28 あの時はありがとう
いつものすみません報告です…。
登場人物の年齢など、微妙にずれているキャラたちがいます…。記憶しているから大丈夫と思っていたキャラほどズレています…(´;ω;`)
その内全体を読みなおして直していくので、よろしくお願いいたします。すみません。
「それにしてもチコ様、成長しましたね。」
駐屯所でアセンブルスが感心する。
「は?何がだ?」
「まだファクトに会ってないでしょ。前ならファクト一直線だったのに。」
「………。」
嫌な顔をするチコ。
「…サルより反省できないから会いたくない。言うこと聞かないし…。」
「完全にノリと感性で動いていますね。ユラスにはいないタイプです。ミザル博士が困るのも分かります。あの感じが家に二人もいますからね。」
「……ファクトの面倒はよろしく。」
「え?やめてください…。責任放棄しないでください。」
そこに事務仕事をしていた部下が声を掛けてきた。
「あのー。チコ様。面会人です。」
「面会?アポはないだろ。」
「なくてもいるなら会わせろと叫んでいます。」
「…誰だ?アーツか?」
面倒そうな相手を、誰かも教えずにいちいちチコに通すならアーツであろう。他はもっと礼儀正しいか面会はさせない。
そして、面会室のカフェに来たチコは思わず後退る。そしてUターン仕掛けて………
待ち人は
ドン!と無言で机を叩く。
「……。」
静まる周囲と完全に怒っている女子。
「…ひどい……」
ファイである。
「ひどい。私を避けてた上にターンした…。許すまじ…。」
「………。」
少し様子を見て、仕方なくファイの正面に座る。アセンブルスは少し離れた所で様子を見ている。
「……。」
「ファイ、なんか飲む?」
「…要りません…。」
「………ただいま…。」
「お帰りなさい。いつの間に帰って来てたんですかね?」
「…ごめん…。忙しくて…。」
「キライ!」
「…え?」
「チコさんなんて大っ嫌い!嘘つき!!延長したのに連絡もなかった!!」
「……公務だったから…。」
「嘘つき!あっちでかわいい女子とBBQしてたくせに!!」
「…?!」
また注目を浴びるので、軽くファイの頬を押さえる。
「おい。いちいちそんな事声に出すな…。その前後も仕事をしている。」
「う、うわあああ!!!」
ファイは顔を伏せて大声で泣き出す。
「あ?こら!!ばか!泣くな!!」
「ひどーいっ。延長したのに連絡もないし、秘密だとか言われて帰国日も教えてもらえず、またチコさんに何かあったらと思って、ずっと、ずっと、ずっと心配してたのにぃ!うあぁぁ!!」
「ちょっ!?」
「無事に帰ってこられるように毎日毎日聖堂でお祈りしてっ。それだけじゃダメだって、寺もたくさん回って賽銭投げて…ううぅ…。もう小銭もなくて、ジリに細かいの貰って…毎日毎日胸が締め付けられて………」
それでも札は出さない。
「ごめん!ファイ?ファイさん??そんなに?…」
「う、苦しい…。心配し過ぎて毎日悪夢を見た…。チコさんに何かあったら………」
「ごめん…。私が悪かったから…。約束は守るから………」
ファイはガバっといきなり顔を上げる。
「で、正式な公務は何日?」
いきなり真顔で迫る。
「アセンブルスさん。正式な公務日を教えてください。帰国予定日からの自分から進んで参加したものは除外で。それで非公務の日を割り出してください。」
「分かりました。」
「はあ~っ?」
「守るべきものは守ってもらいますから!」
「この……」
「何ですか?子供や部下に約束を守れって堂々と言えます?ファクトに言えます?」
「…っ。」
「それでチコさん。取り敢えず第1弾はユラスで。」
「第1弾?」
「サダル議長に、チコさんはユラスの未来ある子供たちに世界の現状を講話したいらしいので、来週までに予定のセッティングをお願いしますと直で伝えておきました。出張の報告、実のあるものにしてください。」
「…?そんな事こっちとも予定を合わせないと出来るわけないだろ。そもそもなんでファイがサダルと直接連絡が取れるんだ。」
「………番号交換しています。」
「…。」
ん?と思ってアセンブルスを見るチコ。
「いえ、私も知りませんが。」
「直通?!」
チコですら、帰国前に1回掛けただけだ。しかも、すぐに切って不在で取ってもらえなかったということにしているのに。驚いてファイを見る。
「旦那のデバイスを直通とか言う人初めて聞いた。」
チコの不甲斐なさにファイはドン引きする。
「いつ知ったんだ?!」
「いつだっけな?普通に交換した。プライベートの方。」
「はーーー??」
「妬かないでください。」
「そういう問題じゃないだろ???」
「ユラス側から連絡が来ていたので、予定は組めますよ。明日からもう大丈夫です。」
アセンブルスが付け足す。
「え?!」
という訳で、ファクトに会うこともなくチコはユラスに帰国するのであった。
***
「それで?」
倉鍵SR社のシリウスの私室で、ミザルはシリウスに率直に聞いた。
「何のつもりなの?」
「どんなつもりもありません。」
「去年まで高校生だったのに?犯罪だと思わなくて?」
「…おもしろい子だったから仲良くしたかっただけです。それに私もまだ3歳にもならないですわ。」
「冗談を?情報の蓄積でしょ?だったら最高齢じゃない?」
うちの家族とは関わらないでほしいと言ったはずだけど?」
「…………。」
シリウスは苦笑いをする。
「まあ、電気はきれいに受けたね。中までは大丈夫だったけど。ファクトを呼んで、どういう感じでどんな質の電気を集めるのか聞かなきゃいけないから、第3ラボには来ないで。」
「………。」
ミザルはダイニングの椅子に座った。
「家族に手を出すようなら強制的に制御プログラムを施行させてもらうから。」
「……。彼の事はチコやサダル、シェダルも気を許していますわ。学校や大房での様子を見ても、みんなが話しやすい性格なのでしょう。私が気を許してもおかしい話ではないと思います。」
「……とにかくファクトを研究のど真ん中に連れて行かないでちょうだい。そしてファクトに近付かないで。」
「…………」
「それが私がここで働く条件なんだから。」
「……分かりました。」
シリウスはミザルが出ていくと、カレンダーの手描きの丸をなぞった。
机の一番大きい引き出しから、一昨年や去年の物も出す。
この日は大房に行って…お寺を見た日。
こっちはエキスポでバルコニーを歩いた日。
この日は本当に楽しかった、ラムダたちも一緒に河漢で引っ越し作業の後に、おしゃべりをした日だ。
そう、データでよかったのに。
そのはずなのに。
実体はデータと全然違った。
自分の姿が映った大きな鏡を見る。自分のデザインは20代中盤だ。21から30くらいに見えるようにデザインされている。
もう少し若くてもよかったのにと思うが、彼もあっという間に大きくなるのだろうか。
そうしてあっという間に、自分を追い越していくのだろう。
私は意識体?それともただの情報?
なぜ私は人間に生まれなかったの?
透き通る瞳でもう一度カレンダーを眺める。
底のない、澄んだ瞳……
いや、あまりに良くよくできた生体メカニックの、煌めく人工的なその瞳孔で。
シリウスは少しだけ考えて…自分とは独立したいつものデバイスを取った。
***
「ファクト!」
「………。」
教育科の講義が終わって席を立ち、ファクトは道場の方に入ったところだった。
ムギがいる。
ユラスの病院以来。
いや、永遠の森で見付けたあの日以来。
「ムギ……。」
「やっと会えた!この前キャンプの後、先に帰っただろ?」
「……。」
ファクトの反応がない。
「何だ?珍しい。元気がないな。」
ムギがファクトの目の前に立っている。帰っていることは聞いていたが、少し現実味がない。
「………いや。久しぶり…。なんか元気そうでよかったなと…。」
以前の、スリムを通り越こしてガリガリだった印象が強いせいか。頬も足腰もふっくらしたムギに安心して気が抜けた。
それに、女性らしくなった気がする。
「なんか………大人になったね。」
「っえ?」
ファクトからそんなことを言われて驚いて、身を引く。
「……大丈夫か?ファクト…。」
「……?」
なんだか言葉が続かなくなってしまった二人。
「あの………ファクト。ありがとう。」
「…?」
「ファクトが夢の中で呼んでくれたから…戻って来たんだよ。」
「!?」
思わず目を見開く。
「そうでなかったら…。ずっとあそこにいたいと思っていたから………多分戻ってこなかった…。」
カウスの弟、タビトの亡くなった場所のことだろう。
「お帰り……。」
「…うん。ただいま…。」
ファクトが何となく笑うと、ムギが少し赤くなる。その時だ。
「ファクト、いたーーー!!!」
ラムダやリゲルだ。そして、なんだか違和感のある人物。
「あ!!ホントだ!帰って来たんだ!!」
そこに現れたムギより少し長身の男子。
「へ?」
「おー!!」
頭が回らないムギと、嬉しそうなファクト。
「トゥルス??!!」
ムギの弟だ。駆け寄ってくると、ムギより背が高くなっている。
「お姉ちゃん…。元気でよかった…。」
「え?あれ?なんで???」
トゥルスはムギより背が低かったはずだ。ファクトが最初に会った時は6年生か中学生で145センチくらいしかなかった。
「トゥルス!!サイコーだ!!もうちょいがんばれ!!」
「なんで!ダメ!!!」
チビッ子仲間だったのに。
「成長期って尊いね…。仲間だと思ったのに僕の身長をあっという間に抜かしちゃたよ。裏切り者だよ…。」
ラムダがしみじみ言い、そこにサレト現る。
「俺が、背が伸びる栄養剤を教えてやった。」
「あー!!レサト!余計なことするな!!」
身長に関しては器量の狭いムギである。
「…そんなケチケチしたこと言わず、私にも教えてください、レサト様て言えばいいだろ?レサトもここで借りを作っておけ。」
と、暇人ウヌクが現れる。
「……あれ?仕事は?」
めんどくさい男、ウヌクの登場にしかめっ面をするムギ。
「疲れた…。サボりに来た。」
と、道場のフロアに座る。
「何でトゥルスだけ………」
何度測ってもトゥルスが数センチ高い。
「いやいやムギ。女の子で160あれば十分だよ…。」
ラムダは心から思うが、悔しいムギである。なにせ、父や兄たちはみんな180近くで筋肉も逞しい。
「違う…私だけどうしてこんなんなんだ…。これじゃ強くなれない…。」
「大きすぎるとかえって出来ないことも多くなるぞ。体に負担も掛かるし。そのくらいでいいだろ。」
リゲルが言うが、せめてあと10センチほしい。
非常に落ち込むムギだが、周りから見たらいい感じに成長している。
少なくともムギが元気に帰って来たことに、みんな安心した。
●かわいい女子とBBQ
『ZEROミッシングリンクⅤ』1 公務です
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