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1キャラ目、無明の万眼

あっ、この感覚、ふたり戻ってきた!?

やだ今のセリフ聞かれてたら恥ずかしいんですけど。


(バカ!無茶するなって言ったのに!!)


いやいや!

無茶はしてないぞ?

万眼先生が、おれならできる、って言ってくれたんだからな!


「代行者殿、おかげで、契りを交わすことができた」


そうか!

それならこれで交代だな。

おめでとうございます、無明、万眼。


(ありがとう)

「ありがとう」


よし、ならば結ばれたふたりを盛大に祝ってやらないとな。

『奴』を倒したら、次は酒盛りだな。

無明もちゃんと喋れるんだし、美味いもんでも食いに行こうぜ!


「あぁ、いいな、それは良い」


(ありがとうね、本当に、キミが来てくれて良かったよ)


「せっかくの提案なんだが、すまないな、身体が保たないようだ」


身体が保たない!?

おいおい!

まさかホントにナニをナニして!?


(してないわよ!!)

「してないぞ!!?」





あぁ、ちくしょう、知ってるよ。




さっき、おれも使ったんだから。




だから知ってるよ。




この身体は、もう………。




(無明はね、魂も身体も、どの道もう永くなかったんだ。だから、魂を神域で保護してたんだけどさ。本当なら、『奴』がこの世界に来たとき、終わってたんだもの。あたしが、無理矢理、生かしてたんだ)


「ここまで生きた、だからこうして夫婦になれた、俺はそれで充分だ」


(バカ無明。あたしはまだまだ充分じゃないわよ?ずっと、ずっと一緒だからね)



熱いな、お前ら。


お前らの邪魔はしたくないんだが、おれも最後まで、共に行かせてもらうぞ。

どうせ無明は、最後の最後まで足掻くんだろうからな。


(キミは、無明が死んだら、キミの女神のところに帰る。だけどね、『奴』の『世界喰らい』か『神殺し』にやられた場合、そうはならないの。あの『漆黒』に取り込まれて、『奴』の振るう力に使用される)


あぁ、なるほどね。

そうだろうとは思っていたんだ。

だが、おれは当然最後まで付き合うぜ。

もちろんまだやるんだろ?


「無論だ」

(最後まで……やるわ)



「次が最後の一撃だ」




無明は自らの心臓を、相棒の万眼で貫いた。



無明てめええぇぇぇぇーーーーッ!!!!!!!

ふざけるなッ!!!!

ふざけるんじゃねぇッ!!!

おれも連れてけよ!!!!

止めろよ万眼!!!

なんでだよッ!!!?

ふたりのじゃまはしねえよ!!!!

おれも!!!

さいごまで!!!!


(キミの最後は、ここじゃないのよ)


「覚えて、いるか?」


「君が、俺の身体に入ってきた、あの日のことを」


おれは!!!

変えにきたんだよ!!

おまえらの運命を!!!!


「君はあの日泣いてくれたな」


「よく知りもしないで、俺の運命を想像し、泣いてくれたな」


(無明もあの時、いっしょに泣いていたのよ)


「君になら任せられると、あの時に感じた」


変えにきたのに!!!

この運命を!!!!

おまえは死んじゃだめなんだよ!!!

『奴』をたおすんだ!!!

いきのびるんだよ!!!


「あぁ、君はまた泣いているな」


「君はもう運命を変えてくれた」


「俺にとって、これは最上の結果だ」


(だから変えないでね)


(この『運命』は、変えないで)


だめだ!!

いくなよ!!!

おれをおいていかないでくれ!!!

おまえらがいてくれなきゃ!!!


(よしよし、先生との約束、忘れちゃダメだぞ?)


万眼がおれに見せた。


おれの女神がうずくまっている。


膝を抱えて座り込んで。


頭をうずめて縮こまっている。


(キミの女神を守りなさい)


(あたしはもう無明のもの、無明の女神、無明の万眼)


(だけどキミも特別、あたしはいつまでも、キミの万眼先生だからね)


(時間、少し引き延ばしてたんだけど、そろそろ保たないわね。相変わらず、クールに仕事してるでしょ?)


(野暮な『奴』が来る前に、お別れ、しましょうか)



無明が万眼を引き抜いた。


無明の命を吸って、岩の槍は真紅に染まっていた。


ごつごつとした岩が凝縮され、金属質の血色の槍へと変貌する。


「俺の最後の一撃。君にも力を貸してもらうぞ」


わかったよ。

わかったから。


(無明、信仰が足りないんだけど。もっと愛してくれない?)


「無茶を言うな、もうこれ以上ないくらい愛してる」


(バカ、その一言で充分よ)


わかったから。


「征くぞ」


無明は突き進む。


あの踏み込み。


槍の化神。


残った右手で逆手に持ち替えた。


振りかぶる。


最後の一撃は、もはや帰らぬ槍の投擲。




『無明の万眼』の全てが、血色の槍が、放たれた。




































(やっほー!キミの万眼先生だぞ!


「元・主神様の愛のメッセージ術♡」が発動しました!

さてさて、今キミがこのメッセージを受け取っているということは、ついさっき、あたしたちと感動の別れを済ませたばかり、ってわけね。

またキミに、空気読め、とか言われちゃうかな?

言われたいな!

さぁ、言ってごらん!

よしよし、今はそんな気分じゃないもんね〜。


さて、万眼先生からキミに伝言、最後の授業です!


重要なことを教えておくわね。

キミは気が付かなかったみたいだけど、あたしたちは、平然と『奴』についての話をしていたよね?

これって、本来なら有り得ないことなのよ。

なぜかって、『認識不可』だから。

『奴』のことは忘れてしまうはずなのよ?

『奴』について話す、その情報を他者に伝える、本当はそれすらもできないの。


それができた理由。

無明が『漆黒』を纏っていない状態の『奴』を目撃したから。

激しい怒りで覚えていたから。

あたしたちがその無明と、魂の繋がりを持っていたから。

だから忘れないでね?

あたしたちのこと、『無明の万眼』のことを忘れないでね。

そうすればキミは思い出せる。

『無明の万眼』に宿敵がいたこと、それを思い出せる。


キミがこの世界に呼び出された、その目的を伝えましょう。

キミの女神も、残念ながら『奴』のことを忘れている。

だからあたしが代わりに伝えるわ。



キミの目的は、『奴』を倒すこと。



ウチの世界が『漆黒』を大幅に削った。

この世界なら、きっと『奴』にトドメを刺せる。

今のキミなら、『奴』と戦えることを知っているね。

運命楔の2点間、その間にある5年という歳月。

キミはその時間を何度も往復して、『奴』を倒せる人間を育て上げるの。

無明を超える最強の人間と共に、強大な宿敵に立ち向かいなさい。

なかなか王道でしょ?

主神様はね、王道の英雄譚が好きなのよ!

大丈夫、先生は知ってるよ。

キミならできる。


でも、せっかくの異世界だし、楽しみなさい!

キミは地球の日本で育ったんだから、そんな感じでいいのよ!

さんざんキミにプレッシャーかけた後だけどね!

テキトーにやりなさい!

失敗してもしょうがないわよ!

あっ!

失敗といえば、キミの女神!

あの子、キミに言い忘れてたわね〜。

あのゲームと違って、同じ人物を何度もやり直すなんて、できないからね?

だからこの先、どの人物も一発勝負だぞ!


それと忠告!

忠告というより、これは戒めね。

さっき、キミに身体を預けたときのことです。


バカ!まずは逃げなさい!

先生はてっきりあのまま逃げ回って時間を稼いでくれるもんだと思ってたわよ!

無明みたいな無鉄砲バカの真似しちゃダメ!

情が深いのはキミの良いところ。

だけど、ときにはそれを押し殺して、クールに行動しなさいね。

キミはこの先も、誰かの運命を変えていかなきゃいけないの。


それで、こっちが本題よ。

キミ、とんでもないことをやってくれたわね。

アレはもう二度とやってはダメよ。

キミが『奴』との戦いでやったこと、アレは『運命改変』なんかじゃない。

アレは『改竄』よ。

然るべきときではなく、然るべき手段ではなく、然るべき結果ではない。

全てを騙し、偽る行為。

キミの今後の為に分けてあげたあたしの神性、対価で全部使い切ってしまったわね。

あの行為は、『奴』の力と同じ類のもの。

もしもまた同じことをしてしまったら、キミには支払えるものが無い。

だから必ず後悔することになる。

絶対にやらないでね。


だけど、キミの気持ちは嬉しかったよ。

それに、あの一撃は『奴』の本体に通った。

キミは先生の自慢の生徒だぞ。

よく、がんばったね。


さてさて、そういうわけで、キミが『無明の万眼』と過ごした、次元バローグの入門編、真のチュートリアルは、これにて終了です。

ここからが本当のキミの本番。

先生の教えを忘れずに、がんばって楽しみなさい。


この後に放たれる、無明の最後の投槍について、報告しておくわ。

キミの全力、あたしの全力、無明の全力。

あの一撃で、『奴』の『漆黒』をかなり削ることができる。

どうせまた『世界喰らい』で力を蓄えていくでしょうけど、今後の一定期間、『認識不可』もかなり弱まるはずよ。

少なくとも、バローグの主神は『奴』に気付くでしょう。

キミのおかげだよ。



キミと過ごした31日間。


無明もあたしも、楽しかったよ。



ありがとう。


『無明の万眼』を選んでくれて。


ありがとう。


あたしたちの運命を変えてくれて。


ありがとう。


ふたりのことを見届けてくれて。


『無明の万眼』は、キミを決して忘れない。


そのことを、覚えていてね。




万眼先生との、お約束だぞ?)




























気が付くと、謎空間にいた。



目の前には、謎女神がいた。



柔らかい、ふにゃっふにゃの笑顔で、にっこりと笑って。



「おかえりなさい!」



言いたいことは山ほどあった。



ともすれば、責めたててしまいそうだった。



「えっと、その、どうだったかな?」



おれは知っている。



あの神がおれに見せてくれた。



この残念女神は、膝を抱えてうずくまって、『ずっと』おれの帰りを待っていた。



「ねぇねぇ、女神さんにお話してごらんよ!その前にほら、ただいまー!って言わなきゃダメだよ!」



あの先生と、おれは約束をした。



ーーー万眼先生との、お約束だぞ?ーーー



「わっ!ちょっと!?ちょっと待って!!?」



おれは残念女神を抱き締めた。



「ただいま」



ーーーあぁ、君はまた泣いているなーーー



「………うん……おかえりなさい」



約束は守るから。



だから無明、だから万眼。



おれといっしょに、また、みんなで。






おれの女神は、いつまでも優しく、頭を撫でてくれていた。











『無明の万眼』

ーーー攻略終了

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