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ZEROミッシングリンクⅤ【5】ZERO MISSING LINK 5  作者: タイニ
第三十九章 目と目、手と手

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63 新たなユラス軍参上



プールの話中に現れたカーティンおじさん。



おじさんに挨拶をしてウヌクたちはドリンクを貰う。

大量に買って来ていたので、余ったものを付き添いがVEGAの事務所まで持って行った。


「カーティンさん。今は日曜学校のミーティングなんで婚活はしないでくださいね。」


自分より変な人が来たので、ウヌクがまともに見える。というか、まともなことを言っている。

「いいよ、いいよ。横で聞いてるだけだからそのまま続けて。」

「………。」

しかしなぜか緊張している一部男子たち。

ウヌクやタラゼド、キファ、リゲルなどベガス、河漢事業の中核に関わっている者は知っている。


このおじさん、先月までにベガスの新区域に数か所施設と土地を購入。駐車場の規模が総計1万3千台になる規模だ。恐ろしすぎる。


まだ100年は安定して使えるだろう建物4軒。そのうち2軒は商業施設でフォーチュンズマートで片方は複合施設。1軒は中規模の総合文化施設。子供の習い事や塾なども入り、もう1軒はイベント、フォーラム会場などになる。

文化施設での習い事などはフォーチュンズマートの企業義務費用で賄い、河漢出身の子でも通えるような会費になる予定だ。


「……それで君たち…。その予算はどこから出るの?」

抜け目なく聞いてくるおじさん。こっちは日曜日のただのミニイベントなので黙っていてほしい。

「日曜学校なのでベガス教会からですけど、足りない分は俺払ってもいいかなと。ここに来てから大して金使わないし。」

ウヌクがなんとなく言う。


「それじゃあウォータースライダーは設置できないだろ!この写真のタイプだと1日100万はするぞ!!」

なぜが力を込めて言うおじさん。

「え?!1日100万?!じゃあこういうプールってどうやって利益出してるんですか?スライダーだけレンタルするわけじゃないし、水や電気代もいるし、会場代人件費も入れたらマイナスじゃないですか!」

驚くラムダだが、ウヌクが話を逸らさせない。


「え、いえ、俺らの担当は親の顔も知ったような身内のチビッ子なので、小さい滑り台でいいです。そんなことしたらまたいろいろ申請して、許可も貰って、保険も付けないといけないし。」

プールはやる気だが、前回のキャンプで気が抜けたウヌク。大型スライダーなんか付けたら何人スタッフがいるのだ。小規模1人用1台でも入り口、上、スライダー下に1人はいる。水質管理もしないといけないし、警備や救護班までいるだろう。


「小2はウォータースライダー喜ぶよ!身長120センチあれば乗れる!」

ファクトが余計な加勢をする。

「そうだよな!スタッフはプロを雇えばいいんだよ。」

おじさんはファクトの意見にただ一人同参するが、ウヌクの中では先のラムダの案で決まる。明日はある物で水遊び、あとは今度のためにいろんな大きさやタイプのプールをいくつか買うだけでよいであろう。


「よし!夏は子供中心の仮設プールをつくろう!!どうせなら金は楽しいことに使わないとな!」

しかし何か一人で納得しているおじさん。おそらく作ってしまうのだろうが、今は放っておこう。


暫く予定を詰めて全体ミーティングが終わる。



「はぁ、響先生と海で遊びたい…。」

だらけるキファ。

「先生と浜辺を走りたい…。」

「………。」

想像して萎えるファクト。響は足場の悪い浜辺など30メートルも走れば座り込むであろう。

「なあファクト。響先生あれから大丈夫?顔腫れてない?」

「知らない。多分大丈夫。」

「知っとけよ!最重要把握事項だろ?」

そこでタラゼドが答えてくれる。

「大丈夫だよ。時々ルオイが確認しに行ってるけど、ずっと勉強してるって。」

「………」

タラゼドの答えなど全て気に入らない。




「あ!そうだ!」

藤湾学生と話していたが、ステキな思い付きをするおじさん。

「ウヌク君って暇?」

「……俺のこと把握してました?」

範疇外で名前も知られていないと思っていたので戸惑ってしまう。が、婚活おじさんは南海や藤湾メンバーも把握しているのである。何なら未婚のユラス人も把握している。

「ヒマって言ったらチコさんに叱られます…。」

チコ傘下はブラックなので定時以外逃げ回っているのだ。定時中も、仕事から逃げまくっているが。


「ヒマなんだね!!」

楽しそうなおじさんが生まれた瞬間である。




***




そしてこちら、ユラス軍にも大きな動きがある。


河漢事業の方に新たな部隊が入って来たのだ。河漢事務所に行く前に、彼らは南海駐屯に降りる。東アジア政府や軍、特警も挨拶のために待機。南海や河漢の地域長、エリスやVEGAやアーツなどの責任者たちも来ていた。


サダルも来て、チコも少し後方で打ち合わせをしていた。司令官とは別に軍用航空機2機で一気に降りてきた部隊は先発75名。第一陣は治安のために河漢やベガスの人の多い地域の駐屯などに住む。


「少佐、こちらに。」

ベガス側の補佐がヘリから降りた責任者を最初にサダルの前に案内させた後、サダルと共に東アジア側に挨拶をさせた。


「は?」

「うおっ?!」

しかし、降り立った人物にあまりに驚くアーツや南海の皆さん。


なにせ、そこに姿を現したのは、ダークブロンドの髪をはためかせる人生余裕そうな美女。

サングラスをしているので目までは見えないが、おそらく美女であるとクルバトが分析。一部軍人は任務に関わるため、接客や公の場でもサングラス着用が許されている。


その他7人ほどの、ミルキーブラウンやアッシュブラウン、ブラックカラーの長い髪の女性たち。何人かは後ろでまとめ、黒人のハーフらしきメンバーもいた。素朴な女性もいるが、なぜか全体的に美女たち。



「ガイシャス?!ガイシャスはダメだろ??聞いてないぞ!!」

隅っこでチコが戸惑っている。

「私も知りませんでした…。」

カウスも驚いている。

「あいつらが鼻の下伸ばす様な美人連れて来てどうする!!!」

「えー?そんなの知りません!私、あの人苦手ですし。」

カウスの嫌いなタイプなのである。


「チコさん…。あの人たち河漢に入るんですか?絶対騒ぐと思うけれど、奴ら…。」

サルガスたちも戸惑っている。

「どこに配属されるか聞かないとな…。」




最初に慰霊塔に祈りを捧げ、全体の式が終わってからまた逃げるように去ろうとしたチコの前に、先のダークブロンド女性がやって来た。


「チコ様、お久しぶりです。」

チコの前にキリっと立つ美人。スッキリ整った感じのチコと違って、どちらかと言えば甘みもあるグラマラスなかっこよさだ。背はチコの方が高いが、大人っぽい雰囲気を漂わせ、並ぶとチコが少し子供にも見えてしまい、アーツは思わず魅入ってしまう。



「あ、ガイシャス少佐。お久しぶりです…。」

チコが改めて挨拶をする。

「…私に敬語はおやめください。」

「でも先輩なので…。」

「関係ありません。カイファー様にチコ様をよろしくと再三言われまして。」

「…。」

少し引きつってしまう。カーフの母にあれこれ言われて来たらしい。


「チコ様、お久しぶりです。」

後ろに数人の男女も控えていた。

地方にいてここ数年会っていなかったらしく、泣きそうな軍人もいる。チコは全員に握手をし、女性にはハグをした。

「チコ様!」

みんなしんみりしている。



アーツ一同、ああ、どこかで見たと思うこの風景。

そう、他大陸帰省組が来た時だ。チコが寡黙だと思っていたサウスリューシア組が驚いていたデジャブ。

ガイシャスとここにいない数人は既にユラスで数回会っているらしが、その他はサダル帰還以前にしか会っていない。彼らはオバちゃん化した議長夫人を果たして受け入れることができるだろうか。


「…あの、ガイシャス。こっちが今、私と仕事をしているアンタレスのアーツベガス。彼がリーダーだ。」

サルガス、ゼオナスを紹介するので、お互い自己紹介をして挨拶をしタウ、ベイド、イオニア、シャウラやライブラ、アクバルたちも次ぐ。

「サルガス。ガイシャスたちは向こうでこれまでの資料を読んでいる。」

「大枠ですが、なんとなく経緯は分かっています。」

「あ、はい。」


「ガイシャスたちも河漢に入るのか?」

「数人はチコ様の護衛組に。河漢は様子を見て状況確認次第です。それまで女性と軍曹以下はベガスなどに入ります。」

「…そうか。」

チコはホッとするが、いつも後報告で少し頭にくる。


しかし、楽しいことが思い浮かぶチコ。

「護衛が増えるってことは…」


…グリフォとパイラル、レオニスたちに婚活を勤しんでもらえる!!



そう、先日この3人にお見合いしろと命令したら、即断られる。命令なのに。

じゃあ、歳も近いしレオニスがパイラルを見てやれと言ったら「同部署結婚ありえない!」「そうしたら護衛に穴が開きます!」と大反対されたのだ。


これで少なくとも後者の言い訳はできまい。


ニンマリしているチコを、どうしようもない目で見るカウス同僚と、何が起こっているのか飲み込めない新部隊であった。



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