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ヘタレ勇者の謝罪伝  作者: 木本京一
第一章 産まれて来てゴメンナサイ
3/5

第3話

やっと書きあがりました。待っててくれた方は居るのでしょうか?(涙)

ゆっくり進行での執筆と、お話自体もSPEED感の無い展開でゴメンナサイ。

感想、メッセージ、誤字脱字のご指導、文章の表現や設定の矛盾など、お気づきの事がありましたら、お伝え頂けると幸いです。

(―――なにかしら?)


彼は、今迄とは違う自分を取り巻く周囲の変化を数刻前から感じていた。


普段のこの時間は静かだった。


(―――いっぱい・・・ひかってる?)


開かれていない目で、彼は自分を取り囲む様に周囲に広がった沢山の様々な色に輝くゆらゆらと揺れる光(?)を()ていた。


(―――きれいだなぁ~)


そんな感想を持ってまどろんでいた彼。


彼が居る場所は、狭くて窮屈だが別に嫌な感じは無い。

むしろ、なんとなくこのままずっと此処に居たいと思わせる、そんな何か特別な安心感がある。

柔らかで温かい水(?)と、あまり暗い訳では無いが薄ぼんやりと仄かな明かりで包まれていて心地良い。


どんどんと時間が経つに従って増えて来る光を視ていた彼だが・・・


(―――なんだか・・・ここからでろっていわれてるきがする。)


身体の回りを包む環境に違和感を感じ、彼が手足を動かそうとすると、すぐ側の何かに当たる。

何度も身体が何かに当たる度に、彼の周囲の環境はその都度変化する。

そして、その度に彼に『此処から出る事』を言葉では無く雰囲気として要求する。


(―――そろそろでなきゃいけないのかなぁ~?)


先程から感じる無言の圧力。

彼に『早く!早く!』と急かす様な断続的な周囲の環境の動き。


(―――ちょっといやだなぁ~・・・)


此処から出た先の場所の事を彼は知らない。

知らないが、そこが此処より良い場所では無い事を彼は本能的に知っていた。


(―――でたくないなぁ・・・)


彼の心からの言葉だった。


それから数時間。


『出る?出ない?やっぱり出る?いやいや、出ない!う~ん、出るかな・・・無理!』


みたいな葛藤を彼は続けていた。


そして、周囲の環境はそんな彼の気持ちとは関係無しに彼を急かし続けていた。


(―――え、えっと。そろそろほんきででなきゃいけないような・・・)


彼は自分の身体が頭部の方向に押し出されている事を感じた。


(―――ここででないと『けー・わい』ってやつになるのかなぁ~?)


彼の周りを優しく包んでいた暖かい水の感触が薄れて消えた。


(―――あのひとは『けー・わい』ってのはだめだめっていってたなぁ~?)


周りが薄暗く成って行く。


(―――でも・・・いまからでても・・・)


彼の肌に肉の壁の様な感触が伝わって来る。


(―――『おそい』とかいわれたらいやだなぁ~・・・)


その肉の壁が激しくうねって動いていた。


(―――お、おこられちゃうかなぁ~?)


彼は少し身震いした。

すると、肉壁は先程以上に激しく彼の身体を出口に出そうと動く。

それに伴い彼は自分がもう此処には居る事が出来ない事を悟る。


(―――で、でようかなぁ~・・・ちょっとくるしいし)


周囲の肉壁の圧力は、もう僅かな抵抗を排除する位までの大きな力として彼の身体を追いやった。


(―――と、とにかく、でたらさいしょに・・・)


そして彼の身体はその大半を狭い通路の様な肉壁に挟まれ、自分の意思では無いのに勝手に出口に近付いて行く。


(―――あ、あやまろう・・・)


彼は今にも泣き出しそうだった。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




部屋の中では、白い上下の服にやはり白いマスクと帽子と手袋といったいでたちの4人の女性が、部屋の真ん中に有るベッドの周囲を囲み、せわしなく何かの作業をしていた。


そのベッドの上では薄い純白のシーツの中に3つの山が見える。

よく見ると、その3つの山は微かに動いているのがわかる。


その山から、


『う~・・・うぅ~ん・・・』


と、女性の苦しそうな息遣いが聞こえる。

3つの山は、その彼女の普通より大き過ぎる胸と、その胸の大きさに負けない程に大きくなっているお腹だった。


命の誕生間近。この部屋で行われている作業とは出産であった。


4人の女性はその出産に関わる人達であろう。

もうベテランで有る事が見た目にわかる程の老齢だが緑がかった肌に恐ろしく美しく整った顔と水平に尖った耳をした、他の3人より少し丈が長めの白衣の女性。おそらくこの女性が『産婆』だ。

が、焦った声で言う。


「なんじゃこの児は・・・まるで出てくる素振りが見えんのじゃが・・・」


そう言いながら、妊婦の張りに張って今にも弾けそうな大きなお腹を優しく癒す様にさする。


「パメラ様、もう空間浄化の為の魔力が・・・」

「こちらも炎の魔晶石はいいのですが、蒸気の為の水魔法がそろそろ・・・」

「あ、わたくしも、治癒魔法の限界に・・・」


パメラと呼ばれた産婆に向かい、それぞれ作業をしていた2人の魔術師と1人の尼僧が蒼い顔で報告する。


「ああ、確かに・・・こんなに時間の掛かるお産に成るとは思わんかったからのぉ~・・・」


もう3人共にヘトヘトといった感じの魔術師と尼僧に返答するパメラ。


それを聞き、ベッドの上で4人より必死な苦痛に耐える女性が、


「アネモネの時はすんなりと出てくれましたのに・・・」


と、苦しそうに呟く。


「こんな事は、わしも今迄何千人と取り上げて来て初めてじゃ・・・」


エルフ族のパメラはその長寿による経験を振り返り、この初めての体験に頭を抱える。


それもその筈、この世界のお産はかなり安全で、しかも余り母体に苦痛が無いのが普通だからだ。


通常のお産は今夜の様に、4人の専門の女性が妊婦に付き添って行われる。


一人の魔術師が部屋の四隅に立てた風のクリスタルを頭に填めた柱へ風魔法の一種である空間浄化魔法で室内をクリーンな状態にし、もう一人の魔術師は大きなタライに水魔法で水を張り、壷状の釜の中の炎の魔晶石で熱し蒸気で湿度を保ち、僧侶が治癒魔法で妊婦の陣痛を和らげ体力の低下を防ぎ、それら3人にどの加減でどうするかを総監督として産婆が指示すると言った具合に見事に連携が取れたシステムになって久しい。


これにより、世の女性達は出産による死亡のリスクが減り、赤子の死産の確率も格段に減った為、『お産はただ嬉しい家族のイベント』という物に過ぎなかった。


「はぁ~・・・まったく今回のお産は何なんだろうねぇ~・・・」


パメラは本当にうんざりとした様子で呟く。


今夜のお産は最初から異常だった。


普段は産み月が近付いた妊婦は、産婆の家の近所の宿に泊まるか、大きな何人も産婆を抱えた教会等では、その施設の内部に妊婦用の出産を待つ部屋を用意しており、そこに宿泊するかで陣痛が始まるのを待つ。

稀に貴族や騎士、大商人等の権力者では、自分の屋敷に産婆を呼び何日か滞在させ、出産するまで雇い入れる事もある。


だが、今回この古く大きな温泉街の実力者である武道家一家のお産は違った。

具体的にどこがどう違うかと言うと。


1つ目。

お産の日取りと時間が指定されていた事。


2つ目。

産まれて来る児が男児と決まっている事。


3つ目。

帝都で一番多く子供を取り上げてきた自分パメラを教皇自ら派遣した事。


『なんだか胡散臭いお産だねぇ~・・・』


最初にこのお産の話を聞かされたパメラはそう思ったのだったが、今はそれ以上に目の前の事態に困惑していた。


1つ目の日時は根拠が不明で、2つ目の男児と言うのはある程度の経験を積んだ産婆ならかなりの割合で見立てる事が出来るが確定的な物では無いし、3つ目の派遣もこの大きな街ならば腕の良い産婆など幾らでも居る筈であったから当然である。


が、今一番の困惑の原因は違う所にあった。


「それにしても陣痛が始まってから6時間かい?まだ破水の兆候もありゃしない・・・本当にこんなお産なんて見た事も聞いた事も無いわ」


陣痛が始まってから1時間前後。これがこの世界のお産だ。


真夜中。指定時間の丁度1時間前から始まった陣痛で、しかも2回目の出産の経産婦で有る妊婦が、こんなに時間が経っても出産出来ない状況が、パメラの今迄の経験の全てを否定するかの様であった事に困惑していたのだ。


部屋の中でそれぞれが重い空気に気力を削がれていた・・・


「きっと、もう少しですよ頑張りましょう」

「そうです、まだもう少し位だったら魔力もなんとかしてみせます」

「まだお母さんの方も体力はもちそうですし大丈夫です」


と、3人が年老いた産婆が落ち込んでいると思ったのか、それともそれぞれが自分の気力を奮い立たせる為か、口々に激を飛ばす。


それに対し老エルフのパメラは、自分がその様に慰められるとは思って居なかった為、少し苦笑いを浮かべ、


「ははは、あんた達に励まされるとは、わしもまだまだの様じゃ」


と言い、困惑した表情から元の優しいが深みの有る笑顔に戻し、再び妊婦の様子を伺う。そして、妊婦のお腹をマッサージし刺激を与えつつ、


「のう、お主・・・わしをこれだけ悩ましたその顔をそろそろ見せてはくれまいかのぉ?」


と、優しくお腹の中の児に向け語りかける。


「ええ、本当に。そろそろ出て来てくれないと、ママ怒っちゃうわよ」


と、妊婦は全身を汗で濡らし、苦しいであろうが産婆以上に優しい笑顔で悪戯っぽく、寝た状態で下を向いても自身では直接見る事が出来ない大きな2つの胸の丘陵に阻まれたお腹の中に感じる存在に向けて言う。


「ねぇ、ユーちゃん・・・わたしの愛しいユートニス」


そして胎児の母親である妊婦が、何ヶ月も前から夫と娘と自分で色々と考え昨日やっと決まった彼の名前を呼ぶと・・・


バシャ!


破水し、お産が始まった。

主人公レベルアップしました!(受精卵→胎児)

しかも名前まで出て来ました。(って、3話目でかよ!)

今回のお話では、ウザイ女神は言葉の一端にちょこっと存在感だしてるだけで出て来ていません。良い事です。

1話1おっぱいの目標(自分の中での)は、今の所達成しておりますが、エロっぽいかはわかりません。


では、次話はまた一応来週と言う事で・・・ゴメンナサイ。

※ルビ修正(2013/03/30)

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