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1キャラ目、戦局・第二段階

(え〜と、その、なんだかゴメンね?)


「申し訳ない…」


あー、わかったわかった、それよりちゃんとやろうぜ?

なんかあんなに『奴』のことを怖がってたのがアホみたいだな。

無明は鬼強いし、もっと絶望的な戦いなんだと思ってたわ。


気合いを入れ直した無明が、またも一方的に『漆黒』を攻めたてていく。

おれはまだまだ万眼の補正情報頼りで、自分の感覚では無明の動きについていくことができていない。

無明はホントに人間か?

これ化け物同士の戦いだろ。


(状況はまだ第一段階だし、実際のところ、あの『漆黒』が保持している力はほとんど削れていないから。『奴』に本気で攻撃させて消耗させないとね。省エネモードでいる内は、まだまだ戦いにもなっていないわ)



無明が、既に何度目かわからなくなった渾身の刺突を放ち、『漆黒』が後方に大きく移動した。

無明はまたも踏み込もうとする。


(待って!)


万眼が止めた。



『漆黒』に巨大な瞳が浮かび見開いた。

ぞくりとする。

大丈夫だ、万眼の施してくれた精神防壁がおれを守ってくれている。



『漆黒』にいくつもの巨大な瞳が浮かぶ。



(第二段階ね、無明)


「ここから、か!!」


突如地を蹴り砕き突進する無明。

一瞬遅れて背後が削り取られさらに行く手の空間が砕け散る。

無明は地を蹴り方向を転換して『漆黒』へと突き進むが空間の破壊に阻まれる。

いや、無明はすり抜けていた。

『漆黒』を貫き通す、大地が砕ける。

『漆黒』がまたも後方に飛ばされ、空間に走る亀裂が無明の追撃を許さない。


(第二段階の『奴』はこちらを見極めようとしている。省エネモードはもうおしまい。こちらに対する認識が蚊から蜂くらいにはなったんでしょうね。あぁやって感知系を強化して、正確に攻撃を当てようとしつつ、こちらの正体、行動パターンを探っている。そもそも本来は『認識不可』だから、最初の発見時にあたしに『視られた』ことで内心では困惑、警戒しているはずよ。それでも省エネモードから入る辺り、貧乏性よね。あのまま削られ続けるよりは早く叩き潰した方が損失が少ない、って計算かしら。代行者クン、ちゃんとついてこれてる?)


なんとかっ!


(キミのスペックは代行者になって跳ね上がってる、まだまだそんなもんじゃないわ。先生を信じなさい、キミならできる。授業の続きよ。『奴』はもともと感知系は弱いのよ、なんたって自分が『認識不可』なんだから、敵情を探らなくたって、自分が見つからないから問題無い。敵が見えなくたって、『世界喰らい』で空間ごと消し飛ばすから問題無い。だから今はあぁやって苦手な感知系に無理矢理エネルギーを注いでるから、こちらの目的である、『漆黒』の蓄積を削るって作戦は成功していると言えるわね。しかし『奴』も今は自分の目的を達成中ね、こちらが何者なのか、人間なのか、神なのか、じっくり観察してるわ。だからと言って出し惜しみはしない。第二段階もまだまだ『漆黒』を削っていくよ)



無明は跳ね回り駆け回り、空間破壊をすり抜けて『奴』に突撃を繰り返している。

無明じゃない、これはおれの身体だ、おれならこの速度についていける。

おれならできる、そう想うことにする。


無明と共に地を蹴り飛ばす。


無明と共に攻撃を舞い避ける。


無明と共に槍を貫き通す。


足を止めてはならない。

今の『奴』は正確におれの周囲を破壊で包み込むことができるはずだ。

接近しろ。

『奴』は空間の破壊に自分を巻き込まない。

足元に亀裂が入る直感。

跳ぶな。

先を読まれている。

宙も割れる。

踏み込め!

最速は見せるな。

全力はまだ見せるな。

見られている。

己の戦力を隠し通せ。

クセを見せるな。

あえて立ち止まる。

一瞬で右に回り込む。

『奴』の感覚の上を。

通る。

刺し貫け。

それが終わりじゃない。

その先を。

常にその先を。




おれならできる。




おれはやる。




やってやる!!!





(無明は正真正銘の人間よ。人の域で、ここまで来れるの。キミの存在は人を超えている。キミなら無明を超えられる)


「俺の技は全て見せる!君に託す!超えてくれ!!」


おおおおおおぉぉぉッ!!!


いけるッ!!


追いつくッ!!


次はいけるッ!!


次こそ追い抜くッ!!







はははっ!


てめえ無明ッ!!


まだ速くなってんじゃねぇか!?



(そうみたいね〜。嬉しい誤算だわ)


おっ、万眼先生の高速音声に追いつけた?


(早かったじゃない、先生の教え方のおかげかな?でもまだまだこんなものじゃないわよ!主神様の本気をなめないでほしいな〜!)


元・主神な?


(あ〜っ!キミ、ちょっと調子に乗っちゃったね?もう少し速度上げちゃおうかな。キミが割り込めないくらい超超高速で「元・主神様チョイス!みんなの恥ずかしい記憶暴露大会★」でもしてあげちゃおうかな〜?)


やめてくれぇーーッ!!

「やめてくれぇーーッ!!」


えっ。


無明さん……。


わかったよ、おれたちは同志だ、謝罪はおれに任せて、無明は引き続き『奴』と戦っていてくれ!


「……あぁ、任せたぞ!」


すいませんでした!!

自分、調子に乗ってました!

万眼先生!

いつものようにどうして無明がまだ速くなっているのか、解説お願いします!


(まぁキミも期待に応えて成長してくれてるわけだし、先生許してあげちゃおう。さて、ついでに無明が強かった理由から教えてあげようか。理由、って言っても、まずは無明がバカだから、死ぬほどがんばってた、っていうのが大前提ね。最初に死にかけの無明に出会って助けてあげたとき、もちろん記憶も覗いたんだけど、無明って、とある小国の英雄だったのよ。一兵卒から槍一本で騎士団長になって、将軍まで成り上がって、押し寄せる大強国の軍勢を退けた、救国の英雄。バカだからいつになっても最前線に突っ込んでいくのよね。そんなバカだから、このバローグの神々の誰かに気に入られてたみたいで、『祝福』か『寵愛』でも受けちゃったみたい。無明の記憶だから正確にはわからないんだけど、神々に気に入られた人間って、成長率が段違いなのよね。だから鍛えまくってた無明がこんなにバカみたいに強くなったってわけ)


先生、おれに追いつけないように、さりげなく本気出してきたね?


(あらあら、先生まだまだ本気じゃないんだけど?そんな感じで救国の英雄まで上り詰めた無明だったんだけど、コイツってば、これでようやく胸を張って故郷に帰れる、とか思ったわけよ。バカでしょ?とっくの昔に胸張って帰れるくらいの出世してたのよ?それでせっかくの将軍の位とか全部返上して、まぁ思い入れがあった騎士団の永世名誉団員の座だけは受け入れたらしいんだけど、肩の荷を降ろして故郷に帰ったってわけ。それでその時点で神の加護は消えちゃったわけよ。あたしの推測なんだけど、その神にとっては、救国の英雄なんてまだまだ序章のつもりだったんでしょう。小国の一兵卒から成り上がって、大国を併呑する一代の英雄、そんな英雄譚でも作りたかったんじゃないかな。だからまぁ、その神は無明にフラれちゃった、って感じよね)


なるほどね。

神の『祝福』、神の『寵愛』、か。


ってことは、今さらに無明が速くなってるのは、万眼先生の『祝福』のおかげってことか?


(そういうこと!でも『祝福』じゃなくて『寵愛』だから、さらに成長率が……ぁ…………)


ほほーう、万眼先生は無明のことを『寵愛』してるわけねー。

どこぞの神は無明にフラれたけど、先生は見事に射止めてみせたってわけですかー。


「なるほどな!道理で際限無く力が湧いてくるはずだ!万眼、これがおまえの愛のちか」


(うるっさい無明バカ!!!!!さっさとそんな『奴』やっつけちゃいなさい!!!もう!もう!もう!!)


あのー、夫婦漫才にしては甘過ぎて笑えないんですけどー。

ちゃんとおれのこと笑わせてほしいんですけどー。


「めっ、夫婦!?そうか!夫婦に」




『漆黒』の周囲の空間が大規模に砕け散った。

無明はすんでのところで飛び退がっている。

危ないよ!

リア充爆発してんじゃないよ!


『漆黒』が揺らぐ。

その瞬間、万眼の警戒が最大限に引き上げられ、『漆黒』の一部分を『凝視』する。






『漆黒』の中に、一条の鈍い輝きが『視え』た。




それはまるで。




(抜いたわ)




無明が息を飲む。




(第三段階、ね)





その鈍色は、まるで刀のようだった。







これは、運命を決する戦い。

世界の運命を。

おれたちの運命を。

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