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私はどうやら可愛いらしい。
一般的にみて、それはある意味間違ってない。私の背は標準より低いし、色白なのは体質だけど自覚もある。誰が私に、最初にそう思ってくれたのかはさだかじゃない。でも単純に誉め言葉は嬉しい。下心があっても男の子のやさしさはやっぱり頼もしいし、私が笑って帳消しになるなら悪くない。
でもね、私が本当に可愛いと思うのは親友の小町の方だ。小町は女子にしては規格外に背が高い。バレー部で、三年を押しのけての実力を持っている。本人はそんなことないよ、と言うけれど私は知っている。健康的に焼けた肌は不健康な色白の肌よりも魅力的で、羨ましく思うこともある。
私を可愛いと思うのは、小町といるからだ。錯覚だ。だって背の高い小町の隣に立ってたら、どうしたって小さい方は可愛く思える。そういう意味で私はきっと可愛いんだ。
とと、違った。私が言いたいのはそういうことじゃないの。どうやら私、混乱してるみたい。違うのよ。私は高校に入って急に男の子たちに言い寄られるようになったの。でも元々そんなに興味はなかった。だって私が一番一緒にいたいのは小町だったし、好きな男の子の話で盛り上がる女の子達を見ているのが好きだったから。だから小町は可愛かった。
外見こそ格好よい子だけど、中身は誰よりも女の子。大人しい性格だから男の子と話すのもあまり得意じゃなかった。特に好きな男の子の前で、平常心でいられる訳がない。そんな小町が大好きで、可愛くて、愛しかった。恋を知る小町はとても可愛い。
私には、出来ない芸当だと思っていた。
それなのに今の私は、私がかつて見てきた小町と同じ行動をしている。初めてだ。男の子を前にして何を言えばいいかと迷うことも、冷房が入っているにも関わらず身体中から汗が噴出していることも。
「吉田さん? 貸し出し――なんだけど?」
「は、はい!」
夏休みの図書館は冷房がかかっていて人気の場所だ。受験勉強に訪れている先輩方も多い。体育祭の準備や、補講の合間に本の貸し借りをしていく人もいる。
「こ、こここちらのカードに記入をお願いします」
声が上ずってしまった。今までも何度か対応してきている人なのに、穴があったら入りたい衝動に駆られた。
「今日は、何かあった?」
「い、いえ。そういうわけではないです」
「そう。じゃあ、コレ借りて行くね。また、今度」
「は、はい。あ! 長沢先輩」
私の変な言動に嫌な顔一つしないで先輩が足を止める。首を傾げて私に向けてくる目に何故かタジタジになる。
「お、応援団、頑張ってください!」
これだけを言うためにこんなに力を使うなんて思いもしなかった。
「ありがとう」
柔和な笑顔で応えて、先輩は図書館を後にする。その凡庸な笑顔が、今の私にはとても大切なものに思えた。
恋なんてものじゃない。私が先輩に抱いている想いは、ほんのりと色づいたほどしかない。これは恋なんて立派なものじゃない。ただ、好きだと感じただけだ。愛よりも恋よりも幼い感情。でもそれは私が初めて男の子に抱いた感情。
愛よりも幼く、恋よりも儚く、けれど色づいた心を、私は自覚した。
人を好きになるって実はすごい事だったのね。
南天台高校二年三組 吉田勇希




