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2キャラ目、中の人など

2キャラ目の『邪剣使い』に憑依して、いきなりの戦闘。


相手は亡霊。


殴れないし、掴めない。


そんなやつらを殴って掴んだ。


おれの中に宿った無明の壊れた魂が、力を与えてくれた。






っていうか、壊れてるはずなのにこんな力があるってどうなのよ?

無明さんの化け物っぷりを今更ながらに思い知ったわ。



あー、疲れた。


とりあえず、壁には近寄らずに座り込む。



まず『邪剣』に喰われかけて死にかけてるところから始まって、気合いで『邪剣』を鞘に突っ込んだ。


一息ついたと思ったら、恐怖体験に遭遇。


亡霊どもに囲まれて笑いものにされたから、無明さんパワーで大暴れしてやった、と。



うーん、暴れてみてわかったけど、『邪剣使い』の身体、スペック低すぎ。

戦闘中じゃないヨボヨボの無明さんとたいして変わらないんじゃないか?って思っちゃう。

それくらい身体が重い。

装備のせいなのか?

今は右手に、鞘ごと『邪剣』を掴んでいる。

手足には、黒鉄のライトガントレットと黒鉄のチェインブーツ。

全身を包む、割とスッキリした形状の黒のロングコート、これもたぶん内部に鎖が編み込んでありそう。

んー、この装備って、剣が扱いやすいように、重量にはそこそこ配慮してそうな気がするんだけどなー。

それにしては鈍すぎる。

さっきの踏み込みだって、あれが限界の最高速度だった。

仮に『奴』と戦闘するとしたら、第一段階の大雑把な『世界喰らい』でおしまいだろうな。




そんな感じで思考を進めて、ようやく落ち着いてきた。




そうしてようやく、気が付いたのだ。




『邪剣使い』、コイツは。






マジで死んじゃってないか?






なんつーか、「空っぽ」なんだよ。


身体が空洞なんだよ。


いや、臓器が無いって意味ではなく。


魂がいないんだ。


最初の頃の無明みたいに壊れた魂が入っている、って感じすらしない。


『邪剣』を見つめて、思い出そうとする。


何も浮かばない。


試しに喋ろうとしてみる。


何も喋れない。


五感は、ある気がする。


見えているし、聞こえている。


肉体に備わっているものは、失われていないんだろう。


だが、精神が、記憶や言語が失われている。


この肉体の中には、おれしかいない。


『邪剣使い』なる人物の魂が、この肉体に入っていないのだ。


死んでいない、と言えなくもない。


でも、魂がここにいない。


あぁ、ひょっとすると、脳死、ってやつに近いのか?


人にとっての「死」とは、肉体の死を指すのか、精神の死を指すのか。


それが問題だ、って感じか?




とりあえず、おれにとっては大問題が起きている。




またこんな感じかよ!!!

どうしてなの!!!?

どうしてなんでみんな頭がアレな感じなの!!?

みんなって言ってもまだ2人目だけどね!?

無明は頭がぶっ飛んじゃってたし!

今度は頭がお留守でーっす!

記憶がわかる仕様なのに記憶が無いキャラ2連続!!

マジでこの世界の情報がぜんっぜん入ってこない!!

っていうかまた喋れないじゃん!!


定番のご挨拶だよ!

みんなもいっしょに!

せーの!

残念カワイイ謎女神!!

もう沈黙すら出てこないよー!!!


これじゃあ絶対また新キャラのアンロックできないじゃん!!

もう詰んでるじゃん!!

コイツで『奴』を倒せってか!?

一輪車とスーパーカーでレースができると思うかい!?

まぁ、やるけどな!!!

無理無茶無謀はお友達!!

もう突き進むって決めちまったからな!

でも心が折れそうだよおぉーッ!!

先生えええぇぇーーーッ!!!






あー、スッキリした。

ちくしょうスッキリした。

やってらんねぇスッキリした。


とりあえず情報の整理、がんばろう。

くじけないモン!

くじけても、くじけない。

死んでても、死んでない。

よし、『邪剣使い』プレイ時のスローガンは決定だね!


「死んでても死んでない!」


いいね!

テンション上がるわー。


まずはクールに現状把握のお時間です。

現在地は「魂の牢獄」ってところ、のはずだよな。

ひとまず、マジの牢獄に捕まっちゃってる感じではない、みたいだね。

ダンジョンの一本道の途中、って感じだ。

たぶんあれだな、さっきの敵が亡霊だったわけだし、むしろここはあいつらが囚われている「魂の牢獄」、ってことなんだろうな。

周囲はとにかく暗い。

そこら中に刻まれた呪文っぽい紋様がぼんやりと光っているおかげで、かろうじて真っ暗闇ではない。

何度も言うけど、視界が狭すぎて落ち着かない。

背後が見えないとか、暗すぎて見えづらいとか、ホントにスペック低すぎる。

気になって絶えずキョロキョロしてしまう。



おっ、当たった。



キョロキョロしてたら、またすぐ横に亡霊が湧いて出た。

なので、今度は見えた瞬間に左拳を当ててみた。

いいね、軽く払う感じでも消せちゃうね。

ちゃんと集中して見張ってればすぐ見つかるし。

亡霊は、物質透過、って感じなのかな。

壁とか武器とかすり抜けちゃう。

それなのに一方的にこっちを掴んでくるとか、ずるいです。

今のやつも床から湧いて出てきたし。

いやー、でも、それで当たるって、なんなんだろうね、この左拳は。

とりあえず、無明さんはやっぱりバカすぎて最強ってことだな!

よーし、おれも目いっぱいバカを目指していくぞー!



うん、そして問題はやはりアレですよ。

右手のこれです。

『邪剣』ですよ。

鞘になんとか剣身を突っ込むことができたとき、あのぐちゃっとしたドロッとした汚泥の塊がこの剣に吸収されていった。

やっぱり『邪剣使い』は『邪剣』に呑み込まれかけていた、ってことだよな。


さて、ここで問題。



『邪剣使い』の魂がここに無いのはなぜでしょう?



1、「魂の牢獄」なので、魂がどこかに捕まっている。


2、『邪剣』が、身体よりも先に魂を呑み込んでしまっていた。


3、えっとね、どこかに落っことしてきちゃったみたい!(テヘペロこつん)



3択問題だぞー?

1択じゃないぞー?

ちゃんと選択肢があるぞー?

残念は仕様だぞー?


まぁね。

たぶんだけど。

たぶん、きっと、おそらく、2番なんじゃないかと思っているわけだよ。

っていうか、この3択だとするなら、どれかを選ばなきゃいけないとするなら、2番であってほしいと思うわけだよ。

1番だとすると、この「魂の牢獄」とかいうダンジョンを制覇しないといけないような感じだし。

それは正直、やめてほしい。

3番は、ほら、ね?

正直、やめてほしい。

だから2番だよ!

お願いだから!!

あんまりややこしい状況にしないでよおおぉーーーッ!!!!



あっ、また湧いた!



亡霊を叩いてスッキリした。

シュワーッて消えるんだよね。

おもしろいくらいに。


さて、考えよう。

っていうか、思い出してみよう。

いや、『邪剣使い』の記憶ではなくて、自分の記憶な?


憑依してすぐ、身体がまだあの腐ったスライムみたいなのに包まれてたとき。


とにかく必死だったんだけどさ。


なんか、うるさかったよな?


なんか誰かごちゃごちゃ叫んでたよな?


んー、なんて言ってたっけな。


えーと、たしか、「バナナ」がどうとか言ってたような。

おやつに含まれるんですか?


あとは、「マキサマ」がどうとか言ってたような。

マキ様って誰だよ?


他には、「ワレモノのカラダ」がどうとか言ってたような。

ガラスのハートなの?


うん、意味わかんない。


だってぜんぜん聞いてなかったもん。


おれも必死だったけど、なんかその誰かも必死で叫んでたよね。


アレって、たぶんやっぱりアレだよな。


『邪剣』の中の人、だよな?



さて、どうするか。



現状を把握するのであれば、『邪剣』の中の人に話を聞けたら、たぶんそれが一番手っ取り早い。

んー。

でもなー。

もしまたあのぐちゃっとしたやつに喰われそうになったらイヤだしなー。

っていうか、そもそもちゃんと教えてくれるかわかんないし。

そもそも、普通に意思疎通を図れるのかどうかもわかんないし。

なんかしらデメリットがありそうでイヤだし。



しかしまぁ、ここでじっとしている訳にもいかないのだ。

まずは何よりも知りたいことがある。

現在地は、「魂の牢獄」の中の一本道。


さて、またまた問題です。



『邪剣使い』は、どっちの方向からやって来たのでしょうか?



そうなのだ。

帰り道も、進む道も、わからない。

だから、もう聞いてみるしかない。

そして、この『邪剣』しか、聞くべき相手がいないのだ。



はー、イヤだ。

どうしてこんなに残念なの?

もっとスムーズに、快適な異世界ライフを楽しみたいよ。

無理だよねー、だって残念の女神だもんねー。

あぁちくしょう。



とりあえず、『邪剣』の鞘をノックしてみる。


入ってますかー?


返事は無い、ただの『邪剣』のようだ。


やっぱり抜くしかないのか。


イヤだなー。


イヤな予感しかしないもんなー。


しょうがない。


気合いを入れるか。


唱和せよ!!


残念カワイイ謎女神!


よし、いける。


左手で、『邪剣』の握りに手をかける。


ちょっとだけ鞘から出してみよう。


1センチくらい。


えいっ!


(オォッ!!!!?)

ズギュル!!

うおおおぉぉッ!!!?


戻した!!!


気持ち悪ぅーーーッ!!!!


やっぱやめといた!!


あのグロいぐちゃっとしたのが左手に這い上がってきた!!!


ズギュル!!って!


ズギュル!!って剣身の根元から湧いてきやがった!


ムリムリムリ!


うわー、マジかよ。


そういう仕様なのー?


とりあえず左手に異常は無さそう。


やだよー。


ホントにムリだよー!


あー。


あぁー。


でも、いたよな。


なんか『邪剣』の中の人がビックリしてたよな。


鞘から抜けば、とりあえず声は聞こえるみたいだ。


あの頭の中に話しかけられる感じ、懐かしいなぁ、万眼先生。


ちょっと前にお別れしたようにも思えるし、もう随分前のことにも思える。


ふぅ、がんばるか。





もう一度、左手を『邪剣』の柄に。




よし、やってやる。




抜くッ!




ズギュル!!

(キサマァァァーーーーッ!!!!!!よくも我の)


うるさい。




反射的に、『邪剣』を鞘に収めてしまった。




万眼先生がホント懐かしいなぁ……。

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