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教室の裏側  作者: ケー/恵陽
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腐れ縁も縁

 このクラスはなかなか面白い。

 新学期が始まって、クラスの雰囲気もだいぶわかってきた。このクラスは所謂イロモノが多い。

「それは翠も含めてのコメントか」

 やや呆れた様子で訊ねるのは中学からの腐れ縁、高原光輝。彼と高校でも同じクラスになろうとは思いもしなかった。

「まさか。なんであたしが入るのよ。そうじゃなくて、このクラスを客観的に見たらそうだと思う訳よ」

「なんだ、そりゃあ」

 面倒くさそうに彼は溜息を吐く。

「だって神城君がいるじゃない。それに女子なら史もいる」

 それだけだろ、と光輝があたしにうんざりとした視線を寄越す。だが、二人だけじゃない。このクラスはちょっとばかし名前が知られている人物が多いようだ。

「吉田もいるわよ。男子の憧れのお姫様。今度うちの劇に出てくれないかな。それに吉田の親友にして下級生女子から絶大なる人気を誇る三嶋。あの子、見た目はカッコいいけど中身は可愛いの。知ってた?」

「……知らねえよ」

「隣のクラスには我が校女子のアイドル、梶栗君もいる。なかなかいいわね。誘いやすいクラスだわ」

 光輝が自身の頭をカリカリと掻いた。

「言っとくが、お前の誘いは手伝わないぞ」

「あら、誰もまだ一言も言ってないわよ」

「今から言うつもりだったんだろう。演劇部の手伝いをしてやってるだけマシだろうが」 

 光輝は帰宅部だ。けれど何だかんだと理由をつけてあたしが手伝わせている。確かにそれは少しだけ悪いとは思ってるけど、使える駒は使わなくちゃ。ただでさえ、我が演劇部は部員不足なのだから。

「なんでお前と離れられないかな……」

 物凄く不愉快そうに眉根を寄せて、光輝が額を右の手の平で覆う。この腐れ縁の友人があたしと離れられない理由は、単に彼が友人を作らないからだ。あたし以外でまともに話しているのは、松屋崎くらいしか見たことがない。

「離れる努力をしないからよ」

 そう言ってやれば彼は目を逸らす。

「面倒なんだよ。お前一人で十人分くらい労力いるんだ」

 ならば文句を言うな。あたしがそういうと光輝は苦笑する。彼を知ればきっと皆、彼の印象を変えるのに。面倒くさがりで不器用で、だけど真面目。全く面倒な男。だけど有能な男。

 どうやら光輝の隣の席は今しばらくあたしのものらしい。



南天台高校二年三組 月岡翠(ツキオカミドリ)

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