第十七話 解放
ーーーーーーーー
アーケラが用意した道具は三つあった。
1つ目は筋力強化の魔術が付与されている手袋である。この魔導具の手袋を手にはめることで、100㎏の物が軽々と持ててしまう。
2つ目は石像を破壊するためのハンマーである。アーケラの知り合いの店で買った品である。
そして、3つ目。アーケラが精魂を込めて作った人型の魔法人形である。この人型の魔法人形の素材には軽量かつ丈夫なミスリルが使われ、柔軟性の高い動きを実現するために魔術式が魔法人形全体に書かれている。
「まずは、魔法人形を石像の近くへと置いて……」
アーケラは魂を石像から、人型の魔法人形へと移す救出方法を思いついた。
この方法なら封印を全て解除する必要は無いため、封印を解いている最中に魔物が死ぬ可能性は極めて低い。
以下、アーケラが考案したヴィール救出計画の手順である。
①封印魔法を一瞬で、一部解除して封印を緩める。
②魔力強制放出魔法が発動する前に石像を破壊。
③禁術【魂の呪縛】で人型の魔法人形に魂を移して救出。
アーケラは石像の近辺真横に人型の魔法人形を置いて、その二つを取り囲むように魔方陣を描く。禁術【魂の呪縛】の魔方陣である。
「はぁ……」
準備を終えたアーケラは緊張に襲われていた。仕方ないことである、見積もった制限時間は10秒。その10秒の間に封印の一部を解除し、禁術【魂の呪縛】で魔法人形に魂を移さなければならない。
失敗はできない。アーケラは頭の中で何度もシミュレーションを行い、呼吸を整えていく。
(よし!)
アーケラは石像に掌を向け、二等級の封印解除魔法【全ては錆びる】を唱える。
キ……キイイイィィィィーーン!!!
アーケラの魔力と、封印魔法に込められた魔力が衝突した。
封印魔法の術式が解除魔法によって破壊され、魔力強制放出魔法が発動準備に入った。
「させ、るかあああぁぁぁーーー!!!!」
アーケラは手袋の筋力強化の魔術を発動させ、ハンマーで石像を破壊する!
石像は粉々になり、衝撃で破片が飛び散る。
「つぎ!」
アーケラは石像を破壊したハンマーからすぐさま手を離すと、魔方陣を両手で触れる。
魔方陣がアーケラの魔力に反応し、光を発し始める。
_____洞窟は眩い光で包まれた。
【Pendant ~忘れられし英雄たちと戦いの物語~】を読んでいただきありがとうございます!
面白いと思ったらポイントの評価とブックマークの登録をお願いします!!