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ZEROミッシングリンクⅤ【5】ZERO MISSING LINK 5  作者: タイニ
第三十五章 アンドロイドは嫉妬する
26/110

25 チビッ子集合



その次の日も、日曜学校のキャンプは大盛況。



日曜日なのでエリスを呼び、手短に礼拝をして歌を歌う。それからスタッフたちが合流し、オリエンテーリング。


チームに分かれて競技場の敷地でスタンプを集める遊びを行う。この日は、遅れて高校生になったソイドもスタッフとして合流。


ベガスで、倉庫や駐車場など以外の現在唯一の完全な新築、競技場の展望台がゴールである。高さはそこまでではないが、上に上がれば競技場の全貌は確認できる。

ゴールにはラムダとウヌクも待機していた。



ラムダは考える。

「……」

「お前何が不満だっつーの?」

「僕とウヌクでこんなゴールで待たなくてもいいのに……」

「は?俺はこの中では御年配なんだよ。ゴールで待たせろ。他のスタッフもいるだろ。」

「僕もまだ学生ですー!」

なぜ、昨日はウヌクのテントで寝たのか。この前はキファに絡まれ、そして昨日は元々夜型のためにイベントの場ではなかなか寝ないウヌクの話に付き合わされる。ラムダにとってアーツ最大の試練である。


下心とかではなく、今日も保育科や教育科の爽やかな女性たちとほのぼの仕事ができるかと思ったのに、なぜウヌクなのだ。

「…はあ。」

陽キャに絡まれて、落ち着かない。ただ、ラムダは基本前向き思考なので、気を取り直して頑張っていた。なにせ8位までは特別なプレゼントある。



そこに、現在1位のチームが騒がしくエレベーターから降りてきた。お姉さんのいるチェックポイントで自分たちのノートにそれぞれスタンプを貰い、そして万歳。

「おめでとー!!ウサギチームが1位到着でーす!!」

「わー!!」

みんなでハイタッチし合う。このチーム。補助は昨日来ていた昴星(むらぼし)女子1人と朝に合流したキファだ。子供のお兄ちゃんたちも合流している。


「あー!ラムダせんせー!!」

1位が来た瞬間、ラムダは超大感激。

「アルーーー!!!」

今年から1年生のマリアスの末っ子だ。

「ぼくたち1位だよー!!」

「アル、サイコーだ!」


「マジかー!!」

その1分後に来たのは、ティガが補助するザルニアス家ビオレッタやメレナとその子供三兄弟たち含むチームだ。

「あらー、残念。1位じゃないのね。おかしいわ。カメチームなのに。」

メレナが言うと次男が泣き出した。

「うわあああぁぁぁ!!」

「…お前泣くなー!!それでも2位だぞ!!!」

ティガがあやしている。

「キファ!お前は卑怯だろ?南海広場を知り尽くし過ぎている!!」


怒るティガに堂々とピースするキファ。

「そんなものアーツはみんな知り尽くしているし誘導はしていない!ウチのチームが優秀過ぎた!!」


ちなみに、アーツメンバーは子供たちが迷ったり困った時の補助だけで、主導で動いてはならない決まりだ。5、6歳しかいないチームだけは外部の女子学生たちに任せているので、スタッフが引導してもいいことになってる。

でも、もう7位まで来たが、チビチビチームはまだ1チームも来ていない。小学生に年下を補助する先生になってほしかったのに、男子どもは自分たちが勝ちたくて仕方なく、子守どころではない騒がしさなのでうるさいのは別にしたのである。



そして今、到着したエレベーターに、なんと2チームがいた。


1チームはチビッ子ばかりのマンモスチームでファクトとニッカ、そして保護者たちが率いていた。

もう1チームは小学生が多い上に、こちらも小学生兄貴分たちが合流しているほぼ男子のトラチーム。スタッフもいない。


チェックポイントは反対側にあるので勝負はついたようなものである。


しかし、この男は言う。

「よし、ゆっくり走れ!マンモス!!」

ファクトが言うと、チビッ子たちがワ~と走り出す。

「あ!ファクト兄さんの卑怯者ー!ホールは走るな、だろ!!」

と、もう3年生だが一緒に参加したジョア長男シーバイズが、軽く駆けた。


そいう訳で、小学生男子の勢いに勝てるわけがなく、マンモスを負かしてトラチームが8位を勝ち取った。

8位までのチームは、デスタルモンスターカード入りのチョコのお菓子が3個ずつ貰える。8位以下は1個だ。


「おー!!俺らが貰って正解だー!」

「この価値はガキンチョには分からん!!」


3個お菓子をもらった小学生は大興奮。

「ロックスの最終形態だ!」

「ミミ、そのカードと換えろ!」

「やだー!これキラキラしてるもん。」

シールの種類が重要らしい。

「先生。このシールね、2段階までは普通で、3段階は銀で、4段階はちょっとキラッてするの。最終段階はホログラム。この金はスペシャルアイテム。人間と合体して変身したのはこっち。」

「ふ~ん。」

小学生が盛り上がっている。実はラムダやファクトは数世代前のシールをファイリングしているが、子供と同化するなと言われているので、いろいろ自慢したいが我慢する。

「小学生。飲食はベンチ内だけだから、向こうに行け。あと、小さい子のをとるなよ。」

「交換してんだよー!」



40分後に全員揃う。最後は展望台下階の少し広いホールで牧師の挨拶があり、チビッ子もいるのでお祈りをして飲み物とソーセージパンを配ってお昼時間には解散。



中高生のキャンプは、夜までみっちりスケジュールを組むらしい。

勉強目的のキャンプでなくとも宇宙論や次元論とかするらしく、スポーツかBBQばかりしている大房人のキャンプとはだいぶ違う。

困るのは小学校5、6年生で特に5年生。子供で成長の差が激しく、もう中高生レベルで問題ない子もいれば、早過ぎという子もいる。それをどうするかも考えていく。今度の課題だ。




***




「お疲れ様でしたー!」


「学生の方は、レポートの報告お願いしますね。こちらから承認を貰って後は学校ごとの規定に従って下さい。それで単位になります。写真の使用は規定に従って下さい。」

会議室に戻り、フォローアップミーティングをして日曜学校の先生が挨拶をし、スタッフも解散。



「すごく楽しかったです!また呼んでください!」

ベガス外部の女子高生女子大生が喜んでいる。こういう時もアーツ妄想チームはとくにモテることはないが、あの殺伐としたABチームと暮らしている男子たちには、緩衝材になる女性たちと仕事ができるだけでうれしいのだ。


「自分が日曜学校で見ている子供を集めて、簡単にお泊り会のつもりだったのに、なぜかビックイベントになった…。」

ウヌクがぼやく。


「まあ、企画はほとんど学生がやってくれましたからね…。」

「ラムダ、今度はサボんなよ。お前に全て頼んだのに。」

「え?この規模、この期間でそんなのできるわけないじゃないですか?!しかも、ボランティアですよ?」

「ラムダも単位になるだろ!女子大生といちゃいちゃしやがって!」

「えー!僕も一応大学生ですけど!!もしかして、女子高生女子大生狙っていました?」

「…やめろ。女子高と聞くだけで萎える。あんな青臭いのは無理だろ。大学1、2年生もギリだ…。テンション下がりまくる。」


酒の入るクラブなどで仕事をしていた頃、成人しか入れないのに嘘をつく者もいて、高校生にはげんなりしてきたウヌクなのである。チェックで止められるが、それでも未成年が入ったら営業停止だ。口が悪く、帰らせるのに苦労した嫌な思い出しかない。




そこに現る、かの女子。


「ラムダ、こんちは。久しぶり!」

「……ああ!ムギ!!」

「ムギちゃん!!!」

みんなが集まって来て、ウヌクも目を丸くする。

「あああ!!!逃げたチビッ子!!!」

「………チビッ子じゃないし…。」

怒った目でムギはウヌクを見る。


「あれ?ちょっと成長した?」

少しふっくらして、女性らしくなっている。

「…前から大人だ!チビじゃないって言ってるだろ!」

「………。」

ウヌクは安心した。以前ムギがガリガリだと言う話を聞いていたからだ。しかもあのソラがひどく動揺していた。


「ムギーーー!!!」

「あ、ソイド。」

息切れしてまで駆けてくる藤湾でのムギの勉強見張り番、ソイドである。

「中学は?!!」

「………。」

「ダメだったの…?」

心配気に顔を覗き込む。


「卒業した!!!」

「おおおーーー!!!!!」

ハイタッチをする2人。


「つ、辛かった…」

思い出して、ムギは遠い目をする。

「向こうで勉強見てくれた先生は容赦なかった…」

真面目なアリオトやその周りの人間は非常にシビアで、中学をきちんと行かせてあげられなかった申し訳なさゆえに、見張ってきっちり全教科やらされたのだ。だからと言って、頭はよくなっていないがあんなに勉強をしたのは人生初である。

「数学余計に嫌いになった…。」

「ムギ、中学の数学なんて算数の様なものだよ…。一番低いレベルの選択だし。」

「もう、高校も行きたくない…。」

「…元気出せ…。大房の高校なら多分ムギでも出席すれば卒業できるぞ…。」

かわいそうだが、これ以上言うことが分からず救いようのない励ましをした。


「おい、チビッ子!取り敢えず卒業入学おめでとう。」

「……なんだ?ウヌクはまだ大房に帰らないのか?いつも負けてるのに。」

「俺、日曜学校の先生してるし。」

「は?子供に悪影響だろ?さっさと大房に帰れ。」


「ウヌク先生の事ひどく言わないでー!」

なんと、ミーティングの様子が見たくて来たメレナとその子供たちについて来たカウス長男テーミン。横の部屋で遊んでいたが、終わったのでこっちに来たのだ。そしてウヌクを庇う。

「お、テミン。いい子だな!」

ムギに勝ち誇った顔をするウヌク。

「は?なんだ?こいつはダメだぞ?根の根からアホだぞ。テミン、こっちに来い。なんで信者になってるんだ??」

「先生はダメじゃなーい!ムギ姉ちゃんやめてー!」

テーミンの向こうでさらにいい気な顔でウヌクが煽るので、ムギはキレまくっていた。




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