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ZEROミッシングリンクⅤ【5】ZERO MISSING LINK 5  作者: タイニ
第三十七章 準備された奇跡

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41/110

40 星のメリク

不快な言葉、罵りなど出て来ます。ご注意下さい。



この章はサダルの青年時代になります。

▼以下のエピソードを知っていた方が分かりやすい内容です。(残酷な表現や内容が出てきます)


●サダルの子供時代。母と緑の目の子

『ZEROミッシングリンクⅣ』66 たったひとり、この世界に

https://ncode.syosetu.com/n0646ho/67






あの当時……


今はもう昔、


ユラスの内戦が本格的に始まった頃、その先に終戦があるなど誰も思っていなかった。


この大陸は前時代ですら戦争を続けていたからだ。

も、数千年も。どこかで収まっても、どこかはくすぶっていた。



大陸自体が広いので、ユラス民族国家だけがひどい国だとは言いにくいが、それでも新時代になってもまだ争いは続いていた。

連合国の力を借りやっとまとまりかけた情勢も、それを押し進めてきた最も大きい理性勢力で中立のナオス族族長を数年前に失い、ユラス内の派閥もさらにいくつかに別れる。


しかし、内戦という名はあっても実際は近隣の不安定な国に翻弄されているような状態であった。






「タイヤン!俺も連れて行ってくれ!絶対に迷惑は掛けない。もう大人だ!何か役に立つ。」


父も、そして母も緑の目の子供も失った少年サダルは、避難指示が出た商店街近辺の第4陣と一緒に行きたくて大きな声を出す。


「サダル。ダメだ。俺たちはお前を連れて行けない。」

「なんで!」

「もうお前はダーオの保護下にあるんだ。」

「なんで母さんと結婚してくれなかったんだ!」

「………」

そうすればタイヤンは父で、その家族たちと一緒に居られた。その籍にさえ入ってしまえば…。


だが、タイヤンは知っている。大人の事情はそうはいかないことを。

もうサダルは誰もが手放したい存在ではなかった。誰が裏で動いたのか、これまで放置されてきた………母親の好きにさせていたナオス直系の生き残りの一人息子を、もう死なすわけにはいかなかったのだ。


ダーオ政府が正式に保護を申し出たのだ。義息子などその権力の元では手元に残せない。いや、実の子であったとしても、もし結婚できていたとしても、母ルイブとサダルは自分の手元に置くことはできなかったであろう。しかし首都で何があったのか、一旦引き取りの話しが消えこれまでと違う人間が来ため、揉めてサダルはまだこの街を離れてはいなかった。

後で知るのは、当時の首都機能を担っていた政権の党首が暗殺され、首都自体が混乱していたのだ。




街の警邏や消防を担っていたタイヤン一家の男たちは女性より少し後の避難となり、タイヤンもやっと避難することになった。


「タイヤン、連れて行って!」

「サダル。大丈夫だ。彼らはちゃんと…ちゃんとお前を見てくれると約束した。」

銃を構えた兵士たちは何も言わずに見ている。サダルの横には新しい後見人の遣わした女性が来ていた。


冷めた子供だと思っていたサダルがここまで動揺していることに、タイヤンは驚きを隠せない。「分かった。そのうちどっかでね」と言って手を振るくらいだと思っていた。

母親がレトルトや缶詰ばかりで、卵くらいしか焼かないので、タイヤン母や祖母の料理をいつもたくさん食べていたサダル。今連れて行ってあげたくて少し成長した少年をギュッと抱く。この街を離れる時、母はサダルを抱いて大泣きをし、曽祖母も一緒に行こうと泣いていた。

「サダル………。」


「時間だ。先にここまで6台は出発するぞ。」

軍用車両が一般車の前後を誘導する。



車がゆっくり動き出した時だった。


「タイヤン!一緒に行く!面倒を見てくれるって約束したのに!!」

「…サダル………」

運転をしていたタイヤンは車窓から身を乗り出すようにサダルを振り返るが、外にいた兵士に早く行けと指示を出された。


「裏切り者ー!連れて行ってよ!!!」

タイヤンはどうしていいのか分からなかったが、軍に任せる以外の選択肢はなかったし自分も行くしかない。震える心でアクセルを踏む。


「タイヤン!タイヤン!!」


周囲は駆け出すサダル少年を少し放置していたが、途中の兵がそれを止めた。そこでも何か抵抗していたが、もうその姿は見えなかった。




***




その後、サダルは一時別の地方都市に移され、当時まだ独立国家だったオミクロンの領地に入りそこからアジア入りする予定だった。

しかし何があったのか。歴史の中でユラス西南の他国家にほとんど融合してしまったタルフ族に引き取られることになった。


一旦その国に入るが、その国の二政権の間で板挟みの扱いになり、またいくつかの経路を経て気が付くとユラスより北方国家であるハッサーレで残りの小学校から高校時代を過ごしていた。


既にナオス族族長家系の名は消え、ナシュラ・ラオを名乗り、完全なアジア系住民として一般に溶け込む。


ハッサーレは北の国家に考え方が近く実質無神論主義的だったが、いつくかの宗教や昔分離した旧教教会は存在しており、大きな科学研究施設もあるような先進知識もあった。ひどく薄暗いスラムもあれば裕福層もいて、多少のお金とコネがあればそれなりの生活ができるような環境である。


しかし、所詮はコネで生きる社会。当たり前の良心はあれど、一歩裏に入れば誠実さより狡猾さがなければ貧困に埋もれてしまう。


サダルは顔も知らない誰かの養子扱いになり、上流階級や金持ちたちの寄宿舎に入った。両親や家を聞かれたら物心ついた頃には事故で孤児になり何も覚えていない、親はシステム関係企業の幹部だったらしいと言えばよいと言われ、それが通るようなテキトウな国でもあった。

元貴族階級や富豪と言うと敬られる反面、親の盾がないと嫉妬の対象になり疎まれ馬鹿にされる。一般家庭と言えば、まともに英才教育を受けられない。なのでその中間くらいが一番いいのだ。



そんな場所でサダル少年は全てにおいてオールマイティーに物事をこなし、将来の官僚に誘われたが断った。


政治世界などこりごりだった。


中学生に上がる頃には大学の工学科にも出入りし、将来生活が安定するからと最終的に医大に落ち着き座学は既に終わっていた。あまりにも優秀だったため、国際条約では違法だが中学の年齢でもう解剖や手術の立ち合いもさせられる。高校の歳で既に筋肉の手術に関わっていた。


サダル自身は非常に冷めていて、メスで開かれた肉体を見ても、眼球の中を見てもとくに動揺もない子供であった。




その頃、ハッサーレがアジアに負けずと取り組んでいたメカニックニューロス研究にサダルは偶然出会う。


メカの一線でも活躍できそうな少年。

そんなサダルに衝撃をもたらしたのは、戦死者から回収したSR社の義体に遭遇した時だった。



その義体のシステム、『北斗』は誰も初期化ができなかった。


その為本人死亡でロックされてしまい、システム内やオペレーションを見ることができない。しかも、驚くことに被験体の脳や神経系統をいじっていない。


おそらく物質的に何も繋がずとも、義体が連動する仕組みで、そこまでは脳波操作など既存の技術はあった。しかし、驚いたのは「霊性」にも連動していることだった。周りの人間は物質主義で分かりにくいようだったが、サダルには被験体が死亡してもその霊性が動いているのが、滝のように波のように見えていた。死んでも霊性は消えないからだ。


むしろ、霊性の方が人間の本体だ。




SR社のメカニック技術。


それは、ただの機械ではない。

アジアは、SR社は、物作りに対する基本概念自体、スタート自体が既に違うのだ。



この事をサダルは指摘したが、ハッサーレではあまり注目されなかった。


超能力を信じているのにその能力を発する、人間構成の一部『霊性、霊体』自体を理解していない人間がいることがサダルには不思議だった。


しかも、ハッサーレはオーラや超能力すら信じていない人が多いのに、なぜか自然界の超現象や宇宙人を信じている人はけっこういる。宇宙人を信じているなら、未確認飛行物体でもなく、今目の前にある霊世界も不思議ついでに信じておけばいいのに、なぜそこだけ思考が閉じているのか。

自分と同じ場所に、自身の内にあるのに。


こんな時代にまだ、霊世界が歩かないかの話をしている。バカなのか。


自分は多少視えるから霊性を理解しやすいだけなのだろうか?


ハッサーレは国会規模で霊眼も開けていない。

でも、ユラスでは視えない人間も『霊』そのものがあることをハッキリ理解している。この違いは何なのだろう。



『霊性』は人間のオペレーションシステムと同じだ。


機械は、どんなに精密で巧妙でも「機械だけ」ではアナログ時計と変わりない。

しかし、ニューロスが加わると一気に価値が増す。


物体の主体が物ではなく、人間になるのだ。



それに技術だけでは意味がない。


人間の使う目的や意思があって意味をなす。人が意味を見い出せば、物はただの塊でなく魂の共同体になる。意味を見いだした分だけ輝くから、時にアナログ時計でも精密機器を越える存在に、価値になる。


でも物自体は消費して目の前から無くなる場合もあるから、目には見えないこともある。

けれど、そこには永遠の思い出が残るのだ。霊の、心の、魂の中に。



世界の全てが物質と仮定しても、原則『思い』すら消えることはないはずなのに。

消えることのないエネルギーであり、物質なのだから。



なのに、なぜ『霊』が実存することを理解できないのだろう。生まれた時から多少視えて理解しているサダルは、理解できないところまで下がってそれを世間に認知させる必要があると思った。


でなければハッサーレの技術は先々行き詰まるであろう。そんな環境で研究を続けて何の意味があるのか。



目上の上司たちの名を使い、実際メカニック世界をリードしているのはサダル。話しても理解しない人間の功績にしながら、バカにされたままなのもアホらしいしつまらないしくだらない。


自分自身に力を付けなければ、いつまでも誰かの影でお膳立てをしながら研究を進める方法しかない。



時間の無駄だと思った。







●サダルの子供時代。母と緑の目の子

『ZEROミッシングリンクⅣ』66 たったひとり、この世界に

https://ncode.syosetu.com/n0646ho/67



長かったのと、訂正のために37話を2つに分けます。

他の作業の間に、どこかで後半を37-2話として掲載しますね。


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