童貞が恋に落ちる瞬間
週末の夜、陽一と湯原は市営体育に居た。
普段は絶対に運動なんてしない陽一だが最近独りで居るのがなんとなく辛いので湯原に着いてきてしまった。
「陽一が来てくれてよかったよ。他も誘ったんだけど誰も来てくれなくてさ」
「しかしなんで急にバレー?」
「俺さ、障害者支援の仕事してんじゃん。うちの法人主催の大会みたいで強制的に行かされてさ。仕事終わりにまで職場の連中と居たくないから陽一をダシに職場の連中から離れたくて」
「湯原が仕事何してるのかなんて知らなかったよ」
周りを見渡してみるが普通の女性ばかりに見える。
「まぁ、障害者と言っても軽度の方ばかりだし普通に結婚してたら社会人やってる人も多いんだ」
ふと湯原を呼ぶ声が聞こえる。
「悪い、ちょっと行ってくるから待ってて。」
湯原は行ってしまった。
陽一はする事もなくキョロキョロしてると女性にぶつかってしまった。
背が高くて彫りが深くて美人だ。
この人も障害者なんだろうか?
陽一は謝ったが返事が返ってこない。
陽一は立ち去ろうとしたが、女性はスマホをおもむろにみせてきた。
(ごめんなさい、私耳が聞こえなくて。)
陽一は慌てて自分のスマホを出して返答をした。
(今日は寒いね。)
脈絡もない素っ頓狂な返答をしてしまった。
女性は愛想笑をして去って行った。
女性経験のない陽一はどうやらこの一瞬でこの女性にも惚れてしまったようである。