表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/88

1キャラ目、パネェっす!

チュートリアルは既に終わった。




今はただ、本番の実戦を噛みしめるのみ。


雑兵スケルトンの先陣が突っ込んでくる。


いや、先陣はさっきの曲刀スケルトンか?

んー、まぁいいや。

とにかく2体目のスケルトン。

武器はさっきと同じ曲刀、防具無しで槍に突っ込んでくるとか、命知らずっていうか骨だから死んでるのか、おれの仲間だね。

とか、こんなことをぼんやりと考えているうちに、『万眼』が一撃で仕留めてしまっていた。


うん、やっぱりそうだった、『万眼』ってば、自動攻撃してくれてる。


おれは何も動こうとしていないし、そうなると無明さんも動かない。

本来ならばボケーっとつっ立ったままになっているはずだ。

だからさっきの寝ている間の1体目のスケルトンのときも、無明さんが突然目覚めて攻撃したわけではなく、見張っていた『万眼』が自分で動いて攻撃したのだ。

無明さんは『万眼』が動いたから瞬時に目を覚まして、きっと普段通りに『万眼』の動きに身を任せただけなのだ。


それはおれの操作に関係無い、『無明の万眼』としての当然の反応。


意識しなくても自然と呼吸しているのと、同じレベルの反応なのだ。

きっと『万眼』にとっては、『視える』から最適の行動を取っているだけ。

なんとなく、万眼さんも意思を持っているような気がしてきた。

無明と万眼、互いに信頼し合う、最高の相棒なのだろう。

決して手放してはならない。

なるほどね。

熱いぜ、お前ら。



3体目、長弓スケルトンが射かけてきた矢を、自動防御で事も無げに逸らしている万眼さん。

…………っていうか、スペック的に万眼さん、いや、万眼先輩が本体なんじゃね?

今の自動防御とか、超芸術。

『視え』ている矢の軌道に槍の穂先をセットしただけ。

それだけでもう万眼先輩にとっては回避完了。

ただの岩の棒みたいなくせして、クール過ぎる。

こんな思考をダラダラとしている間にも、敵軍の動きは全て『視え』ている。

長弓スケルトンの第2矢も、最低限の微調整で同様に逸らしてしまう。

長弓1、直槍2、曲刀1が接近中。

その後には12体の取り巻きがくっついた指揮官級が到着しそうだ。

第3矢は当たらないから動きもしない。



骸骨軍団の全軍をここで迎撃する。

万眼先輩の自動攻撃、自動防御の性能をじっくりと確認させてもらおう。



曲刀スケルトンが1体で突っ込んでくる。

バカなの?

ちゃんと連携してこいや、万眼先輩の性能が測れないだろうが。

またしても万眼先輩に一撃で貫かれ、崩れ落ちる骸骨兵。

そういえば、スケルトンって多少崩れてもしぶとく向かってくるような印象があるけど、さっきから脆すぎない?

長弓兵が2体に増えてポツポツと射かけてくるが、自動防御でことごとく逸らされる。


直槍2体が同時に接近してくる。

槍の長さは向こうが上だ。

さて、万眼先輩はどう対応するんだろう。

いや、どうもこうもないわ。

やっぱり一撃で、いとも容易く刺し貫いていく。

おれは完全に無明さんの操作を放棄している状態で、そうすると、万眼先輩の動きに合わせて、身体が自然に反応する。

足運びとか自然すぎて、骸骨が自分から万眼先輩に刺さりに来ているとしか思えない。

途中で矢が飛んできてたけど、攻撃モーションが同時に回避になっている。

徹底して動きに無駄がない。

全て、『視える』情報によって導き出された最適行動。

さらに、今の直槍スケルトン2体を撃破するとき、スケルトンの身体に、うっすらと力の流れみたいなものが『視え』た気がした。

万眼先輩は、その流れを一撃で破壊するポイントを、正確に貫いてるっぽい。


つまりは、急所攻撃。


全自動急所攻撃機(回避機能付き)とか、なにそれコワイ。

たぶん、最初の1体目のスケルトンは、空気を読んでボッコボコにしてくれたんだろうね。

わかってらっしゃる。

マジで万眼先輩が本体なんじゃね?



おっ?

なにか万眼先輩が大きなモーションをとろうとしている。

おれも促されるままに動いてみると、万眼先輩を思いっきり横薙ぎに振らされた。

すると、指揮官級に率いられる雑兵スケルトンが投げてきた手斧を、ジャストミートで打ち返した。

手斧は見事に長弓スケルトンの1体を撃破する。

これも一撃だ。

ゴツゴツした岩っぽい槍っぽいフォルムの万眼先輩が、心なしか会心のドヤ顔に見えてくる。


万眼先輩、マジパネェっす!


おっと、指揮官級が率いてきた長弓スケルトンが斉射してきたね。

万眼先輩に促されるまま、半歩かわして穂先で逸らす。

さすがに指揮官級スケルトンは、中身カラッポとはいえ頭が回るようだ。

弓の斉射に続いて、直槍が牽制しつつ、こちらを取り巻いていく。

包囲完了。


さて、万眼先輩はどうする?


もう一度、今度は山なりの斉射、向こうの槍は同時に四方から距離を詰めてくる。

その内の一方の槍を絡め取るように岩の穂先が走る。

足運びはゆったりと、相手の攻撃が全てすり抜け、岩の槍に敵が吸い込まれていく。

骸骨どもの槍の方が長いはずだが、こちらの槍しか届かない。


突撃してくる曲刀スケルトンと手斧スケルトン。

穂先で貫き、柄で薙ぎ払い、石突きも無い柄の先端で打ち砕く。

ときには相手の武器を吹き飛ばし、長弓兵を撃破する。

他の兵に混じって突撃してきた指揮官級スケルトンも含めて、全て一撃。

あとには、バラバラに崩れ落ちた白骨が転がるのみ。

万眼先輩、マジパネェっす!!




そんなこんなで幕を開けた万眼無双。


夜明けを待たずして、骸骨軍団が壊滅!!


無事、その幕を閉じました。


万眼先輩、いや、万眼先生の自動攻撃、自動防御にお任せし続けた結果、無傷のまんまで全スケルトンを一撃必滅しました。


さすがにスケルトンライダーズが相手のときには、万眼先生に促されるままに身体を動かしまくった。


駆け回りながら射かけてくる弓騎兵とかどうやって倒すんだろうと思ったけど、地面に転がる武器を跳ね上げて次々と弓騎兵に打ち込んでいく様は爽快でした!



そして現在。

全てのスケルトンを撃破した。

やっと一息、と思ったら、そこら中に転がっていた骨やら武器防具やらが、ズブズブと地面に沈んでいく。

えっ、なにこれ気持ち悪い。

異世界すぎて意味わかんない!


すると、万眼先生が、おれに俯瞰視点を『視せ』てくる。


なんだ?

何を見せたいんだ?

ひょっとして、今の骨が沈む現象の答えとか?

森の上空から、現在地を見下ろす俯瞰視点。

その視点が、森の奥深くへと移動していく。

ある一点でぴたりと止まった視点は、上空から、ぐっと地面へ向けて寄っていく。



そこに『視え』たのは、廃墟ですらない、わずかに残された、吹きさらしの古い瓦礫。


なんとなく、瓦礫の散らばり具合が、家かなにかの間取りの跡のように見える。


その中央には、骨の玉座。


そこに座するのは、焼け焦げたような王冠を被り、絢爛なぼろを纏い、煤けた王笏に手をかける、細身の骸骨。


スケルトンキング。


骨の王が、そこにいた。


王冠を手で抑えながら、俯瞰の視点を仰ぎ見てくる。


その暗い眼窩と目が合った。


骨の王はカタカタと歯を鳴らすと、骨の玉座ごと、深く暗い霧の中に包まれていった。


玉座の周囲、実はかなり広い範囲に散っていた瓦礫の痕跡から、同じように深い霧が立ち昇っていく。


霧の王城が、そこに出現した。


夜の闇にそびえ立つ幻影。


骸骨の王の居城。


失われた王国、終わった夢、亡国の骸。




そうか、この霧深い森林は、あんたの王国か。




隣人への挨拶を済ませたおれは、無明さんの身体を休ませることにする。

最初に眠りについた木の根元を目指して歩いていく。

なんか、無明さんの動きがにぶいんだが、これ大丈夫?

さっきの骸骨軍団との戦いは無傷で終わったはずなんだけど。

はっ!!

まさか、気付かない間にあのスケルトンキングに呪い的ななにかをかけられたわけじゃないよな!?





ぐるるるるるぅ〜〜〜。





はい!

無明さんのお腹が鳴りましたー!!

おれって、腹も減らないのか。

でも、無明さんの満腹度をしっかり管理しないといけないのね?

いや、ちょっと待て。

無明さんって普段何を食べてるの?

万眼先生が教えてくれたりしないかなー、と思いつつ、『万眼』を見つめてみる。





「食べられない」





2つしか無いと思っていた、無明さんの記憶。

もう1つの、新たな記憶が蘇った。




チュートリアルは既に終わった。


そして、新たなる危機が迫るッ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ