第十八話 新たなる始まり
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「……!……我は」
やや意識を取り戻したヴィールの目には、洞窟の天井が映った。背中はひんやりと冷たい。
ここが地獄や天国ではなく、現実だということをヴィールは確信したのだった。
「……これは!」
ヴィールが右手を顔の前に持ってくると、その右手は見知った右手では無く、ミスリル製の右手だった。
己の変化に驚いたヴィールは意識を完全に取り戻し、立ち上がって己の身体を隅々見ると、冥剣の刃を鏡代わりにして己の顔を見た。
そこには、丸顔の魔法人形がいた。ヴィールは自分が魔法人形になったことを悟った。
「少女よ、そう隠れなくてよい」
「!」
ヴィールは岩陰に隠れて様子を見ている少女に気づいていた。
アーケラは隠れるのを辞め、おそるおそるヴィールに近づく。
「名をなんという?」
「……えっと、アーケラ。アーケラ・ヘルフェンです」
「アーケラか。良い名だな」
「あの、」
「む? なんだ?」
「……怒ってないですか、その身体で」
アーケラが岩陰に隠れていたのは、ヴィールが自分の身体が変わったことに怒るのではないか?と考えたからだ。
「我は怒ってない。むしろ感謝している」
「!」
「魔力強制放出魔法が掛けられた状態で封印を解いていれば、我は間違いなく死んでいた。アーケラよ、お前がやった魂をゴーレムに移すという方法が最良だ」
ヴィールは怒るどころか、アーケラに聡明さに感心していた。
封印をなにも考えずに解除するのではなく、己の命を考慮し、別の救助方法を考えたその聡明さを。
「さて、この洞窟から出るとしよう。ここにいてはこの身体を錆びてしまう」
「!、あの……これを」
ヴィールはアーケラから、首から下げられる金属のプレートを渡される
「人が造った魔法人形には必ず持ち主が分かるような印があります。えっと……ヴィールさん?」
「ヴィールでよい。」
「……なので、このプレートを首から掛けてくださいヴィールさん。印のようなものが無いと、とても目立ちますから」
「その心配はいらない」
ヴィールはそう言うと己の身体、魔法人形に流れる魔力を魔力探知によって把握する。
そして身体内の掴んだ魔力を、一気に動かした。
「えっ!?」
アーケラは驚愕した。人型の魔法人形が、アイスクリームのように溶けて一瞬原型を失ったかと思えば、次の瞬間には人間になったからだ。
白髪の長髪に、碧眼の瞳。無機質の魔法人形から荘厳さのある女神のような姿にヴィールは変わった。
「魔法人形全体に書き込まれていた魔術式を書き換えさせてもらった。この姿ならどこに行っても怪しまれないはずだ。そうだろ?」
「は、はい!」
アーケラはそう問われて咄嗟に返事をしたが、「その姿はその姿で目立ちます」という言葉が出かかっていた。
【Pendant ~忘れられし英雄たちと戦いの物語~】を読んでいただきありがとうございます!
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