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やっと戦闘です
気づいたら体が動いていた。
「ちょっと!?戦わないと!」
「無理無理無理無理」
後ろで変な音がしているのは分かる。ドドドドッと、おそらく地面に突き刺さる音。何かは分からない。いや振り返ればすぐ分かるし、なんなら普通に銃の音だろうけど、止まって振り返れば確実に滅多撃ちにされる。
ただひたすらに背を向けて走る。無理無理無理無理無理無理無理無理。あんなの絶対に無理だ。いきなり銃ブッパなしてくる異国人なんて恐怖でしかない。なんなら浮いてるし。このまま走り続けないと死ぬ。
死ぬ?
「ステッキは!?」
「はぁ!?どこにあんのよそんなの」
「君が持ってる!早く出して!」
「持ってないんだけど」
「出ろ、と願って!」
「どういうこと!?」
また意味のわからないことを言う。大体、ステッキがあれば状況が打破できるというのか。できるなら是非持っていてほしいが、あいにくそんなものは持ってないからどうしようも「よし!」「え?」
セラがなんか言った。よし?何がどう良しなのか。ふと手を見る。
そこに、昨日と同じようにいつの間にかステッキがあった。
「・・・いつ出てきたのこれ?」
「今だよ」
「えぇ・・・」
正直気味が悪い。
だが、ステッキを手に入れたことでこの意味わかんない状況をどうにかでき―
「こんな棒でどうすればいいんだよ!」
立ち止まる。気づいたら音は止んでいた。振り返ると、地面に大量の矢が突き刺さっていた。
「・・・矢?」
彼らが撃っていたのは弓矢ではなく銃だったはずだ。実際銃声も聞こえていたし、一体何があったのだろうか。銃弾が矢に変化したとでもいうのか?
いや、それはともかく銃ないし矢の雨がやんだというのはチャンスだ。この隙に―
(逃げようとしてる?)
「!」
誰だ。誰の声だ。声なのか。
(臆病だね)
「・・・は?」
(こうなるとは思わなかったよ)
どいつもこいつも言ってることがさっぱりわからん。
腹が立つ。
「・・・あいつらを蹴散らしたら、すっきりするかな?」
「どうしたの?」
セラが首を傾げる。さっきの声は彼ではないようだ。
「セラ、教えて。どうやったらあいつらを倒せるの?」
「おっ、やる気になったのかい?
やり方は簡単だよ。そのステッキをあれに向けて、攻撃してほしいと願うんだ。魔法少女の中では技名を叫ぶ子もいるけどね」
「願う・・・それ、さっきも言ってたけどどういう仕組みなの?」
「・・・」
「それも、言えないこと?」
「・・・すまない」
「願えばいいのね」
手元のステッキを見る。先端の青く丸い水晶が光る。
奴らを、倒してほしい。
「あ」
ステッキの水晶部分から、太いレーザービームが飛び出た。
「えぇ・・・」
周りに群がっていた暴徒たちは、ビームにかすっただけで吹き飛んでいく。体が変な方向にねじれ、キュッと縮こまり、そして爆発する。顔に吹き飛んだ腕が当たる。
「ひっ」
グロい。
戦闘(極太ビームを振り回すだけ)