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教室の裏側  作者: ケー/恵陽
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雨のち晴れる

「あれ、今日は雨なのに来たのか、ハレオ」

 席に着くと隣から疑問を含んだ声がした。僕をハレオと呼ぶのは友人の臣だ。昨年に続き同じクラスとなった。彼が僕をハレオと呼ぶのには訳がある。

「すぐ熱出すんだから休めばいいのに」

「それでなくても付いていけないのに授業に遅れちゃうの嫌なんだもん」

「だけど、雨の日に来て熱出したら意味ねえよ」

 僕は身体が丈夫じゃない。雨の日に学校に登校すると次の日には大抵寝込んで休む羽目になる。だから必然的に僕が登校してきた日は雨が降らない日ばかりになり、それに気づいた臣が妙なあだ名を付けたんだ。晴れの日しか来ないからハレオ。安直だけど、彼が広めてしまったために今では幾人もの友人が僕をそう呼ぶ。

「二葉さんに教えてもらえばいいんじゃないか」

 姉の名前を臣は口にする。僕と違って姉は身体も丈夫で出来がいい。

「二葉ちゃんは今年受験だもん。僕のせいで手間かけさせらんないよ」

「ふうん」

 まるで感心したような口調に僕はむっとする。

「僕だって甘えてばっかりじゃないよ」

「ああ。悪い、そう聞こえたか。そうじゃなくて、……週末の約束のことを考えてた」

 ハタ、と思い出す。今週末は臣と弥生と三人で遊ぶ約束をしていたのだ。忘れていた。

「熱出されたら困るだろう」

「……忘れてた」

 臣がだろうな、と言って曖昧に微笑する。

「難儀な身体だよな。周りからみれば面白いが。お前が休むと午後からでも雨が降るんだから、下手な天気予報よりも正確で結構だけど出席日数だって大変だ」

「好きでこんな風に生まれたわけじゃないよ」

「わかってるさ」

 やさしく微笑して臣は答える。彼は笑うと少し幼い印象になる。普段は策士のような笑みばかりだから、こんな風に笑ってくれるのは本当に仲の良い人にだけしか見せてくれない。

「でも、だからこそ今日は休んで欲しかったんだけど」

 カリカリと頭を掻き、臣は眉を下げる。

「弥生がいるじゃない」

「あいつ一人だとつまらん」

 じんわり胸があったかくなる。当たり前のように心配をしてくれる臣が嬉しい。

「心配してくれて、ありがとう」

 臣の目が僕を捉える。それはすぐに外されたけれど、頬杖をつきながら返された言葉に、僕は心が躍った。

「別に。ハレオがいないとつまらないだけだ」

 解りにくくて解りやすい、彼の態度が僕の心をぽかぽかにする。これだから、友達をやめられないんだ。

 


南天台高校二年三組 土岐三造(トキサンゾウ)

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