んじゃってる、っていうのが流行なの?
そういう時期なの?
この季節、死んじゃってるパターンがアツイ!
(オヌシ、戦いながらなんで)
右の怨霊は邪剣でやるぞー。
せっかくだし、ぐにょっと邪剣の肉を伸ばして斬りつけてみよう。
えーっと、どうやんだ?
伸ばそうと思えば伸びるかな?
イメージしよう。
ぼんやりと、右腕の邪剣の肉が伸びて相手を斬りつける光景を想像してみる。
そんで振る。
おぉ!!
すげぇ!!!
こう、スパッと振ると、ビュルッと伸びるな!
あー、これ、邪剣強いわ。
突然間合いが伸びるし、練習すれば、こう、グネッと軌道を変えたりできそうだ。
そんで、邪剣の肉からさらに剣身を生やしたりできるし。
その上、『魂喰らい』を発動させておけば、肉体と同時に精神にダメージ、って感じか?
究めたら、良い初見殺しの武器になりそう。
(戦いながらなんでそんなに)
よーし、背後の怨霊どもはまだちょっと距離がある。
ちょうどいいから、この距離でも邪剣を当てられるか試してみよう!
まず、見ることに集中する。
5体か。
けっこういたな。
んー、相変わらず暗くて見づらい。
じゃあ2体だけにうまく邪剣を当ててみようかな。
1番壁ぎわの前から2番目、狙います!
スパッ!
ビュルッ!!
おぉーーー!!!
届く届く!!
そのまま伸びた肉の左側面に剣身を1本追加する!
ニョロッと生えて突き刺さる!!
2体撃破完了!
踏み込むぞー。
踏み込んだぞー。
左拳の一振りでまとめて3体!
ふふふっ、この配置を計算したのだ。
スケルトン軍団との戦いで、先生から徹底的に効率重視の先読みを仕込まれたからな!
(なんでそんなに高速で)
さてさて、次は正面の大鎌持ちだな。
とりあえず踏み込みで。
こんにちは!
間合いに入ったよ!
あー、これ、普通の怨霊とたいして変わらないね。
このまま左拳当てれば終わる。
でもせっかくだから、大鎌を使うところを見ておきたい。
ほれほれ、振ってこい。
おぉー!
やっぱりその鎌も物質透過なわけね!
怨霊が慌てて横に薙いだ大鎌は、通路の壁につっかかるかと思いきや、壁をすり抜けて振るわれた。
それをバックステップで見届けて、踏み込みからの左拳で大鎌持ちをシュワ消し飛ばす。
はい終了っと。
あれ?
おれってひょっとして、けっこう俺ツエーしてない?
でもなー、相手が相手だし。
雑魚相手に無双してもしょうがないよね。
骸骨王の本気のスケルトン軍団が相手だったら、こんなに楽勝じゃないだろうし。
(なんでそんなに高速で思考できるのだ!?というかもう終わったのか!?)
ん?
あぁ、そうかそうか、邪剣はこの速度についてこれないか。
まぁ、これから慣れてもらおう。
大丈夫、割とすぐ追いつけるから!
(ばッ!?馬鹿だ!オヌシは馬鹿過ぎるッ!!オヌシのような化け物に追いつけるはずなかろう!!?なんなのだ!?いい加減我に正体を明かしてくれい!!)
化け物って!
んー、その反応、これマジで俺ツエーしちゃってる感じなのか?
まだまだあの化け物大戦の領域には達してないと思うんだけど。
それに先生からもおれは凡人って言われたし。
おれって、ホントにそんなに正体が気になっちゃうくらい強いのか?
(だからなぜその自覚が無いのだ!?その左拳!そこまで鍛え上げるのに相当の修練を積んだはずであろう!?今までに幾千幾万もの強敵相手に練り上げてきたからこそ、その威力があるのであろう!?その拳で殴ってきた相手の力量を思えば、自ずとオヌシ自身の実力もわかるはずではないか!)
あー、殴った相手、ですか。
幾千幾万とかじゃなくて、1人?っていうか単体、だし。
あれと比べたらおれなんて遥かに格下だし。
っていうか比べる相手間違ってるし。
そもそも『奴』を倒すのがおれの最終目的だし。
(ひ、ひとり?1人しか殴っておらんのか?いや、そういう嘘はいらんから。たった1人を殴った程度で、それほどの力を宿せるはずがなかろう?強大な敵に挑むほど、数多の敵を屠るほど、乗り越えたときに得る力は大きい。オヌシのその左拳に宿った力は、尋常の手段では身につけられないはずのものだぞ?そんなに我に秘密を明かしたくないのか?)
いやいやいや、ちょっと待て、おれを嘘つき呼ばわりするなよ!
秘密にするとかじゃなくて、ホントに1人?の相手しか殴ってないんだって!
今、強大な敵に挑むほど力を得るとか言ったな?
尋常の手段じゃないとか言ったな?
じゃあなおさら『奴』を殴ったからに決まってる!
(…………本気か?たった1人の相手を殴っただけで、それほどの力が身についた、だと?1柱の神を相手取ったとしても、その力、得ることができるとは到底思えぬ。その相手、神すら凌ぐ、とでも?)
神すら凌ぐかって?
当たり前だ。
『奴』は『神殺し』だからな。
(かッ!!?オイッ!冗談にしてはタチが悪いぞッ!?『神殺し』を宿すほどの使い手を、そんな相手をオヌシは殴ったというのか!?)
冗談なんかじゃないさ。
少し前にも、『世界喰らい』を知ってるって言ったろ?
その相手が、それだ。
まぁ殴ったのはおれの戦友なんだけどな。
おれは、その魂を継いだだけだ。
(ん?少し前に?『世界喰らい』だと?急に何を言っておる?)
えっ、いやいや、邪剣が『魂喰らい』の話をしたときに言っただろ?
それより上位の『世界喰らい』を知ってる、って話。
おれ、話したよな?
(なんだ?何を言っておるのだ?そんな話、我は聞いておらんぞ?)
いや、絶対に言ったって!!
世界を喰らうとかふざけた能力あるはずないとか言って!
………あっ。
(なんなのだ?我はそんなこと言っておらんぞ?たしかに、『世界喰らい』などと、ふざけた能力であるとは思うが)
くそっ!
そうか、こういうことになるのか。
(ん?どうした?オヌシ、さっきから変だぞ?)
邪剣、おれたちは、さっきまでなんの話をしていたか、覚えているか?
(さっきまで?もちろん覚えておる。我がオヌシの正体を問うて、そしてその左拳を如何にして鍛えたか………おぉっ!?なんだ、なんだこれは!?待て待て!我は何かを忘れたぞ!?たしかにあったはずの記憶が消えていくだとッ!?オイ!なんなのだこの感覚は!!?)
『認識不可』だ。
(にッ!!!?ぐぬぬッ!『認識不可』だと言ったな!?今、オヌシはたしかにそう言ったのだな!?ふざけおって!その情報すら消えていくッ!!忘れていくッ!待てッ!!もう一度言ってくれ!忘れてしまう!!今オヌシが言った言葉をもう一度!!)
何度でも言ってやる。
おれの敵は、『認識不可』で、『世界喰らい』で、『神殺し』の化け物だ。
覚えられるか?
(覚えられるかだと?これは、無理だな。忘れていく。この我が、この我の意識が干渉されるッ!!クッ、これは、この感情は知っておる、知っておるぞ。これが、そうか。我が抱くのは、初めてのことだがな。オヌシにさえ、これほどの感情は抱かなかった)
恐怖、か。
(あぁ、そうだ。これが恐怖だ。オヌシが我に伝えたのだ。我は何かを忘れたな?もう、思い出させないでほしい。恐くて、たまらぬ。我は、もう知りたくないッ!)
すまない。
その恐怖、おれは知っている。
やっぱり、忘れたままでいいさ。
本当はさっきも伝えたんだけど、この身体で挑むつもりは無いんだよ。
すまなかった、その恐怖は耐えがたいよな、話題を変えようか。
おれの正体を教えよう。
ちなみに、邪剣はどう思う?
おれの正体って見当もつかない感じなの、ってうおぉっ!!?
斬られたッ!!!?
痛ッ!?
痛くない!!
突然顔面めがけて迫ってきた鎌に気付いて身をかわしたが、鎌の刃はおれの右肩を斬り裂いた。
大鎌持ちの怨霊が、天井から逆さ吊りで鎌を振り下ろしたらしい。
邪剣!!
(振るえい!!)
邪剣が応えるのと同時に、肉を伸ばして天井の怨霊を斬りつける。
その勢いで回転し、右から湧き出した怨霊に裏拳で左拳を叩きつける。
斬られたッ!!!
今度は下から!
とっさに邪剣で斬りつける!
くそっ!
舐めてた!
いい連携じゃないか!!
瞬時に周囲を警戒、背後の怨霊を左拳で消し飛ばす。
また前方に向き直り、右の壁から横向きに湧き出して鎌を振るおうとしていた怨霊に左拳を当てる。
これで終わったのかな?
こいつら、いつも話の途中で邪魔するよね。
話の途中はよくないと思う。
(あれ、オヌシ、ちょっと前に我を散々話の途中で鞘に戻しおったはずだが?話の途中はよくないのであろう?我になにか一言あっても)
終わったと油断させておいて左の壁から脳天めがけて鎌が振るわれる。
だが残念、右に意識を向けさせてきたのは気付いていたぞ。
踏み込みからの左拳で鎌を掻い潜って怨霊を消し飛ばす。
で、邪剣なんか言った?
(ぐぬぬ……聞こえておるくせに!高速の思考でちゃんと聞いておったくせに!!)
はいはいスマンスマン。
ごめんな邪剣、今それどころじゃないんだよ。
たくさん喰えよー。
ノーマル怨霊が左右の壁からわんさか湧いて出た。
これは目くらましっぽいな。
背後、上下を確認しつつ、左拳をパパパッと当てていく。
背後に敵影無し。
上下からはまた鎌の刃が見えた。
これが本命か。
ひとまずバックステップで避けて、いや、右に本命がいた。
ノーマル怨霊の群れに紛れて、右の壁から鎌が突き出している。
踏み込みで前方に避難。
即座に振り返って、上の怨霊めがけて邪剣の肉をビュルッと伸ばし、撃破する。
残りは左拳でやるか。
上の怨霊をやるときは邪剣を使うほうがいいし、その為の力は余分に蓄えておきたいよね。
踏み込みから地を這うように左拳を振るって突き上げる。
下の鎌持ちと、周囲のノーマル怨霊がごっそり消えた。
壁際の鎌持ちと残りの怨霊どもに、パパパッと左拳をお見舞いする。
よし、こんなもんかな。
ちゃんと集中して警戒してないとダメだね。
いっぱい食べたか?
(………うむ、これほどの蓄積量は未だかつてない。あの鎌に斬られたダメージなど気にもならんほどだな)
あぁ、アレはやっぱり、その邪剣の力の蓄積量がダメージを肩代わりしている感じなのか?
(フン!ヘマしおって!この身体には我が力を供給していると言ったであろう?我の蓄積量がついえぬ限り、この肉体が死を迎えることは無いのだ!大事に使うのだぞ!)
マジか。
邪剣、実はけっこうすごいじゃん。
この肉体、食事とかいらんの?
(クククッ、愚か者め!食事だと?我は『魂喰らい』だぞ!魂を変換して得た莫大な力に比べれば、そのような行為で得られる力など微々たるものよ!ようやく我のすごさがわかったか!!遅かったのう!!もっと我を褒め称えよ!!我はオヌシにたくさん褒められたいのだぞ!)
『邪剣使い』がまさかこんなキャラだったなんて。
すげぇな、邪剣に魂を喰わせ続ければ、この身体は限定的な不死って感じか?
限定って時点で不死じゃないけど、超死にづらいってことだな。
それなら、今度こそ5年間の終点まで辿り着けそうだ。
この身体、『運命改変』にうってつけじゃん。
(ん?)
ん、どうした邪剣?
(オヌシ、今、なんと言った?)
え?
今って?
(オヌシ、運命がどうとか言ったような、気のせいかのう?)
あぁ、うん、言ったな。
『運命改変』って言った。
(…………まさか、ひょっとして、ひょっとすると、オヌシ、運命神と関係があるのか?)
あぁ、なんかまずかった?
待てよ、やばい、まさかアレか?
邪神と運命の女神って、敵対してたりする?
(いや、今は敵対もなにも、というかオヌシまさか本当に本当の運命神の!?)
あー、いちおう、はい。
実は『運命の女神の代行者』って感じ、です。
(なぁッ!!!?「運命」が仕事してるだとうッ!!?)
えっ、いや、はい。
仕事してることに驚いてやるなよ。
なんかニートだった人みたいな感じになっちゃうじゃん。
(あの「運命」の怠慢小娘が働いているというのかッ!!!?)
ホントにニートだった人みたいな意味でした。
なんだろう、怠慢小娘とかいう、その残念な呼ばれ方。
なぜかあのひたすら残念な残念女神1号を思い出してしまったのは、なぜどうしてなんだぜ?




