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魔法少女は夢を見ない  作者: 水瀬留奈


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泡沫人魚の願いごと 2

宿泊先は神社を出たところのすぐ近くにあった。昔ながらの和風の旅館で、それなりの高級感が漂っている。


「中に入って、これを誰かに渡してください。そうしたら案内してくれると思うので」

「はい、ありがとうございます」


彼ともそこで別れ、中に入る。引き戸を開けると中にはずらりと仲居さんが並んでいた。


「ようこそいらっしゃいました、ごゆるりとお過ごしください。受付はあちらです」

「あ、はい」


案内の人に付き従い、受付に向かう。そこには、私と同い年くらいの女の子がひとり。珍しい、家の手伝いだろうか。それともアルバイト? どちらにしても親近感が湧く。勤労学生は基本的に好きなのだ、だって仲間だから。


「ご予約をご確認します」

「あ、すいません。あの、片岡さんのところから来ていて、その、これを渡せと……」


封筒を恐る恐るその女の子に渡すと、彼女は封を切って中を見て、数度頷いてから顔を上げた。


「お話は聞いています。隼人にぃ……片岡隼人さんの件で来てくださった、祓い屋さんですよね?」

「はい、そんなところです」

「お部屋の用意は済んでいるのでご案内しますね。お名前をお聞きしても?」

「早乙女結奈です。たぶん同年代だと思うので、気軽に呼んでください」

「じゃあ、結奈ちゃんって呼びますね。私、ここの女将さんの孫の諸星すみれです。私、16で高1なんですけど、結奈ちゃんはおいくつですか?」

「あ、同じです」

「えっ、嬉しい! じゃあお友達になりましょう! 敬語もなしにしてもいいですか?」


随分とフレンドリーで人懐っこい子らしい。いきなりのことに面食らいはしたけれど、こういうのも嫌いではない。先生も似たような感じのところがあるから、ちょっと親近感というか。


「うん、じゃあ私もそうしようかな。よろしくね」

「こちらこそっ!」


あ、そろそろ部屋に案内しないと、とすみれちゃんがカウンターからこっちに降りてくる。


「結奈ちゃんの部屋は2階の手前よ。で、お風呂は1階、ここの奥ね。分からなかったら受付で聞いてみて。夕食は8時に部屋で、大浴場は夜は5時から11時までね。朝は6時から9時まで開いてるよ」

「了解しました、ありがとうね」

「いーえ、これでも一応次期女将なんで」

「あら頼もしい」


そうこうしてる間に部屋の前。すみれちゃんから部屋の鍵が手渡される。


「じゃあ、ごゆっくり。……あの、隼人にぃのこと、解決頑張ってね。あの、幼馴染なの」

「もちろんよ。任せておいて」





 朝一で隼人さんの様子を見てきたが、やはり盛り塩はある程度効いたらしい。隼人さんに近寄ろうとした蛇が一瞬弾かれたとのこと。痕もほとんど進んでいなかった。けれども盛り塩はあくまで気休め。怪異もすぐに耐性をつけてしまうだろう。一応清めの塩を取り替えて念は込めておいたけれど、それでも長くは持たないに違いない。盛り塩が効いてくれている間に対処してしまいたいところだ。


「さて、にしてもどうするかな」


2年前。そこで何かが起こったはずなのだ。彼の話では白くて目の赤い大蛇、という話だった。これは神様として祀られる蛇に多いカラーリングな気がする。経験上、そもそも蛇と狐は神様案件が多い。と、いうことは隼人さんは何か神の怒りでも買ったのか?


「だったらだいぶ面倒だぁ…… 恨みますよ先生」


神だったら倒すのは不可能だ。少なくとも私には。怨みや怒りを晴らす方向で対処するしか方法はない。


 まぁとりあえず聞き込みから始めるとしよう。部屋に引きこもってひとりでグダグダ考えていても何も進みやしない。


「まずはすみれちゃんかな」


受付に向かうと、やはりすみれちゃんがいた。


「すみれちゃん、ちょっと時間ある? 忙しいなら仕事が終わった後でも全然大丈夫だけど」

「うん、勿論。昨日は特別対応の、個人的なお客だったから、片岡さんとこと関係ある私が周りに知られないように対応しただけで、いつもは軽い書類整理くらいしかさせてくれないもん。つまり特にすることないんだよねぇ」

「でもお手伝いはしてるんでしょ? えらいなぁ」

「結奈ちゃんこそ、1人でしっかりお仕事受けてるじゃない。私よりもすごいよぉ」

「何か目標を持ってやってるわけじゃないし、いわゆるそういうのが見えるから自然に引き込まれただけだよ。将来の目標がある人は、すごいよ」

「うーん、私はそれでもすごいと思うけど、な。あ、ところで用ってなぁに?」

「あ、えっとね、聞きたいことがあるの。この村に蛇に関する何かってある? ごめんねぼんやりした質問で」


宗次郎さんと隼人さんは2人とも知らないと言っていた。ということは白蛇は神社の信仰対象ではないらしい。だから他に何かあると考えるのが自然なのだ。


「……蛇、かぁ。あのね、神社の脇に竹藪があるの。そこに小さい石碑があってね、そこに蛇の絵があったはずだけど…… 小さいころ勝手に入って怒られたからはっきりとは覚えてないや。違ったらごめんね」


石碑。いかにもそれらしいのが来た。これは確認必須だろう。


「ありがと、行ってみる」

「うん、あ、そこらへん神隠しが多いって昔から言うから気をつけてね」

「うん、ありがとうね」


お礼を言ってからすぐに荷物を背負い直して旅館を出る。早めに確認しなければ。竹藪の奥の石碑、となると見つける作業は相当骨が折れるものの可能性がある。


「話が違いますって先生……どこがすぐ片付くだ、嘘つきめっ」


コツンと軽く足元の石を蹴飛ばし、大げさにため息をついてみせる。もちろん返答は返ってくるはずなどないので、馬鹿らしくなってつい苦笑い。


 まぁ仕方ない、頑張るしかないだろう。深呼吸をひとつして、竹藪があるという神社の方へ足を向けることにした。




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