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ZEROミッシングリンクⅤ【5】ZERO MISSING LINK 5  作者: タイニ
第四十一章 アンドロイドの着地点

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86 シリウス解禁、混乱の女性たち




もうアンタレスとベガス自治区域の友好記念行事が目前に迫っているので、とにかく会議が多い。



運の悪いことに、しょっちゅう会うので、婚活おじさんと婚活オバさんがぶつかり合うのだが………パイラルとおじさんの部下ファイドルはお互い目を合わせて合図し、なるべく2人を遠方に座らせる。何かあったら叱ってもらえるように、婚活おじさんを進行席であるサルガスたちの近くに座らせた。



VEGA事務局長の(つづみ)が続ける。


「…と言う訳で、プログラムの方がまだ確定ではないですが、既に招待をかけています。うちで便利なのは、警備や交通整備、誘導などは既に人員がいる事ですね。」

何せ特警に東アジア軍に暇そうなユラス軍がいるのだ。ちょっとおかしいくらいである。青年も多い。

「視察を兼ねて数日滞在したいというゲストや特使もいますので、警備に入る部署にはその情報をお渡しします。」



大会議室を見渡すと、メンカルの人員と共にムギとニッカが席に着いていた。

そして嫌だと言うリギルを連れてファクトも参加。ただの聞き役ではあるが、リギルはこの人数に圧倒されそうであった。2百人近くいる。

そして驚くことに、イベント人員派遣会社であろう。まだ来なくていいのにコパーもいた。幸いタラゼドは今日も仕事でいないようである。

「あの女…。あんたたちが企画するわけじゃないからスケジュール決まってから来ればいいのにさ!」

ファイが完全にキレている。



しかし、そこで驚きのゲストが現れた。

遅れてきたSR社が後ろから礼をしながら入って来たのだが、その中になんとシリウスがいたのだ。


「?」

「?!」

シリウスはベガス入りできないと知っていた面々が驚く。


遂に解禁なのか。


シリウス大好き、ラムダやリギルも目を丸くした。

進行が気が付いて挨拶を求める。

「あ、今回メインスピーカーでもあるSR社さんが到着しましたね。ご挨拶お願いいたします。」

すると、社員ではなくシリウスが、最初に中央の通路を歩いて前に来る。



来ている服はカジュアルにもなるドレスのようなワンピース。

きれいな小さな花の咲く道を歩いているように、その周りが颯爽と、そして美しく輝いた。


髪が黒いシリウスには白い花が似合う。



通り過ぎる際にラムダが手を振ると、シリウスも振り返してにっこり笑った。しかしファクトは意地でも目を合わせず、壁の方を見る。シリウスはラムダたちに分かるように苦笑いしながら、そのままきれいに前方に歩いた。少し離れた後ろから社員も着いていく。



サイドで社員が一言挨拶をし、それからシリウスは連合国、アジア国旗に礼をして教壇に立ち、全員にも礼をして話し始めた。


「皆様こんばんは。そして初めまして。私はニューロスアンドロイドのシリウスと申します。今日はSR社の代表として、社長の意思をそのまま反映したご挨拶をさせていただきます。」

優しく全体にニッコリ笑う。


そこに反応したのはムギだった。

「あいつ………人間みたいな面しやがって……」

かわいらしい顔でぼそっと言うムギに、苦笑いしかないニッカ。

「ムギ、かわいさが台無しになっちゃうから、かわいい言葉で言おうね……。」

「…はい。」

聞かれていたのかとちょっと恥ずかしい。



しばらくシリウスは当たり障りのない挨拶と、ベガスでのSR社の役目、各システムへの関りを簡単に説明した。


「……そして何より………ここからは私の私見ですが、一番楽しみにしていたベガス構築、河漢計画に関われることをうれしく思います。」

本当にシリウスが楽しく嬉しそうに言うと、これが一番楽しみ?と皆が驚く。世界中を見ているシリウスが?リップサービスだろうか。


でもそれに、なるほど、と思ったのが以前河漢でシリウスと会話をした、サルガスやタウである。シグマ…ウヌクたちもいた。もう1年以上前だろうか。



自分の『管理された世界』を憂いていたシリウス。



『…全部準備されたものです。私が動くのは半分パフォーマンスですから、自分でも手応えのあることをしたいんです。自由時間が少しだけあるので』


『…皆様は自由でしょ。それに私を守ってくれる』


『自由があっても一人きりなんです。ここなら私の自由が掴めそうで』




そんな事を言っていたシリウスを思い出す。純粋な好奇心か、何か裏があるのか。ただ、東アジアに損なことはしないだろう。


でもあの時と今はまたベガスの状況も違う。

遂にシリウスが表立って解禁になったのだ。


それからアーツの一部メンバーは知っている。シリウスがやたらファクトにやたら執着心があることを。

ファクトは死んだように机に伏せていた。

「ねえ、かわいそうだよ。別に仕事では関わらなければいいだけだし。」

そう言われるも、ファクトは項垂れる。

「ラムダ。なぜ俺はゲテモノたちに好かれるんだ?」

「ゲテモノ()()…?シリウス以外に誰?」

最近は亡霊まで加わっている。



ミザルはそれを知っていて今の状況を許しているのか。


でも、もうシリウスは動き出さないといけない。



なぜならモーゼスが大房、河漢の一部を乗っ取ていたのだ。そして、義体を外したはずのシェダルさえも。

シリウスは既にアンタレス、アジア全体にも関わって様々なシステムを動かしているが、それでも余計な芽は摘んでおかなければならない。



「……と言う訳で、これからもよろしくお願いいたします。」

かわいらしく、でも厳粛に礼をして舞台を降りると大きな拍手が響く。


「すごいな…。最初に言われなければ、メカニックと分からないな。」

「人に好かれるしぐさも学んでいるのか?」

「プログラムのうちだろ。」

ただ人間らしくと言うだけでなく、人が、「おっ?!」と思わず気にしていまうような、かわいさや時に凛々しさも表す。

「なんだろ。ニューロスと言われても嫌悪感がないな…。」

「プログラムと、いつもアドリブをかます人間に対するのは、また違うしな。」

初めてシリウスを生で見る面々が驚きで騒めいていた。


それから現在決まった項目を発表し、前回来れなかったり、新たに加わりたいと申し出た企業や団体が簡単に挨拶をして全てが終わった。




シリウスは混乱にならないように先に退出すると思いきや、残って親睦を深めている。


ファクトは「ゲッ」と思うが、シリウスは好奇心旺盛な企業人たちに囲まれて動けなくなっていた。会話が弾んでいるので放っておく。


そこに絡んでくるムギ。

「おい、ファクト!」

「『あの、ファクトお兄様!』でなくて?「おい」とか言うと嫌われるよ。」

「何が「様」だ!ファクト以外には悪い言葉は言わない!」

先シリウスに言っていたが…と隣のニッカは思う。ニッカとファクトは目が合ってはははと笑った。


リギルはムギを見て、あのかわいかった子だ!と一瞬驚くが、言葉遣いが悪いのでさらに驚いてしまった。自分が使うような下衆な口調を使っている。


「ファクト、前にも言ったけど、シリウスに絆されるなよ。」

「はあ?なんで?」

「あいつ、ただのメカだろ!」

「それを何でムギが言うの?」

「なんにでもひょいひょい付いて行くだろ!」

「………そうでなくてなんでムギがって…。」

「…チコの弟だからだ!!」

音量は押さえているが、勢いが止まらない。


「チコが責任者だからだろ!!心配するに決まってる!お前一人のために全体にも迷惑が掛ける気か?!」

「ムギが心配しなくてもいいよ。チコが心配してるならちゃんと気を付けるから。」

「別にファクトを心配してるんじゃない!チコの心労を心配してるんだ!!」

「だから、チコが心配してるならって言ってるし……。

妬いてるの?」

「…は?」

「シリウスに妬いてる?」

ムギがしつこいので、昔読んでいた少女漫画みたいな返しをしてみた。

「は?」

「妬いてる!」

「…はああああ????」


なんと、想定外に、ムギが真っ赤になった。

「え?」

驚きのファクト。


「変なこと言うな!そんなわけないだろ!!」

「…」

ファクトが変な顔で見る。

「なんで…なんでお前の事で、ロボットに嫉妬すんだ!!」

「………真っ赤だ…。」

ラムダが言う。近くでシグマも白い目で見ている。なんだこの小学生…みたいな目で。


「…違う!別にファクトじゃなくても、そんな恥ずかしいこと言われれば、恥ずかしくなる!!乙女か!」

乙女である。

「ムギ…。また一段と口が悪くなったな…。チコさんに矯正してもらえよ。」

そこに今日参加していた、ヴァーゴが付け足した。

「あ、チコさんも口悪いからダメか…。」

そもそもムギはチコの言葉を見本にしていそうだ。

「うるさい!」

と、遂に怒って、どこかに逃げてしまった。


「ムギちゃん!」

ラムダが呼んでももう見えない。


ファクトは呆気にとられる。

「………。なんか怒らせた?」

「お前最低だな。」

「ムギちゃんはファクトが好きなのか?」

「いや、人前であそこまでからかわれたら、誰でも怒るだろう…。恥ずかしいし。」

「そうか?それはない。」

「まあ、ファクトは園や小学校時代なら女の子に好かれそうな性格だよな…。この大勢の前で最低だけど。」

わんぱくで運動神経もよく明るい男児だったとは聞いている。それはモテるであろう。チビッ子女子には。



「ファクト、遂にゲテモノ以外にも愛されるのか?」

「…いや、ある意味ムギちゃんも鬼レベルだろ。ゲテモノだ。」

「…………。」

ファクトは考える。

「……?」

考えてよく分からなくなってくる。

「大丈夫?ファクト。」

「…ラムダ…。夕飯喰いに行こう。」


人に囲まれてその場を離れられないシリウスを無視してファクトは会議室を出ようとすると、ファイに声を掛けられた。

「ファクト!ご飯!ご飯行こ!」

「俺も行く!」

と、少し離れた席からモアも手を上げた。

ラムダ、リゲルなどいつものメンバーに加えてリギルと出ようとすると、後ろの通路側の席に、何と言う事か。


今日は来てほしくないタラゼドがいた。



●邪険にされた、あの日のシリウス

『ZEROミッシングリンクⅢ』2 シリウスです。こんにちは。

https://ncode.syosetu.com/n4761hk/3

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