プロローグ
我々が住む世界より、遠く離れた世界の話。
その世界の名はグランモーンド。この世界には魔法が存在した。
だが、魔法が存在しても、我々の世界となんら変わりはない。
人の欲あるところに戦争あり____
その世界の人類暦で、1800年代。
世界は戦火に包まれていた。
話は約1000年前に遡る。
この世界に厄災が侵入してきた。その厄災の名はアンユラマンユラ。世界の憎悪が意思を持ち、魔力を持って顕現した存在。
この世界の人間はその厄災に抗った。
初代勇者のヘラクレスとその仲間たち、天使たちの協力もあり、なんとかその厄災を封印することができた。
厄災を封印した者たちは、厄災が二度と蘇らぬよう、厄災を切り分けて、ペンダントの中に封印したのだ。そして、厄災を封印した者たちはそれぞれが厄災を管理することを誓った。
これで平和だと、誰もが思った。
これで自由だと、誰もが思った。
しかし、人間には欲があった____
時が経つにつれ人々は厄災の恐ろしさを忘れ、先人たちの偉大さを忘れた。
結果、厄災を利用する者が現れ始めた。その者に対抗する者も現れた。
世界中が対立し、善と悪の拮抗は長らく続いた。
けれども、その対立は永遠ではなかった。
人類暦1500年代後半、人類史の転換点ともいえる魔導革命が起こった。
この世界には魔導具という道具が存在した。この魔導具は電力ではなく魔力を使って動かす機械だった。
この魔導革命によって人類は魔導具の乾電池的存在である魔石の養殖が可能になり、同時に魔導具の大量生産ができるようになった。
技術が進歩すれば、何かしらの問題が起こる。
人類の文明は魔導具により飛躍的に発展したが、人口爆発で深刻なエネルギー不足に陥った。
当時、大量の魔力を一箇所に貯蔵できるようなシステムはなく、魔石では生産が追いつかなかった。
この問題を解決すべく世界の研究者たちが研究に打ち込んだが、解決には至らなかった。
が、ある人間の研究者が禁忌を犯した。厄災が封印されたペンダントから魔力を抽出する方法を考案したのだ。
世界に厄災が封印されたペンダントは12個しかない。この後の展開はもう分かるだろう。
人類暦1600年代、中央大陸のエイガ帝国がペンダントを所有する魔法王国ファランダに宣戦布告したことにより、世界大戦が始まった。
人類史始まっての総力戦となり、全ての人種がこの戦争に参加した。人間族、魔人族、獣人族、エルフ族、豚頭族、精霊族……
戦争が始まって200年。戦争による死者数はおよそ9億人、10億人に届くのは時間の問題であった____
____戦争には必ず英雄が現れる。
この世界にも、この愚かな戦争に終止符を打つために立ち上がった者がいた。
その者の名はヴィール・エスペランサ。魔王が支配する西魔大陸にて長らく生きる魔物であった。
ヴィールは仲間とともに立ち上がり、当代の魔王を倒すと各国の反戦争派や革命軍を取り込み、勢力を伸ばしていった。
やがてヴィールの勢力は世界の半分を支配した。ここまで勢力を伸ばすことができたのは、ヴィール自身の強さと、ヴィールの参謀であるトゥルーという魔物の知恵があったからだろう。
ヴィールは各国にあった7つのペンダントを奪い、残りのペンダントは5つ。
全てが順調で、平和への希望を見出すことができた____
しかし、物事はそう上手くはいかない。
大規模な裏切りが起きた。裏切ったのはヴィールの忠臣の一人であったユリヌスという魔物だった。
中央大陸の北に位置するアリベール王国に進軍していたヴィールの一大勢力は、反乱を起こした軍と王国軍の挟み撃ちになった。
参謀のトゥルーはこの事態を打開できると考えていたが、想定外のことが二つ起きた。
一つは敵対勢力の全てが連合軍となって反撃してきたのだ。人間族と魔人族、エルフ族と豚頭族は互いに対立しており、協力関係を結べる仲では無かった。しかし協力関係を結び、一団となってヴィールの軍に反攻してきたのだ。
二つ目は竜人族の戦争への介入であった。竜人の住む竜王国は古来より中立の立場をとってきた。中立の立場を取れたのは他国を圧倒する軍事力と、軍人の多さである。竜王国では国民の半数が、軍人の資格を持っている。
かくして、反乱軍の不意打ち、竜王国の空軍によって中央大陸に展開していたヴィールの一大勢力は壊滅に追い込まれた。
人類暦、1805年。
ヴィールは残存勢力を率いて、島国の聖国アムステルにて最後の戦いに臨んでいた。
【Pendant ~忘れられし英雄たちと戦いの物語~】を読んでいただきありがとうございます!
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