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「じゃあ、勝手にさせてもらおう」
小動物は燐光を放つ。青、緑、黄色、赤、ピンク、紫・・・
色が変わっていく。
「魔法少女に」
橙。
視界が白い光に埋め尽くされる。
『君の願いを叶えよう』
目を開けると、いつもの部屋。
すぐに気づく。
自分の服が、変わっている。
もともとお洒落に無頓着で、今までファッションのFの字もないような服ばかりを着ていた。
しかし、自分が今体に纏っているのは、少しひらひらした、でも派手すぎない女の子っぽい服。少し制服に近いの気がする。ブラウスの襟が少し大きめなのと、胸元のでかいリボンに目をつむれば、制服と言われても信じるかもしれない。オレンジ色、いや橙色のスカートで、紺色の装飾がついている。
「・・・あなた、何したの?」
「君を魔法少女にした」
「魔法少女って、あの?」
「君が想像しているものがどれかわからないな。世の中にはたくさんの魔法少女がある・・・いや、いるからね」
「どれって、あれよ。キラキラって変身して、悪と戦う女児アニメの」
「その説明だと、今の君がまさしくそれに該当するね」
クスクス笑う。やっぱりこいつが笑うとなんだか腹立たしい。
「魔法少女ってアニメの中だけじゃないの?現実にいるわけないでしょ」
「その格好で言われても説得力ないね」
「・・・これ、魔法少女のコスチューム的なやつ?」
「そうとも言えるし、そうでないとも言えるね。
魔法少女の衣装はある程度のルールはあるものの、人によって大きく異なる。
その衣装は君だけのもので、そして君を映す鏡でもある。
君が変わればその衣装は変わるし、君が望めば衣装は応える。
つまり、これは空渕かすみという魔法少女の衣装であり、空渕かすみという一個人の衣装なんだ」
「何言ってるのか全然わかんない」
「あれ?ボクとしてはとてもわかりやすく説明したつもりなんだけどね」
「・・・」
「話の続きをしよう。君は魔法少女になり、自分の願いを叶える。
君の願いを叶える代わりに、君には《迎撃》に参加してもらう」
「・・・なにそれ、《迎撃》って?」
「【暴徒】の襲来だよ。そろそろのはずだ」
相変わらずこの小動物は意味のわからないことばかり言う。
「戦うの?」
「まあ、色々端折ればそういうことになるね」
「・・・死ねる?」
そう。自分は死のうと思っていたのだ。こんな理由のわからない会話をしている場合ではないのだ。ナイフを持ち、首を刺す。それだけで全て解決するんだ。ナイフは、ナイフはどこに―
「落ち着いて」
落ち着け?落ち着けない。だって終わらせようとしてるんだもの。何を?
自分を。
「君は魔法少女だ。ボクらが守る」
「守る?」
何から?話の流れ的にはそうだろう。「死」からだ。なぜ守る?こんなに死にたいのに。こんなに殺したいのに。
「・・・ふざけないでよ。
勝手に魔法少女みたいな訳分かんないものにして、勝手に守るとか言って、勝手に欲しいものから遠ざけて!」
「待って、かす―」
「名前で呼ぶな!!」
気づけばナイフを手に取っていた。知らないナイフだ。いつものカッターナイフじゃない、人を刺すために作られたかのような鋭利すぎる先端と曲線状の刀身。
ナイフの先を忌々しい小動物に向ける。
「さようなら」
持ち手をくるっと持ち替え、自分の心臓に先を向ける。
「待って!間に合わない」
もう遅かった。
読んでいただきありがとうございます。
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次回から戦闘が始まる予定です。