表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/88

1キャラ目、30日

初めての評価を頂きました!

高い評価を頂きまして、ありがとうございます!

励みに致します!!



今回は普段より長めになってしまいました。

チュートリアルは既に終わった。




おれが自分で設定した30日という準備期間は、あっという間に使い切った。


というわけでぇー!

ちょっとここ最近の「万眼先生と無明さんのときめき異世界ライフ」をのぞいて見ちゃお☆




……………え、いや、別に全然疲れてないですよ?

いつも通りっすよ?




最近の無明さんってばすっかりお寝坊さん!


えーと、予想通り、夜には骸骨軍団がやってくるので、朝は身体をしっかり休ませることにしました。

最初の寝床にした大きな木の下は、寝るスペースの周りの土をがんばって盛ってみたり、木の枝とか石とかを積んでみたりして、野生動物の巣みたいになりました。

実際、無明さんてそんな感じの生き物だよね。

スケルトンに寝込みを襲われた経験を生かして、朝はできるだけおれの意思で無明さんを起こす訓練をする。

万眼先生のように瞬時に覚醒させるまでにはならなかったけど、割と目覚めをコントロールできるようになりました。



目を覚ましたら朝の挨拶だよ!


みんなもいっしょにー!


せーの!


残念カワイイ謎女神!!

「…………………………。」


はい喋れない!



木の幹に、何日目になったかの印を刻みつけて、朝葉っぱ……げふんげふん、朝ご飯を食べて、森の外に向かいます。

「ナーン森林」の寝床から森の外まで、歩いて2時間か3時間くらい。

もちろん正確な時間なんてわからない!

森の外に日時計っぽいものを作っておいたのだ!

なんとこの日時計!

『万眼』の能力で『視て』みれば、太陽が出ている限りなんとなーく時間がわかるというスグレモノ!

腕時計いらずだね!



森の出入り口に着いたら、次は近くの小川を目指します。

なに?

お腹が空いたって?

そら、たーんとお食べ。

暗い霧に包まれた森の中と違って、この辺りの草は活きが良いからね!

「食べられる」

「食べられる」

「食べられる」

うんうん、森の外は草の生い茂った平地だから、食べられる草がいっぱいだね!

「食べられる」

待て待て!

食べない、そいつは食べないよ!

なんかウサギみたいなキツネみたいな生き物が逃げていく。

逃げてー!!



ホントは食べた方がいいんだろうけど、無明さんの持ち物って万眼先生だけなんだよね。

ナイフも無ければ、火を起こす道具も無い。

実は一度、無明さんの「食べられる」って記憶を信じて、このウサギみたいなキツネみたいなやつを狩ってみたんだけど、調理ができないことに気が付きました。

動物の死体にそのまま喰らいつくとか、マジで無理でしょ!?

申し訳ない気持ちで、犠牲になったウサギみたいなキツネみたいなやつの死体を地面に埋めました。

まぁ、その墓標が日時計になったんだけど。



改めて、小川に向かいます。

それにしても万眼先生って素晴らしい。

現実の異世界でマップが『視える』。

寝床、森の出入り口、小川、進むルートが一直線の最短距離。

常に死角が無くて、索敵も完璧。

最初の頃は難易度インフェルノとか騒いでたけど、蓋を開けてみたら超安全の初心者仕様!

無明さんがちょっとアレだけどね!

ある日、『無明の万眼』というキャラクターの、メリットの部分が万眼先生で、デメリットの部分が無明さんだと気付いてしまった。

なんか、よりいっそう無明さんを見捨てられない気持ちになってしまった。



小川に着いたらまずは水を飲んで、それから水浴び。

本当は魚とか食べたいけど、生食はなんだかコワイので避けている。

その代わり、小川を渡ってさらに進むと湿地帯があって、あるとき、ふと気が付いたのだ。

レンコンって、蓮の根っこなんだよね?

さっそく万眼先生のお力を借りて、蓮っぽい植物を探してみた。

すると、比較的浅そうな沼地に、それっぽい植物を見つけたのだ。

ちなみに、沼の中すら『視える』ので、湿地帯の中にけっこうデカイ魚っぽいやつとか、ワニっぽいやつとか、ヤバそうなやつらを発見した。

万眼先生の索敵のおかげで、物騒なやつらに遭遇することなく、蓮っぽい植物の根を掘り出せる。

期待してたレンコンとは違う微妙な根っこなんだけど、その辺の草よりは栄養になりそうなので、すぐに食べる分と、夜に食べる分を掘り出して持って帰る。

森の外でやることは、ほぼ食料調達だった。

不思議なことに、木の実や果樹が見当たらない。

明らかに異常な「ナーン森林」はともかく、森の外でもそうなのだ。

この異世界の常識はわからないんだが、これってけっこう異常なんじゃないだろうか?



寝床に帰ってくる頃には、だいぶ日は傾いている。

日が沈んでしまう前に、少し残して根っこを食べて、寝床から離れた、ちょっと広いスペースがある場所に移動する。

せっかく整えた寝床を骸骨どもに荒らされたくない。

移動が完了したら、座り込んで夜を待つ。


骸骨軍団の編成は、2日目から早くも様変わりした。

雑兵スケルトンだけでもぴったり1000体になり、それだけで初日の兵数を上回ってしまった。

初日の編成って、雑兵の数字が半端だったし、一度編成したっきりで欠員が出ても放っといたんじゃないかな?

最後のシメにも、撃破して散らばっていた骨が寄せ集められて数体の巨大骸骨兵になったりして、スケルトンキングのやる気が伝わってきた。

キングはどうやら万眼先生に見られているのを理解したらしく、弓矢の弾幕でこちらの動く先を限定してみたり、次の戦局が見られているからこそ意味があるような用兵をしているようだった。


おれの方では、訓練の為に目標を設定したりしていた。

雑兵スケルトンと戦う間は、できる限り自分の操作で戦うようにした。

「オートモード」でお手本を見せてもらってるときでも、なるべく万眼先生の動きを自分でも追いかけてみた。

万眼先生がどういう状況でどんな動きを選択しているのか、じっくり観察してみた。



戦闘が終わった後は、視点だけで骸骨の王に挨拶しに行く。

見上げさせるのも失礼かなと思い、俯瞰視点ではなく、正面からの視点で訪ねていく。

すると王は、既に左右に骸骨近衛兵を創り出して整列させていて、こちらを迎えてくれる。

こちらの視点と目が合うと、満足そうにうなずいて、カッタカタカタと笑い出す。

なんかね、初日と違ってハツラツとしてるんだよ、骨なのに。

子供の頃、将棋指しに遊びに行くと喜んでくれた、近所のじいさんみたい。

今まで暇だったんだろうなー。

おれも毎日毎日充実した訓練ができて助かるよ。

訓練終了後は、寝床に帰って、残しておいた根っこを食べて、無明さんを眠らせる。

それから朝になるまで、おれの反省会と考察タイムと『視える』能力の訓練だ。



そんな感じで!


「万眼先生と無明さんのハッピー異世界ライフ」の、長い長い1日が終わるのでした☆


1日の終わりにご挨拶!


みんないくよー!


せーの!


残念カワイイ謎女神!!

「…………………………。」


無明さんは寝てるからね!




こうして、30日間を使い切った。


そして、31日目が始まる。




31日目、朝からごちゃごちゃと考えつつ、無明さんを目覚めさせる。


この30日間でよくわかったけど、「肉体の制限が無くなった」っていう『運命の女神の代行者』は、もはや人間じゃないんだろうな。

おれのスペック跳ね上がりすぎだろ。

万眼先生の「オートモード」には遠く及ばないけど、かなり戦えるようになったし。

っていうか『視える』能力を普通に使えるようになった時点でおかしいよね。


結局、おれが異世界に送り込まれた目的については、考えてみても結論は出なかったな。

頭の中で謎女神に呼びかけてみたりもしたけど、そういう機能は付いてないみたいだ。

通信機能くらいつけとけよな!

べ、別に、寂しいとかじゃないからな!

声が聞きたいとか、思ってないし!!


さて、しばらくこの寝床を拠点にするのは確定として、今日からは少しずつ別の行動もしていこう。

これから徐々に活動範囲を広げていこうと思う。

「バルゴンディア王国」とか言ってたけど、期待してたほど人間の住む領域は近くないようだ。

日が昇る方角を仮に東とするなら、この寝床から北の方に骸骨王の居城と、その更に北に突然のジャングル。

南の方に森の出入り口と、小川。

小川の西の方に、湿地帯が広がっている。

ちなみに、反対の東の方には草原があるんだが、草原は南の方に向けて広がっていて、東は少し進むと岩肌の露出した荒地になっている。

今日はとりあえず、湿地帯にいるワニっぽいやつと試しに戦ってみようかと思っている。

骸骨とばっかり戦ってたけど、活動範囲を広げるなら、色々な敵と出会うだろう。



そういうわけで、無明さんに朝葉っぱを食べさせて、森の出入り口までやってきた。


『万眼』の能力で湿地帯のワニっぽいやつと戦うポイントを見定めつつ、いつものように小川を目指す。




いや、目指さない。




なにか、違和感がある。




小川と湿地帯の間に、なにか違和感がある。




このまま小川に向かってはいけない。




なにか、黒いものが見えた。







チュートリアルなんて、とっくに終わっていた。


あれはゲームで、これは、現実の異世界だ。


おれはまた、取り返しのつかない、肝心なことを忘れていた。


『この世界のことを、何一つ知らない』


そんな肝心なことを忘れていた。


おれは、考えているべきだった。


もっと深く、しっかりと想像していなければならなかったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ