第四話 アムステル島決戦④
「これはこれは……驚いたな、仲の悪い族長方が勢揃いとはな」
ヴィールの前方の森の奥から、幽鬼の如くゾロソロと人が現われる。
彼らは戦闘民族の長を務める者たちであった。
「貴様らの主はカメリーア共和国だな?戦闘民族のトップを動かせるのはカメリーアのお偉方だけだ。連合軍よりも先にペンダントを奪取し独占するつもりか」
ヴィールの読みは当たっていた。
戦闘民族らの国家のアウトレ連邦は地理が最悪で作物が育たず、古来から続く紛争によって産業が発展していない。そのため、極西の大国カメリーアから食料などの物資支援、財政的支援を受けている。
戦闘民族らはカメリーア共和国に大恩があるのだ。
「我々の主について知る必要は無い。なぜならお前は……」
墜黒羅の長は飛び上がり、それに続き各戦闘民族の長たちも飛び上がる。
「今、死ぬからだっ!!」
墜黒羅の短剣が、体万の棍棒が、刃覇武の大剣が、天座者の魔法弾が、神武の拳がヴィールに迫る。
「……貴様らは大きな勘違いをしている」
ヴィールは墜黒羅の長の短剣を掴んでいた。短剣は肉を切ったが、骨は断ち切れていない。
あまりのヴィールの俊敏さに墜黒羅の長は目を見開いていた。
「徒党を組めば我に勝てると思ったか? 雑魚がいくら集まっても」
ヴィールの全身の力を使った右フックは、墜黒羅の長の頭骨を完全に粉砕した。
「雑魚に過ぎないとな」
圧倒的な威圧感でヴィールは戦闘民族の長らを睨む。
その迫力に戦闘民族の長らは一瞬動きを止めた。だが、彼らは数々の戦場を生き残ってきた猛者たちである。
「殺せっ!!」
ヴィールの迫力に負けることなく、突っ込んでいく。
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