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1キャラ目、中の人

※万眼先生による、無駄に長い説明回です。今まで喋れなかった分、たくさん喋らせてあげてしまい、申し訳ございません。




ひどいよ!!

まさか万眼の中の人まで残念だったなんて!


(ふはは!中の人などいない!)


おれの万眼先生を返せよ!

おれの、あのクールで仕事ができる、安定の万眼先生を返してくれよ!


(中の人じゃなくて、中の女神で〜っす!)


うるせぇよ、おれの悲痛な叫びを聞けよ。


(いや〜、キミも大概よね?さすがっつーかなんつーか、あたしさっき主神だったって言ったのに、敬う気配ゼロよね?)


だって、空気読めよ。

一度は恐怖に呑まれて逃げ出してしまったけど、無明の過去を知り、決意を新たに強大な敵に挑む、って流れだっただろ?

なんでそんな残念っぷりを発揮した!?

おれは信じていたのに!

万眼先生だけは残念じゃないって、信じていたのに!


(キミってやっぱバカだよね)


バッ!?

いや、はい、そうだけどね?


(先生がっかりよ?あたしが今、何の意味も無くこんなふうに喋ってるって、本気で思ってる?安定の万眼先生なんでしょう?)


えっ?

そのテンション、意味があるんでしょうか?

ただ素で喋ってるだけなんじゃないでしょうか?


(もちろんこれがあたしの素だよ?でもそういうことじゃなくて、キミって、もう恐怖を感じていないでしょ?)


まぁ、だいぶ落ち着きましたけど。

だから、もう恐怖を克服して、今度こそ『奴』に立ち向かう、っていう流れだったんじゃないの?


(今キミが怖くないのって、あたしのおかげよ?あと、キミの女神の祝福のおかげ。キミさ、勘違いしてない?あの恐怖って、精神攻撃だから、単純にビビってたとかじゃないよ。だから克服するとか、無いからね?)


せ、精神攻撃?

ってことは……。


(もう一度『奴』に出会ったら、キミはもう一度逃げ出すよ。つーかキミ精神体だし、精神攻撃とか超超通るからね?だから逃げちゃったのはしょうがないんだってば)


じゃ、じゃあ、おれは『奴』とは戦えないのか?


(つーか『奴』と敵対するとか、普通はムリだからね〜)


でも、やっと見つけたんだろ?

無明と万眼は、今までずっと『奴』を倒す為に……。

それなのに、おれのせいで戦えないのか?



(もちろん『奴』は許さない)



万眼の殺意。

凍結させた怒り。

根底にしまい込んだ、絶対の意志。


(だからまぁ、結局ここで戦うわよ〜。その為に今、「元・主神様の和みトーク術☆」で、キミに精神防壁を付与してるってわけなのよ。ほら、キミの万眼先生は、相変わらずクールに仕事してるでしょ?)


なっ、和みトーク術、だと?

つまり、万眼先生は、おれを和ませる為に「あえて残念にしている」とでも言いたいのか……。


(だって好きなんでしょ?残念な女神が)


ちょっ、ばっ、ちげーよばか!!

誰がアイツのことなんて、す、すすっ、す、すすすすすっ!


(まぁそういうわけだからさ、先生のお話、ちゃんと聞いてくれるかな?)


え、あ、はい。



(まずはさっきのキミの質問から片付けていこうか。『その日』何が起きたのか?これはさっき説明したけど、おさらいしておくよ)


万眼先生、お願いします。


(うむ、大変よろしい。『その日』、次元の壁をぶち破って、『奴』がこの次元バローグに侵入した。その壁の破壊に巻き込まれた、バローグ最初の犠牲者が、無明と、彼の故郷の人たち。空間の破壊に巻き込まれて、村は消滅した。この世界から、その空間ごと消えてなくなった。空間ごと『奴』の『漆黒』に摂取された。要するに、ぶち壊されたうえに、もののついでに腹の足しにされた、ってことね)


次元の壁を破る。

空間を破壊する。

空間ごと、喰らう。

ふざけた力だ。



(次に進むわよ。「あたしがどこから来たか?」)


(あたしは、このバローグに隣接する別の世界で、主神をしていた。変に聞こえるかもしれないけど、世界と世界の間にも、近い遠いがあるのよ。あたしはお隣さんってことで、このバローグの神々ともご近所付き合いがあってね。ここの主神の「偏屈女神の均衡」とはウマが合わないんだけど、運命ちゃんとは仲良しでね〜、けっこう遊びに来てたんだ。運命ちゃん、超超カワイイから、よその世界には不干渉なんだけどさ、ついつい面倒見てあげたくなっちゃうのよね〜)


万眼は、楽しそうに話している。

楽しい思い出、終わった日々。


(でね、ウチの次元、『奴』に滅ぼされたんだ。けっこう粘ったんだけどね、ダメだった。ウチの神々も、ウチの人間たちも、みんな優秀な子たちで、みんなみんな、がんばってくれたんだけどね。あたし、守ってあげられなかった。主神なのに、守れなかったんだ)


(みんなのおかげで、『奴』の力はかなり削れたんだよ。たぶん、9割近くの力を削って、残り1割くらいってとこまでいったかな?『奴』は、他にいくつもの世界を消してきて、その分、莫大な力を蓄積してた。だから、ウチの子たちがあんなに抵抗できたのが、あたしの自慢だよ)


自慢、か。

きっと嘆いてばかりじゃいけないんだろう。

後悔ばかりじゃいけないんだろう。

主神って存在がなんなのか、おれには想像もつかないけど。


(ウチの世界の終わりに、最後の最後で、世界の破片をかき集めて、あたしの残滓をかき集めて、凝縮させて、『奴』が開けた穴に滑り込んだ。それが岩の槍、『万眼』の正体よ。「あたしがどこから来たか?」その問いの答え。あたしは、破壊されて消え去る直前の、隣の世界からやって来た。ウチの世界は消えても、まだ、敗けてない)


滅びた世界の女神が宿る、消えた世界の最後の一片。

それが岩の槍『万眼』だった。

その戦いは、まだ終わっていない。



(次は「あれからどうなったか?」、だったわね)


在りし日の無明が、たぶんずっと帰りたがっていた故郷に帰ってきた。

帰り着く直前で、この世界、バローグに侵入してきた『奴』が、全てを台無しにした。

足下で死にかけている蟻が目に入らないのと同じように、『奴』は無明に気付くこともなく去っていった。

無明は誓った。

「奴を必ずこの手で殺す」

死にかけの無明は、この世界に滑り込んだ万眼に生かされた。

その先を、教えてくれよ。


(えぇ、もちろん。キミの万眼先生が、教えて・あ・げ・る)


そういうのいらないです。


(いるんですぅ〜!「元・主神様の和みトーク術☆」発動中はちょいちょいこういうの挟むんですぅ〜!!そんな感じでいくから、気にしないでね?でもちょっとは反応してね?)


あの、わかったんで、話を進めてください。


(ふむ、まぁ熱心な生徒も、万眼先生は嫌いじゃないぞ?あれから、あたしと無明は、『奴』を探して放浪した。無明は肉体も精神もボロボロで、あたしはただの残滓だし、神性もほとんど残されてなかったから、地道に探し回るしかなくてさ。ホントはすぐにでも、ここの神々に『奴』の侵入を知らせたかったんだけど、そんな力すら残ってなかった。あたしって、この世界にとっては完全に異物だからね、あんまり目立つと均衡律の粛清対象になっちゃうからさ〜)


はい、先生!

均衡律?ってなんですか?


(バローグの世界の均衡を保つ為に構築されたシステム、って感じかな。でも今代の「均衡」を司る神は偏屈女神だから、まともに機能してないかもね〜。本来なら『奴』みたいな侵入者こそ真っ先に粛清対象になるはずなんだけど、あの『漆黒』って、『認識不可』にかなり近づいてるからね。『奴』に侵入されたことに気付いても、隣の世界が消滅したことを知っていても、『奴』を忘れてしまったら、何もできない)


見たはずなのに、忘れてしまう。

この世界で無明だけが、『漆黒』を纏っていない状態の『奴』を見た。

激しい怒りが、思い出し続けている。


(実際、感知系が弱い神々の世界だと、詰みよ。お手上げ。為す術もなく消滅ね。ウチだって、気付かない間にそこそこ世界が削られてたからね。少しずつじわじわと世界を侵食して、摂取した世界を自分の力に変換して蓄えて、ある程度の力が溜まったら、一気に喰らい尽くす。これが『奴』の『世界喰らい』の常套手段ってとこかな。あたしはたまたま『視る』のが得意で神性もかなり高かったから、早い段階で『奴』に気付いたんだけど)


なんか、聞けば聞くほど、『奴』のチート臭がプンプンしてくるんだが。

『認識不可』で、『世界喰らい』とか、完全に「僕が考えた最強の存在!」なんですけど。


(『認識不可』はまだまだモドキだし、『世界喰らい』だってエネルギー効率めちゃめちゃ悪そうだし、これだけだったら、正直あたしは万に一つも負けはないからね?問題はね、『神殺し』よ。しかも超ド級。神って基本的に不死だから、『神殺し』って言っても、せいぜい「ダメージが通る」くらいが関の山なのよ。ちょっと誇大広告なわけ。でも『奴』の『神殺し』だけは別。アレは、神性が低い神なら、威力的には確殺とれる。確殺よ?もちろん間合いだってあるし、防ぐ手段はいくらでもあるけど、『奴』には防がれない手段があるのよね)


そうですか。

『認識不可』からの『神殺し』ですか。

そんなのデスコンボじゃないですか。


(あの野郎、悔しいけど能力が噛み合いすぎてんのよね。『認識不可』からの『神殺し』、『認識不可』からの『世界喰らい』はもちろん、『神殺し』と『世界喰らい』の相性もえげつないのよ。神って基本は神域っていう空間に引きこもってるんだけど、世界に基点を置かないといけないわけ。あたしも実は今こうして神域から話しかけてるんだけど、基点はこの岩なんだ。それで、もしも『奴』に基点を設置した空間を喰われたら、神域が保てなくて、その場に顕現させられちゃうんだ)


『神殺し』を恐れて神域に避難しても、『世界喰らい』で引きずり出される、ってことか。


(そういうことね。それに、世界が弱まると神々の力も弱まるからね。世界が喰われるのを止める為にのこのこ『奴』のところに出向くと、神殺されるってわけ。だから『奴』はいくつもの世界を消すことができた)


世界が減るほど神の力も減る。

『世界喰らい』を止めようとすると、『神殺し』でやられる。

それって詰んじゃってませんか?


(遠距離から一方的に攻撃したいところだけど、『認識不可』だから。さすがのあたしでも、『認識不可』を感知しつつ、空間破壊による防御と、『漆黒』に蓄積されたエネルギーを突破して本体にダメージを通すのは、無理だったわね〜。まぁそれでも『漆黒』をだいぶ削れたからこそ、こうしてあたしは生き残ったし、無明も、次元の壁を突き破るので精一杯だった『奴』を目撃できたし、残滓にすぎない今のあたしでも『奴』が『視える』し、未だにこの世界が保ちこたえている、ってわけ)



『認識不可』で、『世界喰らい』で、『神殺し』とか、詰め込みすぎだろ。

なんなのその化け物。

誰が戦えるの?


(そこで「あれからどうなったか」の話の続きに戻ります。あれから、この世界の神々は『奴』に次々と滅ぼされていきました。生き残ってる神は、もう片手で数える程度ってとこね。この辺りに果樹や木の実が無かったの、覚えてるかな?アレは豊穣を司る神が消された証拠だね。まぁいくら偏屈女神とはいえこの世界の主神は「均衡」だし、他の神々が消えても、ある程度バランスのとれた世界が保たれて、ちゃんと実りのある土地もあるはずよ。その「均衡」だって、あと何年後かには『奴』に敗北するだろうけど。神じゃ『奴』には勝てない。それじゃあ、誰が戦えるのかな?)


いやー。

いやいやいや。

ちょっと待てよ。

残念カワイイ謎女神は教えてくれなかったけど、実はこの世界の危機で。

相手は「僕が考えた最強の存在!」をそのまんま持ってきたような化け物で。

『認識不可』の『奴』を覚えていて『視る』ことができる唯一の人間が、『無明の万眼』で。

今その身体を動かしているのは……。

えっ、おれが戦うの?

そうだったよね、今そういう流れなんだよね!



(『神殺し』のせいで、神よりも人間の方が勝ち目はある。『認識不可』のせいで、神には発見できても人間はそもそも戦えない。ホントふざけた存在よね〜。そういうわけだから、期待してるよ?最後の質問の答えにいこうか。「万眼の、あたしの戦う理由」ってやつ)



(まずはウチの世界。あたしの世界にいた、全ての存在が、あたしの戦う理由)


(それから『奴』の存在。既に消されたいくつもの世界。これから消されるもっと多くの世界。神のはしくれとして、看過できない)


(あー、あと、そういえば無明もいたわよね。こいつはバカよ。一途バカよ。あの故郷に待たせてる人がいたんだってさ。立派になろうだなんて思ったせいで、ずいぶんいろんな遠回りして、やっとあそこに、本当の自分の居場所に帰ったんだ。そこであんなモノに出くわしてさ。あの力を目の当たりにして、なんで立ち向かおうだなんて思えるのよ。バカよこいつは。死にかけてたくせに。人間のくせに。バカだから、あたしがこいつを利用してるの。あたしの復讐に、無理矢理付き合わせてるんだ。まぁこいつも理由の一つと言えないこともないわよね)


おや、万眼先生の様子が?

ほぉ、そうかそうか。

しょうがない、そっとしておいてやろう。

ニヤニヤ。


(なにニヤついてんの?それで最後の理由は、キミが来たから。『運命の女神の代行者』が、突然無明の身体を乗っ取った。しかも、女神の祝福から感じる力はすごく弱い。あたしは、キミを無事に帰してあげなきゃならない)


ん?

なんだそりゃ、万眼先生、それはどういう……。


(これがあたしの戦う理由。だからちょっとだけ万眼先生に付き合ってね、代行者クン)





女神ボイスで、「先生に付き合ってね」とか言われたら、断れるだろうか?

いいや、断れない。


(キミってやっぱ超超バカだよね〜)

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