1キャラ目、夜は長そうです
短めですが、投稿してしまいました。
チュートリアルは既に終わった。
そもそもおれは、運命改変アクションRPG「ヴァーランド・リフォージ」を全クリしただけだった。
それを、実はチュートリアルでしたー、とか言われて。
これからが本番だよ、とか言われて。
本番って、なんなんだい?
おれはこの異世界で、いったい何をすればいいんだい?
よくある召喚モノだろ?とか思ってたけど、おれを謎空間に召喚したのは謎女神なわけだよな。
普通は、例えば勇者として異世界に召喚されて、世界を救うことになる、とかだよな?
謎女神の目的は何なんだ?
おれに何をさせたい?
まさか、おれにリアルなゲームを体験させたかった、ってわけじゃないよな?
やっぱり、この世界を救う、とかが無難なところだよな。
それなら、なんでその目的をおれに言わなかった?
あっ。
うわ、マジか。
イヤなことに気が付いちゃったよ……。
目的が謎の女神。
謎女神って、まさか、そういう意味だったのか?
ついさっきまで、おれの中での第一候補は「残念すぎて目的を言い忘れていた」だったんだけど、「謎女神」っていう名前のせいで、深読みしてしまう。
なんなんだこの状況。
どうしてこうなった?
おれはただゲームをしてただけなのに、どうしてこんな立場になっちゃったんだろう。
あー、そうだよな。
異世界だなんだって、調子に乗ってたおれが悪いよ。
残念カワイイ謎女神が残念なのは、よく知っていたはずだろ?
浮かれすぎだったよね?
ちゃんと目的を確認しなかったおれが悪いよ。
たった2個しか記憶がない無明さんですら、目的があるというのに。
それにしても、目的がわからないから、この1キャラ目で何を目指せばいいのかわからない。
『無明の万眼』は喋れない。
この異世界に放り込まれた理由もわからないのに、情報収集すらままならない。
残念異世界物語の開幕だ。
あの残念女神のおかげで、せっかくの異世界が台無しだ。
しょうがない。
残念は仕様ですよね!
おれはひとまず、『無明の万眼』の望みを叶える方向で動こうと思う。
べ、別に、無明さんの為とかじゃないんだから、それしかやることがないんだから、しょうがないでしょ!
「奴を必ずこの手で殺す」というこの記憶、無明さんは強く想い続けてきたのだろう。
その『奴』とやらを、探してみようと思う。
この身体は、ここから5年間、おれに支配されてしまうようなものだ。
そのせいで、この『無明の万眼』の想いが果たされないなんてことになったら、やり切れない。
だから、無明さんの目的が、今のおれの目的だ。
とかなんとか考えている間に、すっかり暗くなっていた。
異世界初日の夜が訪れた。
あー、やっぱり『万眼』で『視える』ね。
めっちゃ暗いのがわかるのに、全く問題無く『視える』って、どうなってんだよ。
こりゃすごい体験だわ。
意味わかんない。
最初の内こそ、霧が深くて視界が狭い気がしていたけど、全然そんなことはなかったぜ!
制御不能だと思われた『万眼』の能力だけど
、実は最初は出力最低でした!!
ちょっと見ようとすれば、霧なんてものともしなかった。
なんだろう、『万眼』さん、おれの為に遠慮してくれてたのかな?とか思っちゃう。
さて、夜になった。
これからどうするか。
もう歩ける。
『視える』能力には慣れた。
うーむ。
とりあえず、今日はもう寝てみようと思う。
これから戦闘モーションを確かめたり、寝場所を求めてさまようよりは、スタート地点でじっとしていよう、という選択だ。
ちょうど近くに大きめの木が生えているので、その根元に座り込んだ。
幹に寄りかかり、『万眼』をしっかりと抱え込む。
いやー、めっちゃ『視え』てる。
こんな状況で眠れるのか?
『万眼』をどっかに置いとけば解決するんだけどね。
この『視える』能力、『万眼』由来だし。
でもなー、無明さんが2つだけの記憶の片方で、「この相棒を決して手放してはならない」って言ってるしなー。
と思った矢先に無明さんが眠りに落ちました!
ちょ、おまっ、眠るの早いな!
ちっちゃい子かよ!?
ってアレ?
おれは起きてるな!!
あー、こういう感じか。
なるほど、おれは睡眠が必要無い感じなのか。
だけど無明さんの体は普通に睡眠が必要なわけだ。
うーむ、これってやっぱりアレだよね。
謎女神曰く、「肉体の制限がなくなった」ってやつ?
なんだっけ、『運命の女神の代行者』になった、とか言ってたけど。
いやいやご冗談を!
何を代行すればいいのかわからないんですけどね!!
そういえば、『運命の女神の代行者』と、『運命改変者』って、なにか違うのかな?
おれって謎空間で死にかけたとき、生身じゃなくなって、『運命の女神の代行者』になったんだよな?
あと、『運命改変者』の祝福っていうのをしてもらったから、『運命』を変えられるんだよね?
なんか違う気がするんだけど、これは謎女神に聞いてみないと。
………聞いてもわかんないか?
うん、この問題はいったん保留だね。
無明さんは眠ってるけど、『万眼』は絶賛お仕事中だ。
睡眠が必要無いおれにはよく『視える』。
霧の中に、歩く骸骨がいた。
チュートリアルは既に終わった。
そして、初めての戦闘が幕を開ける。




