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第3話 新たな一歩

朝もやの立ち込める部屋で、俺は机に向かっていた。机の上には昨夜から調べている魔法陣が無造作に広がっている。目の前のウィンドウには相変わらず同じような情報が表示されていた。


「はぁ……」


思わず溜め息が漏れる。三日間、ガルスの持っている魔法陣を片っ端から調べてみたものの、大した進展は見られなかった。確かに構成比率や消費魔力は変更できるが、それ以上の改変はできないようだ。


「おい、朝飯できたぞ」


ガルスが朝食を持って部屋に入ってきた。粗末なパンと野菜のスープだが、この世界での一般的な朝食らしい。


「ありがとう。……って、もしかしてまた徹夜してたのか?」


「ん?ああ、気づいたら朝になってた」


自分でも驚くほど研究に没頭していた。プログラマーだった時を思い出す。締め切り前のバグ修正でよく徹夜したものだ。


「そうか。で、何か分かったのか?」


ガルスは椅子に腰掛けながら尋ねてきた。その目には本当の興味が宿っている。


「いや、むしろ分からないことが分かった感じかな」


「ほう?」


「この前、ガルスが見せてくれた魔法陣を初めて見た時のことを思い出してたんだ。あの時は全く知識がなかったから、『魔法陣』を解析して新たな情報を得られた」


スープを一口すすりながら、考えを整理する。


「でも今見てる魔法陣は、既に解析したことのあるものばかりだ。つまり……」


「つまり?」


「俺の能力を使うには、魔法陣についての基本的な情報が必要なんじゃないかって」


ガルスは感心したような表情を浮かべた。


「なるほど。だから今まで見せた魔法陣じゃ進展がなかったってわけか」


「ああ。これ以上進めるには、もっと基礎から魔法を理解する必要がありそうだ」


「なら、街の図書館に行ってみたらどうだ?基礎的な資料なら、誰でも読めるはずだ」


「図書館か……」


その言葉に俺の目が輝いた。プログラミングだって、最初は基礎から学んだはずだ。


「行ってみようかな」


「おう。その前に、これを持っていけ」


ガルスはポケットから一枚の紙を取り出した。見覚えのない魔法陣が描かれている。


「これは?」


「ファイアボール。簡単な攻撃魔法だ。街道にはたまにモンスターが出るからな」


「モ、モンスター!?」


思わず声が裏返る。いくら異世界とは言え、モンスターの存在は完全に失念していた。


「大丈夫か?怖気づいたなら、やめておくか?」


「い、いや、大丈夫だ」


震える声を必死に抑える。確かに怖いが、この世界の魔法を理解したいという気持ちの方が強い。


「そうか。なら、この辺りのモンスターの話でもしといてやろう」


その後、ガルスは街道に出現する一般的なモンスターについて、詳しく教えてくれた。ゴブリンやスライムなど、RPGでお馴染みの生物が実在するらしい。幸い、街道近くに出るのは比較的弱いモンスターばかりとのことだ。


「じゃあ、行ってくる」


「ああ。街までは北に半日ほどだ。宿は『銀の月亭』がおすすめだぞ。俺の知り合いが経営してる」


荷物を背負い、ガルスの家を後にする。三日間の短い滞在だったが、彼には本当に世話になった。


「ガルス、本当にありがとう」


「礼はいい。その代わり、面白い発見があったら教えに来いよ」


「ああ、必ず」


彼の家から離れながら、俺は決意を新たにした。この世界の魔法の謎を解き明かす――プログラマーだった経験を活かして、きっとできるはずだ。


朝靄の向こうに伸びる街道を見つめる。未知の冒険への第一歩。少しの不安と、大きな期待を胸に、俺は歩き出した。


自分の知識と経験が、この異世界でどこまで通用するのか。その答えを求めて、俺の旅が始まった。

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