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ZEROミッシングリンクⅤ【5】ZERO MISSING LINK 5  作者: タイニ
第三十七章 準備された奇跡

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41 クソ坊主 十年後の人類は違う世界を見る



少し過去のことになる。



東アジアは前時代に一度大幅に神性をなくした。


彼らは発展していると思っていたが、発展や生産性の未来は実は後退していた。彼らは実体の無い物を愛し、執着し、そこに平和と安心を求めていた。面倒なことを省く文化的土台を作った。

それはその時代だけの幻影にすぎなかったが、彼らはそれこそが真実だと思っていた。



その間に、飢え乾き命を捧げて生き抜いてきた地域や国々に、「渇望」において負けたのだ。




彼らは宗教を不穏因子と思ったが、不思議なことに一定の信心や神性をなくすと、どんなに発展しても文明は衰退していく。

後退しているのは分かっていても彼らには決定的な理由が分からない。外枠を固めても、精神性が急落しているのが分からなかったのだ。正しい指摘も茶地や反社会、カルト、オカルトと混ざり結局は真理を見いだせなかった。



個々人の精神性が下がり、他人の一時的な指摘が自身や人を左右していたからだ。

彼らの多くは気が付かなかった。思いもしなかった。


自分がその社会を作っている一因なのだと。




なので彼らは世で、ネット世界で、高らかに語り誇りながら、自分たちの崇高性を失ってしまい、精神も物と同じだとし、人間の生命の価値をも下げてしまった。つまり、砕いても食べても踏んでもいい。塵に消えてもいい。物なので配慮することもない。人間が植物や動物や地面と同じという極論に至っていることに気が付かなかった。



世界の頂点を極めたアジアが、自由圏でありながら自分しか信じられない、時に自分すら信じられない自己愛主義になり文化的荒廃を迎えていた時代がその時だった。その国にいる者はその事実すら自覚できずに。



宗教の本質は他責の逆だ。


その一番簡単な真理を捨ててしまった。



何故なら東の野には聖典が入らなかったから、その意味が分からなかったからだ。


昔のその地の支配者が徹底的に弾圧したことも理由だ。その地が、赤と白に分かれていた時代のもっと前から、西横の王族の女の怨みが、三国に分かれた全ての勢力に呪いをかけた。それゆえ、東洋三国はほとんどが蜘蛛の糸のようにしか、政権を繋げられなかった。


本当は東洋三国全てに天の王権の土台があったのに。


前時代の人は認めなかったが、東洋も全て入り混じっている。

あらゆる血が。



なので、(だい)大陸規模の西の地では、既に聖典は個人のものであったが、東洋はいまだ国が左右する封建時代であった。


東洋は遅れる。

聖典は科学の書でもあったのに。



西洋が理解していないことは東洋が解くはずであった、ソロモンの王国を、人類は聖典の王族と同じ罪によって失ってしまった。





国としては信教の自由を謳っても、実質排他主義、現実主義ということである。目に見えない現実的でないことは馬鹿にされた。


それはつまり、かつての神教国家から派生した、旧時代初期の世界的な無神論、啓蒙運動が実を結んだのだ。女の怨みだ。


世界は左世界に勝利したと思っていたが、実際は完全に精神性を持って行かれていた。

心や情より常識となり、自己で判断する良識は消えた。誰もが過去の拘束から全ての自由を得たようで、狭い世界に身を置いてうずくまっていた。




そこにメスを入れたのが、後に初代宗教総師長となる男。


彼は、没落寸前の寺の息子で、親世代も、今、世の中にあふれる文化もくだらないと一蹴した。


「こんな茶番な世の中で寺など運営できん。」

と、金持ちたちを説得し膨大なお金を使って寺でも造るのかと思いきや、もっと怪しい霊性の開発研究所を作り、関心のある者は宗教宗派国籍関係なく門を開いて、ヤバい奴だとアジア中を震え上がらせた。



ただ、性格が明るく豪胆だったので、世の中とマスコミなど無視。

無視どころが覆いに構って、炎上の的であった。


「うるせーな」と世間を煽り、生臭坊主どころか畜生、タコ入道、バカ、最高に胡散臭いとか言われたい放題言われても「あ、そっ」という感じだ。

「そんなに不思議世界が嫌いなら、勝手にしろ。お前ら漫画や映画は好きなくせに。でも、研究所の名前は変えといてやるから公募する。カッコいい名前しか採用しない」と、募集し、面白半分で送られた茶化したネットユーザーの名前を採用。


『サイキックバイザーズ・アジア研究所』と名付け、そんな普通の名前を選ぶのに世界公募するなと、さらに批判を食らった。サイキックは霊能力や超能力のことである。

バイザーズはかっこいい名前かと思いきや、そのネットユーザのお気に入りのゲームから取った名であった。自分も子供の頃していたゲームだから選んだという、実は全然まともでない理由であった。


しかも最初に「この世の中の文化も全部くだらない」と言ったのに、有名なオンラインゲームを120タイトルも上位クリアしていて、ネットで叩かれまくった。しかし、それも事細かにアンチにいちいち答えてしまう。


きっと何か言いたくて仕方ない性格なのであろう。

話していたことと言えば、その頃の思い出や気持ち、クリアの仕方、アカウント特定で「実はそれ俺だ。お前に勝ってる!」という自慢話であった。


そのせいもあってか、宗教人なのになぜかネットの方で有名になってしまい、じじいになって死ぬまで楽しくアンチとやり取りをしていて、ネット上で罵倒だらけの壮大な葬儀まで挙げてもらってしまった。

しかも、死ぬ以前から死後のビデオメールまで用意していたらしく、『お前らネット漬けでネット脳で地獄行きだ。反省して一個ぐらいいい事して冥土に来いよ。』とか、坊主のくせにひどいことを言って、お前こそが地獄だとか書きまくられていた。




「天動説が数百年前にひっくり返ったように、鉄が空を飛ぶどころか海に浮くことさえ疑っていたのに、新しい世界はそれを覆した。


そんな世界が実現してしまったように…


あんたたちが今見ている全てが。180度変わってしまうような世界を百年後の人間は体験するよ。


()()()()()()()()()()()()()()


同じように今後数回うねりながら、人間の世界は全く違う方向に回転していく。


百年後…でも時の流れは縮まっているから後2、30年もすれば…早ければ10年もしないうちに、()バカバカしい、ありえないと思っていることが――


世界のデフォルトになる。」



と、坊主ははっきり言う。今でも視聴回数が伸びている動画だ。




「宇宙は………宇宙は人間の手に取れる場所にある。


それを信じない人間は、地動説を信じなかった奴らのように、その時代に埋もれて生きればいいさ。

他人の犠牲で作った経済や国で、幸せを謳歌すればいい。それは砂上の城なのにな。」



この時代は、天動説も地動説も正解であり、正解ではない。

中心点と視点で全てが変わる。


坊主とは思えない坊主頭のその坊主は、袈裟を被ったまま楽しそうにも、メンドそうにも遺言でそんな話をしていた。





では、()()の女のうらみは誰が解くと思う?


それは女自身でもあるが、賢い男は悟るであろう。



女がほしかった、その愛。




女さえ理解しえなかった、最初に失った神の準備した実。




本来最も近くにあった、その愛が理解できた時、その数万年の絡みに絡んだ糸は、


一桁の足し算よりもスルスルと解けて、


世界に翡翠の山河を作り、瑠璃色の水の流れる美しい河川が海に流れるだろうと。






アジアに興味を持ったサダルは、そんな昔の動画をじっと見ていた。


サダルにとって精神性や文化が高度に見えたアジアも、まだ霊性の開花をして百年も経っていないと知って驚いた。どんなに頭がよくても、サダルの人生はまだ10代に入ったばかり。やっと中学生だ。


なぜ、世界が文明開化までに数万年、数千年も掛かったのか理解に苦しむ。

なぜ、こんな理解し合うことが難しい人間ばかり生まれるんだ。神はこんなバカな人間を作ったのか。神もバカなのか。


でも、それは分かる。ユラスで学んだ。神が馬鹿なのではない。人間が馬鹿だったのだ。神は人間を神に最も近く作るために、神と同じ自立性と責任性を与えたからだ。


ただ、その要素がデカすぎではと思いはするが。



なぜ、人類がここまで来て、霊が視える人間と見えない人間が、見えやすい地域と、そうでない地域があるのだ。

なぜ、信心の深い場所と、深いが他害が好きな地域と、何の信心もない国があるのだ。



数万年、ひたすら人を殺し、人を犯し、人を足蹴にし、何がしたかったんだと思う。

数万年、数百年、そんな屍の上を本当に人類は歩いているんだ。


全てまともなわけがない。

そんな中でまともに生きられる方がどうにかしている。


この坊主は嫌いじゃない。口はひどいしゲーム狂だが、酒も女もしないし必要なことはしている。一部の聖職者よりよっぽど澄んだ霊性をしていた。



でも、根本的に人は信用していない。


サダルは人間が嫌いだった。





中学卒業前まで動物で練習をして、サダルは直ぐ手術にも参加させられる。


そして、第二助手からに第一助手になり、あっという間に実質執刀医になっていた。

ハッサーレ自体がそういう国だったので、治療の延長と称したほとんど治験の様なメカニック義体の施術現場にも参加していた。



そしてハッサーレに来てから初めて海外研修に参加ができる時が来た。


西洋国のタニアで開かれるニューロスメカニック国際会議に参加できることになったのだ。既にサダルこと、ナシュラ・ラオの名は一部界隈で有名になっていた。




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