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神器選定

新作です


寒さも本格的になってきた冬の頃、とある施設に、地方の中学三年生が勢揃いしていた。

凍えそうなほどの冷気を放っている外と違い、内部は暖房がよく効いていて心地よさを感じさせる。

この場で集いし中学生たちの命運が決まる予定だ。

まだ開始時間には余裕があるが、自由に喋るほど学生たちに余裕はなさそうだ。

国の最高機密の塊な施設は、ここを除いてあまりない。入口には歴戦の様相をしている警備員が多数配置され、警備の厳重さを物語る。たとえ筋肉モリモリマッチョの軍人が向かっても一撃で弾き返されるであろう筋肉と威圧感を放っていて、多くの学生の恐怖の原因の一つでもある。

今後の人生でも訪れることは限りなく少ないであろう施設は、異様な空気感を放ち周囲の学生たちを圧倒している。

この物語は一人の少年の小さな英雄譚である。

























開始時刻。


おっす!おら黒鉄(くろがね)(ゆき)!現在人生の分岐点真っ只中にいる。

近畿地方の中学生全てが集められ、とある儀式がここで始まるんだ!

選ばれたものはエリートコース。選ばれなかった者はノーマルコースの結構大事なタイプの儀式だ。

辺りを見渡しても人、人、人。学校の体育館が20はすっぽり入るサイズの空間なのに、人と機材以外見当たらないので、人口密度がよく分かる。

緊張で何人か嘔吐して退出していった人もいる。大丈夫かな?

知り合いも数人いるけど緊張しすぎて喋ってるやつはいないな、そりゃそうなるか。

自分の就職先や進路が決まってるんだからな。

聞いた話によると、この儀式の結果が駄目で内定取り消しになったやつもいるそうだ。

そんな恐ろしい儀式の名は、『神器選定』。神器なんて、そんなモノあるわけ無いだろって?それがあるんだよ。

詳しくは知らないが、二十年ほど前に突如として出現した謎の生命体『怪異』と同時に人々の希望として現れるナニカの総称らしい。難しい話はよくわからん。しかも情報規制でデマっぽいのも溢れてるし。

なんでも、今までの地震は全部怪異のせいだとか。あるわけねぇだろ、流石に人外の化け物だとしても。

『怪異』についてはまた今度話すとして、希望として現れた『神器』はどれも人ならざる力を持っていて、

最低ランクの物でも人ひとり殺すのは余裕らしい。全てが聞いた話なので信憑性は定かではないが。

二回ほど手を叩く音が聞こえ、全員がその方向を向く。

音の発生源は白衣の男性。頬は痩せこけ、目元にはくまがあり、何処と無く苦労人の風貌をしている彼は、

やる気のなさそうにマイクを持って、喋り始める。


「皆さん、まずはようこそ。我が国が誇る神器適性判定所へ、私は君たちを歓迎しよう。そして、ここでは

今までの常識が通じないモノがいることを留意しておきなさい。でないと適性があった時に苦労しますよ。

じゃあ、皆さんは右の扉から入っていってください。私からは以上です。」


気だるげに告げた男性はマイクを置いてPCをいじくり始める。

徐々に正面の扉が開き、どこかに通じる道が広がった。

奥にうっすら見えるのは、巨大な機械と無数の白衣を着た人達。

引率の方に従って俺達は歩き始める。

扉をくぐっている途中に、何かミストを吹きかけられる。


「うわっ!?冷た!?」


思わず声が漏れてしまった。同時に後方から似たような声が多数上がる。

少し髪がしっとりしてしまうが、前を見てもその様になっている人は居ない。

あれ、水漏れかな?とも思ったがそうでもなく、研究員たちが驚愕の顔で俺を凝視している。

なんか気分がいいぞ。儀式中なのを忘れそうだ。

次に向かったのは、巨大な機械がある先程見えた大部屋。

球体状のメタリックな機械が、点滅し眩しくて目を瞑る。


「おお!」


何が何だかわからないが、研究員のものと思わしき声が響いてくる。

引率の方が、前に出てきて全員に声を掛ける。


「話をしますのでこちらを向いてください。」


全員が瞬時にその方向を向き、傾聴の姿勢をとる。

一拍おいてから頷いた引率さんが、再び口を開く。


「適正が確認できた方が7人ほどいるということなので、それ以外の方は退出してもらって構いません。」


ザワッと周囲の学生たちがどよめく。七人は少なくないか?と疑問を持つ人達も一定数おり、自分がその7人の一人だと確信しているような人もいる。

引率さんがポケットから1枚の紙を取り出して読み上げる。


「黒鉄雪さん、金剛寺(こんごうじ)政近(まさちか)さん、水島(みずしま)彩羽(あやは)さん、

白神(しらかみ)(れい)さん、城ヶ崎(じょうがさき)真白(ましろ)さん、中西(なかにし)双葉(ふたば)さん、中西(なかにし)三葉(みつば)さん。以上です。名前を呼ばれた方は私についてきてください。」


歓声を全身全霊を持って上げそうな体を抑えて立ち上がる。

周囲からの羨望と嫉妬の視線が心地よい。今なら何でも許せる気がするのは気のせいだろうか。

同様に立ち上がった六人と共に、俺は施設の奥へと歩を進めた。


俺の神器はどんなのだろう?





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