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ZEROミッシングリンクⅤ【5】ZERO MISSING LINK 5  作者: タイニ
第三十五章 アンドロイドは嫉妬する
23/110

22 星空のテント

1話抜けていたので、割り込み投稿します。ごめんなさい。



子供キャンプの夜。


この日は暑い季節ではないので、自分で出来ない子などはシャワーはなしで着替えと洗面だけ。子供たちは興奮しているので、少し遅めの夜10時に消灯。眠い子たちは既に消灯してある部屋で先に寝ている。



みんな、それぞれの場所にテントを張る。

「ファクト先生下手くそだね!ティガ先生はもう組み立ててるよ。」

「テントって大人になって初めて見るし!」

子供の時にリゲルの親にキャンプに連れて行ってもらって以来だ。なんだか懐かしい。

「俺も組み立ては生まれて初めてだっつーの。ファクトが不器用なんだよ。」

ティガはキャンプはしたことがあるが組み立てたことはない。でも、直ぐに作ってしまった。というか、少しワイヤーを組んで開くだけのテントである。室内なので固定も要らない。

「フェスとかでテント使わないの?」

「俺、もともとああいうイベントは行かないから。」

「ふーん。」


低学年以下はバンドを外すだけで開くポップアップテントだ。




テントが出来た子たちは、天井や壁に星や月などを映すペンライトで盛り上がっている。


ユラスの財閥一家ジョアやメレナの子供たちも大騒ぎである。

ジョアの妹メレナは、子供のイベントを体験したいと保護者として参加していた。超エリートで忙しいのに意外である。ここでは英才教育などはしないのだ。ただの遊びである。参加年齢に達しない子は親の付き添い必須なので、他の親戚が行くはずだったがメレナ自身が参加を希望した。


「メレナ叔母さん、このライトきれい!お星さまだよ!あっちはハートもある!色もキレイ!!」

「ビオ、楽しい?」

「うん!パパに動画送って!」

紛争の中で育ったメレナたちには、こんなふうに異民族の子供たちが一緒に遊んだり、いろんな立ち位置の人たちが共に仕事をできるとは思ってもいなかった。今回はユラスと民族間で対立していたヴェネレ人の子も4人いる。そんな理想は語っても、現実がイメージできなかったのだ。


その夢物語りが、ここでは何の突っ掛かりもなく実現していた。



それはなぜと、メレナは考える。

エリート教育は関係ない。ただ、ここにいる子供たちは多文化にいながらも民族の違いを感じずに育っているのだ。生粋のユラス社会が同じ企画してもこうはならない。同じ民族同士でも対立しているのだから。


まあ、ユラス人が企画してもブートキャンプか勉強などの猛特訓にしかならなかったであろう……とは思う。ユラス人は徹夜で聖典を音読したりするのだ。普通の人からすれば苦行でしかない。

カウスたちが企画したら、24時間、48時間耐久、下手したら1週間など…キャンプというか訓練である。がっつり兵士を育てることはできるであろう。


メレナは姪のビオレッタと自分の末っ子をギュッと抱きながら横になった。次男はその横で既に寝ている。長男は男子ばかりのテント部屋に行ってしまった。声が響くので、まだ騒いでいるのだろう。




夜間、子供を見ないスタッフは寝袋やマットで男女別の部屋に雑魚寝。でも、せっかくなので廊下にテントを作っている者もいた。見張り替わりにここで寝るらしい。


消防法で廊下は占領できないので、半ロビーの広場にテントを張るのはウヌクである。


「おい、そこの通りすがりのラムダ。来い。お前もここで寝ろ。」

「…え?僕は大丈夫です。あっちの会議室で寝ます…。」

ラムダ的に、ダークサイドでありながらも陽キャのウヌクはお断りである。

「は?俺の命令を無視するのか?見守り役だぞ。」

「ウヌクさんは背が高いので二人でテントは狭いじゃないですか…。」

「俺は横幅はないから大丈夫だ。あの筋肉どもとは違う。」

そんなことはない。背の分、細いと言ってもそれなりに幅もある。


そこにカウス長男テーミンが登場。


「ウヌク先生!ラムダ先生!」

「あ?テミン。寝ろ。明日6時30分起床だぞ。もうすぐ10時だろ。」

布団代わりのバスタオルを持って来て、勝手にウヌクの横に寝るテミン。もう1人チビッ子が付いて来てその横に寝た。


「先生。僕、メディウムはまだ買ってもらえませんでしたが、代わりに紙粘土いっぱい買ってもらいました!軽いの!色々混ぜてみます。」

「お、よかったな。」

「それで母さんが気に入る絵を作れたら、1個だけ100グラムの買ってくれるって!

先生、ここで寝ていい?」

「子供は室内で寝る決まりだから。確認の先生が困るだろ。またな。」

「じゃあ、ちょっとだけ。ふふ。」

ウヌクが頭を撫でているとテーミンはすぐに眠ってしまったので、しばらくしてラムダは立ち上がる。

「じゃあ、僕はミーティング行くから。」

「は?お前、後でここで寝ろよ?俺が暇だろ?」

「えぇ……」



スタッフミーティングが始まる消灯前に、テーミンたちを部屋のテントに連れて行く。

「結構重い。なんか子供は本当に一気に大きくなるな…。」

参加者は母親父親別でも部屋を分けているが、家族参加でない場合は友達同士。親の確認があれば、家族参加の子供も友達同士で寝てもよかった。




ミーティングは、消灯後から始まった。


「どうですか?」


「大学でこういうこともするんですね!楽しいです。」

突然参加のメンカルチームが驚いていた。

「いや、しなくてもいいんだけど。」

ラムダが思わず言ってしまう。


「高校生もいるよー!!」

時々来るスタッフの女子がニコッと笑って手を振った。今回研修保育資格のある女子高生が3人いる。


メンカルからのお客様は、東アジア最先端都市アンタレスは、もっと小洒落た所だと思っていたようで呆気に取られている。

「何せベガスだからな。ここはベガスでも特殊だ。年齢層も低いし忙しいし、元々生活習慣が違う人間が多すぎてどうにもならん。」

「分かる。子供や世話する対象が多いと、何一つ思い通りにならない…。」

なんだかんだ言って、未婚のアーツメンバーも遊びがてら手伝いに来ていた。

「これが上の年齢のキャンプだと、本人たちに色々任せられるから、本人たちで食事を作るスケジュールも組むこともあるし、別の理由で大変なんです。簡単に喜んでくれないし。でも、その分、本格的な地域構築の勉強もします。夏は高学年と中学生かな……。河漢の子供たちともイベントとかしたいんだけど。」




簡単な今日の反省や見直し、明日の打ち合わせが終わると、スタッフも今日はおしまいだ。


メンカルのお客様たちは楽しんでいるようで、用意した宿泊施設でなくここに泊りたいと言い出し、ミーティングの後はスタッフたちと話し込んでいた。


南メンカルは東、西アジア圏より少し発展が遅れているし、格差も大きい。独裁、対立が続いたメンカルはアジア諸地域と同じように成長できなかったのだ。


今回は裕福層や、貧しくとも奨学金で大学に通える優秀な子たちがアジアに研修に来ていた。洗練された学校や学生に囲まれると思っていたのに、そうでもなく気が抜けたらしい。

ベガスの女性は南メンカルの女性より大人しいくらいの格好だ。メンカルは暑いので女性がノースリーブも珍しくない。サウスリューシアのようにホットパンツや、胸やヒップを見せつける格好はしないが、スリムやスキニー系を好む。

でも、ベガスはユラスや元々の東アジア仏教寄り文化なのでそれよりも大人しい。もちろんベガスにいる間は、寺院や王宮に入れるような慎ましい格好をするようには言われている。それにしても、世界の大都市アンタレスでも背伸びをしなくていいと分かり、メンカル陣はホッとしたようだった。


ちなみに、ベガスでは男子も袖なしは着るなと言われているほど慎ましいが、夏の南海広場のおじさんたちは、どんなに言ってもタンクトップに短パンやステテコでうちわや手持ちクーラーを持って歩いていた。

「セクシーか?」

と、ファイを追い回して叱られていた。



メンカルチームは、空きの簡易宿泊所に泊まることになっていたので、1日テントでも問題はない。

今ここに集まっている者は、親やお客様も含め霊性チェックを通っているので、子供たちの間に入るのも許されていた。




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