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2キャラ目、これから

1キャラ目では、いきなりラスボスに会いました!


2キャラ目は、いきなり邪神とやらが近くにいるみたい!


まだまだ2キャラ目の攻略は1日目!


おれの戦いは、これからだッ!!




よし、さっさと脱出しよう。

邪神って!!

そんなもん物騒すぎて絶対に近寄りたくない。

こっちは進む道って言ってたな?

帰る道は、逆の方向。

くるりと後ろを向いて、歩き出した。


(オッ、オイッ、キサマは本当に引き返すのか!?)


当たり前だろ!

おれにはやるべきことがあるんだよ!


(なんなのだ!?キサマの目的がまるでわからぬッ!!我にわかるよう説明)


『邪剣』を鞘に収める。


たかってきた亡霊を左拳で消し飛ばす。


そのままスタスタと歩きながら『邪剣』に手をかける。


引き抜こうとして、ふと思った。


アレ?

ひょっとして、もう『邪剣』と話す必要なくね?

こっちに行けばこの「魂の牢獄」から出られる、ってわかったじゃん。

他になにか知りたいことあったっけ?


ふーむ。


まぁいいか。

コイツに喋らせとけば、また勝手にペラペラ情報漏らしてくれそうだし。

抜いといてやるか。


よっと。


右手の鞘から、『邪剣』を左手で少しだけ引き抜く。


ズギュル!!

(ぐぬぬ……キサマまたしても我の話の途中でェーッ!!)


左手が、剣身の根元から湧き出したぐちゃっとしたドロッとした腐ったスライムみたいなもので、手首の少し先まで覆われた。

やだ、この感触、気持ち悪いはずなのに、なんかクセになっちゃいそう。

頭の中で『邪剣』は女の子って設定にしたおかげで、だいぶ嫌悪感が薄れたな!

気休めなんだけどね!


(今のはまたアレか!?怨霊を素手で滅するとかふざけたことをやらかしたのかッ!?)


あぁ、そうそう、左拳でサッとね!

もうだいぶ手慣れたもんですよ。


(クッ………この左手……掴まれただけでキサマとの力量差に愕然とさせられたが、まさかそれほどまでにふざけた代物だったとはな。あの馬鹿げた精神防壁が精神の侵食を防ぎ、このふざけた左手が身体への侵食を防いでおるのか。この我が支配下に置かれるなど……ッ)


身体への侵食?

ってまさか、あの、最初に『邪剣使い』を見たときの状態のことかね。

もしかして、無明さんと万眼先生に出会う前に『邪剣使い』を選んでたら、やばかったんじゃね?

この『邪剣』、マジで呪いの武器だなー。


(それにしても、もったいないことをしおって。オイ、次に怨霊が湧いたときは、我を抜いたままにするのだぞ?せっかくの魂だ、我が喰らっておこう)


えっ。

なに、アレ喰うの!?

亡霊だよ?

喰うとかあるの?

亡霊なんだよ?

食べられるとしても絶対食べないけど。

あんなおぞましい存在食べるとか!

お前、気持ち悪いやつだなー!!


(ばッ!馬鹿者ッ!!吸収するという意味だッ!!我は邪神様と同じ『魂喰らい』の力を授けられておるのだぞッ!馬鹿にしおって!!少しばかりふざけた強さだからって調子に乗るでない!『魂喰らい』だぞッ!!?敵の魂を直接削り取り、自らの力へと変換できるのだぞッ!?すごい力であろうッ!!)


えー、うん、まぁすごいけどね。


(なんなのだその反応はッ!!もっと驚けい!畏れ敬えい!御方様のご威光にひれ伏せい!!)


いやー、だって、それより上位の能力、知ってるし。


(上位、だと?そっ、そんなものあるわけなかろう?歴代最強の邪神たる御方様のお力だぞッ!?)


まぁ『魂喰らい』っていうのも充分強いんだろうけどね。

でも、明らかに『世界喰らい』の下位互換じゃん?


(はっ?せかっ?バーカバーカ!なに言っておる!?無い無い無い!そんなの無いッ!『世界喰らい』だとッ!?あーはいはい強い強い!!あれば強いのう!そんな力がもしもあればのーう!!)


うっ、うぜぇ!!

まぁいいや、お前には関係無いし。

どうせこの身体で挑むわけにもいかないからな。


(当たり前であろう!世界を喰らうなどと、そんな非常識な力、仮にあるとすれば挑む方がおかしいぞッ!!そんなことに使う気なら、即刻身体を明け渡せい!!)


挑む方がおかしい、か。

おれもそう思うよ。

だがな、それでも退けない戦いってものがあるだろう?


(フンッ、馬鹿者め。退けぬ、だと?それでは自ら進んでエサになりにいくようなものではないか)


エサ、か。

そうか、お前は『魂喰らい』だったか。

なら、わかんねぇよな。


(何がだ?この我が何をわかっていないというのだ?)


人生ってものを、さ。

なぁ、『魂喰らい』の『邪剣』よう。

人の生きた魂ってもんは、ここの亡霊どもとは違うんだ。

その灯し火は、揺れて、輝いて、燃えている。

どのみちエサにしか見えないんじゃあ、さぞかし寒かろう。


(キサマは何を言っておる?我は熱さも寒さも感じぬわ。力を得る為に喰らう、これこそ道理であろう。それに、我が魂を喰らわねば、遠からずこの肉体は朽ち果てるのだぞ?)


なんだと?


(この身体の元々の魂は、我が喰らった。この身体を操作する為に、コヤツの魂は我がそのまま保持しておる。未だに抜け殻の肉体が滅びておらんのは、他に喰らった魂を力に変換して、肉体に供給しておるからだ。他の魂を喰らわねば、この肉体も死を迎える。そうなれば、この身体を奪い取ったキサマも困るのであろう?)


思わず足が止まった。

なんか、むかつくな。

魂を保持してるって?


オイ、その元々の魂、もうこの身体には戻せないのか?


(戻すだと?クククッ、我の力は『魂喰らい』だぞ?魂は、ただ喰らうのみよ。戻すことなどできん。戻すというのは反魂の法であろう、我の力の範疇には入っておらん。もしもこの肉体が不要となれば、そのときは、喰らった魂は力に変えるほか無いのう)


あぁ、そうかよ。

くそったれめ。

やっぱり、名前の通りの『邪剣』なんだな。

魂を喰らうとか、こうやって考えていると嫌悪感が止まらなくなってくる。

一瞬でもコイツと仲良くなれると思ったおれがバカだった。


(何を怒っておるのだ?我とキサマは同類であろう?キサマとて、他人の身体に無断で入り込んでおるのではないのか!?いかにして入り込んだかは知らぬが、我もキサマも、人の身体を奪い、操る、寄生虫であろう!!)



同類。

その言葉に、ハッとした。



(何か違うのかッ!?我とキサマのどこが違う!?キサマ、やるべきことがあると言ったな?その為に他人を利用するのであろう?利用して来たのであろう?これまでもか?これからもか?)



お前とは、違う。

そう言いたかった。

でも………。



(我とてっ!我とて好き好んでこのような存在になったわけではないのだぞ!?)



(かつて御方様が封印される間際、我はこの存在を与えられた)



(それまでは御方様の力の一部でしかなく、自我など持ってはいなかった)



(御方様の封印を解く、我はその為だけの道具として、御方様から分かたれたのだ)



(役目に従わなければ、我の存在に意味など無い)



(そのときからずっと、我はこうなのだぞ?)



(以前には御方様の一部であったのだ、多少の記憶や知識は与えてもらった)



(だから、我は知っておるのだ)



(我のような存在を、寄生虫と呼ぶのだ)



(侮蔑を込めて、そう呼ぶのだ)



(我は、汚らわしい、呪いの邪剣だ)



(これまでも、これからも)



(キサマは、我と違うのか?)



(思ってもみなかったのだぞ)



(こうして話す相手など)



(いなかったのだぞ)



(我と同じものがいた)



(そう、思い始めていたのだぞ)



(キサマが、帰るとか言うから)



(敵では……ないのなら………)



(そう……思ってしまったではないか………)




魂が、たしかに揺れていた。


コイツは、人じゃないんだ。


人間のことなんて、命のことなんて、わからない。


あぁ、わかっていないのは、おれの方だった。


少ししか抜いていなかった邪剣を、抜き放つ。


左手で、諸刃の直剣を掲げる。


剣身は繊細でまっすぐで、うっすらと輝いていた。


鞘を左の腰に差した。


邪剣を右手に持ち替える。


左手が柄から離れると、どろりとした邪剣の肉が、右腕全体を包み込んだ。


それはたしかに暖かく、その奥ではきっと、邪剣の魂が燃えていた。


邪剣のはずなのに、純粋だ。


なぜかそう思ってしまった。





(…………なにをジロジロ見ておる)


いや、せっかくの黒ずくめの装備なのに、右腕が覆われていると見映えが悪いな、と思って。


(ムゥッ!!どうせ我は汚な)


もっと装備の内側に入れないのか?


(うっ、うちがわ?)


手の部分はそれでしょうがないとしても、コートの袖口から、もっと中に入れるだろ?


(良いのか…?だってこれ以上……中に入ると………)


いいから早く。


(……んっ………んしょ………のう…こんな感じか……?)


コートの外側にはみ出していた邪剣のどろりとしたものが、ずるずると袖口に入り込んでいき、もともと内側に入り込んでいた部分は、ゆっくりと、肩から首筋、胸板と背、わき腹へと這っていく。


(…………イヤではないのか……?)


よし、これで見た目は普通になった。

普通?の歩く中二病になった。

邪剣を持ったまま左拳も使えるな。

また歩き出す。


邪剣、これからは、この感じでいくぞ?


(わっ!わかった!!)


すまないが、これから5年間、この身体を使わせてもらうことになる。

邪神とやらと敵対するつもりはないし、5年後に邪剣が何をしようと、おれは止めるつもりはない。

それは約束しよう。


(やっ、約束か!?クフフッ!しかたないのう!約束だぞ!クフフフフッ!!5年間この身体を貸してやろう!我が特別に約束してやるぞーッ!!)


お、おう。

だからまぁ、その、なんだ、アレだ。

これから、なんていうか、よ、よろしく頼む。

あと、さっきは、なんかすまん。


(う…うむ……よい。気にするでない、その、えと、気にするなよ?ひょっとして我はけっこう恥ずかしいことを言っていたような……。わっ、忘れるのだぞ!?さっきの話は忘れてくれい!!)


絶対に忘れない、っていうのは伝えないでおくか。


(わわっ、わすれろ馬鹿者!!!)


あれ、伝わった。

このレベルの思考は読めなかったはずなのに?


(ばっ、馬鹿者めッ!我のような邪剣に気を許しおったのか!?我に対する精神防壁の効力が弱まっておるではないか!で、出会ったばかりでっ、そんなに、我なんかに……気を…許すでないわ……ばかもの………)


お、おう。

はっ!

なるほど!

道理でな!!

これはアレか、精神を侵されたか!

おれの脳内設定で邪剣は女の子ってことにしただけなのに!

なんか可愛いとか思っちゃってるもんな!

うんうん!

そうか精神攻撃だったか!!


(全部筒抜けだ馬鹿者ッ!!というか女の子ってなんなのだ!?我には性別など無いと言ったであろう!なのに、性別なんて無かったのに、キサマが、き、お、オヌシのような力の持ち主に、今の我は所有されて支配されておるのだぞ?そっ、そんな設定、いつの間にか適用されてしまっているではないか!!しっ、しかも可愛いなどと……わっ我は邪剣だぞっ…馬鹿者め……)


なァッ!!?

女の子設定が適用された、だと!!?

神アプデきたーッ!!!

ハーレム展開突入ッ!!?

いやいやいや待て落ち着け、邪剣だぞ?

待てよ、落ち着けよ。

おれは大丈夫か?

色々大丈夫か?

うん、駄目だな。

もしかして、邪剣、精神攻撃。

教えて先生!!

精神攻撃ですよね!?


(なっ、何をごちゃごちゃと言っておるのだ?今さら精神をどうこうするつもりはないからな!せっ、せっかく、せっかくオヌシに出会えたのだぞ!)


おうふ!

やばい邪剣の破壊力やばい。

デレがきてる。

デレがきてるよ。

MOE力高すぎだよ。

どうしてこうなった?

もしかして、邪剣、ルート。

あるの!?

教えて先生!!


(もっ、もえりょく?なんなのだその力は?)


あっ、あぁ。

そこ拾っちゃう?

しょうがない、教えてやろう。

MOEとは、世界を統べる力よ!!

MOEこそが力!

力こそがMOE!!

邪剣よ、そのMOE力、さらに磨くがよい!


(世界を、統べる。オヌシは、我に、そのような力があるというのか?我は、御方様の道具に過ぎぬというのに、オヌシは……)



おぉっと、亡霊が湧きました。



さて、邪剣、どうすればいい?

『魂喰らい』で吸収するんだよな?


(うむ。でも、その、イヤではないのか?オヌシがイヤがるなら、我はしたくないぞ?)


デレがきてるよ。

どうしよう。

んー。

えーと。

いちおう聞いておこうか、この亡霊どもって、なんなんだ?


(コヤツらは虜囚の怨霊といって、邪神である御方様に喰われるはずであった、魂の集合体よ。そもそも邪神様は、邪悪な魂や汚れた魂を喰らい、力に還元して消費することで、魂を浄化し、循環させておったのだ。その役目は、封印された今でも続いておるのだが、邪神様の力は弱まってしまった。だからこうして、喰らい損ねた邪悪な怨霊が湧き出してしまうのだ)


あーはいはい。

なるほど。

魂の循環ね。

そういう設定よくあるよね。

じゃあ、「魂の牢獄」っていうのは、魂の浄化処理施設って感じなのか。

その邪神、あんまり邪神ぽくないな。


よし、ならむしろ喰っちまった方がいいわけか?

どうすれば喰える?


(では、まずはその左拳で攻撃してみてくれい)


よしきた。


左拳を振るい、亡霊を、虜囚の怨霊とやらをシュワ消し飛ばす。

すると、怨霊は霧散しそうになりつつ、『邪剣』の剣身にシュワーッと吸い込まれていった。

これ、アレみたいだね。

あのゲームのDが付くシリーズのアレみたいだね。

魂を獲得してるよね。


こんな感じでいいのか?


(う、うむ。本当に、ふざけた左拳だ。目の当たりにしても信じがたい。本来なら使用者の魂を我が使い、その力で『魂喰らい』を剣身に発動させるのだがな。そうしなければ攻撃が通じぬ相手なのだぞ?)


それじゃあ今のは、余計な力を使わずに、吸収するだけですんだってわけだ。


(おかげで魂の収支は黒字だのう。邪神様復活の依り代とする為、使用者の身体を奪う。その目的で我は作られておるから、我を振るえば赤字になるように設定されておるのだがな)


ひどい話だ。

『魂喰らい』を発動する為に魂を使われて、赤字になって身体を奪われる。

完全にサギじゃねぇか!

その邪神、マジ邪神だな。


(何も『魂喰らい』だけが能では無いのだぞ?力を使ってこういうこともできる)


うおぉっ!!?

ぎゃあああぁぁーーーーッ!!!

右手がぁっ!!!

あのドロッとした邪剣の肉で右腕がぐにゃっと伸びた!!

おまっ、これ、完全にあのマンガじゃねぇか!!

パクリじゃん!!

右手に寄生されちゃうあの超最高傑作のあのマンガのパクリじゃねぇか!!!

おれの人生の教科書だぞッ!!

待てそういや寄生虫がどうのとか言ってたよな!!?

おれの尊敬する大先生の作品をパクるなよ!!?

これは絶許だぞ!!?


(なっ、何を言っておるのだ?ぜつゆる?急に早口になりおって。あとはこんなこともできるぞ)


ぎゃああああぁぁぁーーーッ!!!

伸びた右腕の邪剣の肉から剣身がものっすごいたくさん生えた!!!

なにこれなにこれ!!

超物騒じゃん!!

マジやばいじゃん!!!

あっ、元に戻った。


(クククッ、やっとオヌシを負かした気分だのう。『魂喰らい』よりもこんな芸当で驚くとはな。ちゃんと我を使いこなしてくれるのであろうな?)


あー。

びっくりしたわー。

でも、お高いんでしょう?

今みたいなのを使っても、やっぱり魂奪われるんだろ?


(安心せい、たいした消費量ではない。先ほど吸収した怨霊の魂で、まだまだ余力があるわ)


突然、右足が掴まれた。


虜囚の怨霊がまたもや湧いて出た。


床から手が透けて、掴まれている。


左右の壁からも怨霊が顔を出す。


背後も確認、闇の奥から何体か飛んでくる。




そして前方中央に、透けた大鎌を携えた怨霊がいる。




さて、やってみようか、邪剣。


(うむ、我をちゃんと上手に扱うのだぞ?)




右手には、新たなる相棒。


おれたちの戦いは、これからだッ!!

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