見たくないもの
私とリョウとルーが住むことになったアパートにはとても大きな窓がついていた。
その窓からは町並みが全部見渡せた。
小さな町だから、もちろん窓からは私が通っていた学校も見える。
「瑠維、なに見てるの?」
窓の外を眺める私にルーは言った。
「いちばん、見たくないものかな」
「見たくないものなのに見てるの?」
「そう。私がいなくなっても学校は何も変わらない。ただ暇つぶしが皆出来なくなったことくらいだろうね。」
「学校は楽しいところじゃないの?」
そうか、ルーはまだ何も知らないんだ。
人間の醜さも。友情の儚さも。
でも、何も知らないまま成長していくこともできるんだ。私をいじめた人達みたいに。
そのとき、リョウがマグカップを三つテーブルに置いて「ココアができたよ」と私達を呼んだ。
ココアを飲んだあとルーは目をこすりながら布団に潜り込み、いつしかスヤスヤと眠った
「お母さん心配してない?」
リョウは少しも笑ってはいない。
「大丈夫だよ。もう18だよ?」
「まあな。」
それからリョウは一言も喋らず、私の頭を撫でて布団に入った。
頭を撫でられるなんて初めてだ。
リョウとルー。そして私。
こんな最高な居場所、ほかにはないと思った
そういや、最近雨も降らない。
雨で隠す涙もなくなったから、それはそれで良かった。