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ZEROミッシングリンクⅤ【5】ZERO MISSING LINK 5  作者: タイニ
第四十章 ギュグニーの花嫁

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85 お兄ちゃんと呼ばれたい

閑話なお話です。



「お兄様、お姉様方。今日みんなで作ったクッキーです。色はて…天然着色料です。」


緊張した面持ちで柄の悪いアーツに向かって一生懸命挨拶をしたのは、ジョア長女のビオレッタ。その後ろに子供たちがたくさんいる。


「ねん、年少さんも一生懸命作ったので、おいしく食べて下さい。」



今日の日曜学校はクッキーを作ったのだ。それを小さくラッピングしてみんなに配っている。

VEGAの事務局は、男の子チームが配りに行ったらしい。なのでかわいい女の子中心にアーツに来たが、その時点で間違っている。なお先生が分けたチームではなく、騒がしい面々がファクトと一緒に走り出して先にVEGA事務局に行ってしまっただけである。先輩組織VEGAへの忠誠心である。



「ビオちゃーん!お姉様に先にちょうだーい!」

リーブラが言うとジョア妹メレナの泣き虫三男がヨチヨチ来て、ビオたちの持ったカゴからかわいいクッキーを探して一つ渡す。


「私もー!!」

と、他の女性陣たちが言うと、一生懸命配っていた。



そこに、チビッ子大将こと、ウヌクがやって来た。

「生徒諸君。間違ってもそこにいるお方をオバちゃんと言うなよ。後の人生摘むからな。」

見た目は若い方だと自信があるのに、なぜか子供たちにおじさんと言われるウヌクが余計なことを言う。今は、先生呼びを徹底させている。断じておじさんではない。


「あと、お前ら。子供たちに基本ここはお兄様お姉様方の集まりだときちんと教育しておいたからな。感謝しろ。」

主に、第1弾と大房民に向かって言っておく。

「あのね。私はもうおばちゃんでも構いませーん!」

まだ子供はいないのに、結婚しただけで何かと諦めがついてしまったリーブラ。


メレナ三男のくれたクッキーの中に、自分の作ったものがあったらしく、

「これぼくの。ハッピーくん…。」

と懸命に説明するので、そのクッキーはほぼ何者か分からない形状であったが、リーブラは三男をギュッと抱きしめた。

「うれしい!大事に食べるね。写真撮ろう!」

そしてクッキーや子供たちといろいろ写真を撮っている。



「ビオちゃーん!お姉さんたちに終わったら、お兄様にもちょうだーい!」

今度はシグマが子供たちを呼んだ。

「シグマお兄様。どうぞ!」

いつも面倒を見ている、VEGAの職員の長女が渡してくれる。

「え?めっちゃ感激。俺の名前覚えてるの?!」

するとビオも一人一人指して答えていく。


「シャウラお兄様。

タチアナお兄様。

ライブラお兄様。

ローお兄様。

アギスお兄様。

クルバトお兄様。

リゲルお兄様…………」

と、数人第2弾3弾のメンバーも名前を呼ばれる。

「サレトお兄様!」


「うおおおおおおおおーーーーー!!!!」

「知っていたのかーーー!!!!!!!」

ベガス(ここ)に来たかいがあったーーーー!!!!」

超感激しているアホな男たち。

「ビオ!かわいすぎる!!」

ローが抱き上げた。


最後になぜか、いつもアーツにいる藤湾学生レサトの名が呼ばれていた。偉そうにどっしり隅の椅子に腰かけ、手を振るサレト。その横のシャムが俺は?と寂しそうだ。

「レサト、顔だけは無駄にいいからな…。」

幼くても女子はイケメンが好きなのだろうか。ただ、レサトは口は悪いがのんびりしていて優しくはある。


「あ、生徒諸君。ここのお兄さんはお兄様呼びなどいらんからな。」

何かムカつく身勝手なウヌク先生は、早速「様」呼びを撤回した。


「ビオちゃん。このお兄様は、お兄さんに見える?おじさんに見える?」

第2弾のレンドルが自らを指して聞く。

「………」

ローに抱えられたまま少し考える。

「………………」

「お兄様…。」

「おおおおおおおーーーー!!!!」

「…………。」

ハテナ顔のビオ。

「マジかわいい!!!!!」

「おじさんと言ってもかわいいよー!」

お兄様と呼ばれる機会があるなど、この人生で思ってもいなかった者たちが感動している。大房で生きていたら、お兄ちゃん呼びすらなかったかもしれないのに。


「ちょっと待て!なぜ俺の名が出てこない!!」

ここで怒ったのはキファだ。

「お前は響さんばかり追いかけているからだろ?」

「アホか!俺がどれほど仕事を休んでまでチビッ子に尽くしたか…。」

実はキファの認知度は、チビッ子男子の方に高いのである。何せ仕事をサボって遊びに行っている。


「知ってる。キファお兄ちゃんだよ。」

すると横からまだ小さな一人の女の子が、お菓子の包みを渡しながら呼んでくれたので、キファは超絶感動していた。前にキャンプのゲームで一緒になった子だ。そのチームの数少ない女の子だったので、良く面倒をみてあげたのだ。


「お菓子は女性にあげてから、余りをクソな男どもにあげればいいからな!」

ウヌクが言うと、さすがに同行していた女子学生が怒る。

「ウヌク先生!子供にそういう言葉を教えないで下さい!!イエローカードです!!!」


そして調子に乗ってきたアーツ男子。

「ビオちゃん。アーツで一番カッコいいお兄さんは誰?」

シグマが聞く。

「おおーーー!!!超聞きたい!!!!」


「………。」

しーんと静まる。


「…………チコ様…。」

「あのお方はお兄さんではない!!番長だ!そもそも子供の前で素を隠している!!」

「……ううっ。」

ビオを無駄に怖がらせるので、ローに代わってシャウラがビオを預かった。


もう一度シグマが聞く。

「ビオちゃーん。ここにいる人で一番カッコいいのは?」

「…………」

おずおずと周りを見渡すので、みんなシーンとする。


そして、自分を抱っこしている人と目が合う。

「シャウラお兄様…。」

「?!」

そう言って、抱いてもらっているのに恥ずかしくてさらに縮こまってしまった。



なにせシャウラはあまり怒らない上に、頼めばデザートでも何でも作ってくれる。


もちろんそれは、サルガスやタウなど自分以上に全体を締める人間がいてくれるからの余裕ではある。寮の食堂に遊びに行けばおいしいデザートを出してくれるので、チビッ子の心を掴まない訳がなかった。大房民の半分は単純なので気が付いていないが、料理や家事でいいので細かな事が出来て、気が利いて、控えめで優しい人が女子に好かれるという事を。

サルガスとタラゼドの件があっても、下町ズはまだ学ばないのである。



「いや、ローお兄ちゃんの方がステキだぞ。」

「……シャウラお兄様…。」

「じゃあ、俺、ただカッコいい?フツーにかっこいい?」

「……シャウラお兄様…。」

「………」


「シャウラ……。シャウラか………」

ここで、キファやローとか言おうものなら言いたいことが山ほどあるが、シャウラなら……と悩むお兄様たち。

シャウラは優しく笑った。



もちろんこの渦中に控えめ男子組は加わらないが、自分の名が出ないかちょっと期待しつつも名前が出なかったので、少し寂しい。あいつら陽キャはそんなことで喜んでバカだなと思いつつも、期待はしていたのだ。

自分たちも子供の手伝いに行っている。陽キャどもがうるさくて、僕は?と名乗り出る者はなく結果は分からないが、少しぐらい覚えていてほしい………、さみしいと思うのであった。




「…兄さんたち何してるの?」


そこに、現れたのはファクトやラムダ、ティガなどVEGA事務局に赴いていた主に男の子チーム。ファクトに引っ張られたリギルも、ウチの兄はアホなのかと言う顔で見ている。男子ばかりでは何をするか分からないと、ソラや数人の女性も同行させられていた。


「子供脅すのやめた方がいいですよ。」

「は?黙れファクト。重要な話なんだよ。」

「どいつもこいつも五十歩百歩だろ。」

誰かが冷静な判断を下した。少なくとも大房民は運動神経以外、みな似たり寄ったりである。


「キファ―!」

子供たちが掛け寄って来きた。

「来んな、お前ら!」

「キファ先生ー!!これ、うんこ!」

うんちクッキーをたくさん作って来たしょうもない男子ども。


しかも最近分かったのは、メレナ次男はこういう性格でファクトと気が合う。長男も同じく、マジメなジョア長男と違いメレナ長男の方がかなりふざけた性格をしていた。うんちクッキーを率先して作っていた首謀者2人だ。

「キファ人気じゃん。」

遊んでくれるお兄ちゃんも人気なのである。

キファにうんちクッキーを差し出す次男。

「そういうのはあっちの、レサトお兄ちゃんにあげようね。」

「大丈夫!いっぱいあるから!」


「うんこー!」

控えめ妄想男子組にも、しょうもないチビッ子男子チームが群がってきた。そう、彼らは男子に人気があったのだ。ゲームやカードなど、脳内が同じゆえに。デバイスに入っているゲームアプリも半分は子供と同じだ。



「ちょっと!VEGAの方にうんこクッキーあげてないでしょうね?!」

リーブラが焦る。

「…………」

ポケーと考えるメレナ次男は思い出したように言った。

「あげた!!」

「あー!しょうもない!!!」



そこにタウが、ターボ君を抱いてやって来た。

床に下した途端に無言で一気に掛けて行くターボ君。この会議室の中庭を出て、少し先にアスレチックがあるのを知っているターボ君はすごい勢いでドアを押して出て行ってしまった。


「ファクト!お前が追いかけろ!!」

「うっす!」

中庭の方に行くファクトを見ながら、タウはしゃがんでしまった。


「…もういい…。疲れた…。」

寝ている時と食べ物を食べている時以外、1日中走って、1日中どこかに上ろうとする。



そんな訳でアーツの1日が過ぎていくのであった。



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