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冷たい雨  作者:
4/4

人間


3人で住みだして一ヶ月経った頃、お母さんから電話があった。

一ヶ月の間、1度も連絡が来なかったのに。


「もしもし、瑠維?」


「お母さん」

久しぶりに呼んだお母さんという言葉。


「どこにいるの?何してる?ご飯食べてるの?」


こんなに質問されるのは初めてだ。


「あの、、友達の家にいる。」


「え?そうなの?帰ってこないの?」


「帰るよ、もうすぐ。」


「帰るなら、はやく帰っておいで。」



こんな風に言われたのも初めてだった。

そして電話を切って私はルーと手を繋いでスーパーに買い物へ行った。



「ピーマンピーマンみじん切り〜♪」

ルーは飛び跳ねながらご機嫌だ。

「ピーマンのうた?」


「違う、野菜の歌だよ!」



その時スーパーの奥で見覚えのある顔が見えた。相手も私に気づいたようで一瞬固まり、そして口が「瑠維」と動いた。



そう、学校で私をいじめていたリーダー的存在の奈緒と杏奈。そして最初仲良かったのに私がいじめられるようになって離れていった百合だった。



3人は私に近づき、奈緒が最初に口を開いた。「瑠維、学校に戻ってこないの?戻っておいでよ、また遊びたいよ」


奈緒の豹変ぶりに驚く。

そして杏奈も「瑠維がいなくなったから、つまんなーい。瑠維がいなくなったから、百合が嫌なめにあってるの。だから、百合も瑠維に戻ってきてほしいでしょ?」


隣にいた百合は下を俯いた。細い腕にアザが見えた。



つまんない?私をいじめれないから?

ルーは私の顔を伺っている。



「あんたらと話したくもない。顔も見たくない。関係ない」


怖いくらいスラスラと言葉が出てきた。

こんなにハッキリ言ったのは初めてかもしれない。


すると、奈緒の顔つきが強張り、

「あっそ。ブスのくせに生意気」

そう言って3人はスタスタと歩き、スーパーの前で何か話している。



「瑠維、瑠維?」


ルーが何度も名前を呼んでいたみたいだ。


「瑠維は可愛いよ!あのひとの100倍可愛いよ!リョウ兄もきっとそう言うよ」


ルーは白い歯を見せて笑った。




私はルーを強く抱きしめた。

「ルーは、あったかいね」

そう言うとルーは照れたように微笑んだ。




そのあとスーパーで買い物をしていると、百合が1人でいる。奈緒や杏奈は外で待ってるみたいだ。



百合は私に気づいてないみたいだ。

辺りをキョロキョロしている。不自然だ。




その時、百合は自分のピンク色のトートバッグに売り物のリップクリームを入れた。

そして足早に店を出ようとする。



「ルー、ごめん、お菓子見てて」


私は百合の腕を掴む。百合は目を見開き驚いている。


「あんた、何してんの?」


「るい、、?なんで、、」


「それ、奈緒たちに頼まれたの?」


「、、、、」


百合は私の手を振り払い走っていった。




ルーと私は帰り、野菜の歌を一緒にうたった

夕暮れに声だけ響いていた。


私もルーも今日の出来事については何も喋らなかった。

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