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2キャラ目、残念なお知らせ

ブックマーク登録4件目!!

ありがとうございます!






おれが2キャラ目に選択したのは、『邪剣使い』だった。


えぇ、まぁ選択したっていうか、1択でしたけどね。




そんで、その『邪剣使い』が、『邪剣』に呑み込まれている。




下水のドブ水の塊みたいな、腐肉を喰らい続けたスライムみたいな、そういうおぞましい汚泥の塊みたいなものが、地面にぐちょっと広がっている。

そのどろっとした塊からは、剣の刃が突き出していた。

諸刃の直剣、その刃の根元から湧き出しているかのように、汚泥が広がっている。

そしてその汚泥の沼の中に、黒ずくめの装備に包まれた身体が取り込まれている。

横たわるような格好で、見え隠れしている胴体部。

あらぬ方向へと突き出している、手足。

バラバラに引き裂かれた惨殺死体が沼の中にずぶすぶと沈んでいくところ、そんなふうに見えた。




グロ注意って、先に言っといてよ。



なんだいこれ?



これ死んでるでしょ?



あのグロいぐちゃぐちゃの塊に呑み込まれている、とか、それ以前の問題で死んじゃってない?



だってあの手足、アレ完全に胴体にくっついてないよね?



ちゃんとくっついてたら、あんな角度で突き出したりできないよね?



バカなの?



死んでるの?



どこまで難易度を吊り上げるつもりなの?



謎女神を見る。



あ、けっこうマジで、うわー、って顔してる。



「ねぇ、これ死んでるよね?」


「えっ、えっとね、死ん…………………でなぃょ?」


うん、嘘でもいいからもうちょっと自信持とうか?


これ、1択だからね?


ノーチェンジだからね?


おれにはもうこれ以外の選択肢が残されていないんだよ?


「これ、マジで死んでないの?」


「えっ、死んで、ないの?」


いや、おれが聞いてるんだが!?


なんでビックリしちゃってんだよ!?


「えっ、死んでないんだ!ねぇねぇ!これまだ生きてるんだって!!」


ちょっと待て謎女神!?


とりあえず、まだ生きてるなら「これ」とか言ってやるなよ!

あれ、おれも「これ」って言っちゃってたっけ?


「いや!っていうか待て!?たった今生きてるって判明した感じの言い方だったよな!?まさかなんか調べてた感じなのか!!?」


「あっ………………えーとね、それはね、何もしてないってことで通しなさい、だって!」


「ふぁっ!!?」


「あっ、チガウチガウ!!今のは言わなくてよかったみたい!えっ、これも言わなくてよかったの?」


「ちょっ!?ちょっおまっ!!?」


おいちょっ、待て待て!!

残念女神は何を言い出した!?


「な、何も知らないよー?何も、言ってないよー?」


「めっちゃ棒!?棒読みにも程がある!!」


「大丈夫大丈夫、これまだ生きてる、女神さん、ウソつかない、ぞ?」


「めっちゃ棒!!!言わされてる感ハンパネェっすわー!!」


あっ!

これ言わされてるわー!!

誰かに言わされてる感じのやつだわー!!


「えーとね、言わされて、ないよ、でんぱ?うん、電波を、受信してる、だけだよ!」


電波!!?

残念カワイイ謎女神@電波受信中☆っていうことですか!?


「いやいやいやいや、なんだこれ、なんだよこの状況、とりあえずちょっとその、そこに電波がおるじゃろ、その電波の中の人に話がある!」


「ただいま電波が届かないか電源が入っていない、って言って、だって!あれ?言って、っていう部分は言っちゃダメなんだっけ?」


「いやいやいやいやちょっと待て!いきなり居留守使おうとしてんじゃないよ!!ちょっと待てや電波このヤロウ!なんだというのだ、この残念は!?いや、おれは知っている?おれはこの残念を知っている!!?電波ッ、キサマ何者だッ!?」


「電波さんの正体は、もちろん秘密、だって!え?やり直し?真似するの?もっちろん、ひ・み・つ!」


「あ、はい。確定ですね」


こいつ謎女神だわ。

この電波の正体は、ただのチュートリアルだった運命改変アクションRPG、「ヴァーランド・リフォージ」の謎女神だ。

今のセリフ、確定です。

っていや待て待て!!!?

目の前にいるのも謎女神だぞ!!?

謎女神が謎女神の電波を受信している!?

えっ!?

なんだこれ?

ちょっと待てよ?


まさか。


いや、まさかだよな……。


『電波を受信して言わされていた』っていうことは……。


おれは今、とんでもない想像をしている!


たしかに、そうだった。

目の前の謎女神、見た目はゲームの謎女神と変わらない。

だがしかしッ!

カワイイ過ぎるのだッ!!

なんかキャラが変わっちゃってない?

とはぼんやり思っていたッ!!

どうせキャラの設定がぶれちゃってるんだろうなー。

そう思っていたッ!!


別人、なのか?


「ねぇねぇ」


目の前の謎女神は、残念カワイイ。


「ヴァーランド・リフォージ」の謎女神は、ひたすら残念。


残念カワイイと、ひたすら残念。


見た目は同じ。


中身は別人?


いやでも待てよ。

この謎空間に来た直後に会ったのは、アレは絶対ゲームの謎女神と同じ人物だった。

いつから残念カワイイだった?

どこかで入れ替わった、のか?

あっ……。

うおお、まさか!?


見た目は変わっていないのに、中身が違う。


おれは、それによく似た状況を知っている。


おれが『無明の万眼』を動かした、あの『運命改変』の方法と似ているのだ。


見た目は無明の身体、しかし、動かしているのはおれだった。


「ねぇねぇ、聞いてるー?」


あの状況に似ている。


ん?

いや、やっぱり違うか?

おれの場合、おれの動作は無明の動作に相応しいように変換されていたはずだ。

おれの意思で歩こうとしても、無明の歩き方で歩いていたはずだ。


謎女神の場合、言動が別人のようになっている。

だから、やっぱりちょっと違うよな。

ひたすら残念な残念1号と、残念カワイイの残念2号。

もしも『運命改変』と同じ方法だったとしたら、別人のような言動にはならないはずだ。


残念1号が残念2号を動かしていたとしても、その言動は残念2号に相応しいものに変換されて見えるはずなんだ。


あれ?


いや……。


別人のような言動、おれも無明の身体でしていたぞ?


あの、ちょっとかっこつけちゃったセリフを言ったときだ。


ーーーふたりっきりの結婚式だからよーーー


おれが、自分の意思で『奴』と戦った、あのとき。


あのとき……。


たしかに、身体を動かしているときの感覚も違かったように思える。


最初の頃の、「無明の言動に相応しいように変換される」っていう状態とは違った。


おれ自身が動いているのと変わらないような、何も制限が無いような感覚。


そうだ。


あのとき、おれは。



『無明自身に、無明の身体を任されていた』



おれの直感が、これが答えだと告げている。


そうだ、『運命改変』の為に勝手に入り込んだ、その状態とはきっと違かった。


もしも残念1号が、残念2号に任されていたのなら。


見た目は残念2号でも、残念1号そのままの言動ができる。


きっとそうなのだ。



「ねぇってばー!」


ちょ顔近いカワイイ女神!!?


「さっきからずっと呼んでたのに!ぷんすかぷんすか!」


「すまん、気付いてたけど、気付いてないことにしてたわ」


むー!とかなんとかうなってる残念2号。

いやー、この子はやっぱり残念カワイイね。

この世には、2種類の残念がいる。

良い残念と、悪い残念だ。


とりあえずいつものように残念女神2号の頭をぐっしゃぐしゃにする。

むーーー!とかなんとかうなりながら、柱が無いのに柱があるような謎の場所に駆け込んでいく。

いやー、この残念は良い残念です。

なんか色々と忘れてしまうよね。


しばらくしてぴょこっと出現する残念カワイイ謎女神。

髪型が整っている。


「それで、なんで呼んでたんだ?」


っていうか、今どういう状況だっけ?


「んーと、緊急ちゅうしんはおしまい、だって!もうとっくに電波が来なくなっちゃったよ?」


あー、そうだ、電波な状況だったよね。


「んん?緊急ちゅうしん?」


「きんきゅうつうしん!」


「言い間違えたのね?」


「ちゃちゃっ、ちゃんと言えてたもん!もー!!ちゃんと聞いててよね!ちゃんと言えてたからね!」


「あぁ、ともかくあの残念電波は消え失せたわけだな、それは朗報だ。っていうか今の電波は緊急だったわけか。なんでだっけ?そんな緊急事態なんて……」


チラッと目線を動かした謎女神2号。


その目線の先。




『邪剣使い』が、『邪剣』に呑み込まれていた。




はい、そうでした。


これね。


どう見ても死んでる件ね。


なるほどなるほど。


残念1号は、『邪剣使い』がまだ死んでないってことを伝える為に、緊急通信とやらを入れてきたわけだ。


マジか。


まだ死んでないのか。


でも死ぬ直前だよね?


どうすんのさ?


っていうか、スタート地点がヤバイ件とか、それすらもぶっ飛んでたよね。


「魂の牢獄」とか言ってたよね。


『邪剣使い』が死んじゃってる衝撃が強すぎて、その周囲とか目に入ってなかったわ。


改めて見てみる。




石造りの回廊。


遺跡のようなダンジョンのような、先の見えない暗がりの一本道。


左右の壁面、床と天井には、呪文のような紋様がまばらに刻まれている。


周囲に灯りは無いが、その文字がぼんやりと光を発している為、完全な暗闇ではないようだ。


おっ?


グロテスクな汚泥の塊のすぐそばに、それを見つけた。


これはたしか、『邪剣』の鞘だ。


それが地面に転がっている。


あっ!!


そうか、こういうことか!


『邪剣使い』は、なぜか腰に提げたりせずに、この鞘を握り締めていた。


なるほどなるほど!


この鞘は、『邪剣』の暴走を防ぐ為のアイテムだった、ってことか。


それなら、この鞘を掴むことができれば……。


手足、バラバラだけどな?


これ、マジで大丈夫か?


あー。


あぁー。




くいくい、と右腕が引っ張られた。


「あのね、あの…………やめておこう?無理しなくても、大丈夫だよ?」




バカか。




残念カワイイ2号め。




おれはバカだった。




忘れたのか。




先生との約束を。




忘れたのか。




あの男の生き様を。




おれはバカだ。




バカだから、答えは一つ。







無理するに決まってるだろう!!!!

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