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教室の裏側  作者: ケー/恵陽
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罪な提案

 被写体を探して校内をうろついていると、部長が生徒会長と話しているところに落ち合った。どうやら二人は元々仲がいいようで、なんでもない世間話をしている。邪魔をするのも嫌なので、俺はこっそりその場から離れた。

 写真部に入ったのは暇そうな部活だと思ったからなんだけど、意外に暇じゃなかった。顧問がやけに精力的で、大小様々なコンテストを見つけては活動をさせるのだ。だが、写真はよく知ってみると、なかなか面白い。

 親戚の叔父から譲ってもらったデジカメは、最近俺の手の中で活躍の場を広げている。久山先輩やニキチ先輩はデジカメは本格的に写真をするには邪道だって言うんだけど、俺はこれでもいいと思うんだ。そんな才能があるわけでもないから、撮る楽しみを感じられればそれでいい。

 初めは写真を撮れと言われてすごく戸惑った。何を撮るか、そしてどうやって撮るか、先輩たちが凝っているのに俺は何も知らない状態で入ってしまったから。だが撮り始めると単純に楽しくなっていた。

 特別教室棟を覗きながら歩いていると、前から

俺と同じようにデジカメを持った藤谷が歩いてくる。やっぱり被写体を探しているようだった。

「やっほー、東君。いいの、見つかった?」

「見つかってたらうろついてねえ。お前こそ、どうなんだよ。今度もまた友達を撮るのか?」

「それは最終手段。東君こそ、前みたいにコスモスでも撮るの?」

「いやあ、今回は人にしたくてさ。そんで、面白そうな奴捜してんの。なっかなか見つからないんだよなあ」

 藤谷は、あははと笑って互いに頑張ろうと俺の横をすり抜けていった。

 再び俺はきょろきょろしながら歩き始めると、ぼそぼそと誰かの話す声が聞こえた。階段の踊り場に人がいるのが見えた。聞くつもりはなかったが、会話が聞こえてしまった。

「本当だったんだ。すごいじゃない告白だなんて」

「でも通じたかはわかんないんですよねー。折角史や松屋崎がセッティングしてくれたんだからと張り切ったんですけど。それとなく訊いてくれません?」

 どうやら誰かが告白をしたらしい。

「なんで私が? そりゃ面識はあるけど、そんなこと話すほど仲良くないよ」

「でも、他の女子は変な噂立てそうで嫌なんですもん。その点、相葉さんは信頼してるんで」

「なんで信頼してんのよ。普段の私見てどうしてそう思うの。そっちのが不思議よ」

 通り抜けようとして、聞きなれた声とよく知った名前につい足を止める。どうしてか、息を潜めて続きを待った。

「じゃあ、相葉さんの好きな奴当ててもいいですか」

「だ、だめ!」

 慌てて相手の胸倉を掴む女子。その顔に俺は飛び上がりそうになった。

 予想通りだけど、真帆だ。相手は元生徒会長……だったはず。何を話してるのかと思ったら、真帆にはとても似合わない話をしている。

 俺はそっとデジカメを構える。チャンスを狙ってシャッターに指を添える。じりじりと待っていると、真帆が唐突にこっちを向いた。その形相に俺はびっくりする。驚いた拍子にシャッターを押してしまった。

「げえっ! 倫輔っ!」

 元会長を捨て置いて、今度は俺に向かってくる真帆。咄嗟にデジカメを隠そうとしたがその前に奪われてしまった。

「何、何を撮ったのよ! きゃー、なんでこんな変な顔してんの撮ってんのよ。最悪」

 だがすぐにデジカメを取り返す。

「だあ、仕方ないだろ。うっかり押しちまったんだから。大体こんなトコで何してんだよ」

「何って、ただ話してただけよ。あら、あらら、なになーに、もしかしてジェラシー感じちゃったとか?」

「まっ、そんなわけないだろ。ただこんな誰が通るかわかんないところで話してると邪魔なんだよ」

 そんなことは微塵も思ってなかったが、指摘されると妙に恥ずかしくなる。そんな俺に真帆はにやにやと笑いやがるんだ。

「なんだ、それだけ?」

「当然だろ」

 溜息を吐きつつ答えると、ちょっとだけ残念そうに真帆は目を伏せた。だけどすぐに真帆は顔を上げ、笑みを浮かべた。

「で、この真帆お姉様に何か御用かしら?」

 腰に手を当て、優雅に微笑む真帆。その後ろでは何故か元会長が苦笑を浮かべている。

 俺はふと真帆の顔を見て、思いついた。そして口を開く。

「じゃあさ、真帆」

「何?」

「俺のモデルになってよ」

 デジカメを構えて見せると、真帆はキョトンとした表情になった。だが事態を把握すると、口の端を持ち上げて呟いた。

「確かな腕をお持ちかしら」


南天台高校一年一組 東倫輔(アズマリンスケ)

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