表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
教室の裏側  作者: ケー/恵陽
1/51

始業式の朝

 始業式にはまだ早い。四月の風は冷たくて、少しだけ心細い気持ちにさせる。誰もいない教室はひどく淋しく、僕に孤独を味わわせる。

 窓をそっと開ける。正門からまばらな人影が校舎に吸い込まれていく。不思議な光景だ。はっきりとはわからなかったが、見知った者も数人いたようだ。確か今年度はクラスが違ってしまった奴だ。同じクラスになるハレオは始業式にちゃんと来るのかな。身体の弱い友人が心配になる。もう一人の友人である弥生とはクラスが分れてしまった。彼は新しいクラスできちんとやっていけるのだろうか。人見知りの激しい友人が心配になる。

 隣のクラスで教室の扉が開く音がする。人の波が少しずつ押し寄せてきたようだ。足音が静かな廊下に響く。挨拶を交わす声も聞こえた。あの声は高本姉だろうか。考えている間に僕のいる教室の前で一つの足音が止まる。さあ、今年度最初に挨拶を交わすのは誰だろうか。ピリリと怜悧な春の空気が僕の髪を掻き回す。催促されるような空気に押される。窓枠から身体を起こし、扉に目を向けた。ガラリ、音が鳴る。

「おはよう」

 開かれた扉に挨拶をする。

「はやいね。おはよう。神城君が同じなんだ。よろしく」

 にっこりと微笑む新しいクラスメイトに僕も頬を緩める。

「こっちこそ。一年間よろしく頼むな」

 孤独ではなくなった教室に春の空気が混じる。まだ冷たさは残るものの暖かい。不安にも増して期待を抱かせる。この始まりの空気がとても好きだ。これを何と言うか知っている。それは春そのものだ。



南天台高校二年三組 神城正臣(カミシロマサオミ)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ