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ZEROミッシングリンクⅤ【5】ZERO MISSING LINK 5  作者: タイニ
第三十九章 目と目、手と手

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75 初めまして。ここに住みます



「ああーーーー!!!!めっちゃ気になるっ!!!」

ナンパ男たちが机を囲って、コーヒーを飲みながらうるさく喚いている。


「あんな場に遭遇して、結果お預けとかひどすぎるっっ!」

「あんな場って?」

同席させられたファクトが聞いてみる。

「覗き見。」

一人が警察署を出た後にしていたことを言ってしまう。


「違う!門下生候補として質問に行ったらそういう事になっていたんだ!!意図して覗いたわけじゃない!」

()()()()()?」

「『愛』について議論をしていた…。」

ファクトはそれが警察署での話に繋がるのか?と考える。

「しかも兄さん、門下生って漢方かお香でもするの?」

「だから秘孔だよっ。なんだよお香って。フローラルかよ!」


「あ~!!『愛』の結果が知りたい!」

「なんでそんなに…。」

「え?姐さんかわいいから、あぶれたら俺がもらおうと…。」

「お前、タラゼド兄さんを応援しろよ!」

「は?次の日には股間が涼しくなっていると思うけど。兄さんたち『傾国防止マニュアル』見た?」

「いや、でもめっちゃ可愛いから。」

「分かる。あんなの兄さんも黒歴史更新するだろ。」

「おれ、ああいうの見て恥ずかしくなったの小学生ぶりだわ。」

今度は大房の夜の路地を思い出して赤くなっているアホがいる。


「多分あぶれない……。」

ちゃっかりこの場に参加していたクルバト書記官がつぶやく。

クルバトは思う。付き合っても響を掴まえておく方が大変だろうと。珍しい虫が飛んでいたら、どこまでも追いかけてアンタレスも越えてしまいそうである。ちょっと普通の大房民には理解不能な性格だ。

「……。」

うるさいナンパ男をコンビニ男が後ろで呆れた顔で見ていた。



「は?で、何なん?なんでお前らが響さんについて語れるわけ?」

そこに、何気なく加わっていたキファが遂に怒りだす。

「俺の方が付き合いが長いっつーの!!」

「あ?お前こそなんなん?愛に時間は関係ないって知らんのか?俺の『愛』の論文は1ページ目1行以内で終わるんだよ!長々書いても意味ねーんだよ!」

ハテナを入れても5文字である。

「は?バカなんすか?何の議論もないものは論文でも何でもない!それに時間は関係ある!!少なくとも情は生まれる!!」

「はああ?」

「行間にあるものを悟れよ!お前こそバカかよ!」

「行間もないのに??」

対抗するキファ。五文字なので行間はない。


「てか、お前年下だろ?あ?なんだその態度――」

バシっ!!

と、資料で叩かれるナンパ男。

「アダっ!!」


容赦なく叩いたのはイオニアであった。

「お前ら来期も河漢組になるか?」

「うお!イオニア大先生!!おやめください!!!」

「……キファ…。お前も河漢に入居するか?」

「お断りいたします……。」


「あ、タラゼドからメール。」

「?!」

全員ファクトに注目する。


「………。」


『響さん家に帰った』


「だって。俺らも帰ろ?」

「はー?!!返信しろ!!」

「ここで電話しろ!なんの話だったんだ?!」

「兄さんたち、大房のオバちゃんの孫?オバちゃんのコピペ?」

「うるせぇ!ファクト。ただの知りたがりだよっ!」

「いや、俺ここまで来たら、何か姪っ子の恋路を見守るオバちゃんだわ。」


この後、なぜかファクトも含め、ここにいるメンバーは全員お灸を据えられるのであった。




***




同時にこちらは寮の食堂。


「詐欺だーーーー!!!!」

と、リギルが叫んでいる。


周りにいるのはラムダ、リゲル、ジリ。既婚組のヴァーゴやジェイ他数人の男子に、リーブラやファイたちもいる。


「いいじゃん。だって、家では今面倒見てくれている人いないんでしょ?」

リーブラは言う。家に母はいるがリギルがいたらどうしても面倒を見るだろうし、これではお母様の腰も直らない。

「自分でウィークリーとか借りれないでしょ?ご飯もできないでしょ?レトルト買いに行ける?通販にしても玄関まで取りに行ける?病院も通いやすいし、出歩いても大房よりウワサする人少ないし、ここにいればいいよ。試用期間に参加しちゃえば滞在費完全無料だよ。」

「ごはんおいしいし、いろんな国の料理が食べられるからさ!」


「そうやって懐柔して自分たちにいいことを植え付けるんだろ??!!」

「しないよ。」

「そんなことしてる余裕ないし。」

ジェイが冷たく言い放つ。

「……。」

アーツ大房民はそんな面倒なことする気合いさえないし、エリスはその気のない人間まで頑張って説得などしない。よっぽど心がいいか必要か優秀でない限り。


「はー?何でもいいよ。プライバシー晒さないならここで批判動画でも何でも作ってなよ。」

楽しそうなファイ。

「ちょっと、学生やチコさんの悪口は書かないでよね!!」

リーブラが怒る。


「出ていきたかったらいつでも出てけばいいんだし。電車乗れる?タクシーの支払い方分かる?」

カードは自宅で使っているが、電車やバスには一人で乗ったことがない。というか、かなり長いこと乗っていない。住民になれば生体認証で全てパスできる。

「………。」

いろいろ言われて頭が回らなくなってくる。


「じゃあ今度、バス乗る練習しようよ!モノレールや地下鉄が先?今、河漢とベガスに路線再整備してるんだって!河漢は大部分作り直しするみたいだけど。」

オタクでイベント周りをしていたラムダが元気になる。

「うるさい!」

「ひいぃっ。怒らないでよ!僕ここに来て体重20キロくらい減ったんだよ?たるんだ皮もどうにか引き締まったし!なにか1つくらい体質改善して帰ろうよ!」



そこにローが入って来た。

「お!?リギル。雰囲気変わったじゃん!!」

「………。」

(いぶか)しい目で兄を見る。


「ローの弟って本当なんだな…。」

ヴァーゴが驚いている。

「お前、ファクトやラムダに弟任せすぎだろ?」

「まあまあ、身内同士だと余計にうまくいかないこともあるし。しばらく滋養を付けるってことでここでお世話になったら?飯上手いだろ。」

楽しそうにローは笑う。

「今更いい奴ぶりやがって……」

兄には警戒心丸出しである。



そこにさらに、ふてぶてしくもう一人入って来た。


「ラムダ!ファクトは?!」

「あ、ムギちゃん!」

「ファクトはキファたちとまだ事務局の方だけど。」


「おい!年上ばっかなんだから挨拶して入って来い!」

ヴァーゴが怒るので、久々に会ったムギがじっと見る。

「…サルガスのくっ付き虫はやめたのか?」

「残念ながら家庭持ちでそんな暇はない。」

「サルガス結婚したもんね。」

「俺もした。」

「……へ?」

「俺もした。」

繰り返すヴァーゴ。


「えええええええええ!!!!!!」

驚きすぎるムギ。


「ヴァーゴでも結婚できるんだ………。」

「そうだぞ。結婚祝い持ってこい。」

「………。」

「ムギちゃん、おめでとう言ってあげなよ。アギスやライオたちも結婚したよ。」

呆けているムギにジリが楽しそうに言う。

「うそ…。おめでとう…。」


「ムギ、座りな。なんか飲む?」

リーブラがムギを座らせる。

「いい……。ちょっとびっくり。…誰と結婚したの?」

「西南の元VEGAスタッフのヨーワさん。」

「ヨーワさん?知ってるよ!はー!」

「悪いな。気が付いたら父親秒読みだよ。」

「?!」

言葉もなくなる。



様々ショックを受けながら、ムギはふと新しい顔に気が付く。

「あれ?初めまして。」

「っ……」

リギルは真っ赤になって、元々被っていたフードで顔をさらに隠した。


「……。」

「挨拶しろよ。」

ローが言うので怒るかと思いきや小声で言う。

「…どうも。」

「ムギって言います。新しく来るんですか?」

ムギは響に手出ししなさそうな人には優しいのである。


「…そうです。」


「……………」

しーんとする周囲。新しく来たらしい。



そうしてとりあえず、しばらくここに正式に住むことになったリギルであった。



●警察署の話と愛は論文5文字以内

『ZEROミッシングリンクⅢ』47 愛の告白

https://ncode.syosetu.com/n4761hk/48


●覗き見

『ZEROミッシングリンクⅢ』48 ロボメカニックエキスポ

https://ncode.syosetu.com/n4761hk/49/


●タラゼドの黒歴史&覗き見おまけ

『ZEROミッシングリンクⅢ』46 好きな人に好きなのかと説明される

https://ncode.syosetu.com/n4761hk/47/


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