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ZEROミッシングリンクⅤ【5】ZERO MISSING LINK 5  作者: タイニ
第三十九章 目と目、手と手

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73 お話があります




サルガスはそのまま続ける。


「それからオリガン大陸からも研修生が数人。大部分は藤湾大に入るが、一部こっちに来る。チコたちが現地で選んでいるから問題はないだろうが、国を変えたいという意識が高いからそれを削ぐようなことはしないように。」

「意識高い系?ヤバくない?」

「意識高い系とか、一緒にやっていける気がしない……。」

「とにかくウザそうな奴らという事だな。意識高い系。」

「とにかくお前ら黙れ。大房民以外はだいたい意識が高い。お前ら以外は選抜で入っているからな。」

なにせ寄せ集め大房第1弾。あまりに意識の低さに、自分たちから申し込んだ第2弾、3弾メンバーが引いている。


そもそも、第3弾はライブラやミューティアのような意識の高いリーダーを見て入って来たのだろうと思うが、第2弾ライブラたちは何がよくてアーツなどに来たのだ。やはりバックに本物の軍教官がいると言うのはすごい付加価値なのだろうか。下町ズはこれ以上頭が働かない。



そこに仕事を終えたタラゼドも後ろから入って来た。ファイが気が付いて小さく手を振りファクトもピースした。


「あと、河漢からも数人こっちに異動する。事業全体把握のための異動でもあるので、最終的にまた河漢に移動するメンバーもいる。あれこれ思うこともあるだろうが、人は厳選しているのでよろしく。」

「…?!」

ファイは自分に言っているのか?と思う。会議室を見渡すと、やはり端の方にコンビニ男たちがいた。アーツベガスチームに来るのだろう。

「………。」


「全体ではシャウラとナシュパーが4弾のリーダーに入る。女子のリーダーはミューティアだ。マリアスも戻ってくるし、他の元軍人の方たちが教官をしたいと希望があったので数人入るらしい。事務系はハイバオにお願いする。タチアナを筆頭に、(あふぎ)、ユートンが企画構成チームリーダー。

各所リーダーを立てたいので、今回は全く違う環境から来るメンバーを70人抱えることができる。」

ナシュパーは第2弾リーダーの1人で、落ち着いたシャウラと違って気が強い。ハイバオは第3弾の黒人系メンバーで、妊娠しているメンバーの代わりに入り総務をこなしている。


「…なんだ?教官も希望者が多いんか??」

力を持て余している軍人、元軍人がたくさんいるのか。



そこにエリスが入って来たので、全員礼のため起立しようとしたが、エリスが手を上げて止めた。


「こんばんは。皆さん。

私は現在アーツに会員としてしか名前がないが、カストル宗教総師会総長、チコ・ミルクと共にアーツベガス創設責任者なので挨拶をさせてもらう。」

拍手が起こり、少々話をしてから、ファクトたちのいる方の席を見る。


「リギル。久々…数日ぶりだな。」

「?」

固まるリギルに注目する周囲。最初の日に食堂にいたメンバーと、同じ階で部屋が近い者しかリギルを知らないので誰の事だ?と、みんな見ている。


「一人ぐらい余裕があるから君も入ったらいい。第4弾。」

「??」

「どうする?入るか?」

「…?」


「はい!頑張ります!!」

100人以上に囲まれて完全に硬直しているリギルに代わって、隣のファクトが手を上げる。

「じゃあ、サルガス。彼も入るから調整しておいてくれ。」

「分かりました。」

「???」


他にいくつか話をして、質疑応答が終わると全体が解散した。




***




「ファイ…大丈夫か?」

コンビニ男の件で心配になるタラゼドが、まだ会議室の席で荷物をまとめているファイの方に行って声を掛ける。


「…うん。大丈夫。」

「本当か?」

「あいつと他人は分けて考えないと。従兄弟があんなことをしたからって彼が悪いわけでもないし。私も進みたいから。前に。」

「…。」

無表情に見えたファイ。でも、瞳はもっと先を見ている。


少し心配な部分もあるがファイの頭を軽く叩く。タラゼドにとって、ファイは妹というよりはもう娘の領域だ。

「なんかあったらすぐに誰かに相談するんだぞ。」

「…うん!」

そう言って、二人で会議室を出る。



タラゼドはふと、通路のフロアを見渡す。

活動会員でもないしいろいろあったのでもう来ないだろうが、思わず終了後の通路を眺めてしまう。だいたいこの時間にウロウロしていた響。


なぜ、あんな生きにくい生き方をしているのだろうと、ため息をついてしまう。



「あーー!!!姐さん!!!」

その時、フロアに大きな声が響いた。


この声、この響き。ナンパ男たちである。コンビニ男も男たちが叫んだ方を振り向く。


「あ、響さん…。」

ファイがしまったという顔をする。コパーが来るかもと、けしかけたのはファイだ。

通路の向こうの方には仕事帰りだろう響が、走ってきたように息を切らせていた。響も走れるのか。


「久しぶりです!!」

「姐さん!俺らもこっちに来てしばらく頑張ります!!」

楽しそうに響の方に駆けていくナンパ男たち。

「…あれ?皆さん?そうなの?」

よく考えれば、この男たちの名前を知らない響。ベガスに来ていることさえ知らなかった。響は少し困っている。

「姐さん、髪、縛ってると思ったら切ったんすか??」

「なんでそんなに芋っぽい格好を?」

今日もダブダブの服を着ている。

「えー!髪、勿体ない…。めっちゃきれいだったのに。」

「ノーメイクでもかわいいっすね!」

「何かここでも秘孔は教えてもらえないらしいんす!姐さんが教えてください!」


数人の男に囲まれて、あれこれ言われている響に気が付く、ファクトにキファや…そして河漢移籍者初日なのでこっちに参加していたイオニア。

ファクトは兄さんたちが何かやらかしそうなので、放心状態のリギルをラムダやリゲルに任せて響の方に行く。


「…あれ、大房の奴らだよな?なんであいつら響さんと仲いいんだ??」

男4人に囲まれている響を見て、キファがそっちに行こうとするが、イオニアが止めた。

「行くな。ファクトもいるし大丈夫だろ。ファクトの知り合いだって言ってた。」

「ああ??俺もただ楽しく皆さんの輪に入りたいだけだよ!」

絶対に違う。

「行かなくていい…。」

キレ気味に脅すイオニア。これ以上問題を起こせば、響は完全にアーツ出禁になりそうだ。隣にVEGA事務局もあるし、親子共に大型賛助会員なのにそれはひどいしかわいそう過ぎる。


一方、響の方を見ながら何かムカつくタラゼド。自分が響がいないかいつも気にしていたのに、なぜナンパ男どもが群がっているのだ。

でも、よく見ると響がファイといるタラゼドを呼んでいるのが分かる。こっちを見て手招きをしていた。

「タラゼド。行こ!」

「…ファイ、本当にいいのか?」

「うん。」


ファイがタラゼドの手を引いて響のところまで行くと、タラゼドはそのまま一番うるさい男の頭を後ろから掴み、後ろに引っ張る。

「うおっ!!」

驚く男たち。

「兄貴!!」

「お前らやめろ。周りから見たらナンパだろ?」

ファクトも間に入った。

「タラゼド!やっぱっそう見える?俺も兄さんたちに響さん囲うのやめたら?って言ったところ。」

ファクトはとにかく響を他人の目から守りたい。兄さんたちと響の出会いもナンパ、という前科が既にあるのだ。

「は?ファクト。てめー違うだろ?秘孔の話だよ!」

ファクトはナンパ男どもに裏切り者扱いされてしまった。

「タラゼド兄さん、違うんす!兄貴こそ『愛』はどうなりましたか?」

「あ?」


警察署での『愛』の話である。

「…。」


全員沈黙し、響は変な顔をしている。

「まだ結論出てないんですか??大卒はバカなんですか?」

「タラゼド兄さんは高卒っしょ?専門だっけ?」

「姐さんが大卒?…あ?もしかして理系?」

響は蛍惑の大学は卒業済みである。


「…。」

ナンパ男たちの口が回り過ぎて、ファイとファクトは間に入れず焦ってしまうのでタラゼドが庇う。

「その話はやめろ。ここでする話じゃないし、響さん困ってるだろ?」

「えー!じゃあ、俺が姐さんに『愛』を語っていいですか?!夜通し語れる自信がめっちゃあります!!」

「やめろつってんだろ?」

タラゼドが怒る。


「………。」

が、あれこれ話している間、目線を下にしたまま動かない響に気が付いて、一斉に静まった。



また沈黙が訪れて自分が注目されてしまったことに気が付き、響は目を上げる。


潤んだ顔がキレイで…一瞬全員が押し黙る。



「…タラゼドさん。お話があります!」

そう言ってタラゼドの手首を掴んで引っ張るが…

タラゼドが咄嗟で動けずに、歩き出すつもりだった響は大股で勢い余り反動で倒れそうになる。

「うわ!」

周りも驚いて響を支えようとするが、そのままタラゼドの胸下に背中から倒れ込む。

「うっ!」

「…大丈夫?響さん?」

「………」

「響さん?」


体を起こして自分を見ている周りを睨んでから、怒ってバジ!と、響はタラゼドの胸を叩いた。

「ちょっと!行こって言ったんですから動いて下さい!」

行ことは言っていない。

「タラゼド。行きな。話があるんだって。」

ファイも押すので、響に引かれてタラゼドはどこかに移動して行った。



「…………。」

静まるが一人が、はっと気が付いたように追いかけようとする。

「あ!待って!姐さん!やっと会えたのに!近況報告したいんすけど!!」

「兄さん…。放っておきなよ。」

ファクトに止められて仕方なく去って行く二人を見送るのであった。



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